その 12



本格的にひきこもりが始まったのは、2001年から(もしかしたら
2000年?)。 彼はひきこもりを暫くした後、ヤフーオークション
で、漫画本や、CDを売ってこづかいを稼ぐようになりました。
このこづかい稼ぎは、まあまあの金額に達したようで、父や母に、そ
して私にまで、プレゼントを買ってくれたりしたこともありました。

これがしばらく続くと、ねた切れになってしまい、今はもうやって
いないようです。

ヤフーオークション時代の始めの頃は、郵便局へ行くのも、人と
接しなければならないのでおっくうだったそうです。 ただれている
肌を見られたり、膿の出ている耳を見られるのが、嫌だったそうです。


たしか2003年の春ころ、弟からとても心強いメールをもらいました。
その内容は、最近出会ったバンドがあって、その歌の歌詞が自分が
いままで経験してきた、淋しさや苦悩に響くものがあって、こう思って
いるのは自分だけじゃないんだ、と力づけられた、というものでした。

私はこのメールを読んだ時、本当に弟はもう大丈夫だ、と思いました。

そのバンドのライブなどにも行ったりしたそうです。 ところが、ライブ
会場で、どういう理由かはわかりませんが、他のファンから、歯が一本
無い事や、耳の事を言われたらしいのです。 その上、このバンドの
Website か HP に、弟がなんらかのコメントを書いた事で、他のファン
から怒りをかい、それ以来、意地悪メールやいやがらせメールを
もらってしまったようです。

このバンドの歌詞の内容や、TVでの彼らのコメントは、自分の事を
言っている、僕をあざ笑っているとも言うようになりました。

それ以来、弟はPCに触わる事さえしなくなりました。

私からみれば、“もう大丈夫” と思えた時点から、“ひきこもり”
へまた逆戻りです。


これらの事実をなぜ私が知ったかというと、去年の秋、私が里帰り
した時、弟と私で、父の一番下の妹(叔母)の家へ遊びに行った事
がありました。 この叔母はクリスチャンで弟の事を本当に心配して
(もしかしたら、私の両親以上に心配してくれている)、数週間に
一度、弟を訪ねて“ケーキでも食べて気軽におしゃべりしよう” と
いうことをしてくれています。 この叔母曰く、始めは部屋のドアさえ
開けてくれなかったそうです。 叔母の努力の甲斐あって、弟はこの
叔母には心を許しているようです。 この叔母も一昔前は、“死にたい”
と思っていた時期があり、弟のことは親戚の中でも一番良く理解できる
人物だと思います。

叔母と弟と私でおしゃべりをしながら、上の“バンドの話”を知りま
した。 この経験は弟にとって、かなり大きなショックだったようです。
実はこれ以前に、一番下の弟から“バンドの話” はなんとなく聞いて
知っていました。 一番下の弟も、これは大事件で迷惑メールももらって
いるらしい、と言っていたので、私はそれはそれは、大大大事件を想像
していました。 実際、弟から“バンドの話” を聞くと、“ええ、そんな
ちっぽけな事???” という印象を私は持ちました。

弟が話した事柄は実際にあったことだとは思うけど、弟のそれに対する
反応の仕方が、被害妄想が大きいというか、幻想の部分が必要以上を
占めているというか、そんな気がしています。

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