「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
100万ポイント山分け!1日5回検索で1ポイントもらえる
>>
人気記事ランキング
ブログを作成
楽天市場
000000
ホーム
|
日記
|
プロフィール
【フォローする】
【ログイン】
すい工房 -ブログー
13
(13ページ目)35~37
ふらりとよろけて、近くの壁に背を預けてどうにか立っていた。
鼓動が高鳴っている。
……知らない。
そんな話、私は知らない。
そのあとも、圭介の話は続いた。
寝ぼけ眼の私は圭介に気づくと、その顔をぼんやりと眺めていた。
しだいに意識がはっきりしてくると、今度は静かに目を見開いていく。
圭介が違和感を感じたときには、私はかみきり声をあげていた。
内容も意味もない。
ただ、悲鳴を、叫びを、奇声を上げた。
驚いた圭介が宥めようとしたけれど、伸ばされた手をふり払って、私は震えながら自分の体を抱きしめた。
それを見て、圭介はぎくりと身が凍えた。
自分の身を抱きしめるなどの、やさしいものではなかった。
両肩を抱く手で、自分の体に爪を立てていたのだから。
血のにじみに気づいて、やめさせようと手をつかむと、思いもよらぬ力でふり払われた。
声をあげ続けながら、肩だけでなく、顔や腕、頭をかきむしる。
自傷する私を、圭介は何度も止めようとした。
が、手をつかんでも上手く制することができなくて、最後には力任せに抱きしめて動きを封じた。
私は圭介に抵抗しながら、声をあげ続け、さらには圭介にも傷を負わせた。
私の奇声に気づいた祖父母が、庭で圭介と私の異様な情景を見て、一瞬、動きを止めた。
状況が理解できず、立ち尽くす祖父母に気づいた圭介が、助けを求めて叫んだ。
「リツが!」
そこで祖父母は、尋常でない私の状態に気づいたという。
祖父母、二人がかりで私を押さえ込み、どうにか体の動きを抑えたが、それでもなお、私は四肢をばたつかせ、体全体で抵抗しつづけていた。
私を探しに出ていた両親が戻ってきたのは、幸いにもその数分後だった。
母は蒼白となって立ち尽くし、父は祖父母に加わって、体の動きを封じた。
そうしてさらに数分、抵抗していたけれど、やがて力は弱まり、険しい表情の中に疲労の色を見せ始め――。
やがて体の動きが止まると同時に、眠ってしまったのだという。
状況がつかめない両親と祖父母は、圭介にことの成り行きを教えるよう迫った。
おどすまでもなく、圭介はありのままを話した。
話を聞いても、両親も祖父母も、わけがわからないといった表情で顔をしかめたが、圭介がウソを言っていないとわかる。
圭介の年からしても性格からしても、ウソなどつけないとわかっているから。
やがて両親も祖父母も、いくらか気が落ち着いてくると、圭介に礼を言った。
そうして含ませるように、このことを誰にも言わないようにと告げた。
圭介は、固い表情のまま、うなづいた。
「話すつもりなんて……なかった。子供心にもさ、わかってた。『これは誰にも話しちゃ駄目だ』って」
得体の知れない事態が起きて、それが体が凍えるほど恐ろしかったのだと、圭介はいう。
私の両親と祖父母は、できるならこの事態を誰にも話さずにおきたかった。
ただ、圭介が私の体を抑えるさい、体に傷を負ってしまったから、圭介の両親にはことの成り行きを説明せざるをえなかった。
さいわい、圭介の怪我はひっかき傷程度だったから、圭介の両親は咎めもせず、逆に私の身を案じてくれた。
「……なにが……あったんだ? ……いえないなら、いいから」
聞きにくそうに、橋川が伺いをたてる。
圭介はため息をおとした。
「……わからない」
「わからない?」
「リツには、そのへんの記憶がない」
部屋に運ばれ、眠っていた私は、目を覚ますと、普段どおりの様相だった。
ひとよりワンテンポ遅れた行動をとる、のんびりとした立川律子。
家族はきつねにつままれた心地だった。
慎重に、注意深く、私の反応をうかがいながら、その日どこに行って何があったのか聞いても、特に変わったところはない。
……記憶がとぎれているという点をのぞいては。
白い花の咲きほこる庭で、着物をきた女の子を見ていると、赤い風船が顔の近くに落ちてきて、パン、と割れた。その時、目を閉じて、気づくと家に帰っていたのだと、私は答える。
記憶がないことを、少し変だと思うだけで、とりたて変わった様子はない。
そんな私を家族は、表には出さなかったけど心配していた。
結局、何も思い出せないまま、今日に至っている。
「言っとくけど、へんなことはなかったから。……考えただろ? 顔に出てる」
おそらく橋川に言ったのだろうけれど、私自身のことを言い当てられたようで、体の底が冷えた。
「……何も言ってないだろ」
「疑った顔してたって。……いま考えると、可能性としてはまっさきにイタズラ関係を疑うよ。あんだけ取り乱すんだ。尋常でないこがあったんだと考えたら、それが一番可能性高い。けど。それに関しちゃ、病院で調べたから確かだって」
「……そんなことまで、圭介に話したのか、立川の親」
「俺にじゃない。母親に。それが一番心配だったんだろ。それらしい痕跡がまるで見当たらないとわかると、よっぽど安心したのか、泣いてたし」
――ありがとう。こんなこと、誰にも話せないと思っていたけど……。話を聞いてくれるひとがいてよかった。
しぶしぶながら圭介の両親に、ことの成り行きを話したけれど、結果から言えば、話せる人がいてよかったと、お母さんは言ったという。
「一番の気がかりは……なくした記憶の部分なんだ」
いつ思い出すかわからない。
もしその記憶の内容が、奇声をあげ、暴れたことに起因するものだったら……。
不意に思い出し、おなじ状況に陥るのを、圭介も私の家族も恐れていた。
余計な刺激を与えぬよう、それだけを注意していた。
「庭に関してリツが聴きまわってるけど、正直、それもとめたい。
ま、そんなことしたら、変な疑いもって悪いほうに転がりかねないから、知らぬ、存ぜぬでとおしてるけど」
「……知ってるのか? その庭の在り処(ありか)」
「いや。それはマジで知らない。知らないからと言って、一緒に探そうとも思わないけど」
「そう」
橋川が、1つ息をついた。
「……そんな事情だからさ、変に刺激しないでくれよ」
「……俺が? 立川を?」
心外だといわんばかりの、橋川の声に「とぼけんのもいい加減にしろよ」と少し圭介の語気が強くなった。
「リツ見てればわかる。
文化祭のあの日……最終日に、リツ、視聴覚室に放心状態で座り込んでた。
それ見たとき……寒気がした。
記憶をなくした直後と、同じ顔してたから。
それからだ。
リツがあからさまにハシを避けてるのは。
……ハシを見た瞬間、体を、顔を強張らせてな」
橋川は何も言わなかった。
二人の姿が見えないから、どんな表情をしているのか、見えない。
「で? なんでリツを嫌ってるんだ?」
橋川は何も言わなかった。
圭介は返事を待っていたけれど、いらだった声でまた問いかけた。
「話すって言ったろ。だからリツのこと、話したんだ」
やがて橋川は、あきらめの息を吐いた。
「お前さ、ほんとに立川のこと、何とも思ってないわけ? 異性として、さ」
「何度も言ってるだろ。友人として気にかけるだけだよ。
……ハシも、あれを見たらわかるよ。あんなの、二度と見たくない」
苦くつぶやく圭介に、橋川は「わるかった」と告げた。
「確認しておきたくてな。
……お前が無理に聞き出したんだから、怒るなよ。
理由なんてないよ。
生理的に受け付けないだけ」
「ハシ……!」
足音が聞こえて、私は慌てて隣のクラスに逃げこんだ。
幸い、誰もいなくて、ドアの側に座り込むと、声が出ないように口を両手で押さえた。
「心配すんな。関わりたくないのは俺も同じだから」
声がして、橋川が一人、教室を出て行くのが見えた。
一人、教室に取り残された圭介が、何かを激しく蹴る音が聞こえた。
音からして……多分、机と椅子。
圭介もしばらくすると、教室から出て、部活へと向かった。
私は……その場から立ち上がることができなくて、自分の体を抱きしめて、長い間、座り込んでいた。
←12
14→
※ 参加中。お気に召したらクリックをお願いします。 ※
ジャンル別一覧
出産・子育て
ファッション
美容・コスメ
健康・ダイエット
生活・インテリア
料理・食べ物
ドリンク・お酒
ペット
趣味・ゲーム
映画・TV
音楽
読書・コミック
旅行・海外情報
園芸
スポーツ
アウトドア・釣り
車・バイク
パソコン・家電
そのほか
すべてのジャンル
人気のクチコミテーマ
読書日記
書評:「断食」が健康のための最高の…
(2026-08-05 00:00:19)
ミステリはお好き?
刃紋
(2026-08-08 23:36:55)
今日どんな本をよみましたか?
「おかしな転生XII 学生たちには飴…
(2026-08-09 16:49:06)
© Rakuten Group, Inc.
X
共有
Facebook
Twitter
Google +
LinkedIn
Email
Design
a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧
|
PC版を閲覧
人気ブログランキングへ
無料自動相互リンク
にほんブログ村 女磨き
LOHAS風なアイテム・グッズ
みんなが注目のトレンド情報とは・・・?
So-netトレンドブログ
Livedoor Blog a
Livedoor Blog b
Livedoor Blog c
楽天ブログ
JUGEMブログ
Excitブログ
Seesaaブログ
Seesaaブログ
Googleブログ
なにこれオシャレ?トレンドアイテム情報
みんなの通販市場
無料のオファーでコツコツ稼ぐ方法
無料オファーのアフィリエイトで稼げるASP
ホーム
Hsc
人気ブログランキングへ
その他
Share by: