俺とユーロとC.D.と・・・(何

第22話『修学旅行』第1部



人の様々な人間模様が見えてくる、そんな修学旅行。

小学校や中学校の時は純粋に楽しめたけど、

様々な学校からまた人が集まる高校では、まともに友達がいない。


・・・ちょっと心配かな、今年は・・・。


先生が「修学旅行」の用意を・・・と言い始めた頃。
当時の私はまだそんなに用意する気さえもなく、実質あまり
行く気にもなれていなかった。
理由はあまり深くはないのだが、どうしてもこれまでと
比べると見慣れない人が多い、という理由もあるのかもしれない。
元々小学校や中学校の時期では仲良しだった心菜と一緒にいられたからか、
「友が側にいる」という安心感があった。
お陰で私もそんなに惑う事もなく率直に修学旅行そのものを楽しめたのだが、
今回はそうともいかない。
これまでに比べて各々の道を歩み始めた生徒が増えてきたせいか、これまでの
クラスメイトさえマトモにいない、という現状に多少オロオロしているのだ。

「こんな見慣れない人の中で、何かあったりしないかなぁ・・・」

どうしてもそう考えてしまう私。もし他の人とぶつかって何か言われたり
したら、私はどうすればいいんだろう・・・?そう考えるだけで
私の頭の中は「不安」という感情に完全占拠されており、今までに
無いような強大なる見えない恐怖に、私は襲われているような感じになっていた。
あまり考えてもいなかった、見慣れない人達との修学旅行。
まだ名前さえ覚えていない人までいるのに、私はどうやってこの試練を
乗り越えれば良いのかと、ちょっとだけ不安になっていた。

その時、私の肩をポンと叩く音がした。
誰か誰かと、さっきまで下を向いていた私は思わずフッと後ろを向いた。
ひょっとして、下向いて考えてる間にぶつかっちゃったりしたのかな・・・
なんて思いながらも、恐る恐る後ろを向いてみると・・・

『どうしたんだ?そんな暗い顔して・・・』

後ろにいたのは泰斗だった。考えてみれば、私と同じクラスだったんだっけ、
なんてちょっと抜けていた私が阿呆みたいに見えてきた。
思わず自分がおかしくなった私は、思わず笑い出しそうになってしまい
周りの視線が一瞬にして私の方を向いたので、慌ててまた下を向いた。

『・・んでもって、一体どうしたんだよ?』

『・・・ううん、何でもないの。
ただ、ちょっと不安な事が一つだけあって・・・さ。』

『不安な事?普通に話してみなって。
別にどんな事でも、笑ってスルーするよりはマシだろ?』

『う・・・うん。』

さっき思わず一緒に笑って流しそうになってしまった「不安」は
再び形を留め、私の前に戻ってきた。
私はもう少し、もう少しだと自分に言い聞かせ、殻に閉じ篭ろうとする
「不安」を前へと押し出し、正直に泰斗に対して言ってみた。

『実はね、高校って小学や中学とは違う人が沢山いるじゃん?』

『・・・ああ。』

『それでさ、今度の修学旅行で
見慣れない人達と何かあったら尚更困るな、って思って・・・』

『・・んぐらい心配する事は無いさ。
大体そういう問題に関しては、先生あたりが何とかしてくれるだろ?』

『・・・じゃ、じゃあ。
もし先生がいなかった場合って、どうすれば・・・?』

『そんな弱腰でいるなよ?
そういう時は俺とかに言うか、お前自身が悪い場合は素直に謝れば良い話だろ?』

『・・・そうだよね。やっぱり、そうなんだよね。』

『つーかソレ、普通に常識じゃねえか?
何故それを思いつかなかったのか疑問が残るワケだが・・・;;』

ちょっと抜けている私にツッコミまで入れてきた泰斗。
いつもの私みたいな「冴え」が無い事は、私自身でも分かっていた。
自分にメリハリが無く、まるで一つの「形」として留まり続けて
いるような、そんな気分だった。
私は、今此処にいる自分が本当に自分なのかと疑問に思えてきた。

「本当に自分じゃなかったら、今の私は一体誰?
それとも、私自身がどうかしちゃったの・・・?」

私は、自分で自分が不安に思えてきた。
考えているだけで、何が何だか訳が分からなくなった。
自分が自分でない事に対して、見ている自分が疑問に思っている・・・?
考えている自分の頭が混乱してきた為、私は一旦考えないようにした。

『・・・うん、ありがと、泰斗。』

『ああ。・・・ただ、まだ悩ましげな顔してねぇか?
なんかお前のそういう顔を見ているだけで、俺は不安になってくるんだけど・・・』

こういう時って正直に言えばいいのかな、と何故かここまできて
疑問に思っている私。ひょっとして私は・・・とも考えてみたが
その考えが辿り着く間に、一つの結論が脳内から出された。

「・・私はまた、変わってしまったのかもしれない」

この事が、こんな時にまたやってくるなんて・・・と多少自分に焦りを
感じた私。それでも普段の考え方が多少ひねられているだけで、本来の
「私」という形を留められていない、という考え方が自分の前には出てきていた。
お陰で多少ひねった答えを出した「私」がいるだけで「変わった」と
思えてしまう、「変わる事」に対して敏感になっていたのだ。
それだけでも不安になっている今に、正直に言えばどうか迷っている・・・
そんな状況であるのだからこそ、尚更私の頭は困惑の渦へと巻き込まれていった。

『・・・なぁ、どうした?何か言えって。
いつものお前らしくないぞ?そんなに深く考えるだなんて・・・』

『・・・。』

黙り込みっぱなしの私。自分が「変わった」という事実を以前として
否定しようとしているからなのかもしれないが、まるで私の中で
起こり始める「革命」を、私は止めているような気分になった。
私は一体誰で、何がどうなっているのか・・・。
気がつけば、私が私で無いような、そんな感じになっていた。


私で無いような、そんな私。


自分が変わるのが、怖い。


でも私は、変わってしまったのかもしれない。


こんなちょっとした、出来事だけで・・・




たかが修学旅行!されど修学旅行!って感じで書いてました^^;
今回もちょっと短めっすね。一応三部構成の予定ですが、今回は
メインである修学旅行という話題があまり出てきませんでしたねorz
ていうか飛織があまりに深く考えすぎているのだからかもしれないけど・・^^;

2006年6月2日製作

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: