non title

non title

SENPAI 18


こんなに周りにたくさんの人がいるのに、私はひとりだ、と、ひどく孤独を感じる。
一刻も早く、先輩の声が聞きたい。いますぐ先輩のもとへ飛んでいきたい。
公衆電話を見つけて、すぐに電話した。先輩に連絡するのは何ヶ月ぶりだろう。
きっと先輩は、いつものように私を受け入れてくれる。
「久しぶり。どうしてた?」お盆休みや、年末年始の帰省から戻った時のように、
そう言って微笑んでくれる。
逢いたかったと、抱きしめてくれる。そう信じて疑わなかった。
私は遠回りをしたけれど、やっとわかったのだ。
見えない未来に怯えるよりも、今、大切な人との時間を大事に過ごしたい。
自分の世界も広げよう。もっと魅力ある人になるために。
相手の時間も尊重しよう。二人の時間を充実させるために。
これからは、いい距離を保ってうまくやっていける。きっと大丈夫だよ。
そう思い始めていた。

何度目かのコールで、先輩が出た。
「先輩、私」
「うん」受話器から懐かしく響く、先輩の声。嬉しさがこみあげる。
「今ね、新宿なんだけど、これから行ってもいい?」
先輩は返事をしなかった。
私から連絡しないでいたことを、怒っているのだと思った。
「ずっと連絡しなくてごめんね」
「何度も電話したよ」先輩の声は低い。
「うん、ごめん・・・怒ってる?ほんと、ごめんね」
先輩は無言だった。
「ご飯食べた?なにか買っていこうか?」私は努めて明るい声を出した。
「逢えないよ」
「どうして?出掛けるの?」
少しの間があったあと、先輩ははっきりと言った。
「うさぎ、別れよう」

うさぎ、別れよう

今、なんて言ったの?わからない、わからないよ。

「だから、もう逢えない」
私は震えながら聞いた。
「どうして?私がずっと電話しなかったから?」
先輩は黙っている。
「自分勝手なことばかりしたから?それとも・・・」
私は意を決して聞いた。
「好きな人ができた?」
「違うよ、そうじゃない」先輩は即答した。
「じゃあ、なんで?どうして?私、悪いところ治すよ。言って」
「うさぎが、悪いんじゃない。決めたんだ、もう」
先輩は、自分に言い聞かせるように、しっかりと言った。そして・・・
「付き合っていく自信がなくなったから」

いやだよ、そんなの。ひどいよ。
始まりは、なにも言ってくれなかったのに
終わりだけ、「別れよう」だなんて。
私、どうしたらいいの?
ひとりにしないで。ひとりになりたくない!

心の中で叫んでいた。

それでも、口に出せなかった。
すがりつけない、どうしても。
これ以上、嫌われたくなかったし、
何を言ってももう、変らない気がした。

「うさぎは、悪くない。・・・ごめんな」
先輩はもう一度言った。
私はもう、何も言えなかった。

「わかった。・・・じゃあね」あっさりとした口調で電話を切った。
精一杯の、最後のやせ我慢だった。

そのあと、どうやって家に帰ったのか、覚えていない。
頭の中も、心の中も、空っぽで、ぬけがらだった。

ーうさぎは、悪くないー

じゃあ、誰のせい?何のせい?
どうして私たち、別れなきゃいけないの?

悪いのは、私。
私は、遅すぎた。
そして私は

見捨てられたんだ。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: