サイレン 0
シーサーの微笑み 0
スク水シーサー 0
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ユージン・カイムが連行してきたゼム・スナイパーのパイロットは、艦長代理が士官学校気分が抜けない新人で、そこそこ美少女な少尉だと解ると、驚いていた。この状況に驚いているのは、エイミア本人もなのだが。彼が、いや彼らが自分たちを殺そうとしていた敵。そんな視線をルナメルのクルーは、捕虜に投げかけていた。ゼム・スナイパーのパイロットは、誰とも視線を合わせなかった。そんな視線を受け止められる人間は、そうはいない。精鋭揃いのゼム・スナイパ―のパイロットは、まだ20歳前後に見える。この年齢で、ゼム・スナイパーに乗れると言うのは、かなり優秀なのだろう。異性としては顔立ちも体つきもエイミアのストライクゾーンだが、捕虜は捕虜。軍司令部に送ることにした。パイロットはずっと気が張っていたが、エイミアが微笑むと、一瞬だけ素に戻ったのか不安が零れた。泣きそうな目になっていたが、泣くのは耐えていた。彼の戦友が載るゼム・コマンドとヒューボットは、トキトウとカイムに撃墜され、生死も解らない。悲しいけどこれ、戦争なのよね。捕虜を乗せたスペースランチと入れ替わりに、ショウマ・ドーキンス大尉の漆黒のゼムと、カタリナ・ヒメネス少尉の深紅の機動コルベットが到着した。ショウマ・ドーキンス大尉は、この艦の正式な艦長だ。「はあ」エイミアはホッと溜息を着いた。重すぎる責任は疲れた。とりあえず【強行偵察】【高機動】【カスタム】【機動コルベット】が揃った。これで、対空防御の弱いルナメルにとって安心できる陣形が出来る。機動コルベットからカタリナ・ヒメネス少尉が、降りてきた。士官学校同期の中でお姉さん的な立場の、カタリナ・ヒメネスは、とても親しみやすい存在だ。「エイミア、おっぱい大きくなった?」「え~少しだけ?ふふ」「ココくんのバナナも大きくなった?」「うん」「ココ!ダメ!はしたない!もっとルキ家の人間として自覚を持って!」下ネタ大好きな点は未だ治ってない。「ヒメネス少尉、ここでは下ネタ禁止です」「下ネタなしで、まともな会話なんて出来るの?性欲の塊のエイミア少尉が」「出来るわ!わしは性欲の塊ちゃうし!」そして、漆黒のカスタムから、正式な艦長のドーキンス大尉が降りて着た。「エイミア、あれ教官じゃない?」ココがエイミアの耳元で囁いた。「えっ?」そう言えば、士官学校の入学時にはいたが、いつの間にか異動になっていた教官だ。「ほら不祥事で左遷された」ココの囁きが聞こえたのか察したのか、ドーキンス大尉は、「!!!!!!!」何か言いたそうだっだけど、言葉が出てこなかったらしい。エイミアは、ヒメネスとドーキンスを交互に見て、「ねっ♡」とココに何かを暗示した。ココは「うん」と納得した。「違う!あくまで偶然勤務地が一緒だっただけ!」ヒメネスは、素早く否定した。エイミアは慌てるヒメネスのお尻を、久しぶりにぽんぽんと叩いてみた。その行為にヒメネスは、エイミアの元に戻ってきた事を確認した。戻るべき場所に戻って来た感覚。『しあわせ』と言っても良い感覚。ブリッジに向かう途中、ルナメルの至る所で、クルーと技官が話を進めている姿とすれ違った。ルキ派と言う存在が、月面都市連合軍内にまだあるとしたら、この技官たちだろう。弟ココの為に、兄キリルが動いてくれたのか、もしくはキリルの部下たちが自主的に動いてくれたのかは不明だが、彼らが来てくれたから、色々な事が動き出した。それは感謝だ。ただ、彼らは良い意味でも悪い意味でもキリルの部下だ。「お仕事お疲れ様です~」とりあえずエイミアは、笑顔を振りまいた。昔からの知り合いの技官が「エイミアちゃん今日も可愛いね」と言ってくれたが、独特の歓喜に満ちた目は、完全に魔に憑りつかれていた(驚)。【魔改造部隊】の噂は本当かも。ルナメルを魔改造・・・エイミアは、見なかった事にして、心を落ち着かせた。ブリッジに戻ると、ドーキンス艦長から今後の作戦が告げられた。地球連邦の勢力圏に成りつつある宙域を迂回して、小惑星要塞第六ゲートから伸びる補給線を破壊する事。迂回するとそれだけ、長距離の移動になる。それだけこちら側の補給線は伸びることになる。補給線を叩く部隊にも補給は必要。エイミアは思い出した。確か補給線の重要性を授業で熱心に語っていた教官だ。「迂回するって、それじゃあルナメルへの補給線はどうなるんです?」エイミアの質問に、まるで教官時代に戻ったかのようにドーキンスの目は輝いた。教官の方が向いているのかも知れない。「新型の自走宇宙船ドック艦と合流し、補給はそこから受けられる」「新型の自走宇宙船ドック艦!?」つづく【エイミア・サトー】ココ・ルキの幼馴染。他称・まあ出来る子。【ココ・ルキ】落ちぶれ貴族ルキ家の次男。他称・まあ出来ない子。【イク】五次元人【メリッサ・カステラ―ニ】イクの担当技官【サネトモ・トキトウ】エイミア&ココと同期のパイロット。もっとも優秀な同期。【ユージン・カイム】エイミア&ココと同期のパイロット。もちろん友人は皆無。【ショウマ・ドーキンス】士官学校時代の教官。ヒメネスとの情事で懲戒免職【カタリナ・ヒメネス】ドーキンスの恋人?エイミア達と同期。【シェーラー家のマリアナ】ココが好き。【マリアナシスターズ】桜乃 梅乃 桃乃 の三人組。美少女感は半端ない。
May 3, 2024
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サネトモ・トキトウ少尉は、訓練から帰還中に司令部より連絡を受けて、高機動型ゼム1機で、現場の7番宇宙船ドックに向かった。「7番宇宙船ドック上空に到着、ドックは炎上中」司令部へ連絡を入れた。7番宇宙船ドックの上空には、宇宙巡洋艦が、滞空していた。滞空していると言うか、ウロウロしてると言った方が正確だ。宇宙港付近での光学迷彩は危険とは言え、丸見えの宇宙巡洋艦が、敵ゼムに襲われたら、ひとたまりもないのに。宇宙巡洋艦のブリッジの上部には、カルル少佐専用艦であることを示す、日本の武将の兜を被っていた。「ルナメル?」だとすると、トキトウ少尉の同期のエイミアやココが乗ってる艦だ。ゲリラに乗っ取られた可能性も含めて、マシンガンを構えながら近づいた。「こちらトキトウ少尉」「トキトウ少尉?」とエイミアの可愛い声が聞こえた。その声が、トキトウ少尉にスイッチを入れた。「エイミアちゃん!!!!!!俺俺、サネトモ・トキトウ、エイミアちゃんの恋人のサネトモ・トキトウだよ!愛しのエイミアちゃんに会いに、只今参上しました」ルナメルのブリッジの大きなスクリーンに、高機動ゼムと時任実智の顔が映し出された。「ウザい」エイミアは嘆いた。「見て見て、俺、高機動ゼムに乗ってんだよ。凄くない?やっぱ俺、天才だよね」「・・・」「冗談だよ!エイミアちゃん、そんなヒーローを見る目でみるなよ」「・・・」「俺は遠くに行ったりはしないよ。いつまでもエイミアちゃんのトキトウだよ。」「・・・」「あっそうだ。任務中だった。ルナメルの中に入れてもらえる?司令部に報告しなくちゃいけないんだ」「どうぞ」「イエ――――イ」スクリーンの向こうで、まだトキトウ少尉が騒いでいるので、音声を消した。呆れたカステラーニは、「彼、今の現状を理解してるの?空気を読めないアホなの?」エイミアはカステラーニの横顔を見た。一見、普通の女子大生に見えるが、18歳で大学院の研究生をやってるとあって、知性は隠しきれていない。16歳のエイミアに取って、この年上のお姉さん感は、とても安らぐ。ただ何を研究してるのかは、言葉を濁された。軍関係には機密が多いのだ。「彼は一応、同期ではゼムの操縦はトップクラスで、カルル少佐の再来とおだてられてた。でも、どちらかと言うとアホね」「エイミアさんの恋人とか言ってるけど」「奴の妄想、彼はいつもお花畑を走ってるの」トキトウ少尉の報告は、軍司令部を安心させた。7番宇宙船ドックに進入したゲリラは、軍の治安部隊に鎮圧された。ドック周辺の月面には、月面用戦車が展開を開始していた。「ルナメルは、N3地点まで進入し、上空の警戒に当たれ、ゲリラに呼応した工作艇がいる可能性がある。トキトウ機は、引き続きルナメルの護衛に留まれ」人使いの荒い軍司令部は早速、命じた。使えると解ったら、素早く使う。組織としてまだ新しい月面都市連合軍には、その傾向があった。しかし、色んな事が済し崩し的に進められる事に、エイミアは怖さを感じた。唯一の幸運は、誰にでも馴れ馴れしいサネトモ・トキトウが、ユージン・カイムをかなり苦手としている事だった。カイムの暗黒ボッチオーラの前に、トキトウの陽気なリア充オーラは、吸収され委縮される。ユージン・カイムの強行偵察ゼムと、サネトモ・トキトウの高機動ゼムは、仲良く警戒に出た。ゼム同士だと、仲よさげに見えた。ルナメルはまだ航路上なので、光学迷彩モードへの移行が出来ない。戦時下と言うのに、融通が利かない。ココはルナメルの操舵に慣れたのか、静かにを月面上空に上昇させた。月の重力から離れ無重力へと移行した。エイミアは身体が軽くなり、心も軽くなったような気がした。無重力が心に与える影響について、考えながら、冷たい宇宙空間を眺めた。でもまだ仮の艦長代理状態のエイミアには、クルーが誰なのかを把握していない。ただ索敵・管制担当オペレーターの3人の少女は、何となく解る。マリアナシスターズだ。確認した訳ではないが独特の匂いがある。それに90点以上の美少女が3人もそう揃う訳がない。「桜乃、梅乃、桃乃とか言ってたっけ」まあ監視要員だろう。しかし、直接ルナメルを監視する程の価値があるのか?月軌道上を横切る壊れた人工衛星の様な物が見えた。「見て見て、ゼム同士がお手手を繋いでる。意外と仲良いじゃん」エイミアは、微笑んだ。ゼムは、手をつないだまま光学迷彩モードになり、姿を消した。カイムの強行偵察ゼムは、トキトウ機の手を握ると「あのスペースデブリ何かいる気がする」トキトウ機にカイムの声が聞こえた。「熱源は?」「今はない」カイム機は、スタンガンを手にした。出来れば捕獲したい。「俺、ちょっと見てくるわ」トキトウ機が静かに人工衛星に近づき、マシンガンをパンパンと撃った。「人工物に熱源反応あり!」ルナメルのマリアナアシスターズが叫んだ。マシンガンのアンチ光学迷彩弾で人口衛星の一部が弾け飛び、射撃体勢に入っていた敵のゼム・スナイパーが姿を現した。と当時に、スナイパーを守るように、ゼム・コマンド―がトキトウ機に銃口を向けたが、トキトウ機の射撃の方が早かった。しかし弾倉が切れた。まだ恐怖から、すぐ撃ちすぎてしまう。ヒートソードを手に、スナイパーに襲い掛かるが、爆炎と爆風が邪魔した。同時に飛び出してきた移動砲台のヒューボットが、強行偵察型ゼムの頭部メインカメラを吹き飛ばしていた。「間に合わない!ルナメル避けろ!」カルル少佐専用艦でも、さすがにゼム・スナイパーの狙撃を避けるだけの瞬発力はない。「狙撃手がブリッジを狙ってる!もう避けきれない」イクの言葉にエイミアは血の気が引いた「ブリッジを?わたしたちを?」突然訪れた「死」をブリッジのクルーは覚悟した。「せめてココを見ながら死にたい」エイミアは、ココの後姿を見つめ、5次元人のイクは、エイミアの胸に顔を埋めた。イクとエイミアの二人をカステラーニさんが抱きしめてくれた。抱きしめてくれたところで、敵スナイパーの射撃の直撃を受けたら誰も助からない。でも死ぬ時は一緒。「ありがとね」エイミアは小さく呟いた。走馬灯のように色んな事が想い起こそうとしていると、ブリッジの天井で破壊音がした。「助かった?兜がなけれが即死だった?」カステラーニさんは言った。そう、確かカルル少佐専用機は、三日月の兜をかぶっていた。「ふっふっふっ、量産型とは違うのだよ!量産型とは!地球連邦め調子乗ってんじゃねーぞ!ボッチとお花畑野郎やっちまえ!」エイミアは叫んだ。お花畑野郎?俺の事か?と考えが浮かびながらもトキトウは、叫んだ!「野郎!!!!!!俺のエイミアちゃんを狙いやがって!」しかし、高機ゼムが攻撃する前に、首のない強行偵察型ゼムのスタンガンによって、スナイパーは動きを止められていた。「俺の見せ場が・・・」トキトウは1人嘆いた。つづく【エイミア・サトー】ココ・ルキの幼馴染。他称・まあ出来る子。【ココ・ルキ】落ちぶれ貴族ルキ家の次男。他称・まあ出来ない子。【イク】五次元人【メリッサ・カステラ―ニ】イクの担当技官【サネトモ・トキトウ】エイミア&ココと同期のパイロット。もっとも優秀な同期。【ユージン・カイム】エイミア&ココと同期のパイロット。もちろん友人は皆無。【ショウマ・ドーキンス】士官学校時代の教官。ヒメネスとの情事で懲戒免職【カタリナ・ヒメネス】ドーキンスの恋人?エイミア達と同期。【シェーラー家のマリアナ】ココが好き。【マリアナシスターズ】桜乃 梅乃 桃乃 の三人組。美少女感は半端ない。
Mar 9, 2024
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「白兵戦用意!」の放送に、ブリッジにいたクルーは焦った。「拳銃?拳銃?」「ココ、拳銃じゃだめ!小銃!小銃!」宇宙船ドックにも銃撃の音が聞こえてきた。エイミアとココが慌てる中、ユージン・カイムは、完全武装状態にあった。さすが優秀さんチーム。しかしバズーカ―を艦内で撃つ気らしい。「ゲリラの目標は、7番宇宙船ドックのルナメルと思われる」管制塔から連絡が流れた。数々の戦歴があるカルル少佐専用艦は、月面都市連合の象徴的な艦だ。「この船目立ちますからね」メリッサ・カステラーニは、イクの側でスモーク弾を確認しながら言った。「ダメ!間に合わない!」イクの叫び声がブリッジに響いた。「えっ?何?」エイミアはイクの耳元で尋ねた。「今すぐ船を出向させて」イクの言葉に、エイミアは1秒未満考えて、「ココ!艦を発進させて!」「えっ?」「クルーズ船と変らないから、早く!管制官!ゲートを開けて!ルナメルは出港します!」「出港許可なんて出てません」管制官の女子の、まるで戦場に向いていない可愛い声が聞こえた。「マリアナ中将より、直に出港命令は受け取ってます!(嘘だが)」「こちらには届いてません」(そりゃそうだろう)「事務的なミスで、宇宙巡洋艦をゲリラに渡す気ですか?わたしが責任を取ります。ゲートを開けてください!一時的にゲリラから避難させるだけです」「しかし」「開けないのなら非常事態です!ゲートごと破壊します!砲撃手砲撃用意!」エイミアは「あ~あ」って顔した優秀さんチームのユージン・カイムと視線が合い、ブリッジのスクリーンに「えっマジ?」って顔の砲撃手が視線に入った。可愛い声の管制官は「解りました!エアロック開きます!」音声を消し忘れた可愛い声の管制官の「なんて事を・・・出港許可なんかとってないくせに」と独り言の様な小声が聞こえた後、目の前のエアロックが開いた。やっぱばれてるらしい。ルナメルを乗せたカタパルトが、ゆっくりとルナメルを動かし始めた。ブリッジのスクリーンに、かなり焦った機関長のおっさんが映り、「おい!何やってんだ。動いてんぞ!そんな命令聞いてないぞ!」そうとうお怒りだがエイミアは、「今から出港します」「エンジンを起動させるだけじゃなかったのか?!」「起動させるだけじゃなかったみたいです」エイミアは、それはそれは可愛く微笑んだが、「可愛いからって許される問題じゃんないぞ!ここは軍隊だぞ!解ってんのか!」「ここは刻々と状況が変わる戦場です。異議があるならこの戦いの後、法廷に申し立ててください!」そんな事をされては、エイミアが完全に不利になるのたが、時は既に遅い。背後のエアロックが閉まり、宇宙空間が見えた。「5次元人のイクが『船を出港させて』と言うのなら、それが正解と信じたい。誰も5次元人の意見を聞かなければ、折角の5次元人の存在意義は薄れる。それは月面都連合のプロパガンダ的にも良くないだろう」エイミアは少尉として思った。「ココ行って!」ココの優しい操舵が、ルナメルを静かに宇宙空間に押し出した。直後、エアロックの壁の向こうで、大きな爆発が起きた。多分、イクの意見を無視したら、わたしたちは死んでいた。つづく【エイミア・サトー】ココ・ルキの幼馴染。他称・まあ出来る子。【ココ・ルキ】落ちぶれ貴族ルキ家の次男。他称・まあ出来ない子。【イク】五次元人【メリッサ・カステラ―ニ】イクの担当技官【サネトモ・トキトウ】エイミア&ココと同期のパイロット。もっとも優秀な同期。【ユージン・カイム】エイミア&ココと同期のパイロット。もちろん友人は皆無。【ショウマ・ドーキンス】士官学校時代の教官。ヒメネスとの情事で懲戒免職【カタリナ・ヒメネス】ドーキンスの恋人?エイミア達と同期。【シェーラー家のマリアナ】ココが好き。【マリアナシスターズ】桜乃 梅乃 桃乃 の三人組。美少女感は半端ない。
Feb 8, 2024
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ルナメルのメカニックや機関室などのクルーは集まってきているようだが、ココたちには何の指示も命令も来ない。少なくともココとエイミアの受けたルナメルへの赴任命令は本物なのに。「わたしたちに、どうしろって言うの?」エイミアはルナメルのブリッジで愚痴った。今だ上官が誰なのかも不明だ。完全に浮いた存在だ。ルキ家もルナメルも、厄介者扱い?変に戦功をあげて目立たれても、嫌なの?クルーが忙しく働いているもんだから、何もしないのも気まずいので、ココとエイミアとイクは、ルナメルの取り扱い説明書を読んでいた。ココが見ていたのは、子供向けの宇宙巡洋艦図鑑。エイミアは、なんか可愛いのでココの頭を撫でた。エイミアの背中にはイクが抱き着いていた。「って!わしは若い母親か!」イクの様な能力者は、5次元人と呼ばれている。計算上彼女は5次元人と認定された。5次元、計算上は存在する世界。計算上存在する世界が、本当に実在する世界なのかはエイミアには理解できない。彼女たちは5次元に住んでいて、3次元に降りて来ているらしい。5次元世界での記憶はないらしいが。計算上と説かれてもエイミアには全く理解不能だ。ただ言える事は、5次元人だとしてもイクのおっぱいは貧乳だと言う事だけだ。柔らかくて優しいおっぱいだ。「エイミア」耳元でイクが言った。「何?」「敵が来る!早くルナメルのエンジンを起動させて!」「敵?」エイミアは、疑問符をうった。ここは、月面都市7番宇宙船ドックだ。制宙権も完全に月面都市連合が握っている中枢と言ってもいい安全圏だ。地球連邦が簡単に近づける場所ではない。しかし一番驚いたのは、イクの髪を弄っていた担当技官メリッサ・カステラ―ニだ。「エイミア少尉、急いでエンジンを起動させてください!」「と言われても、艦長はまだ赴任してないし、勝手に動かすと軍法会議ものです」「エイミア少尉、あなた責任者って言ってたでしょう」「それは、わたしとココしかいなかったからで・・ねえ」エイミアは、ぽつんと一人で強行偵察に関する難しそうな戦術書を読んでいるユージン・カイムに視線を送った。ちゃんとした挨拶もした事ないけど、士官学校同期だし、優秀さんチームだったし。カイムはエイミアと目が逢ったが、すぐに書に視線を移した。エイミアはカイムを見つめたまま「ボッチくん、君もクルーでしょう。何か言って!」ボッチくん!?にイクとココがクスッと笑った。カイムは、エイミアを、チラッとみた。人付き合いレベル0には、凛々しい美少女の視線は、レベルが高すぎるらしい。カイムは焦る心を鎮める事に腐心しているようにみえた。ブリッジを見渡すと不安が充満していた。イクの影響かも知れない。イクが何かを感じているのは事実だろう。技官の反応と言い、この娘は5次元人?だとすると、何もしないと危険なのかも知れない。「エンジン掛けるぐらい問題ないかも、メンテナンスでエンジンを掛けるのに、一々艦長の許可は取らないだろうし」カイムは、独り言のように言った。イクがカイムに視線を送ると、カイムはちょっと照れた。エイミアは何かを決意したらしく「ココ、機関室にエンジンを起動させられるか聞いてみて」「僕が?」「ココはちょっとした有名人だから、ルキ家の威光があれば何とか」「・・・期待はしないでね」エイミアはブリッジの受話器を取ると、ココに渡した。「何だ!ブリッジか?」職人なおっさんの声がした。ちょっと怖そうだ。「あのお願いがあるんでが、メンテナンス的な意味でエンジンとか起動させられます?」「はあ?お前誰だ?」「ココ・ルキです」「ルキ家の坊やか」「えーと・・・はい」「あのなお前、俺たちは今、忙しんだ!解るか?」機関室のおっさんの声から、ルキ家の威光は効かなかったらしい。それに気づいたココは凹んだ。ココの凹みに引きずられて、イクの感情の影響下にあるブリッジが、さらに不安に包まれた。エイミアは自分に集まる、イクとカイムとカステラさんの強い視線を感じた。5次元人の直感。そんなもの本当に信じて良いの?心に満ちる不安感は、「早くエンジンを掛けて」と叫んでいた。心の中の何かが命の危険も含む危険を感じている。これが戦士の直感かも?エイミアは受話器をココから奪うと「わたしはサトー少尉です。この艦の責任者です」「少尉が責任者?」「エンジンを起動させて下さい。これは命令です」お願いで動かしてくれるとは思えない。「少尉が命令?」「はい命令です」受話器の向こうで誰かと会話している声が聞こえた。エイミアの心臓は高鳴った。多分、何らかの軍法に引っかかるかも知れない。しかし、少尉とは言え士官の命令で動かしたのであれば、彼らが軍法会議に掛けられる事はない。責任はあくまで命令責任者の少尉にある。責任の重い矢が心を貫いたような気がした。「でもエンジンを掛けるぐらいだったら、あのボッチの言ってる通りテストの為と言い訳もできるはず。でもそもそも、この5次元人?の言う事が適当だったら、どうしよう」とエイミアの背中に嫌な汗が流れた。「了解した。サトー少尉」機関室のおっさんの声が聞こえた。そしてエンジンが動き出す音がルナメルに響いた。その数分後、7番宇宙船ドック内に警報が鳴り響いた。「宇宙船ドックにゲリラが進入、総員白兵戦用意!総員白兵戦用意!」つづく【エイミア・サトー】ココ・ルキの幼馴染。他称・まあ出来る子。【ココ・ルキ】落ちぶれ貴族ルキ家の次男。他称・まあ出来ない子。【イク】五次元人【メリッサ・カステラ―ニ】イクの担当技官【サネトモ・トキトウ】エイミア&ココと同期のパイロット。もっとも優秀な同期。【ユージン・カイム】エイミア&ココと同期のパイロット。もちろん友人は皆無。【ショウマ・ドーキンス】士官学校時代の教官。ヒメネスとの情事で懲戒免職【カタリナ・ヒメネス】ドーキンスの恋人?エイミア達と同期。【シェーラー家のマリアナ】ココが好き。【マリアナシスターズ】桜乃 梅乃 桃乃 の三人組。美少女感は半端ない。
Dec 19, 2023
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ソ・ダネ大佐は、ショウマ・ドーキンス少佐(26♂)とカタリナ・ヒメネス少尉(16♀)を一瞥した。「お前ら育ちの悪さ隠せてねーよ」とでも言いたげな視線だ。「めっちゃ鋭い」カタリナ・ヒメネスはビビった。カタリナ・ヒメネスは、決して育ちが悪い訳ではない。たまたま、育った場所がそんな場所なだけだ。それに15バンチでは良い子の優等生キャラだ。月面都市連合の有力者マリアナの執務室の奥にあるプライベートスペースで、ドーキンス少佐とヒメネス少尉は戦況の説明を受けていた。マリアナの3人の秘書。通称マリアナシスターズの美少女感は半端なかった。美少女達はみんな腰にブローニング拳銃を装備しているが、雰囲気から軍所属ではなく、使用人と言った感じだ。「どのお紅茶にしますか?」マリアナシスターズ(1号)は、それはそれはとてもお上品に聞いた。ショウマ・ドーキンス少佐は、紅茶の銘柄など解らなかったので、カタリナ・ヒメネス少尉に助けの視線を向けた。ヒメネスは、「ここは任せて」と視線を返し、「それじゃあ、【育ちの良いお紅茶】で」それ15バンチの自販機で売ってる奴やん!あまり治安の良くない15バンチの自販機で売ってる、決して育ちの良い人が飲む紅茶ではない。それを清楚系のマリアナシスターズに、自販機までパシらせる気か!銘柄って言ったら、紅茶の産地的な事だろう!って事はドーキンスにも解った。ショウマ・ドーキンス少佐も、治安の良くない15バンチ出身だ。悪そうな大人になる人はいるが、士官になる人はまずいない。ゆえに軍内では肩身が狭い。マリアナシスターズ(1号)が困った表情をしたので、ドーキンスは「お任せで」と上品ぽく微笑んでみた。その微笑がこの場に不似合いだったのか、マリアナシスターズは少し怯えた。「おい!やんのか、コラ!」的な微笑だったのかも知れない。育ちの悪さは隠せなない。エリートが多い士官の中で、慎重に育ちの悪さが出ないようにしているのだが。しかし、さすが、マリアナシスターズがいれた紅茶の香りが、この場の格調を高めた。マリアナは一口紅茶を飲むと、「現在我軍は、地球連邦の反攻作戦に対応する為に、戦線の再構築を進めている。その一環として、ドーキンス少佐には、巡洋艦ルナメルを与える。貴公は連邦の77万キロの補給線を破壊してもらいたい」地球連邦の艦隊が集結しつつある第六ゲート小惑星から月までの距離が約77万キロ。光の速さで約2、6秒。地球上では考えられない補給線の長さだ。「了解しました」2人は声を揃えて返答した。その声があまりにも揃っていたので、マリアナの一瞥を受けてしまった。もしかすると教官時代の教官と生徒の禁断の噂を知っているのかも知れない。ソ・ダネ大佐がリモコンを操作すると、大きなスクリーンに、ルナメルが映し出された。軍広報が撮った今話題の盗撮動画だ。ルナメルのブリッジで、ココとエイミアがぼんやりと外を眺めていた。マリアナが嬉しそうにニヤけ、「わたしが撮らせた動画だ」「お前かよ!」とカタリナ・ヒメネスがツッコミを入れられる訳がなかった。ココ・ルキと同期のカタリナ・ヒメネスは、ココの年上キラーぶりを何度も目にしていた。とにかく可愛いのだ。女教官とそう言う関係になりそうになるのを、エイミアと共に阻止したこともある。マリアナは、嬉しそうにココを見つめた。そのマリアナをソ・ダネが見た。ソ・ダネを無視して、マリアナはドーキンスに語った。「わたしはルキ家の坊やのオムツを変えてあげた事もあるのだよ」「オムツを?」「・・・」「・・・」沈黙に終止符を打ったのはカタリナ・ヒメネスだった。彼女は、敬礼すると、「すべて了解しました」マリアナは微笑み「では貴公たちの健闘を祈る」と。つづく【エイミア・サトー】ココ・ルキの幼馴染。他称・まあ出来る子。【ココ・ルキ】落ちぶれ貴族ルキ家の次男。他称・まあ出来ない子。【イク】五次元人【メリッサ・カステラ―ニ】イクの担当技官【サネトモ・トキトウ】エイミア&ココと同期のパイロット。もっとも優秀な同期。【ユージン・カイム】エイミア&ココと同期のパイロット。もちろん友人は皆無。【ショウマ・ドーキンス】士官学校時代の教官。ヒメネスとの情事で懲戒免職【カタリナ・ヒメネス】ドーキンスの恋人?エイミア達と同期。【シェーラー家のマリアナ】ココが好き。【マリアナシスターズ】桜乃 梅乃 桃乃 の三人組。美少女感は半端ない。
Nov 19, 2023
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「夢か?」公園のベンチにユージン・カイムは座っていたベンチの隣に少女が座った。友人皆無で人と関わりを持ったことがないカイムの隣にだ。腕が少女の腕に触れていた。「カイムくんは、わたしに任せてくれればすべて上手く行くよ」カイムを見つめる少女と目があった。今まで見た事がないカイムと同じくらいの年ごろの少女だ。「誰?」 ☆彡カイムは今見た夢のリアルさに驚いた。月では良い夢を見やすい。しかし、今日は気が重い。異動が決まったのだ。ルナメルに。普通の人間だと、仲の良い同期であれば、そりゃあ気が弾むだろう。が、現実は、カイムはボッチの上ロクに話したこともない、エイミアとココだ。ボッチ VS 仲の良い幼馴染の2人。気まずいに決まってるし、奴らが、こっちを覚えていない可能性もある。だいたい何を話せと言うんだ!強行偵察型ゼムを、ルナメルの格納庫にいれた。動画では、誰もいないルナメルが映し出されていたが、どうやら人が配備されたらしい。「今度ルナメルに赴任する事になりました、パイロットのユージン・カイムです」ルナメルの整備兵の主任に挨拶をした。形式的な会話なら得意だ。すべて形式的ならいいのに。パイロットにきつく当たる整備兵は、まずいない。死ぬ確率の高い人間に、人はとても優しく接してくれる。そう、これからブリッジに行かなくてはならない。溜息しか出ない。ブリッジに向かう道で、会う人合う人に社交辞令であいさつを交わした。形式的にだ。ブリッジの扉が開くと、エイミアとココの姿が見えた。溜息しか出ない。エイミアとココが同時に、こちらを見た。え?エイミアの背後からエイミアの胸を揉んでいる少女がいる。夢の中で隣に座ってた少女だ。「もう人前では止めてよ、イクちゃん」エイミアがイクちゃんの腕を掴んだ。イクちゃんって言うんだ。エイミアの百合友だろうか?その少女とチラッと目があった。心のどこかで何かが接続された気がしたが、気のせいかも知れない。少女はすぐに目を逸らした。気を取りなおしてカイムは、エイミアとココに形式的に挨拶をした。「エイミア、ココ、久しぶり」問題ない、形式的にやれば。エイミアも形式的に「久しぶり・・」と返答したが、どうやら名前を思い出せないらしい。いつもの事だが、しかし多少好意を持ってる人に、これをやられると、凹む。ココはあからさまに、「お前誰?」って目でカイムを見つめた。まあ、こいつはどうでもいいや。つづく【エイミア・サトー】ココ・ルキの幼馴染。他称・まあ出来る子。【ココ・ルキ】落ちぶれ貴族ルキ家の次男。他称・まあ出来ない子。【イク】五次元人【メリッサ・カステラ―ニ】イクの担当技官【サネトモ・トキトウ】エイミア&ココと同期のパイロット。もっとも優秀な同期。【ユージン・カイム】エイミア&ココと同期のパイロット。もちろん友人は皆無。【ショウマ・ドーキンス】士官学校時代の教官。ヒメネスとの情事で懲戒免職【カタリナ・ヒメネス】ドーキンスの恋人?エイミア達と同期。【シェーラー家のマリアナ】ココが好き。【マリアナシスターズ】桜乃 梅乃 桃乃 の三人組。美少女感は半端ない。トレーディングカードやフィギュアなどのホビーグッズが激安!あみあみ 楽天市場店
Oct 12, 2023
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宇宙で産まれ宇宙で育ったユージン・カイムは、強行偵察型ゼムで、1人、宇宙空間を漂っていた。宇宙の暗闇の中、連邦の艦隊が通り過ぎるのを、成りを潜めて待機していた。宇宙空間の冷たい暗闇が孤独感を強めた。しかしユージン・カイムに取って、それはとても心地よいものだった。逆に大勢の人の中いる時の方が、孤独を感じてしまう。「もうすぐおやつの時間だと鑑みて、早めに任務を終わらせたい」ユージン・カイムは、コックピットで呟いた。生きて帰る事が前提だが、食堂のおやつタイムには間に合わせたい。男子一人では食べる事がない、めっちゃおしゃれなおやつがでるのだ。食堂でボッチで食べなくては行けないと言う過酷な事実もあるが、その苦行も含めてのおやつタイムだと自覚している。タブレットには、月面都市連合軍広報サイト動画が流れていた。盗撮された動画の中で、士官学校同期のココとエイミアが、ルナメルのブリッジで寂しく立ち尽くしていた。ココはやたらアホっぽく、エイミアはやたら賢く見えた。「何やってんだか」ユージンは1人呟いた。そして、『見上げる空の向こうに敵がいる恐怖は、宇宙に住む人には解らないと思うよ』エイミアが誰かに言っていた言葉を思い出した。思慮深い少女だ。「宇宙に住む人」遠い昔の人にとってはSFに過ぎなかった話だ。ココとエイミアが、まだ士官学校の卒業試験をしている頃、優秀なグループは先に戦地へと送られていた。その優秀なグループの1人がユージン・カイムだ。漢字表記するとして【友人皆無】になるが、それはそれだ。漢字圏の人間ではないユージンには関係のない事だ。ただユージン・カイムに友達が1人もいないのは事実だが。「さて」ユージン・カイムは1人呟いて、強行偵察型ゼムを動かした。視線の向こうには、地球連邦の宇宙空母機動艦隊が侵攻を開始していた。強行偵察型ゼムが、連邦の艦隊に向かって通常の5倍の速さで突進した。光学迷彩の透明な状態で、宇宙を駆けると不思議な気分になる。もしかすると自分は存在し無いんじゃないかと。滞空していた浮遊集音ポットの横をすり抜けた。きっと音は探知されたはずだ。宇宙駆逐艦の対空砲から、アンチ光学迷彩弾が強行偵察型ゼムへ浴びせられた。強行偵察ゼムの姿が、宇宙に浮かびあがった。でも、「見られたからと言って、当たらないんだな、これが♪」月面都市連合最速を誇る機動力とフットワークの軽さは、簡単には撃ち落とせない。しかし、Gが半端ない。それが解っているにも関わらず、よりGが高い操縦をしてしまう自分がいる。意識が飛びそうになる程のGは、快感でもある。敵の砲撃を躱しながらも、カメラは全自動で連写され続けた。アルメイダ級宇宙要塞に待機していたゼム群が動き出した。それをこまめにユージン・カイムはカメラで連写した。しかし残念ながら無武装の強行偵察型ゼムが、この宙域に留まるのは危険すぎる。強行偵察型ザクは、素早く戦線から離脱した。誰も追い付く事が出来ない速さで。「おやつタイムには間に合いそうだ」ユージン・カイムは呟いた。つづくトレーディングカードやフィギュアなどのホビーグッズが激安!あみあみ 楽天市場店
Sep 11, 2023
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地球連邦の宇宙への渡河拠点エグジット要塞が、目視出来る宙域。連邦のゼムは、陽動作戦に乗せられ、遥か遠くの宙域にいるはずだ。この宙域に駆け付けたのは、連邦の宇宙戦闘機のみ。運悪く遭遇したと言った感じか、でもどうやら単機で攻撃を掛けるらしい。逃げれば背後から撃たれるだけだと判断したらしい。アンチ光学迷彩弾が、光学迷彩で透明だったゼムの周囲でさく裂した。ショウマ・ドーキンス大尉の漆黒のゼムと、カタリナ・ヒメネス少尉の深紅の機動コルベットが姿を晒してしまった。敵は感の良いパイロットらしい。それを待ち受けていたかのようにエグジット要塞から、要塞砲が射撃を開始した。ドーキンスは機動コルベットに掴まり、ヒメネスに要塞砲の回避を任せた。機動コルベットは宇宙をフィギアスケーターのように、踊っているように見えたが、カタリナ・ヒメネスは必死の形相で、操縦桿を操った。「対艦用の要塞砲が、簡単に機動コルベットの当たるはずがない。対艦用の要塞砲が、簡単に機動コルベットの当たるはずがない・・」神経を研ぎ澄ませ、要塞砲の進行方向を予測した。考える暇など一切ないから予知と言った方が良いかも。自身のどこかのあるであろう予知の能力にアクセスしているはずと信じて。要塞砲に当たれば、そのまま地球の重力に掴まって、燃え尽きる。ヒメネスの視界にその地球が映った。死の恐怖と同時に地球への安堵感を感じた。地球は優しく、そして厳しい。ドーキンスは、敵の意気込みに感心しつつ、漆黒のゼムのガトリングで、宇宙戦闘機を撃ち落とした。直後、飛び出した脱出カプセルを素早く掴まえた。ここで飛び出だしても大気圏に落ちていくだけだ。漆黒のゼムを操るショウマ・ドーキンス大尉は、巨大な地球を見おろした。機動コルベットに収容されれば、大気圏突入が可能だが、ゼムだけでは大気圏で燃え尽きてしまう。地球に畏怖しながら、大気圏ギリギリの宙域のスリル感は半端ない。今、落ちると確実に連邦の勢力圏のど真ん中へと落下する。ゼムと機動コルベットだけでは、どうしようもない数の敵に殲滅されるだろう。地上から、リニアによって打ち上げられた定期便の物資輸送用無人コンテナが見えた。仕事は簡単だ。その無人コンテナを撃ち落とせば良いだけの事。ガトリング砲を放つと、コンテナは眩く輝きを放ち地上に落下していった。戦闘だけが戦争じゃない。補給がなければ、そもそも戦闘すら出来ない。武人系の多い軍では、戦闘こそが武人のやること考える奴が多い。補給線を潰せば、戦う必要すらないのだ。ディスプレイにカタリナ・ヒメネスが映り「大尉、また敵を助けたんですか?」「捕虜から情報が取れるかも知れないだろ」カタリナ・ヒメネス少尉は、普段は優しい女子なのだが、今は戦時下。そう言った行為は、やはり偽善に見えてくるのかも知れない。士道がどうこう考える余裕は、まだないのだろう。つづく【エイミア・サトー】ココ・ルキの幼馴染。他称・まあ出来る子。【ココ・ルキ】落ちぶれ貴族ルキ家の次男。他称・まあ出来ない子。【サネトモ・トキトウ】エイミア&ココと同期のパイロット。もっとも優秀な同期。【ユージン・カイム】エイミア&ココと同期のパイロット。もちろん友人は皆無。【シェーラー家のマリアナ】ココが好き。トレーディングカードやフィギュアなどのホビーグッズが激安!あみあみ 楽天市場店
Aug 21, 2023
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エイミアはココと新しい制服を着て、宇宙船ドックへ向かった。まだあどけないココには、新しい軍服はまったくにあってはいなかった。「さあエイミア行くよ♪」ココは、めっちゃやる気だ。エイミアはそのココの頬を抓って見た。可愛いし、触り心地は最高だし、癒される。宇宙船ドックに、ルナメルは停泊していた。しかし、人がいる気配もなく、活気は全くなかった。まるで海底に沈んでいるかの雰囲気だ。艦内は照明の明かりもなく、宇宙船ドックの照明の明かりが窓から入ってくるだけだった。赴任の挨拶をと思い、ルナメル内を歩いてみたが、誰もいなかった。静まり返った艦内に、二人の足音が響いた。「誰もいないね」「ブリッジには誰かいるかも」ブリッジにも誰もいなかった。エイミアは、赴任の命令書を見返してみた。日付も赴任先も間違いない。人事の単なる事務的なミスか?故意か?落ちぶれ貴族のルキ家に対する、その落ちぶれようを楽しむ世論と言うものが少なからずある。さらに多かれ少なかれ派閥争いも関わってくる。故意だとすると「きついわ」エイミアは声に出さずに思った。ココが、このまま落ちぶれれば、満足するの?照明のつかない暗いルナメルのブリッジから宇宙船ドックを見下ろすと、整備員や兵士が、忙しく仕事をしていた。「仕方ないよね」エイミアの隣でココが呟いた。その二人の様子をカメラは捕らえていた。宇宙船ドックの見渡しの良い艦橋に、月面都市ネクタール自治軍の広報動画サイト広報官のリナは、にやけた。「リナさん良いんですか、わたしたちは軍の広報ですよ」広報に配属されたばかりのアーシャは言った。「みんなが知りたいことを、みんなに知らせるのが広報。問題ないわ」数時間後、自治軍広報動画のサムネに、二人の写真が載った。『ルキ家のポンコツ次男、カルル少佐専用艦に赴任か!?乗組員はみんな異動したのに(笑)』つづくトレーディングカードやフィギュアなどのホビーグッズが激安!あみあみ 楽天市場店
Jun 29, 2023
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エイミアは1人、オープンカフェでクレープを食べていると、20歳前後の女子が、隣に座った。「初めまして、とある侍女です」「はい?」知らない人に唐突にそんな事言われて、隣に座られても困るのだが、とある侍女は、金貨を、テーブルの上に置いて「多くを語らなくても大丈夫でしょう?」って視線を送られたので、エイミアは会釈した。どこかで、見た事がある金貨だ。5歳か6歳の頃、父といた時に見た事がある。その金貨に何の意味があったのかは思い出せないが、重要だって事は覚えていた。少なくともエイミアが、ルキ家側の人間だと知って接触してきたのだ。誰の侍女かは解らないが、雰囲気から侍女で間違いない。そんな侍女が、まだ士官学校生に過ぎないエイミアに、接触してきたのかは不明だが、断る理由もなかったし、好感を持てる顔立ちだったので、エイミアは、その侍女に誘われ、のこのこと着いて行った。いざとなれば拳銃も所持しているし、拳銃の扱いは同期で一番だったし。戦場では考えている間はもなく生死が決まる。身体に覚え込ませた直感で動かなくては行けない。その直感が、エイミアに「行け!」と囁いた。そして、月面都市ネクタールのサウナの100度近い熱気は、エイミアに心地よい刺激をもたらしていた。一般人は絶対は入れないレベルのスポーツジムのサウナだ。しかし、初対面の相手と裸の付き合いをするのは、女同士とは言え照れる。タオルだけを巻いた姿で、拳銃をロッカーに入れてしまっていた。美しい侍女の裸に見惚れて、ふわふわな気分になって、つい油断をしてしまった。しかし侍女の柔らかな体つきから、格闘戦になれば楽に仕留められるし、侍女を人質にする事も可能だ。世間話から察するに、どのあたりの人間なのか、ある程度は察しが着いた。ルキ家の敵ではない。味方よりではあるが、表だって味方とは言いずらい陣営。「ルナメルに誘われた?」年齢は20歳前後の汗まみれの侍女は、エイミアに聞き返した。軍人と違い、とある家の侍女は、優しい香りに満ちていた。「はい」とある侍女に、膝の上に座られたままのエイミアは深く深呼吸をした。とある侍女はボケとして、エイミアの膝の上に座ったのだが、エイミアのツッコミがないので、動くきっかけをつかめずにいた。誰かが入ってくると、変な勘繰りを入れられる恐れがあるのに。バスタオル越しとは言え、侍女のお尻の感覚はきっちり伝わってきた。何故だが女子は大体エイミアの膝に乗りたがる。「なんだか安心する」と言われて事はある。エイミアは、初対面の相手に限らず相手に無防備に背中を晒す事はない。心の奥にある人に対する恐怖が、それを制止する。背中をさらせる女子を羨ましく思う時がある。「ルナメルは今や訳あり物件よ」「訳あり?」エイミアは、とある侍女の後ろから抱き着いて見た。百合的と言うよりどんな反応を示すか知りたかった。とある侍女はなんの反応もせず、エイミアに体を委ねた。「元の艦長がある件で左遷になったの。ルナメルは元々アロハ中将から、戦役の功績により譲り受けた艦。それで左遷でしょ。軍上層部では今後の扱いに揉めてるらしい。すでに士官は、バラバラに異動になってるはず」「副官のポポフ大尉に来るように勧められたんだけど」「ポポフ大尉は最も有能な部類の軍人だから、もしかしたら未来を見越して、あなたたちを誘ったとか?裏はないと思うけど」「未来を見越して?ルキ家の未来を見越す?」「それもあるだろうけど、あなたたちの未来も含めてじゃない。副官の直感で何かを見抜いたのかも。でもどちらにせよ今のルナメルは、軍上層部の覚えは良くない沈み掛けの船ね」サウナのドアの向こう側で、人の気配がした。とある家の侍女は素早く、エイミアの膝の上から立ち上がり、隣に移動した。侍女の横顔は、見た事がない程上品な顔立ちをしていた。「って、どこに座ってんねん」その横顔にエイミアは、明らかに遅すぎるツッコミを入れた。サウナのドアが開き、エイミアと同年ぐらいの黒髪で東洋系の顔立ちの全裸の少女が入ってきた。エイミアと侍女は、タオルを巻いているのを見て、少女は慌ててタオルを巻いた。侍女の胸が大ならエイミアが中、そして彼女が小と言ったところだ。「イクちゃん」侍女は紹介した。イクも早速エイミアの膝の上に座った。何かの流行なのだろうか?「この娘は、月の宝石」「月の宝石!?」半裸の月の宝石の少女が、今エイミアの膝の上に座ってる!「ちょっと訳ありのこの娘の面倒を見て欲しいと、わたしの主からの依頼です」「訳あり?」侍女は、エイミアの質問に微笑むだけで、「また会える?」「はい」「じゃあね」と侍女はエイミアと訳あり月の宝石の少女を残してサウルームから出て行った。訳あり月の宝石がエイミアの太ももにお尻を押し付けてくるので「って、どこに座ってんねん」と再び明らかに遅すぎるツッコミを入れた。ルナメルと言いこの娘と言い!何で訳ありばかり、わたしに押し付けるの?わたしはまだ士官学校生よ!でも月の宝石の少女を手に入れたのは、良い兆候だ。月の宝石と呼ばれる少女たちは、特別な能力を持っているらしい。月の宝石のイクちゃんを後ろから抱きしめると、イクちゃんは慌てて立ち上がって離れてしまった。これが彼女の距離感なのだろう。つづく【エイミア・サトー】ココ・ルキの幼馴染。他称・まあ出来る子。【ココ・ルキ】落ちぶれ貴族ルキ家の次男。他称・まあ出来ない子。【サネトモ・トキトウ】エイミア&ココと同期のパイロット。もっとも優秀な同期。【ユージン・カイム】エイミア&ココと同期のパイロット。もちろん友人は皆無。【シェーラー家のマリアナ】ココが好き。トレーディングカードやフィギュアなどのホビーグッズが激安!あみあみ 楽天市場店
Jun 1, 2023
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月面都市ネクタールのショップの試着室にエイミアが入ると、先客のココはパンツを履こうとしている所だった。エイミアは、チラッと下を確認した。別に初めて見るモノではない。ココはエイミアの視線を気にする様子はなかった。立場が逆だとしても、エイミアはココの視線を気にしない。乳兄妹ではなく、本当の妹だったら、嫌悪感を抱くのかも知れない。何なんだろう?わたしたちの距離感って?物心ついた時から、ずっと一緒にいた兄でもなく妹でもない乳兄妹。この件は、誰にも言った事はないし、誰にも言わない方が良い関係性だ。センスが絶望的なココの代わりに、エイミアが選んだ服を着たココの全身を確認した。もちろん、マリアナさまといつ結ばれても良いように、勝負パンツも履かせていた。「うん問題ない♪じゃあカルル少佐主催新春シャンソンショーに行きましょ」地球の重力の6分の1の月では、みんな飛び跳ねるように歩いている。いつもこんな歩き方をしてるから、月の人は気持ちが軽いのだろう。ある種の進化と言っても良いのかも。ココに腕を掴まれている事もあって心が躍った。カルル少佐主催新春シャンソンショーには、色々な重要人物がお忍びで来ると噂の、シャンソンショーだ。ルキ家復興の為には、かなり有用。ネクタールの街は、戦時下とは言え、比較的に穏やかな雰囲気を維持していた。エイミアは、ココと腕を組んで、ネクタールの街を歩いた。これはデートなのだろうか?いつも一緒にいるからその感覚はないけど、ココの嬉しそうな顔はきっとデート気分だ。「ねぇエイミアは、カルル少佐のファンなん?」「そんな事はないけど、まあカッコいいよね」エイミアは嫉妬するココの腕に、胸を押しつけてみた。もちろん、ココは少し照れた。ココくん可愛い♪黒猫少佐は、女子の間で人気で、めっちゃカッコいいのは事実だが、エイミアが気になるのは、カルル少佐に関する不穏な噂だ。今後、ルキ家の復興を進めるうえで、確認しておきたい噂だ。ライブハウスの前に着くと、小さな張り紙が中止を知らせていた。「中止だって」ココは大袈裟に言った。月面都市ネクタールの小さなライブハウスは、閑散としていた。恒例の黒猫少佐主催新春シャンソンショーは、中止になったらしい。エイミアが色々手を回して手に入れた招待状が台無しだ。2人が立ち尽くしていると、ライブハウスから太ったおっさんが出て来た。「君たちも軍人か?」エイミアはココのお尻をポンと押して、挨拶するように託した。「はい、士官学校所属の、ココ・ルキであります」「ルカ」と言う言葉に太ったおっさんは、ニヤリとしたようなしてないような表情を浮かべた。「まあ、入れよ、これも何かの縁だ。カルル少佐はいないが、シャンソン歌手が一曲歌ってくれるそうだ」ライブ会場内には、艦のクルーらしき人が10数人程いた。全員が宇宙巡洋艦ルナメルのワッペンを付けていた。ルナメル、確かカルル少佐の専用艦♪「ポポフ少尉、いえ、ポポフ大尉出世おめでとうございます」ルナメルのクルーを歓声をあげた。ポポフ?たしかカルル少佐の副官。「あまり大声を出すなよ、この時期」「すみません。で、この子たちは?」「ルキ家の士官殿たちだ」ルナメルのクルーは、何か珍しい者を見るように、一斉にココを見た。1つも2つも想うことがあるであろう視線だ。落ちぶれかけの家、故だろう。「どうするんです?」「確か、士官学校の学生も、学徒出陣だろ」エイミアがココのお尻をポンと押すと、「は、はい」ポポフとルナメルのクルーは視線を交わした。ココ・ルキに利用価値を見出したのか、それとも同情か。「ルナメルに来ないか?どこも人手が足りない。今や人手の奪い合いだ。君の方から人事に希望を出してもらえれば助かる」「了解しました。わたしともどもお世話になります」エイミアは、ポポフを直視し、ポポフはエイミアを見返した。一見、太ったおっさんに過ぎないポポフだが、出来る人間の目をしていた。「助かる、よろしくだ」シャンソン歌手とバンドがリハーサルの音を調整しだしていた。つづく【エイミア・サトー】ココ・ルキの幼馴染。他称・まあ出来る子。【ココ・ルキ】落ちぶれ貴族ルキ家の次男。他称・まあ出来ない子。【サネトモ・トキトウ】エイミア&ココと同期のパイロット。もっとも優秀な同期。【ユージン・カイム】エイミア&ココと同期のパイロット。もちろん友人は皆無。【シェーラー家のマリアナ】ココが好き。トレーディングカードやフィギュアなどのホビーグッズが激安!あみあみ 楽天市場店
May 18, 2023
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コントをしてるの?こんな事が、起こり得るのだろうか?エイミアは自問自答した。ココの操縦する人型大型兵器ゼムは、月の山脈を転げ落ちていた。地球より軽い重力の為、ゼムは楽しげに飛び跳ねるように転げ落ちた。コクピットの自動制御機能を越えた動きに、コックピット内は激しく揺れた。「ヒー!」ココは驚きのあまりは動きを止めた。ココの処理能力を超えたのだろう。「マジか!」教官席のエイミアは、操縦権を教官席に移し、深呼吸をしてタイミングを計った。「3・2・1」ブースターを吹かすと、ゼムは上空に飛び出した。「ふう」山脈を転げ落ちた事は、絶対、秘密にしなければならない。ココの、これ以上の低評価は避けねば!「ココ復活して!」ココの頬を叩くと、ココは「はっ!」と意識を取り戻した。「びっくりした!ゼムで山脈を転げ落ちる夢を見てた」「夢だと良いね」ココはいつも幸せだ。☆彡ルキ家の次男を、士官学校に入れる理由があるとすれば、哀れみだろうか。名門貴族が、目に見えて落ちぶれていく様は、哀れだ。それもかなり出来の悪い少年だ。かなり良心が痛む。いや、逆にそれを笑いものにしようとする思惑も、あったのかも知れない。そんな状況下で、エミリアが考えたルキ家再興策は、シェーラー家のマリアナさま♡とココくん♡をくっつける計画。シェーラー家は月面都市連合の盟主の立場だ。さらに地球の中立国・南極共和国とも深い繋がりのある家だ。マリアナさま30歳。ココくん16歳。月の法律では、16になれば結婚が可能だ。マリアナさまはココくんの嫁、もしくはココくんがシェーラー家に婿入り計画。マリアナさまとココは、まったく知らない関係ではない。マリアナさまは、ココがまだ赤ちゃんの頃から知っている。さらにココは、ハグしたくなるほど可愛い少年だ。母性本能を最大限に擽(くすぐ)る容姿は、いつもクラスの女子に人形の様に抱きしめられていた。他の男子の嫉妬心に火はつけていたが。そんな愛おしい乳兄妹を、マリアナに差し出すのは、心が痛むが、でもここは耐え忍んで、ルキ家を背負うココと、ずっと一緒に居られる訳ではない。限られた時間の限られた関係。せめてココの素敵な未来を信じたい。エミリアは、ウェディングドレスを着るマリアナとココを想像した。「ん?」コックピットのココが何かを察知したらしい。ボーとしているようで、意外と感は良い。つづく【エイミア・サトー】ココ・ルキの幼馴染。他称・まあ出来る子。【ココ・ルキ】落ちぶれ貴族ルキ家の次男。他称・まあ出来ない子。【サネトモ・トキトウ】エイミア&ココと同期のパイロット。もっとも優秀な同期。【ユージン・カイム】エイミア&ココと同期のパイロット。もちろん友人は皆無。【シェーラー家のマリアナ】ココが好き。トレーディングカードやフィギュアなどのホビーグッズが激安!あみあみ 楽天市場店
May 2, 2023
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味方の強行偵察型ゼムが放ったアンチ光学迷彩弾が輝き、地球連邦の宇宙機動空母艦隊の姿が露わになった。ワルキューレ級宇宙空母の大きさは半端ない。それに対して、光学迷彩モードで、姿は見えないゼム戦闘群は、突撃陣形を整えを終えていた。「38ゼム戦闘群、第一波攻撃開始!」ゼムの無線機から命令が伝えられた。サネトモ・トキトウ少尉にとっては初陣。身体の奥が震えていた。仲間といる時は、強がってはいたが、やはり怖い。トキトウは、強くアクセルを踏んだ。まだ光学迷彩モードで、こちらの姿は敵には見えてないが、味方の姿を確認することも出来ない。味方が本当にいるのか?隣を見ても誰も見えない。まるで単機で、空母機動艦隊に突入している気がして心細くなる。光学迷彩戦をどのように戦うべきか、まだ誰も理解してはいない。心の準備をする間もなく、目の前に敵の姿を確認した。敵は、マシンガンを構えて警戒していた。目の前にいるトキトウ機の存在には気づいていないようだ。シュミレーション通りにゼムの戦斧が敵を叩ききった。その瞬間、アンチ光学迷彩弾が辺りを照らした。実感はなかったが、アンチ光学迷彩弾を浴び、自身のゼム機の姿が露わになり、それが事実だと解った。破壊した敵の機体を蹴飛ばし、周囲を確認した。アクセルを踏み過ぎて、味方から突出していることに気付いた。周りは敵だらけだ。多くの殺気を向けられている事実に嫌な汗が流れた。俺は初陣で死ぬのか?その時何かがゼムに引っかかり、激しく引っ張られた。音速を超えるソニックの衝撃音が響いた。無線から同期のカタリナ・ヒメネス少尉の可愛い声がした。「トキトウいつも言ってるでしょう!周りの空気を読めって、1人で飛び出したりして!」何も見えないのに、周りの空気を読め?日常でも空気を読むのが苦手なトキトウには無理難題だ。トキトウ機は、まるでエイの様な前線管制戦闘機に掴まり、敵の包囲から脱出した。音速を超える前線管制戦闘機の速度には、誰もついては来れないらしい。「助かった」危険を顧みず助けてくれた同期のヒメネスに、トキトウは涙した。士官学校時代もそれ以前も、優秀なキャラとして生きてきた。実際優秀だったし、それが、こんなミスをして死にかけて、さらに誰かに助けられて、涙するなんて、心の中で何かが崩れ去って行った。「泣かないの、ここは戦場よ」カタリナ・ヒメネスの可愛い声が聞こえた。すぐに戦闘に参加すべく、マシンガンを構えたが、「38ゼム戦闘群、第一波攻撃終了、全機散会撤退せよ!」無線が告げた。まだ戦域には宇宙空母ワルキューレは健在だった。第一波攻撃程度で、落とせるような存在ではないらしい。☆彡トキトウは、この戦闘で一番槍の栄誉を受けた。「さすが月に愛された世代だ」と。そういう事ではないのだが。つづくトレーディングカードやフィギュアなどのホビーグッズが激安!あみあみ 楽天市場店
Apr 16, 2023
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月の裏側コロリョフ盆地の、訓練空域を飛行する桃色の是無(ゼム)。是無(ゼム)と呼ばれる大型の人型兵器は、光学迷彩使用時はもちろん透明なのだが、通常は色が着いている。訓練用の複座式ゼムは、車の様に、二人並んでまるでドライブデート気分だが、月面への着陸が上手くできず、地面に倒れ込んでしまった。月面着陸は初歩の初歩なのだが。「出来ない。出来ない。ぜんぜん出来ないよー」と操縦席で泣いている少年は、ルキ家の次男。【自称・やっても出来ない子】ココ・ルキ(16)。「泣かないの」と教官席であやしている少女は、【他称・まあ出来る子】エミリア・サトー(16)。2人は乳兄妹の仲だ。現在、士官学校のパイロット課程追試を控えての補習中だ。ココは人前だと泣くことはないが、2人きりだと、すぐ泣いてしまう。「甘やかせ過ぎかも」とエイミアは思うのだが、物ごころ着いた時からそんな関係だし、今更仕方がない。「ゼムが僕の言う事を全然聞いてくれない!絶対シンクロ率ゼロだって!」ココは世界とのシンクロ率が大体低めだ。エイミアがいないと、大体、悪そうな人に苛められてる。ココの頭を撫でると、ココは少し落ち着いた。「僕、もういいよ」「ココには、ルキ家の復興が掛かってるのよ」「それも含めて、僕、もういいわ」「カルル少佐だって、戦場の戦いで勝って出世したんだよ。だからココも戦場で勝って出世を」エミリア・サトーの家は代々軍人の家系だ。ゆえのこの思考。「カルル少佐は、士官学校を1位で卒業。僕は、課程すら落としそう。出来が違うんだよね。士官学校だって、ルキ家のコネで入ったんだろう、とか言われてさ」「ルキ家のコネだなんて、そんな噂に過ぎないよ。信じちゃダメよ」嘘は!言ってない。ルキ家のコネではない。シェーラー家のコネだ。理由は解らないが、シェーラー家のマリアナが動いたらしい。落ちぶれたルキ家に、利用価値があるとは思えないのだが。つづくトレーディングカードやフィギュアなどのホビーグッズが激安!あみあみ 楽天市場店
Mar 19, 2023
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見上げる空の向こうに敵がいる恐怖は、宇宙に住む人には解らないと思うよ。士官学校同期のエイミアが言っていた言葉を思い出した。「宇宙に住む人」遠い昔の人にとってはSFに過ぎなかった話だ。人類が月に住むようになって15年。その月で生まれた最初の世代は、月に愛された世代と呼ばれ、特別視される感があったが、実際は何も変わらないので、多少照れ臭かった。その世代のユージン・カイムは、強行偵察型ゼムで、1人、宇宙空間を漂っていた。是無(ゼム)とは、人型の大型兵器だ。ステレス技術と光学迷彩技術が高度化したため、接近戦を強いられるようになった結果、人型の大型兵器が開発された。宇宙の暗闇の中、地球連邦の艦隊が通り過ぎるのを、成りを潜めて待機していた。宇宙空間の冷たい暗闇が孤独感を強めた。しかしユージン・カイムに取って、それはとても心地よいものだった。逆に大勢の人の中いる時の方が、孤独を感じてしまう。ユージン・カイム。漢字表記するとして【友人皆無】になるが、それはそれだ。漢字圏の人間ではないユージンには関係のない事だ。ただユージン・カイムに友達が1人もいないのは事実だが。早期警戒機から敵艦隊接近の情報が届いた。「さて」ユージン・カイムは1人呟いて、強行偵察型ゼムを動かした。強行偵察型ゼムが、連邦の艦隊がいるかも知れない宙域に突入した。敵艦隊自体は光学迷彩化されており見えない。もちろんこちらの姿も見えない。ただ音は完全には消せない。なにせ大型の宇宙要塞だ。加速する強行偵察型ゼムのコックピットで、カイムは耳を澄ませた。強行偵察機が飛んできたからと言って、迎撃をしたりはしない。そんな事をしては、自分はここにいますよ!と言ってるようなものだ。今、地球の潜水艦の様になりを潜めているに違いない。高感度の集音マイクで、それらしき音は拾えなかったが、ユージン・カイムは直感で、アンチ光学迷彩弾を四方に発射した。まるで見えないドアをノックするかのように。宙域が閃光に包まれ、敵の影が映し出された。「いた!」間違いない空母機動艦隊だ。その姿は8つのカメラにより撮影され、解析されたデータは、近くにいるであろう早期警戒機に送られた。姿をさらされた連邦の戦闘機と連邦のゼムの横をすり抜けた。宇宙要塞ブールタング級の周囲に展開する対空艦の対空砲が、強行偵察型ゼムへ浴びせられた。「当たらないんだな、これが♪」強行偵察型ゼムの機動力とフットワークの軽さは、簡単には撃ち落とせない。しかし、Gが半端ない。それが解っているにも関わらず、よりGが高い操縦をしてしまう自分がいる。意識が飛びそうになる程のGは、快感でもある。敵の砲撃を躱しながらも、カメラは全自動で連写され続けた。宇宙要塞ブールタングに待機していた敵のゼム群が飛び出し始めた。しかし残念ながら、護身用の武器しかない強行偵察型ゼムが、この宙域に留まるのは危険すぎる。強行偵察型ゼムは、素早く戦線から離脱した。姿を晒された地球連邦の艦隊は、その直後、宙域に突入してきた月面都市連合のゼム戦闘群の、攻撃に晒された。ゼム戦闘群の第一波攻撃が終了する前に、ユージン・カイム機は、味方の巡洋艦に着艦した。つづくトレーディングカードやフィギュアなどのホビーグッズが激安!あみあみ 楽天市場店
Mar 5, 2023
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是無(ゼム)と呼ばれる大型の人型ロボット兵器は、光学迷彩兵器だ。光学迷彩とステレス技術の発展は、戦争の形態を進化させた。いや戦術的には退化させたと言うべきなのかも知れない。人類が月に移住して半世紀。水の惑星の地球は美しい。それに異論はない。それが地球連邦政府となると話は別だ。1月前、月面都市連合は、地球連邦政府に宣戦布告した。つづくトレーディングカードやフィギュアなどのホビーグッズが激安!あみあみ 楽天市場店
Feb 21, 2023
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