俺とユーロとC.D.と・・・(何

血ニ染マッタアノ日




全てはこの一言から始まった。


誰もが予想だにしなかった社会情勢の崩れ、大企業の裏取引の増加、
武装組織の政治進出等、世はもはや乱れに乱れていた。
この時期、選挙と言えば組織ぐるみの密かな話し合いが続き、
その結果等は完全に組織系にコントロールされていた。


仕組まれた政治と社会、進む一方の治安の悪化、
止まらない武装組織の反抗、度重なるストライキ・・・


残された財産もついには底を突き、金回りは尚も悪くなりながらも、
政府と裏組織間での取引は更に行われていた。
その結果として国民は餓死を続け、まともに食べ物を食べる事さえも
ままならなかった。
減少傾向にある日本国民、夢のような生活を続ける政府、
偽りの平和が続く中でも、その内部事情にはやはり酷いモノがあった。

2085年6月18日、悪夢は起こる。
餓死を続ける日本国民は、ついに反抗してストライキを起こし、
団結して政府と、その裏にある武装組織を倒すという決意を新たに
国会議事堂へと人の波が押し寄せた。
警察・警備隊の壁をいとも簡単に押し倒し、人民の波は尚も
その勢いを留まる事を知らず、議事堂の内部へと向かって行く。

――同日、午前8時頃・・・――

『・・・さて、先程お伝えした通り、本議事堂に我々の政治事情に
反対する愚民共が一斉に襲撃するという訳ですが、これについて意見は・・。』
『・・・では、私めが。』
『む、組織側の者ですか。・・・では、意見を。』
『この場に置いて尚も行動を起こそうとする事自体が愚民が考える
一種の団体行動です。所詮、国民は国民。
財産を失った金にしか目の無い者達に、正義である我々が敗北する
可能性は、ほぼゼロと言って過言では無いでしょう。』
『・・では、この意見に対しての反論は。』
『・・・。』

反論は出る術も無かった。全てがコントロールされたこの政治に
誰か文句を付け様ものなら即刻で国外退去か、この裕福な生活は
自分の身体と共に消え去ってしまうからだ。
しかし、この静寂な会議場の中で、唯一反論に手を挙げた者がいた。

『・・・はい、では私が。』
『・・せ、政府側の者ですか。では、反論を。
但しあまりにこの政治に対する付け文句であろうものなら、貴方の
生活から根本的に変化するでしょう。』
『元来、政治とは人を助け、そして国民の代表となりその大台へと
立つものです。それなのに、貴方達は何故、そのような指示を
一切出さず、ただ裏にある組織との関係を築き上げては自らの
財産をただ重視するのですか?』
『・・・そこまでで宜しい。そなたの首を斬れ。
この政府とはそれ程までに国民に期待されて出来た訳では無いのだよ。
分かったかね・・・?愚民め。』

反論した若者は、すぐさま処刑台へと引っ張られた。
将来有望とも言われた勉強家であり、自らにおいてもその妥協を
する事は無く、真っ向から立ち向かえる勇敢な男であった。
しかしそんな彼も国力に反抗してしまった事により罪を着せられ・・・

――同日、午前9時25分・・・――

『・・・我が国の政治に反する者は、その首を断ち切るのみ!
いかなる者であれ、この国の政治は偉大であり、武力と財産が支配する
真の王国を作る土台なり!』
『・・な、何を言うかッ・・・!』
『・・む?愚かな若者よ?まだ何か言おうというのかね?』
『当たり前だっ!こんな国を作る為に、僕は生まれ、国に尽くそうと
決心した訳じゃない・・・!政治は国を守る為にあり、そして
自らの存在性と人権を尊重して、全ての国民に平等な世界を作って欲しいと
願うから、政治は存在するモノなんだ・・・!』
『ハッ!今になって何を言う!それもまた、政治に対する反論か?
政治とは武力によりその土台を作られ、この国を外部の敵の侵入と
愚民との差別をする為に生まれた、強い者のみが生き残れる場所なのだ!』
『違うッ!・・・どんな人だって、汗をして精一杯頑張って、そして
報われる社会が作られるように、政治は資金を投入し、法律を作る・・・!
いかなる時でも、常に国民と向き合い、真正面から国を作っていくのが
本当の政治という物じゃないのか・・・!?』
『・・お話は御終いだ!もう貴様の理想郷の話なぞ聞き飽きたわ!
そこの野郎共!ナイフとギロチンを持って来い!』
『・・・そ、そこまでしても、僕は・・・!』
『ククク・・貴様には、特別コースでお持て成しだ・・・。』

そう言って笑う日本国の首相。
黒く染まる雲。度重なる雷雲が、尚も強い雷を生み出している。
降り出した雨は、まるで自分の死を迎え入れるかのような、痛くて強い
雨だった。

『(・・・ぼ、僕は本当に、ここで死んでしまうのか・・・)』
『惜しい人材だった。・・・だが、我々に反抗する者には、死を選ぶ以外に道は無いッ!』
『政府は・・・そこまでして、僕の何が欲しいと言うんだ・・・?』
『ズバリ、その脳だ。より良い知能を持つ者の脳を我に取り入れ、新たなる
王国の王となる為の土台を入れようと思っていたのだが・・・』
『・・・そ、それじゃあ、僕の脳は、何の為に・・・!?』
『・・勿論、最初から我々によって仕組まれた、データ収集の為の脳、だ。』
『そ、そんな・・・!』

僕は全てを知ってしまった。
生まれた頃に、神様から授かったと思われていた僕の脳は
政府により引き取られ、データ収集用の脳となっていたのだ。
しかもこのデータを抜き出す事により、首相の脳にデータはインプットされ
更なる脳の進化を見る事が出来る、という新時代の恐ろしい実態を僕は見た・・・。

『・・・だからこそ、君は首から断ち切る事にしよう。
  この現代は、知が全てを支配する時代なのだよ・・・!』
『・・だ、だからって、僕は・・・がハぁ・・・!』

『死ねェェェェェェェェェッ!』

・・・全てが、終わった。
僕の人生は、何の為にあったんだろう・・・?
あそこまで頑張って、勉強して、より良い国を作ろうと思っていた
僕の脳が、そんな目的の為に存在していただなんて・・・!

『赤い血だ・・・これは、愚民が流した闇の血液だ!
皆の者・・・この血を全て世から失わせ、我々のみが生き残れる
「聖なる世界」を作り上げるのだ・・・!』

その後、国民の波は押し寄せた。
しかし政府と組織による卑怯極まりない武力行使は続き、
多くの者がその銃弾と兵器によってその命を失った・・・。

『我々の勝ちですなぁ・・・首相さんよォ。
このまま行けば、夢の王国の実現も程遠く無いんじゃないっすカぁ?』
『・・・まぁ、そうと言えばそうだな。聖なる者のみが
生き残り、闇は消え去る・・・これが世の定法だ。
いかなる人間であれ、我に反抗した者は全て「闇の者」なのだよ・・・』
『た、大変ですっ!
議事堂の外で、怪物が、怪物が・・・!』
『何だその嘘は!どうせならもっと凝ったジョークを作るんだな!』
『実話ですよっ!信じ切れないというのなら、どうぞお外へ・・・!』
『・・・仕方ない、見に行ってやるか。』

半信半疑で議事堂を飛び出した首相。
しかしそこにいたのは、紛れも無く竜の形をした青き怪物だった。
竜だけでなく、後ろには多量の亡霊を連れ、その一つ一つが兵器として
機動するようになっていた。

『・・・な、何だ、アレは・・・!?』
『み、見たこともねぇ大物だな・・・コイツぁ、やりがいがありそうだ』
『・・・なな、何か喋ってますよ!』
『・・・む?どれどれ・・・』

――我ニ逆ラウ者ニハ、死アルノミ、
全テノ生命ハ、我ニヒレ伏シ、ソノ命ヲ我ニ捧ゲルベキ。
愚カナ闇ノ者ヨ、武器ヲ捨テ、投降スルガイイ――

『ククク・・・それが神である私に対する言葉か?
甘いわ!殺してしまえぇっ!』

そう言って一斉に兵器等で射撃を繰り返す政府軍。
しかし、攻撃は全て跳ね返され、議事堂への被害となっていく。

『・・・な、何があったのだ!?
ア、アイツは、本物の、怪物だと言うのか・・・!?』

――全テハ無ニ始マリ無ニ終ワル。
ソレガ世界ノ掟デアリ、宇宙ノ掟デアル。
コレヲ守ラヌ愚カ者ニ、生キ抜ク道ナド無イ・・・――

『や・・・止めろ・・・!来るなぁ・・・!』



――全テハ、無ニ帰ルベキダ・・・――



形容し難い程の強大な衝撃派が、世界に響いた。
殆どの国々はその衝撃により崩壊し、残った人民の殆どが
死に至ったという・・・。
残った国民は政府の崩壊する様を見て喜び、新たな世界を作ろうと
決心する者もいたと言う。

『あ、有難う御座います、竜神様っ!』
『貴方様は我々の希望の光・・・!闇の者など、やはりこの世にハ・・・ッ!?』

再び衝撃波が世界を襲った。
この第二波には霊界にも響く勢いがあり、
多くの亡霊や死霊も、この世界から姿を消した。


――無ニ帰ッタ世界ニ、我ハタダ居タイダケダ。
世ニ希望モナケレバ、絶望モ無ク、
誰モイナイ孤独ナセカイニ、我ハソノ存在ヲ示メシタカッタダケナノダ・・・――



――全テハ、再ビ無ニ帰ル・・・――





一言。暗いですね。えぇ。
何かいつもと作風を変えてみたのですが、何と無く復讐を
目指す少年の話なんですね、これ。
いや、結果として自分の脳以外にも色々あったっていう理由で地球人民
全部ブッ殺しちゃうって話なんですが、
ある意味恐ろしいっすね、でも書いてて妙に楽しかったっす(ぉ
因みに余談ですが、僕は小泉総理が嫌いって訳じゃありません^^;
むしろ同じ誕生日で考える事が一致する事が多々あるので
結構面白かったり・・・

2006年5月7日製作

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