「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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バールのようなもの
短編集『愛すべき年末の戦士達』
どうも0Zです。何か俺有言不実行だなおい…
やるって言った事は結局やらずにやらないって言った事やりやがって…
まぁでもやる以上はちゃんと力入れますよ。
で・も、タイトルが既に何か適当な感じがしないでも無いが…HAHAHA!!気にするな。
えっと、これは『小さな夏の思い出』および『小さな冬の忘れ物』のさらに後の話、大晦日での出来事となります。
ちなみに、私は大晦日→元日は家で迎える派なのでこの様な事は全くの想像夢想、夢物語ですwww
あーその前に、
前作読んで無いのにここに迷い込んで来た、って方
出来れば前作読んだ方が嬉しいですし、すっきりします。良ければ以下からどうぞ。
1期を読む
2期を読む
ではまぁ、恒例のキャラ紹介!(3回目)
主人公「進藤直行(シンドウ ナオユキ)」
悩めるお年頃、高校1年のオトコノコ。小鳥の幼馴染であり彼氏でもある。
ちょっと物事を斜めから見る事が多いひねくれ者。つまり物語の主人公タイプ。来年こそは…と意気込んでいたりいなかったり?
「小島小鳥(コジマ コトリ)」
直行の幼馴染であり彼女。天然+ロリ=無限大の可能性を持つ高校1年のオンナノコ。
幼いと思いきや時折普通の歳相応の女の子っぽい所を見せてくれるのもこれまたGJ
「斎藤大樹(サイトウ ヒロキ)」
同じく高校1年で直行の友人、寧ろみんなの友人。クラスの人気者らしいのだが他のクラスメイトが登場しないので彼の人気振りは一向に表立たない。
そして今回も他のクラスメイトは出てこないので彼の人気ぶりもやはり(ry
「飯村春奈(イイムラ ハルナ)」
同じく高(ryで小鳥の友人。さっぱりして男女共に人気がある。とは言ってもお姉さま♪と後輩とかが寄ってくるタイプではないので悪しからず。
今は新しい恋を探し中と言う意外にも愛の探求者www
余談ではあるが『ハルユメ』のハルナとは当然の如く無関係です。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
おいおいおいおい!一体何事だ?俺は不通を告げる携帯電話を握り締めたまま暫く呆然としていた。電波の状況、とかじゃないよな…
まさかとは思うが変な事に巻き込まれたりしてないよな…そう思うとぞっとしてしまう。
「わりぃ、何か小鳥が居なくなったっぽいから俺探してくるわ。」「何それ?」
それは俺が訊きたい。自分で言っててもありえないと思う。幾つだよアイツは…
「電話は?」「切れた!」「はぁ、何それ。」「俺も知らん!!」最早誰が何を言っているのかすら把握しないまま適当に返す。
正直そんな冷静に対応できるような心境ではなかった。「兎に角、時間までにはぜってぇ間に合わせるから。」
―――と勢い良く駆け出したのは十二月三十一日午後十一時四十七分。物語はその数日前から始まった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
大晦日の日に初詣に行かないか?そんな誘いのメールが着たのが十二月二十八日。ぶっきらぼうな文面からも分かるように野郎からの誘いな訳で…
メンバーは?一応そんな返信をしてみるが、そんなもの聞かずとも分かりきっている。どうせ何時もの四人だ。
案の定、即座に送られた返信には予想通りの文字。まぁこうなるであろう事はある程度予想はしていたが、
予想外の事があるとすればそれの提案者が大樹だと言う事だろう。こう言うイベントではしゃぐのは春奈の役だろうに。
まぁ断る理由も無いので了承の旨を伝えて携帯を閉じる。もう用件も済んだのだし良いだろう、と思っていたが携帯は再び着信を伝える。
「何だよ…」正直眠っていたところだったので(と言っても既に正午を回っているのだが)さっさと切りたい所だったのだが
まぁ見るだけ見ておこうと腕を伸ばして携帯を掴む。新着メッセージを確認して、あぁこんなもの見る必要無かったな、と後悔する。
『小鳥ちゃんの晴れ着姿が拝めるぞ、良かったな』
「…阿呆か。」返信はせずにそう呟いて俺は再び布団に潜り込んだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「あー、大樹からメール行ってる?」「あぁ、着たよ。」それから数時間後、今度は春奈から電話がやってきた。
内容は同じ、と言うよりは細かい予定的なものだろう。場所とか時間とか指定してなかったし。
「でさ、集合どうする?一旦どこかで集まる?それとも現地集合で良いかな?」「どっちでも良いんじゃね?」
「どっちでも良いって言われても困るんだけど…」「じゃあ、現地で良いんじゃねぇ?いちいち別の場所で集まるのも面倒だろ?」
「まぁそうなんだけどね…」春奈の声は少し歯切れが悪い。と言うのも、大晦日の日は物凄く神社が混むのだそうだ。
俺は大晦日は家で迎えるタイプなのでどれほどのものかは知らないが、それは祭りの如く、と言うか実際殆ど祭りと変わらない勢いらしい。
出店とかも数店だがあるらしいし…「まぁ、何とかなるだろ?」「わかったけどー…もしなんかあったら責任取りなさいよね。」
「何のだよ。」「来年一年の幸先が悪いなんて最悪じゃない。だから何かあったら一年分の責任とって貰うからね。」
一年分の責任って何だよ。「知るか。んじゃ場所は良いとして時間は?何時くらいよ?」
「そーねぇ。三十分も余裕見れば充分でしょ?」「んじゃ十一時半に深多良神社の鳥居に集合って事で。」
と言う訳で今年最後の、そして新年最初のイベントの計画は練られて行ったわけだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
十二月三十一日、午後十時三十分。約束の時間の一時間前に俺の家のチャイムが鳴った。
こんな時間に家に訪ねてくる奴は変態か小鳥しか居ない。俺の方も小鳥に合わせて早めに準備は済ませてあるのでそのまま玄関へと向かう。
「おめでとうナオ君♪」「…」
何が?
「どうした急に。」「だって、明けましておめでとうって言いたかったけどまだ明けてないから、だからおめでとうだけかなって思って。」
呆れた、呆れて物も言えない。いや、物が言えないのは呆れただけでは無いのだが…
大樹の茶化し通り小鳥は晴れ着姿。まぁ30Mも離れた所から見れば七五三と見間違うのではないかと言う程のミニマムサイズではあるが。
だがしかし、馬子にも衣装とは良く言ったものだ。日本人の本能か何かは知らんがやはり和服は良い。
「どうしたの?」「いや…似合ってるんじゃね?」「え?」小鳥は一瞬ぽかんとしてから
あぁと思い出したように自分の格好に目を落とし、その後俺の顔を見て恥ずかしそうに頬を染めた。
忙しい奴め。そして恥ずかしい奴め。ましてやまだクリスマスの時から日が経っていないのだから気恥ずかしさは倍増だ。
「ありがと。」短くそう言うと目を伏せてしまう。「あぁ、んで、もう行くんだろ?」
かなり強引な気もするが話題を戻す事にする。そうでもしなきゃやってられん。
「あ、うん。」小鳥も思い出したように少し高い声で言った。「んじゃ、行くか?」
玄関で立ち話をしていても無駄に寒くなるだけなので靴を履き替えて玄関を潜った。
次に潜る時は年が変わってるのか、などと無駄に感慨深く思ったりしながら、俺は小鳥と深多良神社へと向かい寒空の下を歩き出した。
昼間に降り積もったばかりの薄い新雪に跡を残しながら、月明かりと小さな街灯を頼りに二人肩を並べて歩く。
深多良神社はそう遠くない場所にあるので二十分もあれば着くだろう。とは言え季節は真冬で時刻は深夜。
冷え込むのも良いとこで、ブルブルと身体が震え上がってしまう。がそれは小鳥も同じのようで、
いや、寧ろ自宅から一旦俺の家まで来た小鳥の方が身体は冷え切っている訳で、少し寒そうだ。
「大丈夫か?」「え?」「いや、寒そうだから。」俺は小鳥と違って普段通りの私服にコートを羽織っているので寒さにはまだ耐えられる。
しかし晴れ着姿の小鳥はそうも行かない。「…」何か黙りこくっちゃってるし、相当やばいのか?
「おい、大丈夫かよ?」「…ううん、違うの。」「何が?」「何か最近ナオ君凄く優しくて。」
小鳥は嬉しそうに顔をほころばせてる、のだが俺はそんなものこっ恥ずかしくて仕様が無い。
「そうかぁ?別に…大した事ねぇだろ。」変わってねぇだろ、と言いたい所だったが流石に、それはないな。
正直自分でも前と比べて小鳥への接し方が変わっている事に気付いているからこそ、その言葉が恥ずかしかったのだ。
「幾ら優しくなったってコートは貸してやらんぞ。」「えー、残念だなぁ。」俺の軽口を受けて、小鳥も同じように軽口で返してくる。
そんなどうでも良い、馬鹿みたいな事が何だか嬉しかった。「でも」「?」
俺は小鳥の手をぎゅっと掴むとそのままコートのポケットに突っ込んだ。「一部くらいなら貸してやらん事も無い。」
「…やっぱりナオ君優しいね。」「うるせぇ。」それきり暫く沈黙が続いた。
嫌な沈黙ではない、心地の良い沈黙。まるで互いにこうしているだけで言葉など無くとも気持ちを交し合えるかのような、そんな沈黙。
ぎゅむぎゅむと雪を踏む音だけが耳に伝わってくる。目指す神社まではまだもう少しある。それまではこうして歩いていよう。
ポケットの中でぎゅっと小鳥の小さな手を握り締めた。小鳥もその小さな手で俺の手を精一杯、握り返した。
「何だか来年はいい年になりそうだね。」「…そーだな。」「来年も宜しくねナオ君。」
「…いや、それはまだ早いから…」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「いやー探したよお二方。」勢い良く手を上げて声を掛けてきたのは春奈であった。
意外にも春奈の服装も晴れ着で、大して長くも無い髪の毛をアップにして纏め上げていた。ちょっとした戦闘態勢である。
和服と言うものは総じて大人し目の印象を与えるもので、それに着る者があってさえいれば問題は無いのだが、春奈はと言うと勿論当てはまってはいない。
もう少し粛々としていれば少しは見れたものになったろうに…その証拠に豪快に振り上げられた手のせいで袖は垂れ下がり腕が丸見えになってるし。
しかもその右手には割り箸が、そして左手には焼きソバがそれぞれ持たされてるし。ホントは探してないだろこいつ…
ちなみに現在時刻は午後十一時十分。神社に到着した時間は十時五十分。何気に二十分程彷徨っていた事になる。
「つーかお前、何で焼きそばなんだよ?」通常こういう時は年越し蕎麦、つまり普通の汁のある蕎麦だろう。決して焼いたものではない。
「別に良いじゃん、売ってたんだから。寧ろ買ってやらないと赤字よ赤字。アンタは屋台のおっちゃんを新年早々ブルーにさせようって言うの?」
春奈は俺に割り箸の先をびしっと突きたて反論をしてきた。行儀が悪いぞこら。
「別に、どうでも良いだろ。」「うっわ、何アンタ最悪。自分さえ良ければ他人なんてどうでも良いってタイプ?」
「何でそうなる?」相変わらず、春奈の言いがかりも甚だしい突っかかりようには困る。俺そんなに恨まれる様な事してたか?
「まぁまぁ、細かい事は気にすんなよ。焼きそば買った金も夜中に炭水化物食べて摂取したカロリーも春奈の物なんだがばぉっ?」
「一言多いのよアンタは!」春奈の見事な裏拳が決まり大樹は撃沈した。残念ながらここは寺じゃないから経は唱えてやれん。
せめて安らかに眠れよ…「まぁ、お前らも腹減ってやしないか?」おっ、復活の早い奴。
まぁ言われてみれば年越し蕎麦はまだ食ってないし、小腹が空いていない事も無い。
「そうだな。折角だし…何か食うか?」小鳥に聞いてみるがどうも浮かない顔だ。「どうした?」
「だって…太るんでしょ?」何を言うかと思えば…寧ろお前にはもう少し育って欲しいんだぞ、一男として。
「あのなぁ、春奈はこれ以上は厳しいけどお前は気にしなくてもぉぅっ!?」
腹部に春奈の肘鉄が決まり言葉では無く呻きが空気と共に漏れ出した。駄目だ…俺は大樹のように復活は出来そうに無い。
アイツ…やっぱり凄い奴だったんだな。尊敬する、ぜ…
「ナオ君大丈夫?」小鳥がうずくまる俺の肩に手をかけて心配そうに覗き込んでくる。
何とか無事を伝えたいが正直あまり無事でも無い、何を言おうとも今は呻きになってしまいそうなので手だけで何とか無事を表す。
「人の事太い呼ばわりするからよ!」なんて必死になるのは気にしてる証拠なんだろ、とは口が裂けても言えないな。
「あーったくっ、冗談だろうが。カロリーよりもカルシウム摂った方が良いんじゃねぇの?」なのに俺は何を言ってイルンデショウネ?
折角復活したばかりと言うのに、口が滑ったと言うのはまさにこう言う事を言うんだな、と思った瞬間には俺は再び苦痛のあまり閉口してしまっていた。
「ほんっと、アンタって口減らないのね。その口は来年には持ち込まないで置いてって欲しいわ。」
春奈も怒ってはいるようだが勿論本気でと言う訳ではない。まぁもしかしたら本気で気にしているのかもしれないが、その物言いは軽口に近い。
「まぁ、おふざけはそのくらいにして腹ごしらえにしようぜ。俺も結構腹減ってるしさ。それに皆で食うのも悪く無いだろ?」
と纏まりかけた所で格好良い事言ってさらっと纏めてしまう大樹。コイツは本当に良い奴だな、頭以外は。
そうして俺達は何故か春奈に合わせて焼きそばを四人で食べる事となった。年越しそばが焼きそばだなんて、来年は本当に大丈夫だろうか?
余談ではあるが、計二発の大ダメージを受けた俺は、小鳥に支えられながらと言う何とも恥ずかしい格好で屋台までの道のりを歩いたのであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「ちょっと早く着すぎたかな?」携帯の時計を見ながら春奈がぼやいた。時刻は十一時四十分。新年まであと二十分。
先程から若干人が増えだし神社内は混雑しつつあった。まぁそれはつまり今の時間帯に来ても充分、と言うよりは頃合、といった所か。
まぁ実際には約束の時間からは十分しか経っていないのだが…やはり来るのが早すぎたのだ。
「もう見るものも見ちまったしな。」元より神社なのだから見て回るようなものも大して無く、
屋台を一通りとあとはお守りや破魔矢や熊手などのお正月セット(とその売り子の巫女)を見てあっさり終了となった。
「あと二十分、まさか今年の最後をこんなに無意義に過ごすとはな…なんかやり残した事とか無いのかよ?」
俺の何気ない一言に何故か全員がこちらを向いてなにやら珍妙な顔をしている。「…なんだよ。」
「いや、アンタが余りにも」「まともな事を言うもんだからさ」「ちょっと驚いちゃった。」
お前ら台詞合わせしたみたいにスラスラと失礼な事言ってんじゃねぇよ。「あのなぁ。」
「良いじゃない別に。寧ろ褒めてんだからさ。うん、良い事言ッタヨアンター。」「舐めてんのか!?口調が馬鹿にしてるように聞こえるんですけど?」
「だってそう言う風に言ってるんだもん、当たり前じゃない。うん、やっぱりアンタ賢いよ。ちゃんと分かってるもん。」
「お前ね…」言い返そうとも思ったが、そんな事をしていてはそれこそ無意義も良い所。いや"無"どころか"マイナス"でそんな最悪な事態は御免被りたい。
この件に関しては先程のカロリーの話のお詫びとして折れてやろうじゃないか。
お前はせいぜい帰ってから体重計に乗った時に後悔するが良いバカが!
「にしても、本当に混んできたなー。」「あぁ、ちょっと驚いた。こんなに人来るんだな。」
年明けに初詣に来たのはこれが始めてな俺は、想像以上の人の混み入り様に少し圧倒されていた。
これだけの人がこの町に住んでいて、これだけの人が一つの事に向かっている。
来年一年が良い年でありますようにと、そしてこれだけの人が居てそれぞれの"良い年"は皆違う訳で、そう言う意味でも何だか圧倒されてしまう。
「そうそう、そう言えば結局どこで年越しを迎える訳?やっぱり少しは落ち着いた場所が良いじゃない?」
確かに、あまりごみごみしている所で新年を迎えると言うのも何だか良くない気もする。
それにまだ人は増えそうだし、今のうちに少し抜けておいた方が良いのかもしれない。
「そうだな、少し広い所に抜けるか?」大樹が春奈の提案に同意しこちらに意見を求めてくる。
俺もその意見には賛成だったので賛同の声を上げ、小鳥にも同意を取ろうと…
………
………
………
居ねぇ!
そう言えば先程からずっと小鳥の発言を聞いていない気がするのは大人しいとかじゃなくて既にいなかったと言う事か!?
俺は呆れとショックとで頭の中で重い鐘が鳴り響くかのような思いだった。と言うか実際に鐘が鳴った訳で…「除夜の鐘、撞き始めたんだ。」
これはいよいよもってまずい事になってきた。除夜の鐘を撞きだすなど年明けも近い証拠、このままでは小鳥は新年を孤独に迎えてしまう。何とかしなければ…
とりあえず携帯を取り出し小鳥の番号にかける。一瞬の呼び出し音の後に「ナオ君~」と何とも情けない声が速攻で届いてきた。
その速度たるやすさまじいもので、ワン切りでさえとれるのではないかと言うくらい素早かった。
もしかして電話がくるのを構えて待っていたのではないだろうか?だったら自分からかけろよ…
「お前今どこよ?」「わかんないよー」「何か目印っぽいの、無いか?」「人しか見えないー」
改めて小鳥のスモールサイズっぷりを痛感させられる。「あーじゃあとりあえず人居ない所に行け!」「でも人がいっぱいで通れ―――」
小鳥の言葉は最後まで発せられる事無く、変わりになにやら嫌な音がして、それから不通を報せる電子音が虚しく鳴り響いた。
おいおいおいおい!一体何事だ?俺は不通を告げる携帯電話を握り締めたまま暫く呆然としていた。電波の状況、とかじゃないよな…あんな音しないし。
まさかとは思うが変な事に巻き込まれたりしてないよな…そう思うとぞっとしてしまう。
「わりぃ、何か小鳥が居なくなったっぽいから俺探してくるわ。」「何それ?」
それは俺が訊きたい。自分で言っててもありえないと思う。幾つだよアイツは…
「電話は?」「切れた!」「はぁ、何それ。」「俺も知らん!!」最早誰が何を言っているのかすら把握しないまま適当に返す。
正直そんな冷静に対応できるような心境ではなかった。「兎に角、時間までにはぜってぇ間に合わせるから。」
時刻は十一時四十七分。年明けまで残り十三分。それまでに小鳥を見つけ出し、さらに皆と合流しなければならない。
こうなればなりふり構ってもいられない。俺は溢れかえる人垣をすり抜けるように、と言うより半ば無理矢理押し入るように掻き分け掻き分け進んだ。
電話での様子から察するに小鳥は人ごみの中に居る。俺が人が居ない所に行けと言ったからその通り行動してくれていれば人の少ない場所を探すのが道理なのだが、
その点は小鳥なので何とも怪しい所だ。「小鳥ー!」小鳥の名を呼びながらどこからか反応が無いか耳を済ませるも雑踏と先程から鳴り出した鐘がうるせぇ。
これでは捜索どころではない。一旦人ごみを抜けてもう一度携帯に電話を入れてみる。辺りを見回しながらどこからか呼び出し音がしないか耳を澄ます。
近くには居ないようだし電話に出る気配も無い。携帯をしまい時間を確認する。もう五十一分、いよいよ余裕が無くなって来た。ポケットにしまおうとした時携帯が鳴った。
確認すると春奈からのメールで内容は『大木の所で待ってるからさっさと小鳥連れてきなさいよ』と言うものだった。
この神社で大木と言えば本殿左手に少し行った所に生えているご神木の事だ。神木と銘打っている割には周囲を囲っている訳でも注連縄で括っていたりもしない、
大きさ以外は他の木となんら変わりの無いものだ。まぁ待ち合わせ場所としては妥当な所だろう。これで合流に関しては問題なくなった訳だが、
それにはまず合流する為に小鳥を探さなければならない。俺は数少ない手がかりから小鳥の居場所を突き止めようと必死に考える。
唯一の手がかりと言えば最後の電話なのだが、聞き出せた事は殆ど無いという絶望的状況。「――いや…」
そう言えば、鐘の音だ。電話先で後ろから鐘の音がごんごんと鳴っていた。電話で拾ってあれ程の音量ならばもしかしたら鐘に近い場所に居るのかもしれない。
最早すがれる物はそんなものしかない。神に祈れば場所柄少しは効果があるかもしれないが…そんな事を考えながら俺は鐘のある場所へと向かって走り出した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
とりあえず鐘のある場所には着いた。が小鳥の姿は無い。もう一度小鳥の名を呼んでみるが流石目の前に鐘があるだけあってそれは殆ど意味の無い行為だった。
こうなれば小鳥を信じるしかない。俺はそこから少し抜けて人の少ない場所へと駆け出した。少し抜けるとそこはちょっとした林で人はまばらだった。そしてその中に小鳥は
居た。一本の木に背をもたれさせ胸の前で手を組むようにして顔を下ろしていた。「小鳥っ!」俺が名を呼ぶと小鳥はこちらを向いて泣きそうな顔をして走り寄ってきた。
「ナオ君!!」そのまま俺の胸にダイヴをかますと情けない声で何度も俺の名前を呼び続けた。と言うか飛び込んできた事自体は大した事無いが、何やら背中が痛い…
「お前、何持ってる?」なにやら硬いものが当たってる、と言うより突き立てられている気がする。「あっ」顔を離し小鳥は再び泣きそうな顔になった。
と言うかその大きな目には豪快に涙が溜まっている。小鳥は言葉の代わりにその手を俺に差し出してくる。そこには携帯が握られていて、
それがちょっとアリエナイ方向に曲がっていてさらに液晶が沈黙している、と言う惨状が広がっていた。なるほど、それで電話が途中で切れた訳か。
「人とぶつかって携帯落としちゃって…」何とかそこまでは聞き取れたが後はもうぐじゃぐじゃで何を言っているのか聞き取る事は出来なかった。
まぁもう充分事は理解出来たのだからわざわざショックな事を思い出して語らなくとも良いのだが…
そしてそれよりも、だ「小鳥、急ぐぞ!」俺は小鳥の手を取って走り出した。「神木、あそこで大樹達が待ってる。まだ年明けまでは時間がある!」
小鳥はまだぐずりながら覚束ない脚で俺に引っ張られていた。
これでは間に合わないし、間に合ったとしてもこんな気分で年明けを迎えるなんて最悪すぎる。
「携帯ならさ――」「?」「買ってやるよ、新しい奴。修理するよりどうせなら新しい奴の方が良いだろ?」「…ほんとう?」正直厳しい、が
「あぁ、本当だ。どうせ正月セールとかで安くなるだろ?金だって日本の正月の素晴らしい文化がある!何も心配する事は無ぇ!!」
それは半ば自分への言い聞かせでもあった。「でも…それじゃナオ君が…」
と、折角纏まりかけたと思ったのに小鳥が言葉を挟んだ。心配そうに俺の手を握り返してくる。
俺達は走り続ける。白い息を吐きながら必死に走り続ける。二人で手を繋ぎながら、まるで何か大きなものに追われているかのように必死に走り続ける。
そんなちょっとした高揚感もあったのかもしれない。走っているのとは別に心臓が高鳴っていたのかもしれない。俺は気が付けばこんな事を口走っていた。
「俺はっ!!お前が側に居て笑ってくれりゃ他には何もいらねぇんだよ!だから何も問題ねぇ!」まさに口走ったと言う言葉が相応しい。
場の勢いに任せて吐き出された言葉は飾り気も何も無い、純粋な本心でありだからこそ恥ずかしいものだった。
「ナオ君…」小鳥は震える声で小さく呟いた。まーだ泣いてるのかこいつは、ったく仕様が無い奴だよ本当。
「良いから走るぞ!!」「――うんっ!!」後ろから元気な返事を受けて俺は走り続ける。小鳥も俺の後を走り続ける。
それはきっと来年も変わらないだろう。その次もその次も、ずっとこんな風で居たいと神に願った。
だが、来年になるのはまだ少し早い。果たして間に合うだろうか?
―――――――――――――――――――――――――――――――――
「ぜはっ、ぜはっ…間に合った、か?」息を荒げ最早冬とは思えない程温まった身体を落ち着かせながら辺りを見回した。
何とかご神木の元にはたどり着き、携帯で時間を確認するとまだ日付は十二月三十一日だった。
除夜の鐘もまだ鳴り止んではいない。程無くして二人の姿を発見すると息を落ち着かせてから大声で二人を呼んだ。
早めに小鳥の無事と到着を伝えねばと思ったのだが、近寄ってみるとどうも様子がおかしい。
「あー良かった間に合ったんだ二人共!もう心配したんだからね。折角皆で来たってのにばらばらで年越し過ごすなんて阿呆みたいじゃない?」
何故か手をわきわきと動かしながら矢継ぎ早に話す春奈とは対照的に大樹は「おっ、おう。な何とか間に合ったな…」
何とも歯切れが悪い。俺と小鳥は顔を見合わせて頭上に?マークを浮かべた。
「大丈夫か二人とも。何か顔赤いけど?」「なっ、別にそんな事無いわよ。それよりアンタ達こそ顔真っ赤にしてんじゃない。」
「いや、走ってきたんだから仕方が無いだろ。」やはりどうも様子がおかしい。春奈がこうではこちらのテンションまで狂ってしまう。
「なぁ、春奈達どうしたんだ?」とりあえず小鳥に訊ねてみるが状況的には俺と同じな訳で勿論分かる筈が無い。
さっぱり置いてけぼりな俺達を他所に本殿の方から大きな声が響いてきた。
「みなさーん!いよいよ今年も残りわずかとなって参りました!それでは新年へのカウントダウンを行いたいと思いまーす!!」
初老の神主がメガホン片手に大声張り上げて「さんじゅーう、にじゅうきゅーう!」と数え始めた。
いや、せめて10カウントで良いだろ…と少々呆れていると、隣から「にじゅうはーち!!」と無駄に元気な声が飛び込んできた。
「小鳥、お前…」「ほら、ナオ君も一緒に言おうよ?にじゅうしーち!」冷めた俺を他所に小鳥はおろか、
周囲からもカウントをする声がちらほらと聞こえだした。やがてそれは大合唱のように深夜の神社を包んだ。
「ほら、にじゅうさーん。」「…」「にじゅうにー!」「…」「にじゅういーち!!」
語気と瞳で訴えないでくれ…「「にじゅーう!」」仕方なく一緒にカウントをしてやると小鳥は一転して笑顔になった。
「ほら、お前らも阿呆みたいに突っ立ってないで声張り上げやがれ!」俺だけがこんな恥ずかしい思いをするのはまっぴらごめんだ。
大樹と春奈は顔を見合わせた後ふっと笑ったかと思うと元気良くカウントを始めた。
ごー
よーん
さーん
にー
いーち
『明けましておめでとうございまーす!!』
木造の本殿が震えるのではないかと言う位の、何百人もの声が響いた。
「今年も宜しくね、ナオ君。ハルちゃんもヒロ君も。」小鳥が元気いっぱいに
ぺこりと頭を下げてきた。
「おう、宜しくな。」「良かったー無視されるかと思ったよ。小鳥最近直行の事ばっかりだから。」春奈はいじらしく笑った。
「宜しくな小鳥ちゃん。直行も、春奈もな。」大樹はまるで一人だけ年上になったかのように妙に落ち着いた様子で言った。
最後に春奈の名を呼んだ時春奈は静かにその視線を逸らしたように俺には見えたのが気になった。
「何だよお前ら、新年早々辛気臭くないか?」何だかそんな空気に耐えられなくなった俺は思い切って口火を切った。
「別に何も無―――」「春奈!!」否定しようとする春奈の言葉を遮って大樹が大声を上げた。
その声も表情も、いたって真面目だ。だから俺も小鳥も、ただ黙っている事しかできなかった。
これはきっと二人の問題で、俺達が口を挟む余地など無いのだから。
そして春奈こそが一番硬直してその目を左右に泳がせていた。大樹は一瞬考えるようにしてから、真面目に、訴えかけるように静かに続けた。
「断るならそれで良い、だけどお前がはぐらかし続けるってんなら俺は何度だって言ってやる―――俺は、お前が好きだ!」
一瞬、時が止まったかと思った。
「嫌いなら嫌いってはっきり言えば良い。じゃなきゃなんだか…俺が阿呆みたいじゃねぇか。」
大樹は顔を伏せて自嘲する様に静かに言った。それ程までに、春奈に対して本気なのだろう。
春奈は何も言わない。いや、言えないのかも知れない。顔を逸らし目を伏せ、あの春奈が今にも泣き出しそうな雰囲気さえ漂わせていた。
「やっぱりお前、まだ――」「違うのっ!!」そこでようやく春奈は声を上げた。堰を切ったように大きな声で、違うと、言った。
「だって、私…」上手く言葉に出来ないのと今にも泣き出したしまいそうなのとで春奈の声は絶え絶えだ。
「その…好きな人いたのに、大樹に好きって言われて、馬鹿みたいに真っ直ぐに好きって言われて、そしたら何だかアンタの事…好きになっちゃって
好きだって気付いて…でも。そんなの何だか大樹を馬鹿にしてるみたいで、簡単に乗り換えたって言うか、その…軽い女だって思われるんじゃないかって…
凄く不安で。アンタが真っ直ぐであればあるほど自分が汚く見えて…そんなアンタには相応しくないんじゃないかって!!」
後半はもう春奈は子供のように泣きじゃくりながら喋っていた。いや、話すと言うよりも気持ちをそのままぶつけていた。
大樹は泣きじゃくる春奈にゆっくりと歩み寄ってそっと肩に手を添えた。そして子供をあやすように静かに
「バカだなお前。好きな女に好きって言われて、腹立つ訳無いだろ?」優しく言った。
その言葉が引き金になったかのように、春奈の目からは決壊したダムのように涙が零れだした。
「大樹ぃ…」情けない涙声で大樹に抱きつくと大樹も肩に添えた手をそっと回し優しく抱きとめた。
数刻の間、春奈は大きく肩を震わせ泣いていたがそれも大分治まってきた頃、大樹が小さく
「だからさ、もう一度はっきり言ってくれよ。」と呟くと春奈の動きはぴくりと止まった。
「ばっ、馬鹿じゃないの!?そんな恥ずかしい事…」胸から顔を離しまだ涙の跡の残る顔で少し怒ったような表情をして言った。
「あんだけ叫んでこれだけ泣いて、今更恥ずかしいとか言うなよな。」まぁ確かに、先程から恥ずかしさの塊みたいなものだったんだが…
当事者はともかく見てるだけの者の身にもなって欲しいものだ。
「バカ…」「バカで結構。」「アホ」「それは酷い。」「さっき自分で言ってた。」「そうだっけ?」
「…好き。」「俺もだよ。」何なんですかこの公開恥辱プレイは!?
大体今の会話何?さりげなく言ったつもりなのか分からんが全然さりげなく無いし!滅茶苦茶恥ずかしいっつーの!!
そしてまだこの手の恥ずかしさなら何とかなったのだが…
「ナオ君。」こういう風に飛び火してくるから困るのだよ君達。
気付かないフリをしていると今度は腕を掴まれてぶんぶんと上下に振られた。
そんなにされても照明じゃないんだから電気点いたりしないし、っていうか肩外れるし!!
「何だよ?」「ナオ君は、私の事…好き?」ほら来た。がっちりと腕をつかまれまっすぐに見つめられる俺には逃げるコマンドは存在しないようだ。
「あのな、人に者を訊ねる時はまず自分からと言う―――」「私はナオ君の事、好きだよ。」
そう言う人でした。俺の回避策は全く持って効果ゼロ。これは腹を決めるしかないのだろうか?
まぁあっちはあっちで宜しくやってるご様子なのでこちらの事は無関心だろうし、ここはすぱっと言ってやった方が良いか。
「好きだよ。」「うんっ!!」何がうんなのかさっぱり分からんが小鳥はご満悦と言った感じで向日葵のような笑顔を見せた。
「?どうしたのナオ君?何か変だった?」「いや、何でも。」ただ、この笑顔を見られるのなら悪くは無いかなと、ちょっぴり思っただけの事だ。
続きます
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(2026-05-16 20:35:03)
普通の日記
15日の日記(2)
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