短編集『小さな夏の思い出』


どうも0Zです。久々の短編と言う事で、短編の中では長い方になるかもしれません。
今回は今までよりちょっとちゃんとしてるので簡単なキャラ紹介も入れておきたいと思います。

では

主人公「進藤直行(シンドウ ナオユキ)」
高校1年、ちょっと意地悪(小鳥に対して)な男の子。
小鳥とは幼馴染でいつもからかってはケラケラと笑っている。


「小島小鳥(コジマ コトリ)」
高校1年、直行の幼馴染。ぽけぽけした天然系の女の子。
直行にからかわれてばかりでむっとしているが
その反応こそが一番楽しまれているのに気付いていない。


「斎藤大樹(サイトウ ヒロキ)」
同じく高校1年で直行の友人。クラスのムードメーカーで人気者。だが彼女はいない・・・

「飯村春奈(イイムラ ハルナ)」
同じく高(ryで小鳥の友人。さっぱりして男女共に人気がある。男っぽいと言われる事もあるが彼女もどうやら恋をしているらしい・・・


―――――――――――――――――――――――――――――――――

暑い・・・暑過ぎる。この夏セミ達も狂った様に鳴き騒いでいる。まぁ短い命、頑張れや。

暑さと騒音という最悪の状況から始まった目覚め。さらに止めを刺すように「♪~」

携帯電話が鳴り響く。起きたばかりの耳にキーの高い着信音が響き急激に現実へと呼び起こされる。

こんな時間に電話をかけるような輩はただ一人、液晶に表示された予想通りの人物の名前を見て溜め息をつく。

「ことり」画面一杯に表示されたその名前は俺の幼馴染だ。仕方なく通話ボタンを押す。

「もしもし?」「ナオ君おはよー!」「・・・」朝からイタイ程のハイテンション。一体コイツは何時に起きたんだ?

「?ナオ君元気無いね、風邪?」ったく、コイツは人を心配してるんだかしてないんだか・・・原因はお前だっての。

「あーそうなんだ、病気病気。」「えぇー大変!!」受話器越しに本当に大変そうにした小鳥の声が響く。

「病名は『小鳥大っ嫌い病』って言ってな、お前の声を聞くと頭が痛くなるんだ。」

「なにそれー、ひっどーい。」今度はむすっとした声が耳に痛い程に届き思わず携帯を遠ざける。

「こんな朝から電話してくんなよな、毎日毎日毎日!」「だってそうでもしないとナオ君起きないじゃない。」

「電話じゃなくてもアラームとかかければ起きれるっつーの。つーか切るぞ、切って良いか?」

「駄目だよー。」「もう起きたんだから良いだろ。じゃあな。」ぶつっと強制的に電話を切る。

まったく。小鳥と言う奴は俺が「幼馴染」だと言うだけであそこまで喧しい程に構って来る。

兎に角朝食を取って身支度を整える。出発の時間になり玄関に移動するとドアの向こうに小さな人影が見える。

まぁ何時もの事なのだが、そして向こうも俺の存在に気付いたらしく何やらパタパタと動いている。

玄関は1つしか無いので仕方なくドアを開け外に出る、とそこにはやはり小鳥がいた。

俺の肩ぐらいまでしか身長の無い小さな、まさに小鳥。「おはよ、ナオ君。」「あーおはよぅ」ダルさMAXで挨拶をしてやる。

「学校行こ?」「言われなくても行くっての。」俺に拒否権は無く2人で学校ヘ向う。しかし暑い・・・

「あちー」ジワジワと汗が滲み出し俺はワイシャツのボタンを開けてパタパタとあおぐ。

「ナオ君、行儀が悪いよ。」「だってあちーじゃん。小鳥は暑くねーのかよ?」「それは、暑いけどだって夏は暑いものじゃない。」

全く物凄い割り切り様だ。本当にこいつは何が起きてもしょうがないの一言で済ませてしまいそうだ。

それから程無くして学校に到着する。学校につくとそこには丁度大樹が居た。

向こうもこちらに気付いたらしくニヤニヤと手を振っている。「よぉ、お2人サン、この猛暑の原因は君らかな?」

「冗談じゃねぇっつの。朝から馬鹿言ってんなよ。」「ヒロ君おはよー」小鳥は大樹の茶化しなど全く無視。

全く呑気と言うかマイペースと言うか、阿呆だな。それが一番似合ってる。「行くぞ大樹。」

小鳥を無視する様にすたすたと歩き出す。大樹は俺の事を良く知っているから苦笑いをしつつ黙ってついて来る。

すると案の定「ちょっと、待ってよナオ君ー。」こいつも俺とは長い付き合いなのだから俺の事は良く知っている筈なのだが

一向に俺の意地悪に対する免疫が無い。全くもってガキな奴だ。そしてこれからの俺のパターンは1つ。

バリエーションが少ないとかではなく小鳥相手にはこれで事足りるからだ。

「ん?何か声が聞こえるんだが・・・誰も居ないよな?なぁ大樹?」大樹は1回ちらりと小鳥を見てから苦笑いをした。

そして暫く経ってから「おっと、こんな所に!小鳥、居たのか。スマン全く気付かなかった。許せ。」

そう言って誠意ゼロで手を合わせる。小鳥は顔をぶーっと膨らませ「もぅ、ナオ君の意地悪!」

そう言ってぺちんと俺の腕を叩く、が全く痛くない。そうこうしている内に教室に辿り着く。

「おー小鳥、大樹。おはよー」教室に入るなり女の声が響く「おはよーハルちゃん。」「おっす春奈。」

「おい、重要な人物が一人抜けてるぞ。」「あら、直行君、いたの?」嫌味MAXで横目で俺を見る。

この憎たらしい女は飯村春奈。大樹と共に中学からの友人だ。大樹曰く俺を女にした感じだろ、らしいが

俺はこんなに嫌な奴では無いだろ。多分・・・とりあえずこうして今日もバタバタした一日が始まる。

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待ちに待ったチャイムが鳴り響き昼休みの開始を告げる。俺はぐーっと伸びをして疲れを取る。

程無くして皆が集まって来て、何時ものように机をがちゃんと繋げて4人で弁当を食べる。

適当に会話が盛り上がる中で俺は小鳥の弁当箱から隔離されていた卵焼きをひょいと口に運ぶ。

「あーー!私の卵焼き・・・」「うむ、美味い。」ぐっと親指をたててグッドサイン。

「最後に食べようと思って取っておいたのに・・・」見るとその目は段々と潤みを帯びている。

すると来たとばかりに春奈が割り込んで来る。「うっわ、直行サイアク。女の敵。」

「飯取ったら女の敵かよ。」「泣かせる事がに決まってるでしょ、この馬鹿。」まったく口の悪い。

しかし小鳥はと言うと今まさに涙が一粒零れそうな所まで来ている。「いや、そのスマン。俺が悪かった。これやるから。」

代わりに鶏の唐揚げをぽとんと1つ弁当箱に置いてやる。俺の唐揚げ・・・

すると流石にハイコストだっただけに小鳥の涙は一瞬の内に消え去って代わりに笑顔が浮かぶ。

「わー、卵が鶏に成長したー」手を合わせて喜ぶ様は周りから言わせれば「微笑ましい」との事だが俺から言わせれば頭が痛い。

「良かったねー小鳥。」小鳥に微笑みかけてから180度違う表情で俺をちらりと見る。してやったりと言う顔だ。こいつ・・・

まぁ結局それ以外は何事も無く昼休みは無事終わる。午後の授業を半分寝て過ごし俺の騒がしい一日は終わる。

「ナオ君、帰ろー。」小鳥がSHRが終わるなり俺に向かって来る。そしてこれも俺に拒否権は無い。

「ナーオ君、帰ろー。」嫌味ったらしく春奈が言って来る。「止めろ気持ち悪い。」


「ふんだ、小鳥は良くて私は駄目なんだ。」「比べんなよ。」「良いもん、大樹帰りましょ。」

大樹と帰ると言う事は=俺達とも一緒に帰る事となる。「お前もホント口減らない奴だよな。」

大樹が俺を向いて言う。「ん?春奈がか?」「お前だお前。」こつんと俺の額を小突く。

それから4人で一緒に帰る。何だかんだ言って俺はこの日常が大好きだった。

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翌日。

連日の暑さと毎日正確なモーニングコール。「おはよーナオ君。」「・・・切っても良いか?」「あぁう、早いよー。」

「どうせまた朝会うだろ?じゃあな。」今日も有無を言わさず切る。それから身支度を整え玄関へと向う。

そこには何時もの様に小鳥が居て「おはよう」と挨拶をする。俺も面倒臭そうに「おはよう」と挨拶をする。

それから2人で学校ヘ向かい、途中で大樹と出会いパーティは3人に増える。

そして学校につけば春奈がいて最終的にパーティは4人で固定。朝の大して余裕の無い時間でも適当に4人で会話を楽しむ。

かったるい授業は割愛、ようやく昼休みだ。机を繋げて4人で弁当を広げる。

「5時間目何だっけ?」「確か数学だったな。」「だりー」「アンタは何やってもだるいんでしょ?」

「失礼な。保体と美術は望む所だっつの。」「あっそ。」「自分から聞いといてそのリアクションはねーだろ。」

「所で、6時間目の国語って小テストだっけ?」「そうだよ、よく覚えてたねナオ君。」

何か引っ掛かる良い方だな。「お前はテストどう何だよ"島鳥"」俺の発言を受けて小鳥はぷーと頬を膨らませる。

島鳥とは俺が小さい頃につけた小鳥のあだ名だ。「小島小鳥」のだぶっている"小"の字を除いて「島鳥」

「島鳥って言わないでよー」当人は激しく嫌っているらしく手をバタバタと振って嫌がる様を体現している。

「ん?何だそれは。あーあれか?飛ぶのか?とうとう飛ぶのか?」「飛ばないもん、って言うか飛べないもん。」

「そりゃ、その重さじゃなー」「酷い酷いひどーい!」「どれ?」

重さを量るべく両脇に手を滑り込ませ軽く持ち上げる。「確かにそれ程重くは無いな。」

「ちょっと止めてよナオ君。恥かしいよー」耳まで真っ赤にして訴えて来る。振り解こうとじたばたと暴れる。

「おっ、今度こそ飛ぶのか?」「もうっ、ナオ君のばか!」俺から無理矢理離れベーと舌を出す。

「お前も好い加減小鳥ちゃんいじるの止めたらどうだ?」大樹が呆れた様に言う。

「そうだよ、小鳥がかわいそうじゃん。」少し複雑な表情で春奈が言ってくる。何だよお前ら。

「何?俺悪者?」「そう言う訳じゃ無いけどさ、もっと真っ直ぐ接してやれば良いじゃねーかよ。」

言いたい事は分かる。俺がこんな風に接するのは小鳥だけだ。でもそれは、幼馴染だから、

「全く、これは重症だね。」やれやれと肩を竦める春奈。「失礼な。」

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翌日

やはり暑い。そして五月蝿い。結構好きな曲の着信なのだが嫌いになってしまいそうな勢いだ。

別の着信に変えよう。「おはようナオ君。」「ふわぁ、おはよう。」欠伸混じりに言う。

「今起きたばっかり?」「あぁ。」「そっか、じゃあ早く準備しないとだね。」「そうだな・・・じゃあ切るぞ。」「あぁ・・・ちょ」ブツ。

身支度を済ませ玄関で小鳥と挨拶を交わす。それから2人で歩き慣れた道を歩く。

途中で大樹を拾って学校で春奈と遭遇する。何時もと変わり無い日常。

そして何時もと変わり無いだるい授業・・・

8回目のチャイムを聞きようやく昼休みが訪れる。4人で弁当を囲み、話題は先ほど渡った昨日の国語のテストになる。

「大樹ーどうだったよ結果?」「62点。お前は」「ふふふ、64点!」「くそー負けた!」

「あんたら何低レベルな争いしてんのよ。」「そう言う春奈は何点だよ?」「わっ、私?私はー」

「よしッ、大樹取り押さえろ!」「ラジャー!」「ちょなっ!」机を漁り答案を掘り出し当てる。

「68点だ・・・」「ぷっ。」「"ぷっ"って何よ、このヴァカ!!」正拳突きが2発繰り出される。

「お前も十分低レベルじゃねーか。」「何よ、それでも勝ってるでしょ!?そうだ、小鳥は?小鳥は何点?」

「私?」黙ってその様を見ていた小鳥は急に話を振られて驚く。しかしその苦し紛れが失敗だったと春奈はすぐに後悔した。

「んーと、91点だったよ?」「「「!!!」」」そう、小鳥は国語と歴史だけは成績が妙に良い。

「どれ、見せてみろ!」パシンと答案を奪い取るが、やはり点数の欄には赤い文字で91点と書かれている。

しかし「ん?」「どうしたのナオ君?」「ぷっ、はははははははは」「うわっ直行が壊れた。」

「いや、お前だって、これ『小鳥小島』になってるぞ。逆じゃん!」そこにははっきりと「小鳥小島」と書かれていた。

「あっははははは、何だよコレ、何?これ英語のつもり?」ケラケラと笑う。「いっ、今は英語でもひっくり返さなくて良いんだもん!」

「いや、それ言い訳になってないぞ・・・」全く、本当にこいつは天然キャラだな。

「ナオ君の意地悪!」

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下校時間になりいつもの様に小鳥が俺の元に寄って来るが「ちょっと小鳥借りてくよー」

と春奈がしぶしぶの小鳥を連れて行った事により今日は1人での下校となる。「大樹まであっちサイドかよ。」

ぱしんと石ころを1つ蹴り飛ばす。家まで続けようと思ったが一発で溝に落ちてぽちゃんと音をたてる。

「ちぇっ。」


一方

「ハルちゃん、用事って何?」首を傾げる小鳥にびしっと一発「試して見る?」「???」

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翌日

「ナオくーん、おはよー。」何時にも増して甘ったるい小鳥のモーニングコール。

「切るぞ。」ブッ ツーツーツー

身支度を早々に終え玄関へ向う。やはりそこには小鳥がいる。「どうして電話すぐきっちゃうのー?」

「あんまり長く喋ってると遅刻しちゃうだろ?」「じゃあもっと早く起せばお話出来るね?」

「それは勘弁。」本当にこいつは天然だ。一緒に居ると疲れるとしか言い様が無い。

それでも一緒に学校ヘ向う。学校で大樹と春奈に会い挨拶を交わす。


昼休み

4人で弁当を食べる。いつも通り楽しく話をしながら長い時間をかけて弁当を食べ終わる。

すると春奈が何時も以上に真面目な表情をして俺に話し掛けて来た。

「何だ?告白なら放課後の方が雰囲気的に・・・」「馬鹿。」春奈は一瞬顔を逸らし緩めるが、次には再び真面目な顔になる。

どうやら本当に真面目な話らしい。教室を離れ誰もいない所まで歩いて行く。

「んで?話って何?」「あのね・・・」目線を合わせないまま口篭る春奈。俺は一応覚悟を決める。

「小鳥が、転校するんだって。」「・・・・・・は?」俺は我が耳を疑った。「何ソレ、冗談にもなってねーじゃん?」

「だから冗談じゃ無いんだって。」そう言う春奈の表情は・・・真剣そのものだ。「だってアイツ俺に何も言って無かったし、今朝だって普通だったじゃねーか。」

「アンタとは付き合い長いんだし、それが急に離れ離れになっちゃうんだもん。言い出せないだけでしょ。」

馬鹿ねとばかりに言い放つ。「まぁ後で小鳥からもちゃんと言ってくると思うから
、あんたも少しは考えておきなさいよ。」

「・・・何をだよ。」「ほんっと、素直じゃないのね!アンタって。見ててイライラしてくる。」

「勝手にキレんなよ。」「・・・じゃあ言うけどね、小鳥が、アンタにとってどう言う存在なのか、側に居て当たり前とか思ってるんじゃ無いの!?」

「ッ!?」春奈にきつく言われてハッとなった。確かに俺は、そう思っていたのかもしれない。

何時も俺の側にくっ付いて来る小鳥と言う存在を、幼馴染だからと当たり前に思っていたのかもしれない。

でも実際には、俺の側に小鳥がいるのは・・・小鳥が俺の側に来てくれるからだ。

何て事は無い、当たり前の事だ。俺は今まで甘えていたんだ、幼馴染と言う言葉に、小鳥に。

「ははっ、ダッセェの。」くるりと身体を反転しその場を後にする。

「ちょっと!」その場に残された春奈はただ呆然と直行の背中を見送った。その背中が見えなくなってからはぁと溜め息を吐いた。

「素直じゃない、か・・・人の事言えないっての。」

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教室に戻ると何時もと何ら変わりの無い様子の小鳥がいた。そんな様子がやはり信じられなくて俺はその顔をマジマジと見つめた。

「・・・ナオ君どうしたの?」見つめられ少し頬を赤くする小鳥。「なぁ小鳥?」「ん?何?」

俺の口は言葉を出そうと必死になるが魚の様にパクパクとなるだけだ。「・・・いや、何でも無い。」

「?変なナオ君。」「心配するなよ小鳥ちゃん。直行はいつも変だから。」「お前なぁ・・・」

反撃をしようと口を開いた所で春奈が教室に戻って来る。俺はあまり引きずるタイプでも無いがつい先ほどの事なので流石に気まずい。

「ちょっと小鳥借りてくよ。」小鳥の手を取って昨日と同じ台詞を言う。小鳥は何か心辺りがあるのか黙ってついて行く。

「何かあいつらおかしくねぇか?」残された大樹に尋ねるが「そうかぁ?」とはぐらかされる。

俺は本人には聞け無かった事をふと、口に出す。「なぁ・・・小鳥が、転校するって知ってるか?」

大樹は一瞬顔をそむけてから真面目な顔で俺に向き合って「何だ、春奈の話ってそれだったのか?」

「馬路、なのか?」「あぁ、そうらしい。随分と急な話だよな。」「何時なんだ、その・・・出るのは?」

「俺に聞くなよ。小鳥ちゃんの口から聞けば良いだろ?」「それは・・・」どいつもこいつも・・・

「分かったよ。」丁度こちらの会話が終わった所で2人も戻って来る。「ほらッ、行って来い!」

「俺は犬か?」「そんな可愛らしくないだろお前。」「くっ、・・・帰りに聞くよ。」「そうか・・・」

チャイムが鳴り響き昼休みも終わりを告げる。それから俺は午後の授業など全く身に入らなかった。

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帰り道、今日は大樹達が気を利かせたのか、小鳥と2人で帰る。小鳥の様子は、何時と少し違う様にも見えなくもない。

「なぁ、小鳥。」「・・・何?」「お前さ、転校するって本当か?」小鳥は俺の質問に下を向く。

それから溜める事数秒、ようやく口を開いた「うん、本当だよ・・・」「ぁ・・・そっか。」

頭の中が真っ白になる。今までずっと側に居た存在が、急に消える。「何処に行くんだ?」

「北海道だよ。えへへ、遠いよね。」笑って言うがそれが作り笑いだと俺でも分かる。

「何時行くんだよ?」「明々後日だよ。だから学校に来れるのは明後日まで。」「何でそんな急に・・・」

ポツリと呟く。「大丈夫だよ、離れちゃうけど、モーニングコールは毎日ちゃんとするから。他にも電話もメールも・・・いっぱいいっぱいするから。」

「あぁ、そうだな。」でも、小鳥には会えない。それが今は、とても悲しいと感じる。

家も近くなりここで俺達は別れる。「じゃあねナオ君。」俺はじゃあな、なんて言ったらもう会えなくなってしまうんじゃ無いかと思い

「また明日な。」と言って自分を誤魔化した。

小鳥が居なくなる・・・小鳥は俺にとってどんな存在なんだろう。

今までずっと一緒に居た、一緒に居る事を疑わなかった。

例えば大樹や春奈が居なくなったとして、確かにそれは悲しいと思う。でも今の悲しみとは何かが違う。

『素直じゃない』と言う春奈の台詞が頭の中で再生される。これは相当響いている。

「どこでこんな捻くれもんになったんだかね・・・」こんな自分が歯痒くてしょうがない。

俺は自分の中のそのもやもやしたフィルターを取り外す。俺が本当に思っていること。

それは・・・

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翌日

「と、言う訳で小鳥のお別れパーティーを開きたいと思います!!」放課後教卓に立った春奈が提案する。

今この場に小鳥はいない。本人には秘密にしておこうと言う事で「すぐ行くから玄関で待っててくれ。」といって外してもらった。

皆事情は知っていたらしくその提案に大賛成、時間も無い事により急ピッチに話は進んで行った。

テキパキと日程を進めて行く春奈。こう言う所でリーダーシップが良いんだよなぁ。

「にしても、手際良過ぎねぇか?」「早く決めないと小鳥ちゃんが怪しんで教室に帰って来ちゃうかもしれないだろ?」

「そりゃ確かに。」あまり待たせ過ぎるのも不味い。簡単な計画はたて終わりお開きとなった。

パーティーは明日の放課後。場所は春奈の家。「結構騒がしくなるかもしれないのに・・・平気なのか?」

「んー、大丈夫大丈夫。小鳥のためなら家の親だって簡単にOK出すって。」

それから俺は急いで玄関へと向かう。玄関に着くと若干頬を膨らませた小鳥が腰に手を当てて待っていた。

「おーそーいーよーナオ君!」「わりぃわりぃ。」片手を上げてごめんのポーズを取る。

「まっ良いよ。行こうナオ君?」「あぁ。」校門から離れて暫く歩いた所で「ナオ君。手、繋いでも良い?」

「何だよ、急に。」「急にじゃ無いよ。本当はずっと繋ぎたかったんだから。昔は普通に繋いでたじゃない。」

「何時の話だよそれ。」そうだ、昔は一緒に帰る時、手を繋いでた。でも俺が大きくなるにつれて「恥かしいじゃん。」と言って繋がなくなっていった。

「分かったよ」手を差し出すと小鳥は「えへへ、やった☆」と言って俺の手を握って来た。

小さくて柔らかいその手はとても暖かかった。手を繋ぐだけじゃない。小鳥に触れたのすら、何時ぶりだろう?

「小鳥の手、ちっちぇな。」「ナオ君の手はおっきいね。」「男だからな。」

いつもの様に言葉が出てこない。「あのさ、私達まわりの人はどう言う風に見てるかな?」頬を染めて言う小鳥。

「いや、人誰も居ないぞ。」「はぅあ!」「変な声出すな馬鹿。」「馬鹿って言わないでよー」

「スマン、訂正させてくれ。阿呆。」「さらに酷いよー!」

段々と恥かしさなど忘れ、何気無い会話が弾む。こうしていると忘れてしまいそうだ。

小鳥がいなくなるなんて・・・

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翌日

結局あまり寝る事も出来ずに今日になってしまった。今日の放課後、お別れパーティーが開かれる。

「♪~」いきなり携帯が鳴り響く。結局変え忘れていた着信音。「小鳥か。」

携帯を手に取り通話ボタンを押す。「おはようナオ君。起きてる?」「起きてるから電話に出てんだろ?」

「そうだね。でも今日は随分としっかりしてるね?」「結構早く起きたんだよ。それより小鳥こそ、いつもより早いんじゃねーの?」

今はまだ何時もよりも若干速い時間だ。「私も、ちょっと早く起きちゃって・・・」「そっか。」

「今日は切らないんだね。」「・・・切るぞ。」「あー、駄目ー。」「早く準備するから早く家来いよ。」「あっ、うん。」

そう言って電話を切った。電話を切るための口実だけじゃない。電話よりも実際の小鳥に会いたいと思ったからだ。

顔を洗って朝食を取りテキパキと身支度を整える。何時もより早く玄関へと向う。その先には既に小さな影があった。

「おっす小鳥。」「おはよ、ナオ君。学校行こう?」「言われなくても行くっての。」

2人で少し早めに学校ヘ向う。小鳥がちらちらと俺の手を見つめている。「ん、何だよ。」

「手、繋がないの?」「やだよ馬鹿。あれは・・・」「昨日は繋いでくれたのに・・・」

そう言って俺に訴えて来る瞳は今にも泣きそうだ。馬路かよ。「しゃーねーな。ったく。」

そう言いながら今度は俺から小鳥の手を握ってやった。幸い朝早い道は人通りが少ない。

これならそれほど恥かしくないな、と安心していると「今日はまた一段とあついですな、勿論気温がじゃなくて、ね。」

にやにやと茶化すような声が聞こえて来る。これは・・・「何だよ大樹。」「いや、仲が良い事は良い事だ。」

「訳分かんねぇよ。」「分かれよ。」「ヒロ君おはよう。」空気を全く読まない小鳥。

「お前、空気読め。」「へっ、何が?」「もう良い。」開いている方の手で目頭を押える。こいつは駄目だ。

「じゃあ俺が空気を読んで早々に去ってやるよ。学校でな~」「なんなんだあいつは・・・」

なんでアイツまで今日は早いんだよ。兎に角そのまま学校ヘと向かう。手はまだ繋いだままだ。

「なぁ、これ何時まで繋いでれば良いんだ?」「学校に着くまで。」「それじゃあ流石に人多いだろ。」「私は大丈夫だよ?」

「俺がだ、俺が。」「別に良いでしょ。お願い。」出たッ!小鳥の"お願い"

小さい頃は小鳥のお願いに苦戦させられたものだ。聞いてやら無いと100%泣くからな・・・

まぁ今では泣きはしないだろうが何が起きるか分からん。「わーったよ。」

学校に近付くに連れて段々と人が多くなる。それでも俺は手を離さない。恥かしさはやっぱりまだある。

でもそれ以上に、こうする事が出来るのが今しか無いのだと分かったから。

学校について暫くは俺と小鳥と大樹で何時も通りの変わりの無い会話を楽しむ。

少し経つと春奈がやって来て4人での会話になる。会話は普段通り盛り上がる。

だけど俺は心の中ではそれ程楽しめない。何せ今日で小鳥と別れるのだから・・・

こいつらも普通にしているが、内面では俺みたいな想いを抱いているのだろうか?

それでも、この楽しい時が何時までも続けと俺達はHRが始まるまで会話を続けた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

放課後、来る時が来た。

今日の手筈はまず皆が春奈の部屋に行き準備を整える。その間俺達3人は小鳥を学校に引き止める。

そして最後に春奈が「ちょっと家に来て」で完了だ。

今頃は皆が準備をしている筈だ。飾り付け等はある程度昨日春奈が済ませたと言う。本当に凄い奴だ。

もう少し時間を稼いだ方が良いかな?等と思っていると春奈の携帯がブゥゥンと振動する。

短い相槌を打って通話を終える。「よし、そろそろ帰ろっか?」そう言う事かよ、本当に準備良いのなコイツ。

春奈の家までの道のりを4人でゆっくりと歩く。恐らくこんな事は今日で最後になるんだろう。

そう思うと何だか寂しくなる。「どうしたの直行、変な顔して。」「してねぇ。」「あっ、ごめーん。元からだもんね。」「テメェ・・・」

相変わらず春奈は口が減らない。どうしてこんな奴が人気があるのかがしれん。俺はあえて無視をする用に切り替えて。

「まぁ良いや、早く行こうぜ。」「何、直行がチョッコーですか?」「はぁ?んじゃそりゃ。ギャグにもなってねぇぞ。」

「あーそっか、ナオ君の漢字って読み方変えると"ちょっこう"なんだねー」新発見とでも言わんばかりの小鳥。

いや、コイツの事だから本当に今知ったんだろう。俺なんか物心ついた時にはこれで悩んでいたと言うのに。

良くも悪くも、小鳥のおとぼけ発言で空気が和らいだ所で春菜の家に到着する。

「ただいまー」「「「おじゃまします。」」」家に入り会場となる居間へと続くドアをがちゃりと開ける。

ぱんぱんぱん!!

甲高く鳴り響くクラッカー。いや、それはちょっと違う気が・・・

小鳥も突然の大音量に吃驚して眼を見開く。そしてその眼に映るのはクラス皆の姿。

「何?これ・・・」何が起きているのか分からないといった表情。そこに春奈が即席司会席についてかしこまる。

「えーそれでは只今より小鳥のお別れパーティーを開催したいとおもいまーす!!今日だけは悲しいとか言わないで最高の思い出にするために皆で楽しもー!!」

ぐっと春奈が手を上げると皆も一斉に「おー!」と手を上げる。テンション高ぇー

それから小鳥がちょっと高そうなソファに座らされてその前で各々が出し物をしてわいわいと楽しむ。

小鳥も2流漫才や帽子から飛び出る鳩を見て手を叩いて笑顔を見せる。

本当に呑気な奴だなこいつは。確かに春奈の言うとおりしんみりは抜きで楽しくやりたい。

でもそう簡単に割りきれる程俺は器用じゃ無い。俺一人だけが別世界でこの会を傍観していた。皆は凄いな、強いよ。馬路で。

「どうしたのナオ君?面白いよー」小鳥が俺の手を取って眼の前で繰り広げられている一発芸を指差す。

「ん、あぁ、そうだな。」「嘘だ、絶対見てなかったでしょ。」「・・・ごめん。」

「ハルちゃんも言ってたでしょ。今だけは楽しく、最高の思い出にしようって。その最高の思い出にナオ君が居ないなんてやだよ。」

俺はハッとなる。小鳥の言葉はこんなにも俺の心に響いて来る。「そうだな。ごめんごめん。」

顔の前に手を立ててごめんのポーズを取る。そうだよな。良い思い出にしないとこの会の意味は無いんだ。

春奈に対しても失礼になるかな?これでようやく皆が笑顔になった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

会もそろそろお開きに近くなって来た頃。司会席に再び春奈が立ち「えーでは、これからお別れの言葉を簡単に、小鳥。」

呼ばれて小鳥は春奈と立ち代り席に付く。

「今日は私の為にこんな楽しい会を開いてくれて本当にありがとう。本当に嬉しいです。皆は私の大切な友達です。」

意外にもしっかりとしたスピーチ。「直行、泣くなよ。」「泣かねぇよ、馬鹿。」大樹がちょっかいを入れて来る。

正直割ときていただけに気がはぐれてあり難いと言えばあり難い。

気がつくと小鳥のスピーチは終わっていて礼をする事りに一斉に拍手がわいた。

「えーでは次にクラスメイト代表として直行君のスピーチがあります。」「はぁ!?俺?聞いてねぇぞ!!」

「言ってないもん。大体そんな事しなくてもありのままを言えば良いんだからさ、ほら。」

ぐいぐいと押されて皆の前に立たされる。

「あーなんだ、その・・・ホント急な事で吃驚してるんだけど、えっと・・・こうやって最後に皆で楽しい思い出が出来て本当に良かったと思う。」

頭が真っ白で言葉が出てこない、ろくに考えられない。緊張から段々と顔が上気して来る。

「小鳥とは本当に長い付き合いで、その・・・一緒にいるのが当たり前だと思ってたけど、考えて見ればそれは違ってた。」

なに言ってんだ俺は。皆の前で・・・でも口は勝手に動く。俺が思った事をぺらぺらと、口だけが別の生物で俺の気持ちを代弁しているかの様に。

「小鳥がずっと俺の側に居てくれたから、俺は勝手にそれが当たり前だと思ってた、でもそれは単なる甘えだった。」

回りの奴らも先程までの騒ぎ様とは一変して静かに俺の声に耳を傾けている。

「居なくなるって時になって初めて気付いたんだ。小鳥の大切さに。」ふぅと大きく一呼吸入れる。

ゆっくりと小鳥の前に歩いて行き、「俺、気付いたんだ。今まで気付かないふりしてたけど、やっと分かった。俺、小鳥が好きだ。」

小鳥は既に顔を真っ赤にして、顔に手を当てて「ナオ君・・・」と呟く。「明日で距離は離れちまうけど、でも心は何時も一緒だ。それを忘れないで欲しい。」

「以上で俺のスピーチを終わります。」深く礼をしてスピーチを終える。

小鳥はもう目まで真っ赤にして真っ直ぐに俺を見つめている。

皆の拍手が大きく大きく鳴り響く。その拍手の中で春奈が「最後にプレゼントの贈呈があります。」

がちゃりとドアが開いて、そこには・・・

「どっきり大成功ー!!」明らかに空気を読んでいない大樹の姿が・・・

「・・・は?」俺は目と耳を疑った。大樹の手にはお手製の『どっきり大成功☆』のプレートが握られている。

そしてついにどっと会場中が大爆笑。俺だけが蚊帳の外だ。一体ナニゴト?

「ほら、直行、プレゼント。」大樹から俺の手に『どっきり大成功☆』のプレートが贈呈される。

「いや、何これ?」「読めないか?どっきり大成功だ。」暫く呆然としていたがこの爆笑の雰囲気・・・

「おい春奈ぁ!!何時からだ!?」「最初から。」けろっと言いのける。「最初って何処が最初だ?」

「小鳥が転校するってとこから。」「一番最初じゃねえか!!」「だから最初からって言ったじゃん。」

そして俺は自分の先程の行動を思い出す。すると先程以上に顔が赤くなる。

「お前ら全員・・・!?」聞かずとも堪え笑いから想像がつく。「小鳥はッ!?」「ごめんねナオ君。」

良く考えれば当人が知らない筈が無い。相当俺はテンパッている。

どうりで、全てが上手く出来過ぎていると思った。皆があまり悲しいそぶりを見せないのも、やけに手際が良かったのも、説明が付く!!

「いやー良い台詞でしたなー『明日で距離は離れちまうけど、でも心は何時も一緒だ。それを忘れないで欲しい。』」

春奈が恐らく俺の真似をして台詞を言う。「テメェ!!」「何よ、アンタのためでしょ。」

「は?」「確かに持ち掛けたのは私だけど、賛成してやろうって言ったのは小鳥なんだから。」

勝ち誇った様に春奈は続ける。「こうでもしないとアンタ素直になれないんだから、ホント手が掛かるよ。」

「お前・・・!」反論しようとした所で小鳥が俺の手を掴み「ごめんねナオ君。でも私嬉しかったよ。」

それだけで俺は反論する気が薄れていく。この笑顔があれば、まぁ良いかと思える。

「返事しないとけないかな?」まだ真っ赤な顔で小鳥が俺の顔を覗いてくる。「ん、あぁ・・・聞きたい、かな。」

「私もナオ君の事好き。大好き。」ここでまた皆がウォーと盛り上がる。

「はいはーい、それじゃあこの『直行をハメて本音を吐かせちゃおう』の会はこれでお開きでーす。」

最後に春奈が不穏当な閉めを行う。「あんたらは先に2人で帰って良いよ。」一転して優しく春奈が言って来る。

「あぁ、そうさせて貰うよ。」俺は小鳥の手を取ってこの場を後にした。

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「私も相当にお節介焼きだね。ホント・・・」後片づけを終え静まり返った居間で春奈が呟いた。

「そういう所がお前の良い所じゃねーか。」「なんだ、まだ居たの?」「居たのとは失礼な。」大樹が不平を漏らす。

「お前はあれで良かったのか?」「うん・・・」言葉とは裏腹に表情は少し暗い。

「そっか、じゃあこんな時になんだけどさ。俺お前の事好きだぜ。」「は?」

「いや、アイツらの空気に当てられてね、俺もゲロっちゃおうかなと。」「・・・」

「別に無理にとかは言わない。ただ伝えておきたかったんだ。」「そっか・・・」

春奈は少し考えてから「前向きに検討しとくわ。」言った。「そうしてくれ。」大樹も笑っていた。

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「今日は本当に最高の思い出になったね。」小鳥の明るい声。「何か納得いかねーけどな。」

「ねぇナオ君?」「なんだ?」「これからもずっと、ずぅーっと、一緒だよ。」「あぁ。」

ぎゅっと強く、手を握り締めた。小さい頃の純粋で単純な気持ちとは少し違う、純粋な気持ちで・・・

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後書き
どうも、短編の割に予想外に長かった『小さな夏の思い出』やっとこ終りました。
今回はもうね、なんていうか私の欲望が詰った作品と言っても過言では無いとも・・・
幼馴染ほしぃー!!

まぁストーリー自体はホント単純な王道。
主人公と幼馴染のヒロインに、仲の良い友人達。何気無い日常。
そしてそれが一転!!日常が崩れる出来事が、でも最後はハッピーエンド。
ほんと単純ですね。

まぁでも失って初めて気付くって事良くあると思うんですよね。
でもそれって決して良い事では無いじゃないですか。もっと身近にある"幸せ"と向き会えたら
と少しでも皆様に伝えられたらとの思いを込めて書きました。

それでは、皆様の心身の健康と次回作での再会を願って―――

11月某日(26日ッス)


冬に行く

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