「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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出会い
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Li-liさん
の日記に大切な男性との「出会い」について書かれている。
そのお話を読んでいて、私もなんだか書いてみたくなった。
夫ダンクとの出会いについて。
初めて彼と会ったのは大学のコンピューターラボだった。
忘れもしない。
私は「アルコールが及ぼす”精神的肉体的”快感と苦痛」なんてタイトルのペーパーを書いていた。
長い長いペーパーだった。
その日、スクリーンを凝視しすぎた私はドライアイになり、コンタクトではなくメガネをしていた。
淡い緑色のふちのメガネ。
そんな私の前列に、数人の男性が現れた。
席につくなりその連中はガヤガヤと話しながらチャットやゲームをし始めた。
その中の一人、ちょうど私の斜め前に座った人が
両手の人差し指で”カチ・・・カチ・・・カチカチ・・・カチ”とキーボードを叩きだした。
”え?!今時”カチカチ君”ですか?!”
まあ、そのタイピング速度の遅いこと、遅いこと。
”カチ・・・カチ・・・カチカチ・・・カチ・・・カ・・・チ”
”この人、1000ワードに何分、いや何時間かかるんだろう?”
若干ペーパー書きに飽きていた私は、しばらくの間
カチカチ君の不規則に動く二本の人差し指を見つめていた。
隣の友達がいかがわしいサイトに次々にアクセスし、下品な笑いをしていても、
カチカチ君はキーボードを食い入るように見つめ、ゆっくりゆっくりタイピングしていた。
次のクラスのため帰り支度を始めた時、私はデスクの隅に置いていたフロッピーを前方に落としてしまった。
その物音に気がついたカチカチ君はすばやくそれを拾い上げると、振り向き私に手渡してくれた。
その時ようやくカチカチ君の顔を正面から見ることができた。
”ふうん、こんな顔してたんだ。”
さっきまでの”カチカチ・タイピング”を思い出したら自然と顔がほころんだ。
そして私は満面の笑みを添えて「thanks」と彼に告げ、ラボを後にした。
”カチカチ君だ!”
初めて見かけたあの日から約一ヶ月。
私はコンピューターラボで何度も何度もカチカチ君を目撃していた。
”カチ・・・カチ・・・カッカチ・・・カチ・・・カ・・・チン”
相変わらずのあの手つき。
私はなぜかその光景に
なんとも言いがたいイトオシサ
を感じていた。
タイピングの手を休め、彼の人差し指と大きく丸まった背中を見つめた。
そして顔がほころんだ。
そんなある日、カチカチ君は私の数列後ろの席に背中を丸めて座っていた。
一服したい友達に連れられて席を立つ私。
チラッと後ろを振り向くと、いつものようにキーボードをじっと見ているカチカチ君。
”頑張れ!”
心の中でエールを送る私、笑。
ビルの外で談笑しているとカチカチ君とその友達が外にでて、ドームに向かって歩き出した。
”ああ、今日はもう帰るのね。バイバイ、カチカチ君。”
しゃんと伸びた彼の背中に無言でそんなメッセージを送り、私達は席へと戻った。
すると私の友達の席に一枚のメモが置いてあった。
whats up, green eye. you know what, he does not have any GF.
「なんだこれ? イタズラ? heって誰さ? それにしてもgreen eyeってなんだこれ?」
不信感たっぷりにメモを見つめながら二人で話していると、後ろの席に座っていたおばちゃんが
「それね、さっき男の子が置いていったわよ。背の高い、黒人の男の子。もう帰っちゃったけどね。」
そう教えてくれた。
「むー誰だろう? 少なくともこのラボには100人近くがいたはず。
私達が外で話している間に何人もの人が出て行っただろうし。 無理、無理。 わかんないや。」
そう言うと友達は誰が残したのかわからないメモを丸め、ゴミ箱に捨てた。
それから何日かしたある日。
私はカチカチ君と思わぬところで再会した。
そこは当時、私が付き合っていた男性(トーマス)の家。
「I DO need メンチ!!!!! I DO need them!!!!! We DO need them!!!!!」というトーマスのリクエストに答え、
揚げたてのメンチコロッケを大量に抱え、彼の家のドアをノックした私。
大音量の音楽がかかり、人がわんさかといる彼の家。
そんな騒がしい中に、あのカチカチ君はいた。
40個のメンチコロッケ(メンチカツ)を抱えた私。
そんな購買のおばちゃんみたいな格好の私に笑顔のカチカチ君。
”そうなんだ。 トーマスとつながりあったのね。”
そう思いながら人を掻き分けようやくトーマス(当時の彼氏)の元へ。
大音量に加え、私の嫌いな
あの葉
のニオイが充満している部屋。
「はい、メンチ! ねえ、吸っている時は呼ばないでっていったわよね!」
そうトーマスの耳元で言ったが、彼の目は既に泳いでいて”こりゃダメだ”状態。
呆れて帰ろうとする私をトーマスは後ろから抱き寄せ膝の上へ。
周りの視線を痛いほど感じた。
「嫌、吸っている時は嫌だってば。」
冷たく彼を押しやってドアへと向かった。
「待てって。悪かった。な?いいだろう?」
そう言って抱き寄よせる手がいやらしく私の背中を下りていく。
部屋の奥からからかうような、笑いが聞えた。
「わかったから。ほら、みんなが見てるし、友達が待っているから行くね。」
その息苦しい部屋から一刻も早く立ち去りたかった私は、彼の腕からスルリと逃げ出した。
「じゃあ、みんなが帰ったら呼ぶから。 夜な? な?」
”夜って、今はもう21時でしょ? それにこんなニオイの部屋になんて一週間は入らないから、まったく!”
そう心の中で愚痴をいいながら、「わかったわ。」と振り向きもせずにトーマスに答えた。
駐車場に向かうとさっきまで停まっていた友達の車がそこになかった。
”タバコだな、きっと。”
階段に腰を下ろし彼女の帰りを待っていた。
「ごめん、知らなかったからさ・・・」
突然、階段の上から誰かが私にそう言った。
見上げるとどこかでみたことある男の人がいた。
「え? 何?」
「だから、君がトーマスの彼女だと知らなかったんだ。
いつもラボでダンクのことを見つめているから、俺てっきり君がダンクを気に入ってると思ってさ。」
”あっ! この人、いつもカチカチ君と一緒にいる人だ!”
「え? どういうこと?」
「ほら、あのメモ。 彼女はいないってやつ。」
「あ~!あのメモ! あれ、あなただったの? て、いうかあのメモを受け取ったのは私の友達よ。」
「マジ? しまった、でも”green eye”って書いてあっただろう? ほら君、いつも緑のメガネ・・・」
「うん、確かに私のメガネは緑だけど・・・」
「俺とダンクの間では君を”green eye”って呼んでたんだよ。悪りい、悪りい。」
「私もね、あなたの友達を”カチカチ君”って・・・だって、ほら遅いでしょ彼。」
「確かに・・・」
二人でカチカチ君のカチカチ姿を思い出し、爆笑。
そんなところへタイミングよくカチカチ君が登場。
「なんだよ、二人で。」
そんな彼の顔を見るなり、またまた二人で大爆笑。
「なんでもないのよ。ただね、ちょっとした誤解を解いていたの。それだけ。」
その日ようやく彼は”カチカチ君”を卒業し、”ダンク”という本名で認識されるようになった。
これが夫ダンクとの出会い。
これからしばらく彼は私の人生に時々”友達として”登場。
あくまでも友達として。
four-leavesさん
同様、私と夫ダンクとの関係も”友達→恋人”に移行したパターンでした。
でもその移行はもう少し先のお話。
こうして夫との出会いについて振り返るきっかけをくれた
Li-liさん
には心からお礼をいいたいです。
なんだかあの頃の気持ちを思い出すことができて、じっくり考えることができました。 ありがとう、Li-liさん。
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