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SENPAI 1


大学でサークルに所属して部室で初めて逢った時だった。

まだ誰も来ていない部室に先輩と2人だけだった。
新入部員の女の子だっていうのに、気の利いたトークも無しで
先輩は無言のまま、机に突っ伏して寝ていた。
正確には寝たフリをしていた、んだと思う。
(気まずいなぁ・・・早く誰か来ないかなぁ)と思った瞬間
「あ、」と言って、むっくり起き出し、
「ねえ、耳、見せて」と言った。
「え?耳??」と戸惑う私を気にも留めず近づいてきて、
いきなり長い髪の私の左首筋から手を入れて右手で私の髪をかきあげた。
心臓が止まりそうだった。
なぜか、動けなかった。
でも、嫌じゃなかった。
というより、どきどきした。

「へぇ」と、一言言って先輩は黙った。
「な、なんなんですか?」
「もしかして、名器?」
そう言うと、先輩は「あはは!」と笑った。

名器かどうかは別として(笑)
それ以来、先輩が気になってしようがなかった。
いつも目で追ってしまう。
気づかれていたかもしれない。いや、気づいていたはずだ。
なのに、気づいていないかのような態度だった、あいつは。

女の子はみんな、下の名前で呼ぶことになっていたので
私も例に漏れず、「うさぎ」と呼び捨てにされた。
なのに、先輩だけは名前を呼んでくれない。
いつも「ねぇ」だ。
ある日大学の図書館で、ばったり会ったので
「先輩、私の名前、覚えてくれた?」と聞いてみた。
「うん。」と答えたにもかかわらず
その日も「ねぇ」だった。

新歓コンパは、バカ騒ぎだった。
一気の嵐、罰ゲームも吹き荒れた。
先輩もヘベレケに酔っていた。
いつも仲のいい、噂の女の先輩と、隅の方で、わはは!と笑っている。
時々、その人に寄りかかったりしている。
悔しい・・・
ちらっとこっちを見たので、慌てて目をそらして
見てないよ~というそぶりをした。
ばればれかもしれない。
隣のヤツと、仲良く話してるフリをした。

トイレから戻ったら、先輩がちょうど靴を履いているところだった。
「帰るの?」と聞いたら
「帰るの。」と答えた。
「じゃ、私も帰ろうかな」と、つい口に出た。

先輩は靴を履き終って身体を起こすと
「一緒に出ちゃう?」と
いたずらっ子みたいにニンマリ笑った。
私もつられて、にんまりした。

私の手をつかんでエレベーターに乗った。
先輩はまっすぐに立っていられないほどで、私にもたれかかってきた。
「先輩、重いよ・・・」と言ったら
「そう?」と言って
エレベーターを出たとたん、いきなり抱きすくめられた。

強く抱きしめられて
そして
左耳を噛まれた。

痛かった。

耳フェチか??
と、思った。

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