もう一つの春の色



 「菜畠に花見顔なる雀哉」芭蕉。この句は、春ののどかな田園風景を視覚・聴覚・嗅覚の鋭い三感で詠んでいる。四季を色で表現すると「青春」、「朱夏」、「白秋」、「玄冬」となる。いずれも中国から伝えられた言葉。
 「青春」の青い色は春。野山に茂る樹木の緑色。また、青は東を意味し、春を指している。「朱夏」の赤は火の色で南を表す。火は熱い太陽のこと。
 「白秋」の白は二十四節気の白露に通じ、初秋のイメージを感じさせてくれる。「玄冬」の玄は黒いという意味。玄米は黒い米。黒は北を表す。
 北から吹いてくる風が、農作物の生育を妨げる黒い季節ということから、農民には“玄冬”という言葉が使われている。

 方位を現す四つの言葉は、大相撲の土俵に生きている。青房は東、白房は西方の力士が仕切る所。

 さて、日本の春に時々訪れるもう一つの色、黄砂に伴う黄色。大きさは直径が0.1ミリ以下で砂というよりも埃(ほこり)に近い。発生源は主にモンゴルのゴビ砂漠等からの飛砂が堆積(たいせき)した、大陸北部の黄河流域黄土地帯。
 乾燥した地に低気圧が発達し、強風で舞い上げられた砂塵(さじん)が偏西風にのってはるばる日本に飛来し、空一面が、乳白色や黄褐色に染まる現象のこと。

 黄砂は洗濯物や車のフロントガラス、ビニールハウスを汚したり、肌荒れの原因など招かざる春の使者のイメージがある。
 ところが、昨年は十一月十二日に西日本各地で観測され、大きな話題となった。
 最近は、黄砂のアルカリ性が酸性雨の被害を和らげる効果が観測され、農林漁業にとって、良い面も報告されている。


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