神頼みな毎日

神頼みな毎日

コーヒーと浪漫



商店街の角を曲がり、裏通りにその店はある。


今は夕焼けが店を仄かに赤く染め上げていて、静かな夕暮れが佇んでいた。


喫茶店だった。


それほど広くなく落ち着いた店内は、少しレトロで喫茶店の風格が出ていた。


コーヒーの香りに包まれた店で、今は老人が一人カウンター席に座っていた。


見事な髭をもっていて白髪が目立つ感じのいい老人。ブラックコーヒーを見つめながらゆっくり口に運ぶ。


カウンターの中では、店のマスターがコップを拭いている。この店の中は静かだった。そして浪漫に溢れていた。


ドアの鈴の音が響く。青年が入ってきた。


青年は老人の隣に腰かけると、ブラックコーヒーをたのんだ。マスターはゆっくり頷き、作業にかかる。


青年はポケットからタバコを出して、箱のそこを軽く叩き一本くわえる。


手馴れた手つきでライターで火をつけ、ポケットにしまった。


ふと老人と目が合った。


青年は黙ってもう一度ポケットからタバコの箱を取り出すと、軽く振って一本だし


老人に差し出した。


青年は優しげな微笑をたたえていた。


それを見た老人もフッと口元を緩め、タバコを指で挟み受け取った。


青年はタバコをしまうと、ライターで老人のタバコに火をつけた。


応じる老人。


ライターをしまい二人同時に煙を吐き、そして微笑。


なごやかな雰囲気が店内に訪れた。


マスターは寡黙に、そして微笑みながらそれを見ていた。拭いていたコップを置いて、口を開く。





「お客様、店内は禁煙です」






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