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2019.06.30
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カテゴリ: キン肉マン



このヒカルドをという超人は,悪行超人の両親から生まれたのだが色々な事情から正義超人のもとで育てられる。しかし,悪行超人の血を抑えられず,成長して悪行超人になるのだ。
このヒカルドの何が悲しいかと言えば,周囲の言われなき差別である。育ての親かつ師匠のキャラを筆頭に,ヒカルドに悪行超人の血が流れているとわかると,皆が徹底的に迫害する方に回る。
そのたびに,ヒカルドは繰り返し,「俺は正義超人だ!」と何度も叫ぶのだが,これがひどく悲しい。


(キン肉マン2世18巻,70頁より)

ブロッケンJrがヘイトスピーチとしか言えないような発言をしている画像を引用したが,ヒカルド戦ではこういった描写が延々と続く。
そして,画像を見るとヒカルドの後ろにはネプチューンマン,アシュラマン,キン肉マンスーパーフェニックス等,改心した超人たちが描かれている。まるでネプチューンマンやアシュラマンが悪行超人であると言わんばかりだ。
高校生時代の僕は,てっきり主人公の万太郎だけでも,「生まれなんか関係ない。正義の心があれば正義超人さ!」と言ってやり,ブロッケンJrたちが「偏見を持った俺たちが間違っていた…」となるのだと思ったが,そういうことは全くなかった。あまりにもヒカルドがかわいそうな展開に,高校生時代の僕は,混乱したものだ。

こういう悪行超人の血をひく者への扱いはヒカルドだけにとどまらない。


どういうものかといえば,こうだ。アシュラマンは結婚し,妻との間にシバという息子をもうけた。
シバはアシュラマンに似てか,格闘技の才能もあったようであるが,どうも血を好む残虐な性格を抑え,小動物や虫を殺したりして快楽を得ていた。これをとがめられ,シバは母を殺してしまう。そのため,アシュラマンはやむなく制裁としてシバを殺害するのだ。
これをきっかけに,アシュラマンは正義超人をやめ,悪魔超人に戻るのだ。


(キン肉マン2世,28巻115頁)

なにゆえ,アシュラマンが「妻が息子に殺され」,「息子を自らの手で殺す」などというほどの苦しみを味あわなきゃならんのか。どちらか1つだけでも耐えられないよ。しかも,息子が母を殺した原因は「悪魔超人であるアシュラマンの血を引いていたから」と示唆されている。
もちろん,アシュラマンを万太郎たちと対戦させるため,悪魔超人にしなきゃらならないという事情は理解できる。
だが,ほかのやり方があっただろう。たとえば,「グレて悪魔超人となった息子が,試合中の事故で正義超人に殺されてしまう。グレていたとは言え息子への愛情から激怒して悪魔超人に戻る」とか「魔界の王子であるアシュラマンが正義超人となったことで,魔界の政情が不安定となった。やむなくアシュラマンは国民のため悪魔超人に戻る」とかでいいではないか。

最後に,タッグ編のラスボスであるサンダーを見ていく。
彼もまた,悲惨な出自をしており,父である時間超人がサンダーの母を犯したことによって生まれている。幼いころのサンダーは泣きながら祖母に対しこういうのだ。「ボクは汚らわしい奴の血を半分受け継いで生まれてきたの?」と。


(キン肉マン2世究極のタッグ編28巻76頁)

なんとも救いがない。「犯罪者の息子は犯罪者だ」と言わんばかりだ。


キン肉マンという作品の最大の魅力は,キン肉マンと仲間たちの友情パワーであった。そしてキン肉マンの仲間たちはもと残虐超人だったラーメンマンだったり,悪魔超人だったバッファローマンがいて,出自はさほど拘っていなかった。

こういったキン肉マン2世における悪行超人の血統については特にヒカルドについては活発な議論がされており,オレ流さんのHPでは「旧作では少年漫画だから性善説だったが,青年漫画だから性悪説にシフトしたのでは?」という説も出されていた。
一応,悪行超人から正義超人入りしたキャラとして,チェックメイトやハンゾウがいるので,悪行超人からの更生が絶対できないわけではない。よって,性悪説へのシフトにも,わずかながら反証がある。
しかし,親が悪行超人だと基本的にアウトである。スニゲーターの息子であるMAXマンとか,キン骨マンの息子であるボーンコールドなんかも別に正義超人になったわけでもないから,やはり血統が激しく重視されている。

逆を言えば,悪の血統を目立たせることで,正義の血統が輝くという面もありうる。

もしかすると,初代の連載時は若かったゆでたまご先生も人の親となり,色々と思うところがあったのかもしれない。
この辺は今やっているキン肉マン連載を見ながら,今後も考えていきたい。



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最終更新日  2023.07.03 11:07:17
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