蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「大喝采」



パトリス・ルコントという映画監督は、「髪結いの亭主」「仕立て屋の恋」などの作品から、「恋愛映画を撮る名手」と思われているのではないだろうか。
確かにそれらの作品は、愛というものについて考察し、監督の解釈を主人公達に委ねていたと思う。
それぞれの究極の愛。
私はどちらの作品もお気に入りで、ルコント監督の描く愛の世界が好きなのだ。
「橋の上の娘」も、ルコントの考える究極の愛がよく描かれていて、大好きな作品だ。

ではルコントは恋愛映画だけかというと、さにあらず。
彼のコメディ映画は、恋愛映画とまた違う趣で、とびきり上質の作品である。
「タンゴ」しかり、「大喝采」しかり。
皮肉が効いているという点では「リディキュール」も面白かった。
「リディキュール」という映画の中で連呼されていた「エスプリ」が満載だった。

今回見た「大喝采」は、ただストーリーが面白いだけでなく、時にほろっとさせ、最後にはじんわりと心が温かくなる。

ルコント作品には欠かせない名優ジャン・ロシュフォールをはじめ、フィリップ・ノワレやジャン=ピエール・マリエルらの取っておきの演技が心を揺さぶる。

<ストーリー>
脇役専門の売れない役者エディと舞台復帰を狙う元役者のヴィクトールは、舞台巡業の仕事がまわってきた老役者から、その仕事を奪ってしまう。
その舞台とは、カルラという女優が主演の「スクビドゥー」という喜劇だった。
エディたちと友人の、コックスという元役者も引き入れ、老役者3人は舞台巡業へ。このコックス、孫想いで優しいのだが、時としてとても頑固になる。
コックスが出演料の安さを怒り、巡業主と出演料の再交渉をするというトラブルに見舞われながら、前途多難の巡業が始まった。
舞台の興行師シャピロンは、借金に追われ、この舞台をダメにして保険金を受け取ろうとしていた。
主演女優のカルラも巻き込んでの大騒動が巻き起こる。
さて、彼らは無事に舞台を務められるのだろうか。

コックス役のジャン=ピエール・マリエルがとてもいい味を出している。他の二人も、もちろん深い演技なのだが、私はコックスのキャラがとても気に入った。
映画を見ながらプッと吹きだしたり、クスッと笑ったり、ホロッと涙がこぼれたり、ジ~ンと心に染みたり、役者たちと同様に私もいろいろと忙しくしながら、最後はホノボノとした気持ちで映画を見終わることが出来た。
ルコント万歳!




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