「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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時代小説2
・半七捕物帳
半七は江戸末期を生きた岡っ匹。若い頃ぐれて家を飛び出し、最終的に自分の職にもなる岡っ匹吉五郎の家へと転がり込む。娘と親分の地位を譲られるに至った理由をはっきり語られることはなかったが、どうやら手柄を立てたことが何度もあり信頼されていたのではないかと思わせる記述がある。常磐津の師匠をやっている妹がいて、その妹からも事件のネタを教えられる事がある。
ストーリー上の半七は中年だろうか、貫禄の付いた親分といった感じ。
「半七老人」の語りを「私」が書きとめ、物語化すると言うパターンで話が進んで行く。
捕物帳の元祖とも言えるこの作品。連作短編形式で長編は1つもありません。最終巻では主人公の半七の義父であり捕物の親分でもある吉五郎が主人公の「白蝶怪」が収録されています。
岡本綺堂は捕物帳という物語を始めるにあたって「シャーロック・ホームズ」を手本にしたと言われるように、推理小説としての雰囲気も色濃く出ています。もちろん、江戸末期を舞台にしているので、科学捜査の類は一切出来ないというハンデを負ってはいますけれど…。
全69編、文庫にして6冊から7冊程で、もっと読んでみたかった私としてはちょっと物足りない気もしますが(笑)読み応えのある粒揃いの作品だと思っています。
評価:☆☆☆☆☆ ☆☆☆
◇横溝正史
・人形佐七捕物帳
金田一耕介という強烈なキャラクターで多くの人が知っている作家の、江戸時代をテーマにした捕物帳。
時は将軍家斉の治める江戸の爛熟期に位置し、華やかさ、派手さを競う一方で犯罪も多く、その時代に生きた、という設定の岡っ匹佐七を描いたもの。
人形と名の付く所以はその顔立ちの良さで、もてるからか浮名が絶えず親から嘆かれる始末…という話から入り、2人の弟子と花魁上がりの女房との4人が中心人物となっていく。
華々しさを表に出しているせいか、色恋沙汰の話や艶ごとめいた話の多い作品です(笑)
私自身は結構好きな作品なのですが、残念なことに作者自身はこの作品をあまり評価していなかったそうです。その理由というのが、まず、この作品が書かれた背景にあります。
丁度、戦時中でした。
海外の匂いをさせるものは一切禁止の世界です。音楽で言うと「ドレミ」と言う当たり前の音の呼び名すら禁止されていた時代、洋風の雰囲気を持つ話など書ける筈も無く。そう言った小説家の一部が、お咎めの少ない時代劇小説に移行していったと言います。
横溝正史もその1人でした。実際には上にもあるように、艶めいた描写が多く再三発禁処分を受けてしまったそうですが…。
そしてもう1つには、横溝自身が江戸時代に詳しくなかった、という事が上げられるそうです。
それはそれとしても、十分面白い作品なのですけれどね…(汗)時代考証好きな方にしてみれば、歯がゆい部分もあるのでしょうけれど(汗)
私は個人的にこの本はお勧めだと思っています。
今でも時々読み返しますし。
全て短編ですが、春陽文庫で14巻出ており、厚みのある読み応えのある本なので、機会があれば読んでみてください。面白いですよ。
評価:☆☆☆☆☆ ☆☆☆
◇伊藤桂一
・風車の浜吉捕物綴
主人公の浜吉は以前江戸の岡っ匹だったが、ただ一度魔が差して犯罪者の目こぼしをし、金を受け取ってしまったがために十手を返し江戸を追われた。その後各地を転々とし、江戸へと戻ると風車売りとなって細々と生活し始める。
捕物の世界へは関わらないつもりだったのだが、昔からの友人や浜吉の話を聞いて育った友人の子分、そして同心や与力たちに引きずり出される形で次第次第に捕物の中へと舞い戻っていく。
ただ、本業はあくまで風車売りという立場は崩さず、捕物の手伝いはしても十手を握ろうとはしない。
ちょっとマイナーかもしれませんが、新潮文庫から出ている捕物帳系の小説です。
「病みたる秘剣」「隠し金の絵図」「月夜駕篭」の3冊が出ています。
捕物とはいえ、浜吉は脇役のような主人公になっています。お話の中身は江戸に戻ってから新たに出来た恋人とつれ子との生活、風車を作り売っているところ。その合間合間に血生臭い話が混じる、といった形で全体的に柔らかな雰囲気が漂っています。
少々観念的なお話が多いのですが、「天網恢恢租にして洩らさず」をモットーとしつましく生きている浜吉のお話はしみじみと読める良いお話だと思います。
評価:☆☆☆☆☆ ☆☆
◇多岐川恭
・ゆっくり雨太郎捕物控
同心であるのにも関わらず、身体が弱いというのを理由にほとんど休職状態の雨太郎は、別名「ゆっくりの旦那」とも言われている。普段は自宅と恋人のるりの住いとを行ったりきたりし、たまーに上役へ挨拶へ行くといったのんびりとした生活を送っている。
頭の切れは悪くないのだが精力的に働こうと言う気はないようで、滅多に自分から動き出そうとはしない。
語られない過去に妻子がいたようだが両方共亡くしている。そのせいか、子供嫌いを公言してはばからない。
のんびりした語り口の江戸の捕物帳です。捕物帳というのは、簡単に言えば犯行調書のようなもので御役人の書き記したものを指すのだそうですが、ここで捕物控と呼び名が違うのは、事件が山場を迎えたあたりでぷつりといったん文章を切り、そして解決後のエピローグに加え雨太郎が自分の手帳に事件のあらましを記す、という斬新な書き方をしているせいです。捕物話では珍しく犯人たちがどういう仕置を受けたかが簡単に記されており、ひとつひとつ短い話ながら想像力が膨らみ楽しめます。
評価:☆☆☆☆☆ ☆☆☆
◇都筑道夫
・なめくじ長屋捕物さわぎ
捕物帳系シリーズでも変り種と言えばこれ。レギュラーの岡っ匹はあくまで脇役、主役は「なめくじ長屋」の面々と言った具合。
なめくじ長屋と言うのは、江戸時代の差別階級である非人…普通の職業に付くことも、ある程度以上の服装をすることも許されない人々の中で、大道芸人の面々が住み着く長屋の名称。雨が降っている間は商売にならないので長屋の中でのたくっている所なら付いたあだ名だそう。
その中での主役は2人。素性の判らない、今では砂絵を書いて暮らしている浪人のセンセー、そして大道芸でも技術を要する軽業系の見世物をやっているマメゾー。その他、アラクマ(熊の格好で門付けをもらう)、カッパ(カッパの格好で以下同文)、テンノー(天狗面を被って行者風の格好で自分で刷った小さな御札を撒いてお金を恵んでもらう)、ユータ(前に倒すことの出来るハリボテの墓に「商売繁盛」と書いて、自分は幽霊の格好をして人に会うと墓を倒しておどかす?笑わせてお金を貰う)、オヤマ(1人芝居の女形で以下同文)…大体この面々がセンセーの頭脳に動かされて事件を解決し、裏があった場合はその裏まで読み取って何がしかのお金を貰っている…そんなお話です。
登場人物の「こちら側」が、岡っ匹も含めて裏側に生きている人間であり、表側を生きる人々の暮らしを少し変わった視点から見ることが出来なかなか面白いです。
ストーリーそのものは非常に論理的。やや「ブラウン神父もの」に見られるような、逆説的な話や、論理的ではあるのですが煙に撒くようなセンセーの口説に読んでいる方まで騙されてしまいそうになります(笑)
少々大人向けなのですが、推理モノが好きならば読み応えはあるかと。
評価:☆☆☆☆☆ ☆☆☆
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