人はいかに簡単に人生の落とし穴に落ち、そして、いかにして新しい人生を歩み出すことができるのか。 ひとりの女性の再生と成長の物語を通して、人生の深さ、家族や友人の愛の大切さを描いた『マップ・オブ・ザ・ワールド』は、小規模のインディペンデント映画ながら、全米公開時には、多くの女性たちの共感を得て、1999年のナショナル・ボード・オブ・レビュー最優秀インディペンデント映画賞を受賞、主演のシガニー・ウィーバーは、2000年ゴールデングローブ賞最優秀主演女優賞にノミネートされたヒューマン・ドラマの傑作である。 アメリカののんびりした田舎町に住むひとりの平凡な主婦アリスは、ある日、目を離したすきに、親友の娘を不慮の事故で死なせてしまう。良心の呵責に悩まされる一方、世間の偏見という制裁を受け、さらに、でっちあげられた幼児虐待の罪まで着せられてしまう。気丈で皮肉屋なタフな女性に、ふいに訪れた人生の危機。どん底のなかで、ときに自分を見失い、混乱しながらも、やがて、家族や友人の信頼と愛に支えられ、新しい人生に向かって再出発をする……。 原作は、1994年、ジェーン・ハミルトンのベストセラー小説「A Map of the World」である。心の奥底をじっくりと炙り出すように丹念に書きこまれたこの小説を、ときに辛辣にときにユーモアたっぷりに、絶妙な緩急で映画化してみせたのは演劇界で功績のある演出家スコット・エリオット。「The New Group」の主宰者兼芸術監督として、ニューヨークの演劇界をリードしてきたエリオットは、本作が映画監督デビュー作となる。『マップ・オブ・ザ・ワールド』の要は、欠点も長所も併せ持つ登場人物--とくに女性たちの人間味溢れるキャラクターだが、俳優たちにとって、今最も一緒に仕事をしたい演出家のひとりといわれるスコット・エリオットの参加によって、インディペンデント映画でありながら、現在のハリウッドで最高といっても過言ではない豪華なキャストが顔を揃えた。主演のアリス役をこれまでにない豊かな感情表現で演じきったシガニー・ウィーバーも、スコットエリオットと仕事ができるというチャンスに飛びついたひとりだ。「『マップ・オブ・ザ・ワールド』は、すべての女性にあてはまる最高のストーリーだと思った。この映画で描かれているような悲劇は、誰にでも起こり得るの。女性は、この真実を潜在的に知っている。普遍的な話なのね。この濃密な仕事は、一生のライフワークになり得るものだったわ」 アリスの親友で愛娘を不慮の事故で亡くしてしまう母親を演じたのは、『ことの終わり』でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたジュリアン・ムーア。また、アリスとの確執から事件をでっちあげる小学生の母親に『ボーイズ・ドント・クライ』でアカデミー助演女優賞にノミネートされたクロエ・セヴィニー。アリスのお節介な義母役には、『カッコーの巣の上で』でアカデミー主演女優賞を受賞したルイーズ・フレッチャーと、主要キャストがアカデミー賞受賞あるいはノミネート経験者である。演技派女優たちの見事なカルテットは、この映画の最大の見所でもある。また、自然に囲まれたのどかな風景を印象的に演出する音楽は、本作の舞台と同じアメリカ中西部ウィスコンシン州出身のギタリスト、パット・メセニーと彼のバンドが担当している。