カナダ出身の超絶技巧派バンドにして最強のトリオである。まもなくデビュー30周年を迎える、そして未だに第一線で活躍し続ける「BAND OF THE BAND」である。しかし誠に残念なことに、日本での彼らの知名度は驚くほど低い。欧米ではROCK FANならば知らぬものなしのバンドであるにもかかわらずである。ひとつにはこれだけ長い活動歴の中で、来日したのはたったの1度だけなのである。1984年日本武道館において行われた公演のみである。もう18年も前のことなのです。観に行きました。感動しました。驚嘆しました。筆舌に尽くしがたいというのはまさにこのことであります。
【FLY BY NIGHT】1975 1. ANTHEM 2. BEST I CAN 3. BENEATH, BETWEEN & BEHIND 4. BY-TOR & THE SNOW DOG ⅰ AT THE TOBES OF HADES ⅱ ACROSS THE STYX ⅲ OF THE BATTLE ⅳ EPILOGUE 5. FLY BY NIGHT 6. MAKING MEMORIES 7. RIVENDELL 8. IN THE END
現在のRUSHの実質的にデビューアルバムだろう。まず1曲目から前作の雰囲気とまったく変わってしまっている。ドラムスが手数が多くなってリズムパターンが多彩になり、曲中にリズムの変化が見られるようになる。よりハードになりつつも、少しずつRUSHらしさが現れてきているように思う。何よりも4曲目の「BY-TOR & THE SNOW DOG」で、さっそく組曲形式の楽曲が現れた。初期のもっとも顕著な傾向である。3曲目の「BENEATH,BETWEEN & BIHIND」にいたっては未だにライブで演奏される曲である。ここではまだ全曲NEILによる作詞ではないが(「BEST I CAN」「IN THE END」はGEDDYによる)かなり影響が感じられるものとなっている。 作詞を持ち回りでやっていたGEDDYとALEXは、いつも本を抱えているNEILを見て 「こいつ頭良さそうじゃん」 みたいなノリで頼んだところ、NEILは嵌ってしまった。というのが経緯らしい。 前作ではリミックス担当であったTERRY BROWNが共同プロデュースで名を連ねている。
【CARESS OF STEEL】1975 1. BASTILLE DAY 2. I THINK I’M GOING BALD 3. LAKESIDE PARK 4. THE NECROMANCER ⅰ.INTO DARKNESS ⅱ.UNDER THE SHADOW ⅲ.RETURN OF THE PRINCE 5. THE FOUNTAIN OF LAMNETH ⅰ.IN THE VALLEY ⅱ.DIDACTS AND NARPETS ⅲ.NO ONE AT THE BRIDGE ⅳ.PANACEA ⅴ.BACCHUS PLATEAU ⅵ.THE FOUNTAIN
【2112】1976 1. "2112" ⅰ. OVERTURE ⅱ. THE TEMPLES OF SYRINX ⅲ. DISCOVERY ⅳ. PRESENTATION ⅴ. ORACLE : THE DREAM ⅵ. SOLILOQUY ⅶ. GRAND FINALE 2. A PASSAGE TO BANGKOK 3. THE TWILIGHT ZONE 4. LESSONS 5. TEARS 6. SOMETHING FOR NOTHING
【HEMISPHERE】1978 1. CYGNUS X-1 : BOOK TWO - HEMISPHERE ⅰ. PRELUDE ⅱ. APOLLO Bringer of Wisdom ⅲ. DIONYSUS Bringer of Love ⅳ. ARMAGEDOON The Battle of Heart and Mind ⅴ. CYGNUS Bringer of Balance ⅵ. THE SPHERE A Kind of Dream 2. CIRCUMSTANCES 3. THE TREES 4. LA VILLA STRANGIATO (An exercise in Self-Indulgence) Including ⅰ. BUENOS NOCHAS, MEIN FROINDS! ⅱ. TO SLEEP, PRECHANCE TO DREAM... ⅲ. STRANGIATO THEME ⅳ. A LERXST IN WONDERLAND ⅴ. MONSTERS! ⅵ. THE GHOST OF THE ARAGON ⅶ. DANFORTH AND PAPE ⅷ. THE WALTZ OF THE SHREVES ⅸ. NEVER TURN YOUR BACK ON A MONSTER! ⅹ. MONSTERS!(REPRISE) ⅹⅰ. STRANGIATO THEME(REPRISE) ⅹⅱ. A FAREWELL TO THINGS
ご覧のとおり前作の最後の曲の第2章からこのアルバムは始まっている。そして組曲形式の曲作りもこのアルバムを以って終了となる。というのもNEILの文学的興味の対象が18世紀装飾文学から、20世紀アメリカ文学へと変わってきたからである。より簡素化された文によって自らの哲学を表現することへ志向が変化をしていく過渡期の作品とも言える。その置き土産として18分にも及ぶ大作が収められたこの作品は、もうひとつの新しい挑戦がある。4曲目の「LA VILLA STRANGIATO」はRUSH初のインストルメンタルである。その当時における演奏技術、作曲能力、アレンジ能力すべてを出し切っていると言っても過言ではない至極の1曲である。パートが12に分けられているが曲調が少しずつ変化していくのが良くわかる。 ここで少し、当時の彼らの使用機材を見てみると、
ALEX LIFESON 6 & 12 string electric & acoustic guitars, classical guitar, Roland guitar synthesizer, Taurus pedals
GEDDY LEE bass guitar, Mini-Moog, Oberheim polyphonic, Taurus pedals, vocals
【PERMANENT WAVES】1979 1. THE SPIRIT OF RADIO 2. FREEWILL 3. JACOB’S LADDER 4. ENTRE NOUS 5. DIFFERENT STRINGS 6. NATURAL SCIENCE ⅰ. TIDE POOLS ⅱ. HYPERSPACE ⅲ. PERMANENT WAVES
【GRACE UNDER PRESSURE】1984 1. DIATANT EARLY WARNING 2. AFTERIMAGE 3. RED SECTOR A 4. THE ENEMY WITHIN 5. THE BODY ELECTRIC 6. KID GLOVES 7. RED LENSES 8. BETWEEN THE WHEELS
【POWER WINDOWS】1985 1. THE BIG MONEY 2. GRAND DESIGNS 3. MANHATTAN PROJECT 4. MARATHON 5.TERRITORIES 6. MIDDLETOWN DREAMS 7. EMOTION DETECTOR 8. MYSTIC RHYTHMS
共同プロデューサーがまた変わり、PETER HENDERSONからPETER COLLINS(ニック・カーショウ、トレイシー・ウルマンその後ゲーリー・ムーア、タイガーズ・オブ・パンタンなどを手がける)に変わった。新しい環境から新しいものを生み出そうとするRUSHの前向きな姿勢からのことと言うことだ。【SIGNALS】【GRACE UNDER PRESSURE】とギターが曲の中に溶け込んであまり目立たなかったが、このアルバムではまた前面に押し出されてよりパワーアップした印象になっている。アルバムごとに何かしら変化をつけて我々を楽しませてくれる。今まで以上に曲の構成がすっきりしてシンプルになったように聴こえるが、聴き込んで行くと歌詞のパートごとに、曲のパートごとにリズムや曲調が微妙に時には大胆にアレンジを変えていて、聴き様によってはこれまでよりも複雑になっているかもしれない。 歌詞にいたっては、益々シンプルな単語を使うようになってきてはいるが、そのあらわすところは痛烈な風刺になっていたり、暗喩が含まれた深い意味を持つものとなっている。これまで以上に深い観察力と洞察力によってシャープな表現となってきているようだ。
【HOLD YOUR FIRE】1987 1. FORCE TEN 2. TIME STAND STILL 3. OPEN SECRETS 4. SECOND NATURE 5. PRIME MOVER 6. LOCK AND KEY 7. MISSION 8. TURN THE PAGE 9. TAI SHAN 10. HIGH WATER
【PRESTO】1989 1. SHOW DON’T TELL 2. CHAIN LIGHTNING 3. THE PASS 4. WAR PAINT 5. SCARS 6. PRESTO 7. SUPERCONDUCTOR 8. ANAGRAM(for Mongo) 9. RED TIDE 10. HAND OVER FIST 11. AVAILABLE LIGHT
【ROLL THE BONES】1991 1. DREAMLINE 2. BRAVADO 3. ROLL THE BONES 4. FACE UP 5. WHERE’S MY THING ? (PART Ⅳ,"GANGSTER OF BOATS"TRILOGY) 6. THE BIG WHEEL 7. HERESY 8. GHOST OF A CHANCE 9. NEUROTICA 10. YOU BET YOUR LIFE
また少しシンプルになったようだ。というよりも派手な装飾を出来るだけ排除して、どちらかと言うとミドルテンポのグルーヴ感をより意識しているように感じる。ここのところの傾向であったが、このアルバムではアコースティック・ギターがかなりフィーチャーされている。そして何よりもプロダクツの表示がこれまでになくシンプルになって、シンセサイザードラムはついに姿を消してしまった。その上でこの音の厚さである。サウンドの構築にさらに磨きがかかったと言えるだろう。ミュージシャンとして純粋に楽器の演奏への欲求と情熱がここでまた具現化することになる。インストルメンタルが新たに1曲生まれた。"WHERE’S MY THING?"「あれはどこにいった?あれだよあれ・・」みたいなニュアンスだろうか。なかなか粋なタイトルである。 それ以外にも、歌詞の面では現実へのアンチテーゼや未来への危惧、継承、希望と言った我々あるいは自分たちへの提言のような内容が多くなってきている。英語そのもののニュアンスを汲み取れないのが残念でならない。
【COUNTERPARTS】1993 1. ANIMATE 2. STICK IT OUT 3. CUT TO THE CHASE 4. NOBODY’S HERO 5. BETWEEN SUN & MOON 6. ALIEN SHORE 7. THE SPEED OF LOVE 8. DOUBLE AGENT 9. LEAVE THAT THING ALONE 10. COLD FIRE 11. EVERYDAY GLORY
【TEST FOR ECHO】1996 1. TEST FOR ECHO 2. DRIVEN 3. HALF THE WORLD 4. THE COLOR OF RIGHT 5. TIME AND MOTION 6. TOTEM 7. DOG YEARS 8. VIRTUALITY 9. RESIST 10. LIMBO 11. CARVE AWAY THE STONE
90年代に入ってアルバムを出すごとに音が厚く重くなってきている。ギターのエフェクトのかけ方、ベースのバランスなど、これまでとは明らかに変わってきている。NEIL PEARTの紡ぎだす詩の世界は、益々洗練されより直接的に、より辛らつに我々に語りかけてくる。心の片隅で現実の世界を憂いているように受け取れるのは錯覚ではないはずである。その歌詞の数々をよりハードでパワフルな曲に載せて迫ってくるのだから圧倒される。 そして、NEIL PEART自身による解説「TEST FOR ECHO 公式ガイドブック及びユーザーズ・マニュアル」と題されたものを見てみると、レコーディングの過程を赤裸々に語られていて、こういったものを見るのもマニアとしてはうれしい限りである。楽しんで制作に励んでいるのが良く伝わってくる。
【VAPOR TRAILS】2002 1. ONE LITTLE VICTORY 2. CEILING UNLIMITED 3. GHOST RIDER 4. PEACEABLE KINGDOM 5. THE STARS LOOK DOWN 6. HOW IT IS 7. VAPOR TRAIL 8. SECRET TOUCH 9. EARTHSHINE 10. SWEET MIRACLE 11. NOCTURNE 12. FREEZE (Part Ⅳ of "Fear") 13. OUT OF THE CRADLE