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2021.09.09
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カテゴリ: 読書
僕はかれこれ20年近くはアーサー王伝説のファンをやっている。推しメンは時期によって違うものの,ここ10年くらいはガウェイン卿である。
そんなガウェインを主役にした海外小説『五月の鷹』がクラウドファンディングで復活させるという話がTwitterでまわってきたのが2020年10月。即座に出資してみたところ,手元に来たのが2021年9月。約1年越しで感慨深い。


五月の鷹 [ アン・ローレンス ]
(どうせまた絶版だろうか,即座にポチって欲しい)

内容の前にちょっとだけガウェインについて語りたい。
マロリーの『アーサー王の死』なんかを読んでいると,これはアーサー王や円卓の騎士の物語を集めてまとめたものになるところ,冒険をすすめる主人公格の騎士がところどころ入れ替わる。
そんななか,ガウェインが主役級の活躍をする物語はほぼないと言っていい。冒険をすれば,たいてい失敗するのだ。
ガウェインを主役とした有名な物語,つまり「ガウェイン卿と緑の騎士」だの「ガウェイン卿の結婚」だのは『アーサー王の死』には収録されていないのだ。


さて,肝心の『五月の鷹』の内容であるけれど,これは「ガウェイン卿の結婚」を原典としたリライトになる。
濡れ衣を着せられたガウェインが,自分の潔白を証明する神明裁判の課題として, 「全ての女性が望んでいるものは何か?」 という謎を1年かけて探す,というのである。もとの「ガウェイン卿の結婚」だと冤罪云々という話はないので,この点がアレンジと言えるだろか。
また,「ガウェイン卿の結婚」をそのままやるのではなくて,ちょっと魔女っぽいガウェインの妹やら,マロリー版ではさして目立っていなかった女性キャラに焦点が当てられているように思う。

見どころとしては,「全ての女性が望むもの」の答えを求めてガウェインが放浪していた1年間,ガウェインは何人もの女性と交流していくところなのかな。
ガウェインは名前を隠していても,とにかくモテる。行く先々でそんな雰囲気になるのだが,別にそれは騎士として優れた腕前を持っているというのではなく,礼儀正しさやマナーのよさであったりするあたり,人柄が出てるように思う。
結末としても,「ガウェイン卿の結婚」とだいたい同じ流れである。老婆に謎の答えを教えてもらったガウェインは見事に潔白を証明し,それから美女と結婚までするというハッピーエンドである。

色々と気になることもあるのだが,まず思い浮かぶのは,「ランスロットはどこにいたのだ?」という話である。
アーサー王の円卓において,第1の騎士はランスロットである。そんな彼が全く登場しない。トリスタンも,ラモラックも出てこない。
活躍が許されていたのは,ガウェインの弟たち,つまりガヘリス,アグラヴエイン,ギャレスの3人と,従兄弟という設定になっているユーウェイン,パーシヴァルと,その他血縁以外ではケイ,ベティヴィアくらいであろうか。
このあたりは,あくまで槍試合だの戦争をテーマに据えていないのだから,あえて円卓の騎士たちを出す必要はなかった,ということなのかもしれない。

雪原で血を吐いて死んでいるカラス 」を見て,「 雪のように白い肌,血のように赤いくちびる,カラスの羽のような黒髪の美女 」を想像し,結末でまさにそんな容姿の美女と結婚するのだけれど,はたして「雪原で死んでいるカラス」から美女を想像するというのは,日本人には馴染みのない感覚だ。
同様に,「雪原で死んでいるカラス」から美女を連想するというのは童話『白雪姫』でも見られるし,円卓の騎士で見ればパーシヴァルなんかも同じことをしている。
それでも,やっぱり妙な感じはするなぁ。
あと,どうしてもガウェインの結婚相手については,どうしても唐突感があるのよね。ポッと出てきた美女が登場するのはどうだろう,と思う。


ガウェインが槍試合だの戦争で腕前を発揮すると言うことはない。バトルシーンがないので,そこは微妙だろう。よく語られている,「 午前中は力が3倍になる 」という特異体質が語られるわけでもない。
ただ,女性向けならずいぶん違うかもしれない。

つらつら考えてみるに,ガウェインの冒険で著名な2つ,つまり「緑の騎士」も「ガウェイン卿の結婚」も,どちらもガウェインは主人公としてその武勇で敵を打ち負かしているわけではない。
「緑の騎士」では首斬りゲームに参加するという勇気や,相手との約束を守る誠実さ,それでいて命を惜しむ人間的な弱さを見せたりもする。
また,「ガウェイン卿の結婚」ではアーサー王のため老婆と結婚するという自己犠牲と忠誠心,そして女性への献身を見せてくれる。
どうやら,ガウェインという人物は,その武勇よりもその精神性にこそ卓越性があるようだ。ふと,僕は『五月の鷹』を読んでいて,そう感じた。
逆に言えば,平然と主の妻と素知らぬ顔で不貞したり,不貞現場を押さえられたからと逆ギレして円卓を崩壊さているような奴は,どれだけ実力があってもクズなんですよ。どこの誰とは言わんが・・・。


五月の鷹 [ アン・ローレンス ]





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最終更新日  2021.09.09 16:23:35
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