蘇芳色(SUOUIRO)~耽美な時間~

「高畠華宵展」

ALLANという雑誌の(もうその頃はLUNAに衣替えをしていたかもしれないが)表紙ではじめて見た高畠華宵の絵。
「馬賊の唄」という作品だった。
白馬に寄り添う美少年の凛々しい表情と、意志の強さが感じられる瞳。
大人になるにはまだ早い少年に漂う、ある種の色香。
絵画作品の美しい人を純粋に愛でるという方法に、目覚めさせられた一枚の絵だった。
それ以来、華宵の描く人物達の虜になり、弥生美術館に展示されている華宵の作品を見たいがために、東京まで足を伸ばしたこともあった。
二十年近く前に、京都の思文閣美術館に華宵の絵が来た時も、心弾ませて見に行った記憶がある。
当時はまだ愛媛に「高畠華宵大正ロマン館」がオープンしていなかった。
今回、美術館「えき」KYOTOで開催された「高畠華宵展」は、創立20周年をむかえた東京の弥生美術館の協力によって実現したらしい。
挿絵画家の華宵の展覧会らしいとでもいうべきか、原画よりも印刷されたポスターや雑誌が数多く展示されていた。
展示作品の最後には、竹久夢二、蕗谷虹児、加藤まさをの作品も各十点ほど展示してある。
それぞれの作品を見比べて見たのだが、やはり私は華宵の描く人物に、どうしようもなく魅力を感じる。
思文閣美術館で見たときも、今回も、一番印象に残った作品は「情炎」
八百屋お七の話を題材に選んだ作品で、髪を振り乱したお七が火の見やぐらに登っていく瞬間をとらえている。
雪の舞う中、必死の形相ではしごにしがみついているお七の姿を、私は羨望の眼差しで見つめる。
自分の気持ちに逆らうことなく、恋に殉じたお七が、途方もなく魅力的なのだ。
その理由の一つは、華宵が恋に狂うお七に、憂いというスパイスを効かせたからではないだろうか。
激しさと共に、憂いも含んだお七の表情は、私の中にお七への共感を感じさせる。
「情炎」のほかに気に入って絵葉書を買ってきた作品は、「人魚」「願ひ」「サロメ」「ダンス」「馬賊の唄」
どれも華宵の描く耽美の世界を、余すところなく表現している秀作ばかりなのだ。

2004年4月1日~21日 美術館「えき」KYOTO



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