1993年新聞投稿集(後半)



夏はなく 残暑だけある エルニーニョ

国会の 生中継で スターかな

コカインで 角川文庫 連想す



物書くは生きている証             1993年8月25日

最近、物を書くという作業を忘れていた。マイペースで物を書きつづけるということが大切なのに、ちょとしたことに影響されて初志を投げ出すところであった。新聞投稿が縁で自費出版本を小生に献呈して下さる方々があり、その方たちのお陰で創作意欲をかきたてられた。Kさんの「銀鈴」、Sさんの「生死を問いつ」に両氏のひたむきな生き様を見た思いがした。

先日は、「次は小説を」と意気込んでおられる投稿を拝見した。

人が生きた証として何かを残したいというのは、古今東西、変わらぬのではないだろうか? そして今日は誰もが自由に文字を操り、考えを残すことができる。一億総作家時代だ。文字が我々庶民みんなの物になっており、誰もがその恩恵を享受していることを自覚して、しっかり権利を行使しよう。

                      【朝日新聞 9月2日掲載】



世代交代で付き合いに遠慮        1993年8月29日

金さん銀さんと同じ明治25年生まれ、満101歳の、親戚のおばあちゃんが亡くなった。私の曽祖父の実家に大正の初めに嫁入りして早や75年。彼女は私の祖父と義理のいとこになる。その間、夫を早く亡くしたり、子供を亡くしたりと激動の人生を歩まれた。

3年前、私の伯母を癌の定期検診に連れて行く途中で彼女の家に立ち寄った。彼女は久しぶりの再会に大喜びで、私の伯母との会話を楽しまれた。

「あなたが一番、我が家のことを知っとるとよ、あんたしかおらん。」と糠塚の百代ばあちゃん。

「そうよ、私は3歳の時から、卯助じいちゃんに連れられて糠塚に来てましたからね。」とトキ伯母。そのトキ伯母も、2年前に86歳で亡くなった。

糠塚の百代ばあちゃんの息子(籏生武麿)は、古い付き合いを大事にしている。私も彼の気持ちに答えたいが、なにしろ、私と籏生武麿さんでは7親等の関係だ。母と2人で葬儀に来たが、座敷に上がるものか躊躇し、骨を拾いに焼き場まで行くものかどうか思案した。子供や孫や曾孫で少なくとも20人はいる。直系だけでごった返す中、結局は、葬儀が終わると速やかに帰路に着いた。

≪後日談;百代おばあちゃんの四十九日の法要と埋葬には、案内状が届き出席させていただいた。その後、武麿さんが平成11年、79歳で鬼籍へ。今度は骨も拾った。≫




桜も切る時あり                  1993年9月5日

「桜切る馬鹿,梅切らぬ馬鹿」と昔から言ってある。その桜を切ってと何度も妻から頼まれた。毛虫が異常発生して桜の木から風に吹かれて家の中に入ってくるのだ。

台風一過の秋晴れのすがすがしい日曜日、朝から桜の木の消毒と毛虫退治におおわらわ。妻は、隣組の娘さんの結婚祝にお呼ばれで家を空けている。私は家の中の不要な物を片付けるため、焚き火。そして、毛虫を見つけては,その火にくべた。子供達は、途中から、おばあちゃんのいる母屋に行って、かくれんぼ。

背中に消毒機を背負って噴霧したが、自分の顔にも少しかかった。毛虫の多いのにただびっくり。30分ごとに壁やフェンスをよじ登ってくる。毛虫は桜の木から降りて、そこらじゅうにいる。妻が、桜の木を切ってと言うのも理解いくようになった。来年はもう少し早く消毒をしよう。



時事川柳                       1993年9月6日

台風一過 毛虫退治の 日曜日

金曜日 台風待って 家の中

誰ぞ出す 六百億の 公献金

与党とは 国民の血を 吸う機械



抑圧された現代人                 

1993年9月13日

バスの運転手さんが、乗客とバスを捨てて、立ち去ったという前代未聞の記事を読んで、現代人はみんな、いろんなプレッシャーの中に生きているから、時折、プッツンが起こるんだろうなあと共感した。

私も教員になりはじめ、生徒がこちらの思うようにならないので、テキストを投げ出して、行き場を失った昔の事を思い出した。

運転手さん、頑張ってください。みんな、耐えているんだから。

                      【読売新聞 9月18日掲載】




大相撲と夕食準備                1993年9月18日

土曜日、4時半帰宅。妻は昨夜に引き続き風邪でダウン。子供達は、昼食はパンを買ってきて食べたという。夕食を作らなくてはいけないが、大相撲のテレビ中継を見ないことには動けない。

アメリカのモンデール駐日大使が初めて大相撲を観戦に来ていた。初場所のとき,小和田外務次官が見ていた辺りの席だった。天皇陛下の席よりも、彼らの席の方が臨場感があっていいだろうなあ。

夕食の買い出しで、青物野菜(レタス、キャベツ、ほうれんそう)の高いのにびっくりした。個人的に、にんにくの新芽が好きだし、安かったので買ったが、さて子供たちの口に合うかどうか。私の夕食は、果物付きで彩りがいいので子供たちから好評だ。バナナが安くて手ごろだ。デザートとして少し切って盛り付ける。プルーンもいい。肉、さんまの蒲焼缶詰、にんじん、卵豆腐、もやし。我ながら、栄養のバランスが良くて、おいしい夕食だったと自己満足。子供たちに何度も「おいしいだろう」と念を押した。

アメリカを買う中国               1993年9月20日

NHKスペシャル「アメリカを買う中国」を見て感動した。中国第一の大企業が、約8年前にベルギーの製鉄所を丸ごと購入、解体して中国本土へ船で運んで、同じ製鉄所を更に効率良く作りなおしたのである。そして、フランス、イギリス、アメリカなどで、同様に製鉄所や発電所のプラントを購入、解体して船で運んで中国本土で組み立てている。

NHKスペシャルでは、特に今年実施されている米国カリフォルニア州フォンタナの製鉄所の移転の模様を詳しく報じていた。299人の解体労働者や料理人その他の事務員の労働ビザ取得を条件にプラント購入契約が交わされ、たかだか月に300ドルの為にみんな喜んで一生懸命に働いていた。すべて自前で解体から組み立てまでするのだから、びっくりである。安い労働力がそのまま海外に進出するのだから、国際労働市場としては、はじめての実験であろう。これから、世界がどのように変化していくか、見守りたいものだ。



裏金の作り方を知った            1993年9月23日

清水建設の会長そして副会長がつかまって、やっと裏金の作り方が分かった。一体、どうやって億の金を作るのだろうか、今までこれが分からなくて、じれったかった。架空の工事を下請け業者らに発注し、帳簿上は清水側が支払った金を、実際にはバックさせてプールする手口だ。

大手ゼネコンは、他も同様のことをしていると推測できる。これからは、税務署にしっかりと架空工事の見張り番をお願いしたい。

今こそ、田中・金丸金脈の根元を引っこ抜く時だ。建築・土木事業に多額の血税がつぎ込まれ、その金額の内から裏金ができているのだから、やりきれない。私達の税金が国や地方公共団体の土木事業費に変わり、そして裏金になり、そして政治家の財産に変わる。だからこそ、閣僚の財産公開が必要となった。これでなんとも感じなかったら、それは政治家と同じ趣向の人だろう。私たちはまず初めに税の使われ方に注意すべきだろう。

                     【西日本新聞 9月28日掲載】




通信教育部は偏差値無用           1993年10月1日

「九州の大学に通信教育部を」という投稿文を読み、「ひゅうまん探訪」のじっちゃん先生(70歳)を思い起こした。63歳で地元の郵便局長を最後に定年退職、そして慶応大学の通信課程を6年間で卒業。この4月から非常勤講師として、中学校で国語を教えておられる。すばらしき人生の旅路である。

実は私も通信教育部(日本大学)の教育実習生として、34歳で母校・宗像高校の教壇に立った。今、女子高で教えてちょうど10年になる。21年前に九州大学の経済学部を卒業するときは、教員になろうとは夢にも思っていなかった。会社勤めでアメリカに派遣されたこともあり、英語検定も1級を取っていたので、さて何を教えようかということになると英語が一番身近にあった。

通信教育は入りやすく、卒業が難しい。偏差値は論外だ。高校卒業または卒業見込者なら誰でも入れる。



自然葬所感                 1993年10月13日

40代になると、納骨に立ち会うことが多くなった。お寺の納骨堂か、お墓の中に骨壷を安置するケースが多いが、今回、土中に埋められた。骨壷のまま、土中に埋めるのは、いわゆる自然葬ではない。お寺の納骨堂にしろ、お墓にしろ、土中にしろ、骨壷で自然と隔離していては、自然に返ることはできまい。

タブーとして滅多に論じない話の一つは、焼き場に残した大半の骨灰の行き先だ。これがどのように処分されているか、推測に難くない。どこかの港湾施設の埋め立ての中にはいって行くと想像している。人は、このスタイルを自然葬とは呼ばないが、私は、一つの自然葬だと思う。

韓国では、国土がどんどん墓地になっていっている。土に埋めるので場所を取る。米国と同じだが、国土が小さいことを考えると、火葬にして、日本の寄せ墓や、お寺の納骨堂(お霊屋)という形で、スペースの有効利用を考えた方が良いと思う。スペースの有効利用の極致は何と言っても自然葬だ。時代と共に変わっていこう。



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