デラシネの日録

デラシネの日録

「ブタヤマさんたらブタヤマさん」の巻続き


 「キャベツくん」では、「僕をたべるとこうなる」と、鼻がキャベツに変わったブタヤマさんをそらに出して見せる。次には、へび、たぬき、ゴリラ、カエル、ライオン、ぞう、のみ、くじらと体の一部がキャベツになった動物たちを空にうかべる。くじらの時には、キャベツのにおいがあたりに満ちる。ああ、キャベツをざくっと切った時のあのにおい。なんだかとんかつのとりあわせのような話だが、ブタヤマさんは常にキャベツくんを食べたい。最後には、キャベツくんがレストランでごちそうしてあげると言って、二人つれだっていく。
 「キャベツくんとブタヤマさん」では、つりばしの上で出会う。今日はいきなり食べたいとは言わないが、ブタヤマさんははらぺこで、舌なめずりをしている。そこに大きな魚がやってきて、つりばしの上には、へび、あおむし、むかでがのってくる。ながながした虫たちがロールケーキのように丸まる。ブタヤマさんは「いつもごめんね」とキャベツくんにあやまる。そのとき、ざばーんとつりばしが落ちてしまう。ああ、あやうし、キャベツくん、ブタヤマさん。魚にたべられちゃった?虫たちといっしょに助かった二人はやっぱり、キャベツくんの案内でご飯をたべにいくのである。冷静なのは、キャベツくん。「ごちそうする」のもキャベツくんなのだ。
 「キャベツくんの日曜日」では、まねき猫おばけがやってくる。三匹のネコは「いらっしゃーい」と手招きしながら、ブタヤマさんとキャベツくんをさそい、はじめは、地平線までのキャベツばたけ、つぎには、地平線までネコばたけ、次には地平線までブタばたけを見せていく。怖い思いをしながらも、ブタヤマさんとキャベツくんはついていく。最後にネコたちは「おいしいものはありませーん」と去っていく。こんどはおうちでキャベツくんはブタヤマさんにごちそうしてくれるつもりらしい。

 これら一連の作品をよんで、感動したのは、はじめはキャベツくんがブタヤマさんをおどろかす話だったのが、二人でいろんな冒険をしてしまうというところだ。最後には、「ありませーん」と去っていく三匹の招き猫おばけ。ああ、びっくりした。そして、冒険をした後は、ふたりでおいしいご飯をたべる。いっしょにおいしいご飯を食べると、たいへんだったけど、よかったねーという気分になる。そんなたいへんだったけど、よかったねーの気分が最後のページにはただよっている。

 招き猫おばけについては、いろいろ考えさせられる。招き猫おばけは、「おいしいものがありますよー」と招くのだが、そこで出てくるものは、地平線まである畑である。つまり、「生」のままで、「過剰」なのだ。考えてみたら、ブタヤマさんとキャベツくんを招くのに、「三匹」というのも過剰である。唐突だが、男性にとって、自分が恋する女性とは「魔法を使う猫」と感じることはないだろうか?女性との関係が深くなると「生」の部分も知るし、その「過剰」さにうんざりすることもないだろうか?
 招き猫おばけは最後に「おいしいものはありませーん。」と言って、去っていく。魔法はいつか消えてしまう。恋はさめる。そこで、キャベツくんは「ごはんをつくってあげる」と、言うのである。失恋はいつかやってくる。そこでいっしょにごはんを食べてくれるのは、キャベツくん。

 絵・作の両方、長新太さんの作品という場合には、黄色と青が中心のものと、ピンク赤中心のものがあるが、このシリーズは寒色が中心なせいか、どことなく安心感がある。最後に鳥がピイと鳴いたりして、それはそれはのどかである。おちつかなさと安心感。なんだか、いろんなことを感じさせる絵本である。

 最終巻というか、最新刊は「つきよのキャベツくん」これは、読んだら、また書こう。



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