エトナの独り言

エトナの独り言

1-6 上陸


いや、『着いてしまった』と感じるのはあたしだけなのかもしれない。
さっきの甲板でのはなしではフレイさんとエドガーさんのいきさつを聞いて真相を究明しようとしているように見える。
でもあたしは…やっぱり怖い。
まだ震える気持ちの整理に決め手がないような…そんな気分だ。
あたしのことながら正直『なんであたしここにきちゃったんだろう…』といまでも思っている。
でもあたしも女だ。
腹くくらないと!?(何かおかしい感じがするけれど)


あたしのこの踏ん切りがつかないモヤっと感が通じているのか、古塔のあるこの島は重苦しい雲に覆われている。
何かを寄せ付けないように、そして隠すかのように…。

しかしボートが付けられたこの海岸からでも塔の雄大さが見てとれる。
いまはモンスターの根城となってしまったらしいのだが、あの塔にまだ人が住んでいたころにはそれはそれは立派なお方が住んでいたに違いない。
あまり学問を習っていないあたしにだってわかるくらい、巨大で、しかも贅沢そうなつくりだ。

雲に覆われた塔のてっぺんには何かドス黒いものを感じるけれど、それはただあたしがへっぴり腰でいるせいだろうか。
しり込みをしているのはやっぱり否めない。


ただ、ただそんなことを思っていても戦える時間が少なくなるばかりでなんの解決にもならない・・・。

だ・が・・・
実際待たせてもらえるはずもなく…
『おらぁ~ルミナ~!!早く降りないとブリトラが逃げちまう!いくぞぉ~。』
と、フレイさんの声と力ずくでも下ろすという手の力の勢いでそんな憂鬱をもみ消されてしまう。
それぐらいのがいいのか・・・、やっぱりあたしには。
一人重たい大きな荷物をしょって接岸したボートから離れ地面の感触を味わう。
目の前に広がる古代遺跡をあたしだけが震えてみていた。

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