夢の後先

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コウ編


梅干が食べたくて、なんだかあれも食べたい! これも食べたい! でもあれ食べたくない。なんだか体がだるい。夏の疲れが出たか? いや、これは妊娠だ!
正直、夫の実家とは普段あまり交流がなかっただけに妊娠初期の体で義実家に何日もいるのはなかなかきつい。でも義父が倒れて参っているお義母さんを一人にはできなかった。

3週間夫の実家に私とユウだけでお世話になって、最後の日、病院ICUにはいって義父を見舞った。

一時、落ち着いた様子だったので、私たちは普段の生活に戻った。しかし、緊張は取れなかった。四ヶ月に入るころ、再び新幹線を使って3時間、私とユウとで義父を見舞った。
その頃には、ユウのときに比べおなかが張りやすく、断乳を医師に勧められていた。ちょうどいいと私の実家で、(マンションだとうるさいけれど私の実家は田舎の一軒家なのであまり近所迷惑にならないと思って)断乳を決行した。絆創膏をはると、不思議とユウはおとなしくおっぱいをあきらめた。

年末、義父は亡くなった。結局一度も意識を取り戻さず、二人目を妊娠したことを伝えることはできなかった。
通夜、葬儀と慌しく、寒さの厳しい年末だった。
義実家が寒かったためか(暖房がエアコンと電気ストーブしかなく、効きもあまりよくなかった)、緊張の糸が解けたためか、年が明けると私は腹痛に見舞われた。腰も痛い。ずんずんとくる痛みに不安を覚え、結局私の実家へと帰ることにした。
このときは、病院にいかず、実家でおとなしくしていたら収まったので、やはり寒かったのだろう。

すこし落ち着いたかのように思われたが、年が明けてから、私はひどくストレスをためていて、あまりにひどかったので、義父の49日が過ぎるとそのまま当時九州にいた父母の元へ向かった。一週間くらい甘えたのだが、結局家に帰るとストレスはひどくなった。この頃には、完全に過食だった。

3月になると、体重増加以外は問題なく来ていたのに、胎児が小さいし、下がってきていると安静を指導された。
34週時点で1800グラム。確かに小さかった。
そして、その頃は体のバランスが悪く頭囲が、標準よりも4,5週分小さい。
体のサイズも2,3週分小さく、足の長さだけが標準サイズだった。
その後なかなか体重が増えず、頭囲もひどいときには6週分も小さいといわれかなり落ち込む。
37週と4日、今までお世話になっていた病院(ユウのときにお世話になった病院)の医師に2000グラムあるかないかで、いざというときに対応しきれるか分からないと転院を進められた。

個人病院で子連れ入院をする予定だった私はかなり焦った。
それに、転院しなくてはならないという事実が重かった。

翌日、転院した病院で、周産期医療に力を入れている医師が診察してくれたとき、「小さい以外は問題なさそうだねぇ。内臓も、問題なさそうだし……心臓も元気に……う~ん、ちょっと右が大きいかなぁ。(ボソッ)……まぁ、産んでみないと(何かあるか)分からないね」
そう私に告げた。

不安で毎日押しつぶされそうだった。あまりの私の様子に出産したら繰る予定だった母がそろそろ生まれるだろうというころにやってきてくれた。(感謝)
がんばっておなかの中で大きくなろうね。という言葉通り、コウは予定日近くまでおなかの中にいた。

39週5日。そろそろいいんじゃない、今日くらいがいいよという私の言葉に決心したのか、コウはやってきた。

夜十時、本当にごくごくかすかな痛み。
やっぱり今日生まれるのよ。うん、ママの言うことよく聞くいい子だわ。
10時40分ごろ、勘違いだと恥ずかしいなぁ、と思いつつ病院に電話して、一人目を七時間で産んでいるので不安だからそちらに行きたいと電話する。
タクシーに乗った頃ようやく少しずつはっきりとした痛みになり、たぶんこのまま陣痛になるだろうと確信。
11時15分ごろ入院。
しかし、待てども、陣痛が激しくならない。
12時になっても7分間隔の陣痛が少しも狭まらない。
もしかしたら時間がかかるのかも??(実は大して痛くない)
まだかな、まだかな。
かなり痛みに強い私はようやく2時ぐらいに3分間隔になり、看護婦さんを呼ぶことに。
40分ごろ、看護婦さんにやばいかもと伝えると、今まで寝ていたベッドが見る見るうちに分娩台へと変身する。
かなり慌てて足にも紙?を巻いて、準備オッケイ。

その頃にはもういきみたくていきみたくて仕方がなくなる。
「まだ、だめ」といわれるんだけど、こっちも出ようと出ようとしてるものを引っ込めることはできない。
「ナースコール押せる?」と聞かれ、痛みにこらえながら押すと一生懸命どうやらコウの頭を抑えてる助産師さんが「先生まだ? もうでちゃう!!」と叫ぶ。
しかし、その助産師さんの健闘むなしく(?)3時ぴったりに先生の来ないままつるんとコウを出産。

2326グラム。
小さくて、骨ばった赤ちゃんに「ごめんね」と思わずつぶやいた。

所要時間5時間。うち確かに陣痛だったのは4時間くらい。
私、かなりの安産体質です。

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