As a woman

栗の実・・・その弐

前回の続き...

二人の両手でも
抱えきれないほどの 栗の実を抱えて
長兄の家に戻ると

あのお嫁さんは 
まだ忙しそうに 料理を作っていた・・・


もう食べきれないのは わかっているのに 
いつまでも 台所から座敷に来られないお嫁さんに
さぞ お疲れのことでしょう と思い
同じ嫁同士、思い切って
初対面だけれど 私から声をかけてみた。



「あの~。東京にいらしたこと あるんですってね」


振り向いた彼女は パッと明るい表情になり
私に 笑顔で こう答えてくれた。


「うん。新婚当初だけね。
 仕事の関係で 東京で ちょこっとだけ 二人で暮らしたの」


その ちょこっとだけの~ 数年間が、
彼女の 夫婦水入らずで過ごした 
唯一の期間だったと言う。

それからは ずっとこの 旦那様の実家に入って 
大家族で暮らしているから...

と、まな板の上で まだ包丁を動かしながら 
子供のことやら ここでの生活やらを
ゆっくりと 話してくれた。


「結婚したときね... お料理作るでしょ。
 テーブルに並べて、さあ食べよう!
 と思って行くと

 この人ったら もうすっかり食べちゃって...
 ...一人で 私の分まで食べちゃうのよ」


「え?」


「お料理作った後に 
 ちょっとでも片付けてから座ろうとするとね、
 洗い物の時間がかかるでしょう。

 だから それを 待ちきれなくて~
 一人で全部食べちゃってね。
 飲んでるし・・・」



「ええ... 」


そういいながら 
旦那さまのそばに歩み寄り

襟足に びっしりと...
粉をふいたようにまとわりついている 
真っ白い~  <ふけ>を 
慣れた手つきで 彼女は ささっと払った・・・


会った時から 
ずっと気になっていた あのふけを~

彼女は 普通のことのように・・・ 
ちょっと私に気を遣うような目を向けて 
勢い良く~払いのけた


襟元を払ってもらいながら~照れ笑いの長兄を見て 
何故か私は背筋がぞっとした...


彼女は 今 幸せなのだろうか...
女性の幸せってなんだろう...

ふけを払いのけるように~
彼女は 自分の身の上に置かれた様々なもの事を
当たり前のように振り払って~
幸せに暮らしていると伝えてくれたのだろうか...

それとも 
この生活に溜まった多くのストレスを
彼の肩に付着したふけと共に
払い除けたかったのだろうか...


私には~
今見ているこの境遇を
もしも・・・自分がここに置かれたら~
すんなりと 受け入れる事が出来るのだろうか...



話が続けられなくなったので
庭に並べられた 驚くほどたくさんの植木鉢を
~立派に育てられた~菊の鉢を眺めていた...



(もう少し続きそう...)





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