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1日1短編ミステリー 2日目血縁 長岡弘樹長岡弘樹『血縁』は、家族や身近な人間関係に潜む“見えない絆”を丁寧に描いた短編集で、淡々とした筆致の中に強烈な余韻が残る一冊です。劇的な事件が起きるわけではないのに、登場人物同士のわずかな感情の揺れ、すれ違い、誤解が積み重なることで、読者の胸に静かな緊張感が広がります。特に親と子、兄弟姉妹、血がつながることで生まれる責任や負い目が、決して大げさではない日常の中でじんわりと浮かび上がる構成が見事です。最後の一行で視点や印象が反転する“長岡ミステリー”らしい巧さも健在で、読後には人との距離感や家族の意味について考えさせられます。静かなのに強い、味わい深いミステリー短編集です。血縁 (集英社文庫(日本)) [ 長岡 弘樹 ]価格:792円(税込、送料無料) (2025/12/2時点)楽天で購入
2025.12.02
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Theme:図書館 夜の図書館には、人の気配がなかった。閉館後の自習室に残っていたのは、大学二回生の僕と、机の上に置かれた一冊の古い本だけだ。表紙にはタイトルもなく、背表紙には擦れた金色の文字がかすかに残っている。 “貸出不可”と札が貼られていたはずなのに、なぜか返却ボックスに入っていたらしい。職員の人が不思議そうに僕へ差し出した。「預かってくれる? 珍しい本だから施錠棚に戻すまで頼むわ」 断る理由もなく受け取ったが、手にした瞬間、冷えた金属を触ったような感覚が走った。 ページをめくると、そこにはびっしりと細い文字が並んでいた。ただし、奇妙なことに文章は物語ではなく、延々と“記録”が書かれている。 「〇月〇日 閲覧者:A氏 同日21時以降、行方不明」 「〇月△日 閲覧者:B氏 翌日未明、図書館にて倒れているところを発見」 事故か事件か曖昧なまま並ぶメモの羅列だった。ページをめくるほど胸がざわつく。まるでこの本自体が、誰かに“見られた記録”を残し続けているようだった。 最後のページを開いた瞬間、僕は息を飲んだ。そこに書かれていたのは見慣れた名前だった。 「〇月27日 閲覧者:杉谷啓太 詳細不明——」 今日の日付だ。 悪ふざけにしては悪質すぎる。けれど、誰が? 僕はその日、誰にもこの本を開いたところを見られていない。 そのとき、背後で「パタン」と扉が閉まる音がした。図書館は職員もすでに帰っているはずだ。 振り返っても、誰もいない。 ただ、室内の空気だけが急に冷えたように感じた。 僕は本を閉じ、急いで施錠棚に戻そうとした。しかし手を離す瞬間、またページが勝手に開いた。ちょうど“翌日”の日付まで空白が続き、その下の行に、ゆっくりと黒いインクが滲むように文字が浮かび上がっていった。 「——0時05分 図書館内にて消失」 現在時刻は0時。あと五分。 逃げ出そうとドアに手をかけた瞬間、ドアノブが冷たく固まり動かなくなった。携帯も圏外になっている。 まるで図書館ごと“閉じ込められた”ようだった。 刻一刻と時間が迫る。 残り二分。 僕は最後の望みにかけて、本を閉じ、背表紙に爪を立てながら強く念じた。 ——僕はまだここにいたくない。 ——記録されてたまるか。 時計の針が0時5分を指した瞬間、図書館の照明が一斉に消えた。 暗闇の中、しばらくして非常灯がついたとき、僕は気づいた。 さっきまで腕に抱えていたはずの本が消えている。 ただし、施錠棚の中の一冊だけが、何かを告げるように表紙をわずかに開いていた。 そこには新しい行が書き加えられていた。 「閲覧者:杉谷啓太 消失——回避」 僕は震える手で棚を閉じ、図書館を後にした。 二度と、あの本に触れないと心に誓いながら。
2025.12.02
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今週のオススメ短編小説 オールタイム•ベスト短編ミステリー~江戸川乱歩~江戸川乱歩の『オールタイムベスト短編ミステリー 赤』は、まさに“日本ミステリーの源流”を一冊で浴びられる贅沢な短編集。たった数ページで読者の心をつかんで離さない怪奇とサスペンスの濃度が異常に高く、古典の名作なのに今読んでもゾクリとする。どの短編も「この発想が100年前に!?」と驚く完成度で、ミステリ好きなら絶対に外せない名品。読む手が止まらない。【中古】 『このミス』が選ぶ!オールタイム・ベスト短編ミステリー 赤 / 連城 三紀彦, 江戸川 乱歩, 高木 彬光, 泡坂 妻夫 / 宝島社 [文庫]【メール便送料無料】【最短翌日配達対応】価格:362円(税込、送料別) (2025/11/30時点)楽天で購入
2025.11.30
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深夜0時。小さなアパートの一室に帰宅した私は、ドアノブに触れて違和感を覚えた。鍵を閉めて出たはずなのに、ドアがわずかに開いている。 胸がざわついた。だが、逃げるより確かめたほうがいいと、自分に言い聞かせて部屋に入る。 電気をつけると、部屋はいつも通りに見えた。荒らされた様子はない。 ただ一つ、机の上に置いていたはずの腕時計だけが、向きを変えて置かれていた。 「誰かが…入った?」 警察を呼ぶほどでもないが、落ち着かない。 そのとき、机の脇に見覚えのない小さなメモが落ちているのに気づいた。 『時間を合わせておいた。ズレていたから。』 私は息を飲んだ。私の腕時計は数日前から5分ほど遅れていた。直そうと思ったが、面倒でそのままにしていたはずだ。 “時間を合わせた”ということは、その人物は時計に触れたということだ。 気味が悪くなり時計を見ると、たしかに誤差はなく、きっちり時刻が合っている。 ――誰が? 何のために? その瞬間、背筋がぞっとした。 この部屋にはもう1つ“時間”がズレている物がある。 壁にかけた掛け時計だ。数日前から10分進んでいたが、放置していた。 恐る恐る顔を上げる。 掛け時計の針は、ぴたりと今の時刻を指していた。 「……全部、触ってる」 その事実に気づいた瞬間、玄関のほうから微かな音がした。 ドアの蝶番が、きしむような音。 “誰かがまだ中にいる。” 私はゆっくりと後ずさりし、スマホを握りしめた。 部屋の中は静まり返っている。だが、どこかで気配がする。 と、そのとき。机の時計が「カチッ」と音を立てた。 針がわずかに動いた――いや、動かされたように見えた。 私は叫び声を上げて玄関に走った。 だが、ドアはぴたりと閉まっている。チェーンもかかったまま。 ――出ていない? ということは、入ってもいない? 混乱する頭で、ふと気づく。 “鍵が開いていた”のは、帰宅した私が開けた時だけ。 それ以降、誰も出入りしていない。 じゃあ、あの音は? 私の心臓が大きく跳ねる。 視線を動かすと、クローゼットの扉が、わずかに…開いていた。
2025.11.30
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