とちめんぼう

雑誌


「アスペルガー症候群を究める1」
 現代社会の様々な問題を毎回取り上げ特集している雑誌。
 最近のバックナンバーを調べると医学、特に精神医学に関するテーマが多いようである。
 「アスペルガー症候群」という用語がセンセーショナルに使われたのは近年少年犯罪とのかかわりで新聞記事でも取り上げたのが。(ただアスペルガー症候群の人の犯罪比率は低く、少年犯罪とのかかわりのなかで誤解・偏見が広まるのは非常に不安である)
簡単に言うと「自閉症の中で知能・言語機能に障害のないもの」を指す。(原因は不明だが、遺伝的素因・周産期や出産時の脳の微小な損傷・出産後の脳の損傷などさまざまな原因が組み合わさっているとされる。)
 しかしこの雑誌でも鑑別や他の類似の障害との区別の是非など専門家でも意見が分かれており、定義や診断にまだまだ様々な説があるようだ。
 雑誌の内容は、巻頭に専門家の対談を掲載、後は専門家による20本の短い論文。
わかりやすさを意識したのか、アスペルガー症候群研究の歴史や解説に紙数を割いている論文が多く、重複が残念だが、ここにそれぞれに筆者の解釈の違いを見出すこともできる。
アスペルガー症候群の入門書としては、多少不親切かもしれないが、特定の解釈・学説に偏らないという点ではいいかもしれない。
 ざっと読んで感じたことは
・他の自閉症スペクトラム(この言葉も流派によって使う人使わない人がいるらしい)
との鑑別の基準が確立されているようで実は意見が分かれていること
・統合失調症(障害ではなく病気)とアスペルガー症候群(病気ではなくて障害)との関連が書かれていることが意外だったこと
であった。
 余談だが、神林長平『戦闘妖精雪風』シリーズ(単行本は第1作『戦闘妖精雪風』第2作『グッドラック 戦闘妖精雪風』、SFマガジンで第3部を連載開始)とアスペルガー症候群との関わりについて書いてみる。
この小説は地球と超空間通路でつながれた異星「フェアリィ」で正体不明の敵「ジャム」と戦うパイロットを描いたSFである。主人公の属する部隊は戦闘の偵察を任務とし、その任務の性格上、きわめて冷淡かつ合理的な非人間的ともいえる人格の隊員が集められた舞台である。第1作は20年以上前の作品であり、作者がアスペルガー症候群のことを知るはずもないのだが、第2作では、場の空気が読めずに自分の興味の対象だけを語る人物や、相手の感情を考えずに思ったことを無遠慮に主張する人物、というアスペルガー症候群を思わせる登場人物が現れる。
 強調しておくが、アスペルガー症候群の人というのは利己的とか自分勝手というのとは違い、彼らは本当に相手の気持ちが読めないだけなのである。そのために対人関係でいらぬ摩擦を引き起こすことになる。
 連載の始まった第3作ではある重要な登場人物について「幼い頃からじっとしていられない子で、出産時の脳の微小な損傷によるものらしい」という意味の記述があり、明らかに作者が微細脳機能障害(アスペルガー症候群を含め、軽度の発達障害をひとくくりにした一昔前の用語)を意識していることがうかがわれる。ただこの登場人物は諜報活動にたずさわってきた人物である。嘘や冗談がいえないアスペルガー症候群が諜報活動に向いているとは思えないので、作者は他の障害を念頭においているのかもしれない。
 さて、この小説では正体不明の敵「ジャム」が以上の特異な性格の登場人物たちに好んで接触を試みてくる。アスペルガー症候群とは断定できないが、これらの特異な性格の登場人物が作品の重要な鍵を握るというのがまことに興味深い。

J-WINGS 8月号「特集 米軍再編・航空偵察」
 先日たまたま犬養孝「万葉のいぶき」の一部を読んだら
鹿児島知覧飛行場の特攻隊の話題が出ていて、
たまたまこの雑誌にも映画の知覧ロケの写真が。
映画は石原慎太郎制作「君のためにこそ死にに行く」
 なんか特攻を美化するような風潮があるような気がしていやだなあ。
リメイク版「日本沈没」も……ネタバレになるのでむにゃむにゃ。




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