「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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三人寄れば文殊の知恵
遍路日記 27~30
わずか10キロ程度しか歩いていないにも関わらず、腰も痛くなり
なかなか寝れません。
ようやく寝付いたと思うと、3時頃目が覚めますが、
まだ起きるのは早いと思い、5時少し前まで布団に入っています。
外は明るく、晴れそうな雰囲気です。
身支度を整え、6時少し前に食事をいただき、門前で
一泊の宿に感謝して、般若心経を一巻上げて出発します。
出発前にすごく気になっていたのが、宿の代金。
値段を聞かずに宿をお願いしたので、高かったら
どうしようかと思いましたが、6500円でした。
6時21分のバスで、安芸方面へ。
朝早いバスにも関わらず、学生が乗っていて、
所々で乗車していきます。
朝日でキラキラ光る太平洋を見ながら、
海岸沿いの道をバスは走っていきます。
昨日とはうって変わっていい天気です。
このあたりには、吉良川・羽根の古い街並みなど
見どころもありますが、バスで突っ走ります。
約50分で唐の浜東のバス停につき、
27番札所を目指します。
ここから、ほとんどが舗装路で約4キロの登りです。
最初は緩やかですが、上の方は真っ縦と呼ばれる急坂です。
バスを降りた辺りに、地元産の販売所があり、
「荷物預かります」
と書いてあります。店も開いていましたが、
なんとなく預けるのは気が引けて重い荷物を背負ったまま
登り口へ向かいます。
登っていくうちに陽が高くなってきて、暑くなってきますが、
昨日の雨天よりはましです。
少しずつ山を登っていきます。
土曜日だからでしょうか?
27番札所へ向かう県外ナンバーの車が、
私をどんどん追い越していきます。
あと、1,3キロのところから、山道へ入る道があり、
そこにベンチがあるので、しばし休憩します。
下で見かけた歩きのお遍路さんが追い越していきます。
次に短パン姿で巡拝道具だけを持ったお遍路さんが
やってきました。
休みませんかと誘うと、
「少し休みます」
と私の隣に座った。
「本物のお坊さんですか?」
「本物かどうかは知りませんが、坊主です」
無精髭を伸ばして、僧形でもないのに
なぜわかるんでしょう?
休憩を終えて、山道を登り始めます。
ここは、ほとんどが舗装路で、山道はほんの僅かのように
思っていましたが、結構長く感じます。
そこをゆっくりと登ると、舗装路に出ます。
真っ縦の舗装路です。
カーブでは内側を回るのが最短距離ですが、九十九折れの
内側に傾斜がついていて、内側がきついため登れず、
外側を回り、結果的に最長距離を進むので歩みがのろいです。
お寺に着いたのは1時間半後の8時40分を回っていました。
27番札所神峰寺はきれいに整備された庭を持つ
美しいお寺です。
境内には霊水が湧き出ています。
この水を飲むと生き返るような気がします。
27番札所の本堂・大師堂をお参りしてから、
その上にある神峰神社に向います。
元々の札所はこちらの神社がある場所ですが、
上まで登る人は少ないです。
大師堂の横から舗装路を登り始めます。
前に、大きな荷物を背負った歩きのお遍路さんがいました。
「神社へ行くんですか?」
「いえ、上の公園に行きます」
どうやら、展望公園に向うようです。
荷物を下に置いている私は「お先に」と声を掛け
軽々と彼を抜いて行きます。
CIMG0686.JPG
舗装路から神社の石段に入ります。
結構急な石段は今ではお参りする人も少ないためか、荒れていて
しかも昨日の雨で塗れた石の上に落ち葉が積もって、歩きにくい。
何故か、先ほどのお遍路さんが私についてきています。
その石段を登りきると、緩やかな道になりしばらく進むと
大きな杉や楠の生えている場所に出て、石段が現れます。
その古い石段を登りきった先に社があります。
CIMG0685.JPG
お参りする人も無く、水も止められて、ひっそりとする中に
背中がぞくぞくするような妖気を漂わせています。
本殿へ進もうとするとヘビが現れます。
この神社の守り神様の化身でしょうか?
その時、先ほどの若いお遍路さんがここへ登ってきましたが、
辺りを見回すと、すぐに来た道を戻ります。
来るものを拒む何かを感じてしまいます。
ここには灯明岩というふしぎな岩があり、何か異変がある場合には
光るといい、日清・日露・関東大震災・太平洋戦争時にも
光ったといいます。
少し境内を撮影させてもらいましたが、こういう霊気の強い場所では
気をつけないといけません。
ふざけるととんでもない目に会います。
ゆっくりと石段を下り27番札所に戻ります。
神峰神社から下って、もう一度ご神水をいただき、二リットルの
ペットボトルに詰め、納経所で唐浜駅の時間を聞く。
現在9時50分。
次の列車は11時です。
下りでは油断できません。
特にアスファルトは足にダメージを与えます。
風がゆるやかに吹いて気持ちがいいです。
真っ縦をゆっくり下っていきます。
CIMG0688.JPG
下りきった頃、二人のお遍路さんが、普通の自転車に
乗ってやってきます。
「自転車で行けますか?」
「ちょっと厳しいと思います」
年配の女性でお遍路さんの姿ですが、自転車遍路とは思えません。
不思議だと思っていましたが、唐浜駅に着くと謎が解けました。
ここ安田町では安田駅前の文化センターで自転車を貸してくれます。
多分そこで借りて乗って来たのでしょうが・・・
苦労されたと思います。
土佐くろしお鉄道の唐浜駅はビックリするような立派な駅!
車50台は止まられようかという駅前の駐車場。
併設する同じ位の広さの公園。
待合室も20人は入れるでしょう。
トイレも真新しくきれいです。
農村地帯の真ん中にそんな駅が出現します。
まだ、整備される予定と思われる、公園の柵の内側には
何も植えられておらず、砂利が敷き詰められていました。
CIMG0690.JPG
まだ、少し時間があったのでホームに設けられたベンチに
腰掛けて列車を待つと、程なくして高架の線路の上を、
カラフルなワンマン車両が現れました。
CIMG0692.JPG
乗客はほとんど乗っていませんが、阿佐東線同様、
きれいな車両です。
列車は海沿いを走っていきます。
初夏の太陽に照らされて、海はキラキラ光り、
青い空とのコントラストがとてもきれいです。
昨日の荒天が嘘のようです。
列車は途中の安芸で、乗り換えします。
今度もワンマン列車ですが、座席が空いていないので、
「のいち」駅まで座ることが出来ませんでした。
のいち駅には12時前に着きます。
駅前はフジグラン(複合スーパー)があり、青山・はるやまが
競うように立っていて、バーミヤン(中華料理のチェーン)もあり
都市部の郊外らしい雰囲気になっています。
食事を取りたいのですが、まず、28番札所を目指します。
気温が上がり、陽射しによって暖められたアスファルトが、
熱を放ち始めてきました。
駅からの道はきれいに整備されていますが、新しく出来たようで
食事を取るようなところは見当たりません。
30分ほど歩いて28番札所大日寺に着きます。
ほぼ平地を歩くのですが、28番は少し登った所にありますので
門前には少し石段がありますが、長くはないので問題なく
スッと登ります。
門前には遍路用品店があります。
普段はお遍路さんが歩いてくると、表へ出て愛想を振りまく
お姉さんも団扇で扇ぐのに必死で、こちらが通ったことにも
気づかないようです。
大日寺はこじんまりした境内に本堂と大師堂が、ちょうど90度の
形に向き合っています。敷き詰められた白い砂が太陽光を反射して
さらに暑さを増しているようにも感じます。
境内に入るとまず腰を下ろし、汗を拭き、水を補給します。
誰もいない境内が静かだったので本堂の縁で大声を張り上げて
読経をしていると、後から現れたお遍路さんを
少し邪魔したようです。
納経まで終わったところで12時50分。
29番札所までは、歩いて約9キロ。
あるいは「のいち駅」まで2キロ歩いて、鉄道で後免駅まで移動し、
後免駅から2.5キロ歩く。
後者を選んで、のいち駅へ戻りました。
28番を出てのいち駅前に戻ります。
次の列車まではまだ30分ぐらいありますので、駅前のフジグランに
たこ焼きの看板を見つけたので行ってみました。
8個入りで580円から。
結構高め?
580円の「ツナコーンたこ焼き」を注文してから、
メニューを改めて見ると500円からありました(;一_一)
しまったと思いましたが、気を取り直してよく見ると
プラス100円でドリンク付きになります。
迷わずドリンクを頼みました。
ドリンクはファーストフードのようにカップに入ってくるのかと
思いきや、発砲スチロールの箱を開けて、メーカー名が不明の
怪しげなペットボトルを渡されました。
う~ん。
怪しげなペットボトルが付くだけなら、別にドリンクつきに
しなくてもよかったような気がします!(自分で買えば良かった)
しかし、よく考えると、ファーストフードにしてもカップに
氷を入れてドリンクを注いだだけです。
中身はこちらのペットボトルの方が多いはずですが・・・
なんとなく損したような感じがするのは、手抜きのように
思えるからでしょうか?
食べおわった後、駐車場を挟んで向かいの建物を見ると
「フードなんとか」と書いてあります!
やってしまった(;一_一)
私が歩いてきた背中のほうにフードショップが
まとめられていたのです!
お腹がすいてくると、とりあえず食べる事しか頭にありませんね。
たこ焼きの値段といい、フードショップといい、
もう少し冷静なら見つけられたでしょう。
完全に餓鬼道に転落していました(;一_一)
13:50の列車で後免駅に向います。
約10分で後免駅に着きます。
ごめんなはり線とJRが接続している後免は意外に大きな駅で、
みどりの窓口もありました。
JRで目に付いたのは女性の駅員です。
ここでもほとんどが女性の駅員でした。
給与が男性より安いのでしょうか?
そう、思うのは差別におもわれるのでしょうか?
みどりの窓口で先走るようですが、この先、土佐一宮から
徳島までの切符を買っておきました。
予断ですが実は私が今回旅したルート
徳島ー日和佐ー甲浦=室戸=奈半利ー安芸ー高知
これに関しては乗車券・自由席特急券とバス乗り放題
途中下車何度でも可能なこんな切符があります。
徳島・室戸・高知きっぷ 5500円
私は予定が立ちませんので買えませんが、予定が立つ方なら
一考されてはいかがでしょうか?(*^^)v
地図を見ながら国分寺を目指しますが、
いまひとつ道がよくわかりません。
この後免駅から29番国分寺へのルートもそうですが、
のいちから28番へのルートも私の持っている歩き遍路の
地図にはありません。
列車・バスの本数が少なく、もしそれを逃したら何時間待ち
ということもありますので、列車・バスの時間にも左右されます。
際どい時に、距離と時間を見切ってそれに間に合うような、歩く力。
歩き遍路地図にはない公共交通機関に関する情報、
それを入手する技術が必要になります。
お四国での出来事に関しては、すべてお大師様にお任せするという
広い心になれれば、どんな遍路のスタイルにせよ、
困難はないのですが・・・
体力的にはともかく、歩き遍路より苦労しました!
私にとっては従来経験してきた歩き遍路よりも、公共交通機関を
併用するスタイルの方がよく多くのことを学び、
糧となったことでしょう。
陽射しがだんだん強くなって、アスファルトの照り返しが
強くなっています。
ただ、風がまだ涼しいので救われます。
車に注意しながら車道と歩道の境のない舗装路を
進んでいきます。
ふと、後ろを見ると、青いTシャツに半ズボンの
若者が強い足どりで歩いてきます。
追いつかれると思いましたが、29番へは私の方が早く入りました。
29番国分寺は本堂が由緒ある檜皮ぶきの建物です。
立ち木で覆われた境内は厳かな感じがします。
四国四県の国分寺はすべて札所となっています。
元々、四国遍路は各国の国分寺と一宮を巡る回国行者から
派生したという説がありますが、それの裏づけとなるように
一宮も形をかえて札所として残っています。
29番国分寺の国分寺でお参りを済ませ、時計を見ると15時10分。
30番の善楽寺までは約6キロ強の道のりです。
今日も結構歩いているし、気温が上がって暑いので、
早く出発しないと30番の納経(5時まで)に間に合いません。
日陰で休んでいた青年に声を掛け、休む間もなく出発します。
お寺を出る前にトイレを借り、出発すると。
先ほどの青いTシャツに半ズボンの青年が少し後ろを付いてきます。
お寺を出て1キロも歩かないうちに、道が判らなくなりました。
「五回も廻っているのに道を間違えるの?」
と言われそうですが・・・
「四国遍路は道に迷うことを恐れてはならない」
禅僧として有名な山本玄峰師は生涯17度の四国遍路を
されましたがあるとき道を間違えたそうです。
お付の者に
「老師、何回もお四国を廻っているのに道を間違えるのですか?」
と問われ
「道を覚えるために廻っているのではない」
と言い放ったという話を聞いたことがあります。
それはさておき、この辺りは、何故か遍路道の記憶がありません。
道が変ったのだろうかとも思ったのですが・・・
暑さはどんどん増しているようです。
時折、後ろを振り向くと青年が20~30メートル後ろを
付いてきます。
私は急いでいるのですが、青年は何故か離れるわけでなく
追いつくわけでなく・・・
29番から約4キロのところに遍路小屋がありますので、
それを目指してひたすら歩きます。
田圃の脇の農道を歩いていると、」農道がどんどん狭まり、
人がやっと一人通れるくらいの幅になります。
後ろから足音が付いてきます。
先ほどの青年でしょう。
しかし、譲る幅はありません。
しばらく、全力で歩いて、少し余裕があるところで
よけて振り向きました。
誰もいませんでした。
あっけに取られましたが、昨日もありました。
26番の下りで足音が付いてくるので、
振り向きましたが誰もいません。
気のせいでしょうか?
それとも何者かが付いてきているのでしょうか?
平地から少し登り、民家が切れた山際の道を登ったところに、
遍路小屋がありました。
荷を降ろし、腰を下ろします。
青年もすぐに遍路小屋に着きます。
青年が話しかけてくる。
「今日はどこからですか?」
「私は全部歩きではないんですよ」
おそらく青年は、27番~28番の間から出発したのだろう。
真っ黒に日焼けした姿は、精悍そのものでした。
徳島から歩き出して10数日は経っているであろう。
その間の苦しみ・つらさ・を背負い、別人のように変る。
歩き遍路特有のものである。
「今日は暑いですね」
その言葉の裏に、朝から歩き続けた疲労感が漂っています。
多分、彼の年齢の倍近い私が意外に元気なのに驚いて
「今日はどこからですか?」
という問いかけになったのではないでしょうか?
時計を見るともう16時10分過ぎ。
しかも、地図を見直すとビックリする事実を発見!
29番~30番間は6キロ強でなく7キロ弱
約一キロも長い(汗)
まだ、3キロもあります。
大急ぎで飴を口に放り込み、水を流し込んで出発!
果たして5時までに間に合うのでしょうか?
遍路小屋をあわただしく出発した私ですが、
29番~30番のルートについてよく考えてみました。
私が選んだルートは比較的細い道で、当然のことながら、
バスは通っていません。
しかし、少し遠回りになりますが、
もう一つルートがありました。
その道は私の記憶が正しければ、二車線の広い道、
そちらへ出たらバスが通っている可能性がありました。
遠回りと言っても二つのルートの差はわずか200M足らず。
時間を優先するならば、そちらを選ぶべきだったのですが、
29番を出発する時点では思いつきませんでした。
近いという理由でこちらを選んだことを
後悔しましたが後のまつりです。
しばらく細い道を登ると、広い道に合流します。
急げ急げと自らを叱咤激励しながらひたすら歩きます。
峠に差し掛かり、下りになります。
墓地の間をぬけ、住宅地を進み、広い道路をショートカット。
ようやく、こんもりした森が現れます。
交通量の多い広い道路の車の切れ目を狙って、
反対車線にわたると、30番の本堂の屋根が見えます。
16時40分ごろ、やっと到着です。
30番の本堂を左に見ながら、正面の土佐神社に進みます。
江戸期まではこの神社が本札所でした。
明治の神仏分離令によって、本尊は市内の安楽寺に移され
長らく安楽寺が30番札所でした。
私の曾祖父が明治期に四国巡礼を行っていますが、
安楽寺で納経を受けています。
善楽寺は昭和期に現在の地に復興してから、
30番札所となりました。
元札所とはいえ土佐神社は檜皮葺きの屋根を持った、
神々しい神社です。
四国遍路の際にはぜひお参りしていただきたいところです。
参拝してから朱印を頂きます。
30番へ向かおうとすると、先ほどの青年が
神社へ入ってきました。
「30番はこちらですか」
「いや、隣です。ただ、ここが江戸時代まで本札所です。
せっかくですからお参りしたら?」
「そうですか」
そう答えて青年は素直にお参りしていました。
30番へ向かい、先に納経を受けてから本尊様にお参ります。
なんとか間に合いました。
先ほどの青年のおかげです。
彼が付かず、離れず、追い抜かず、後ろから
ついてきてくれたおかげで、私は今の自分の限界に近い速度で
進むことができ、結果的に間に合いました。
彼には感謝しました。
お大師さんかもしれません。
30番をお参りしたあと休憩している青年に
お接待をさせてもらい、別れました。
30番を5時10分過ぎに出て、土佐一宮駅へ向かいます。
土佐一宮駅は簡素な待合い室があるだけの無人駅ですが
駅はたくさんの自転車に埋められていました。
17時55分発の阿波池田行き各駅停車に乗ります。
列車の中で車掌さんに
「池田には何時につきますか?」
「20時57分です」
「20時57分!3時間も掛かるんですか?」
池田からの時刻表を調べると、池田発21時41分!
徳島着は推定23時!遅すぎる!
車掌さんに申し出ました。
「特急で行きたいんですが」
これで早く帰れる。
18時16分土佐山田駅着。
24分停まるというので途中下車。
「特急はいつきます?」
「18時50分です」
「え~各駅停車より遅いんですか」
だまされて特急券を買わされたような気が・・・
「いえ、でも池田には19時45分に着きます。
この各駅停車より1時間15分早いですよ」
結局21時過ぎに帰れました。
6月6日 四ヶ寺 二社 参拝 歩行距離 24キロ
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