エトナの独り言

エトナの独り言

1-8


正体は…、

あたしの背中の物陰から低い声を出して「剣の声」を演じるフレイさんだった。

ちょっと神々しく思った気分を返せっ!!

まぁでも期待はしないけれどももともと数多く武器を持っていないあたしは(使えないので持たないようにしている)片手剣と大剣くらいしか持ち合わせていない…。その種類も少ないし、フレイさんのような人の羨むような武器を持っているわけでもない。

なんだか負けた気がしないでもないけれども錆びついた汚らしいその武器とも言い切れないものを一つ一つ布に巻き、道具ポケットにしまった。


これからあのそそり立つ塔の頂上を目指す。
緑豊かなこの場から続くこの古びた橋を渡るともう引き返すことのでいない世界…。
雲に向かって生える巨塔はいかにもまがまがしさを放っているようにみえる。

とはいうもののあたしとフレイさんの二人を除いて先ほどの二人は確かに掘ってはいたもののさっくりとあの薄暗い塔の中に進んでいった。


あたしたちは遅れているのだ。

あの二人からすれば、『ヴリトラ相手に何をのんきな・・・』というところなんだろうけれども最初から足手まといはわかってはいる。

あたし自身もできうる限り足を引っ張らないようにとは思うものの。
なかなかそういうわけにはいかない…。
ギアノス、ガブラス、大雷光虫たちが行く手を遮る中、極力相手にせず塔をひたすら上る。塔の内面にそって続く通路は通路とは言うものの、中心には壁がなく、いつでもまっさかさまに落ちることのできる危ないつくりだ。

ハラハラドキドキしながら落ちないように進もうとすると、上のほうでギャーギャーと鳴く声がする。
毒を吐き散らすガブラスがあたしの上で旋回しながら品定めをするようにギャーギャー泣いて仲間を呼びよせているようだった。

【キィィィィィィィィィン!!!】

耳障りな高音があたりになり羽ばたくことができなくなったガブラスがぼとぼととあたしの周りに落ちてきた。

フレイさんが投げた音爆弾で耳の感覚がおかしくなり音波で互いに更新したり、反射した音波で距離等をつかむこうもりに似た聴覚を持つガブラスにはこの音爆弾がたいそう苦手なようだ。


が、あたしの鼓膜も…。
キンキンしてますよぉ~~。


にこにこしながらフレイさんが耳をふさいであ~あぁ~いってるあたしに近づいてきた。
『あいつらたぶんあたいたちを待ってるはずさ、頂上のすぐ手前の部屋で。こんなものにかまってられない。早く行こう。』

は、早くいこうしか聞き取れなかった…。

い、い、急げってことね?

あまりおろおろもしてられないのでせっせとこの人間向きでなさそうな、大きな段差をよじ登る。

回廊を二つ潜り抜けるとあの二人がだらだらと座って待っていた。


『フレイぃぃ~!!大丈夫なんか?そのお譲ちゃんはぁ~~??』
狭い部屋に響き渡る声から待ちくたびれたイライラが分かる。

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