HPで試聴して全く知らないギタリストだったが、目の覚めるようなギターワークに即買いを決めてすぐに福岡のキャットフィッシュレコードに通販申し込みのメールを送ったのが2001年の春先だった。 1曲目「MR.P.C.」に気合を感じた。脇目も振らず猪突猛進の如くギターを掻き鳴らすNICOLA MINGOに一聴好感を抱いた。続くアントニオ・ファラオがそれ以上の実力を感じさせるファインプレー。 2曲目「FOUR ON SIX」もウェス・モンゴメリーの熱くうねりのあるプレイを彷彿させるかのようなノリのよいプレイを展開。もちろんウェスの様な天才性は感じさせないのだけれど、ジャズへの情熱、リスペクトが存分に感じ取れ聴いていて爽快で楽しい気分にしてくれる正統派ジャズギターと言えばよいだろうか。 3曲目のジョージ・ラッセル「EZZ-THETIC」を取り上げたところに、NICOLA MINGOのやる気を感じたのは私だけではないだろう。アントニオ・ファラオも卓越したテクニックに裏打ちされた起伏に富んだスリリングなプレイを披露。 自作「BLUES FOR GRANT GREEN」では活きのいいイタリア人とは思えないブルース感覚を表現し、非凡なところを顕にする。 ニコラ・ミンゴは1963年ナポリ生まれで、ジョー・パス、ジム・ホール、ケビン・ユーバンクス、マイク・スターン、ジョン・スコフィールド、ジョン・アバクロンビーらジャズ史に名を連ねる偉大なギタリストを研究し、1986年から1990年にかけてはウルブリアジャズ祭に参加してテレンス・ブランチャード、シダー・ウォルトン、ビリー・ヒギンズらとジャムを経験する。1993年にはエディー・ラング・ギター・コンペティションでファイナリストとなって、1994年には初リーダーアルバムを吹き込むに至る。 骨太なギタートーンでその音楽的バックボーンは明らかにビ・バップからハードバップなのだけれど、それだけには留まらない新しさも完成形ではないのだけれど見え隠れするこれからの成長がまだまだ楽しみなギタリストだと思う。 メンバーはNICOLA MINGO(G)ANTONIO FARAO(P)JOSEPH LEPORE(B)LUCA BULGARELLI(B) AMEDEO ARIANO(DS) 録音は2000年10月14,15日 ROME
ILHAN ERSAHINはトルコのテナー奏者で、近年はニューヨークで活躍していてこのCDは、LARRY GRENADIER(B)とKENNY WOLLESE(DS)のトリオで吹き込まれた最もジャズ度の高い作品の一枚。 2001年の秋、DUから通販で入手したもの。 テナー1本で骨太な演奏をおこなうILHANのプレイは、NYに在住して以来、様々なミュージシャンと共演し切磋琢磨しているのが、その音楽を通してこちら側によく伝わってくる。 NYのシーンを通じて日々影響され、吸収してきたものを、迷いなく自己のフィルターを通して信ずる音楽にフィードバックしているのがこのCDからは覗える。 作品の中には中近東のモードを意識したテーマをもつものもあるが、あくまでもアドリブする為のテーマといった扱いで、音楽自体、極端に民族性を強調したものではなく、テナートリオというフォーマットでいかに自分流の自由な演奏ができるかという事にフォーカスされている。 NY、ブルックリン派との相互影響からなのか、演奏中のサウンド指向の側面を感じ取るかと思えば、フリーキーなトーンで結構感情移入して咆哮しまくるフリー度高めなトラックなどもあってひとつのワクにおさまりきらないところがユニークだと思う。 LARRY GRENADIER,KENNY WOLLESENとのチームワークも適度な緊張感をもちつつ、ユルメのところはとことんユルメのサウンドでその辺の緩急のつけ方が絶妙のバランスで均衡を保っているので、飽きることもない。 ただ、外に向かって発散、開いていくより自己の内面にむかって投影されていくようなスタイルなので、万人受けするような演奏ではない。 ILHANのテナーは連続した運動性を常に感じさせる持続力のある情念のようなものを感じさせ、そこがユニークだと思う。 録音は1997年3月10日 NY
新進女性ドラマーSYLVIA CUENCAの初リーダーアルバムで2000年の年末に福岡のキャットフィッシュレコードから通販で入手したCD。 サポートメンバーの豪華さと演奏曲目に惹かれて買いました。 EDDIE HENDERSON(TP)VINCENT HERRING(AS)SEAMUS BLAKE(TS)DAVID KIKOSKI(P) ESSIET ESSIET(B)が主なメンバーでジョー・ヘンダーソン、ジョージ・ケイブルス、ウェイン・ショーター、チック・コリア、ジョビンの曲を演奏。 女性ドラマーと言えば最近ではシンディー・ブラックマンやテリ・リン・キャリントンなんかが有名だが、このシルビア・クエンカも歯切れのよいタイトなドラムを叩く若手女性ドラムの有望株と言えるだろう。 クラーク・テリーのバンドの一員としてヴィレッジヴァンガードやブルーノートに出演し、ジョー・ヘンダーソン・トリオのドラマーとして世界中のジャズフェスを廻った経歴の持ち主で、1992年のセロニアス・モンク・ジャズ・ドラム・コンペティションのセミファイナリストでもある。 1曲目ジョーヘンの「GRANTED」ハーリング、ヘンダーソン、ブレイクとソロが廻されるが、特にヘンダーソンの張り切った活きのいいプレイが耳に残る。 最近のNYの若手のような捻りは全くなくて60年代のBULENOTEの様な直球一本槍のプレイを全員が披露。2曲目のケイブルス作「THINK OF ONE」ではシーマス・ブレイクが短いがグルービーなテナーソロを、続くヘンダーソンのTPはベテランらしい上手さを感じさせるプレイ、ハーリングも情熱的な熱いアルトソロを展開、誰が聴いても分かりやすく、いいジャズを聴いたなぁという満足感を味わえるトラックが多いのがこのアルバムの特徴。 サンバで演奏される「FAVELA」も楽しさに溢れたトラックでミュージシャンの笑みが見てとれる様な出来映え。 5曲目はヴィンセント・ハーリングが吹くショーターの「INFANT EYES」が聴ける。 力技に頼らないいつになく神妙なハーリングの吹奏が新鮮。 全7曲 深夜ジャズクラブで繰りひろげられるジャムセッションのような普段着のプレイが楽しめるモードジャズ直球盤。 録音は1998年10月14,15日 NEW JERSEY
DEBORA SEFFERはフランスの女流バイオリニストで、日本で言えば寺井尚子の様な存在か? 初めて聴いたのは、ザビエルレコードから2001年の夏に通販で購入した90年代初頭の作品で、ロック色強めだったが切れ味鋭いパワフルなプレイにその時から注目した。 このアルバムは2003年の秋にシャレオで開催されていた中古レコード市で入手したもので、アコースティックなカルテットによる演奏で、題目もジャズマンオリジナルで固められている。 メンバーはDEBORA SEFFER(VLN)KEN WERNNER(P)RAY DRUMMOND(B)BILLY HART(DS) 1曲目は「ALL BLUES」ドラモンドとハートが繰り出すリズムの絨毯の上をSEFFERとWERNERが歯切れよく疾走するイメージでソロを展開。 SEFFERのヴァイオリンは専門家が聴くとあまり音程が良くないそうだが、あまり気にはならない。そもそもジャズではピッチや音色の問題に関してはクラッシックと違って許容範囲が比べ物にならないくらい広いので好みの問題もあろうかと思う。 もちろん、オーネット・コールマンの様なソロを延々ととられたら辛いものがあるだろうが、SEFFERのプレイはいたって正統派なのでご安心を・・・ 3曲目は「SCRAPPLE FROM THE APPLE」寺井尚子も演っているので聞き比べをしてみたらよいかも知れない。 このアルバムではケン・ワーナーが力演しており、改めてこのピアニストが実力者であることを認識した。 「NAIMA」はこの曲がもつ崇高で優美なイメージがそのまま保たれて最後までだれることなしに演奏される。モンクの「THINK OF ONE」に続く「OLEO」は一気果敢にアップテンポで完奏。 ビリー・ハートとレイ・ドラモンドのベテランコンビはN山さんが2000年に主催した東広島でのティム・アマコストのコンサートで生演奏を見ていて、打ち上げにも同席した。 レイ・ドラモンドの白いベースケースを終演後の後片付けで運んだのもいい思い出だ。 アマコストは日本語ペラペラなので大分話しをさせてもらったが、二人のことを気遣って尊敬しているのがはたで見ていてうかがえた。 打ち上げの席で話題が何故かハリー・スイーツ・エディソンのことに及んだ時にビリー・ハートが感慨深げに「昔、一緒に演奏した事がある。」と言っていたが懐かしい。
このアルバムに戻って、8曲目がベストトラックであろうマッコイ・タイナーの「PASSION DANCE」。SEFFERのソロも一段とノリのよい切れ味深い爽快さを感じさせるプレイを展開。 他にはシルバー「SONG FOR MY FATHER」 、エリントン「IN A SENTIMENTAL MOOD」、エヴァンス「LAULIE」などが演奏されている。 ラストは彼女のオリジナル作品で締めくくられる。 実際、スタンダードをベテランとプレイするのは挑戦だったのかも知れない。 最後のプレイは水を得た魚のように飛び跳ねるピチピチした軽快で伸び伸びした演奏を披露する。 1999年 フランス作品
2003年秋シャレオ地下の中古市で物色中に発見した一枚で、JESSE GREENの名前は全く知らなかった。ジャケ下にクレジットされていた名前で即買いを決めた。 DAVE LIEBMAN 、 CHRIS POTTER 、 PHIL WOODS うわぁー!好きなミュージシャンばかりやん! こういう思いがけない遭遇があるので、中古盤漁りはやめられない。 3人のサックス奏者が全員で共演しているのはラストの1曲だけで、1曲目がポッターとウッズの共演となっている。後はそれぞれリーブマンが1曲、ポッターが1曲、ウッズが2曲ソロフューチャーされていて、いささか拍子抜けの感があるが、聴いてみた。 1曲目「EXTREME SPORTING」ウッズとポッターのユニゾンでテーマが奏でられる。 ウッズの容姿はさすがに年老いたがプレイは30歳の青年の様なつややかで張りのある瑞々しい音色で思わず聞き惚れる。ポッターはいつもと違いバッピッシュでごつごつした感じのテナーを披露。JESSE GREENのピアノのリズム感に優れた勢いの感じられるピアノプレイで聴いていて爽快感がある。 2曲目はピアノトリオでジェシーの歯切れのよいタッチが楽しめるワルツ曲。 3曲目はデイブ・リーブマンがソプラノで参加したカルテットによる演奏。 スローテンポで幻想的で厚く垂れ込めた雲のような陰鬱なイメージを受ける曲でやや冗長か?4曲目はJERRY HARRISの唄う「I`VE GOT YOU UNDER MY SKIN」でこの曲でけ1999年10月のライブ録音。ウッズの歌伴が聴けるが、アルバムの統一性の見地からはこのトラックは要らなかったかもしれない。 5曲目アルバム表題曲も力演だが、13分半は少し長すぎやしないか? クリス・ポッターのソプラノは音色的に少しショーターに似ている。 6曲目はレイ・ブライアントで有名な「GOLDEN EARINGS」。リラックスしながらも歯切れの良い軽快なジェシーのピアノが聴ける。オリジナルでも肩の力を抜いてこんな感じでやったらよかったのではないかな? 7曲目「BETTE」はウッズのアルトサックスがフューチャーされるペーソス溢れたバラードナンバー。いい曲です。 ラストは3人のサックス奏者が会して大円団を迎える。 ソロオーダーはジェシー・グリーン(P)クリス・ポッター(TS)フィル・ウッズ(AS)デイブ・リーブマン(TS)。ポッターもリーブマンも結構ゴリゴリ、グキョグキョに吹いていて、それでも二人のテナーの個性の違いが分かって面白い。 録音は2001年5月18,19日
出張から帰ってきていつもの様に自分のブログをアップした後、ネットサーフィンしていて、ペデルセンが亡くなった事を知った。享年58歳 心臓発作だったそうだ。 今日は同じベーシストのBEN ALLISONのリーダー作をアップ予定だったのですが、変更してNIELS-HENNING ORSTED PEDERSENを追悼したいと思います。 私にとってペデルセンはジャズ喫茶のひとで、それこそケニー・ドリューとのトリオやデュオ、ポール・ブレイとのデュオ、サム・ジョーンズとの共演盤を「JOKE」でよく聴いた。 レコードも持っていたけど自宅よりジャズ喫茶で聴いた記憶の方が多いのだ。 そんな中でこの「DANCING ON THE TABLE」はLPコーナーで大学時代にメンバーを見て直ぐに買って繰り返し繰り返し聴いたペデルセンの中で最も思い入れの強い一枚。 NIELS-HENNIG ORSTED PEDERSEN(B)DAVE LIEBMAN(TS,SS)JOHN SCOFIELD(G) BILLY HART(DS)という実に魅力的なメンバー。 クラブの研究会でもかけて好評だったのを覚えている。 勿論、1曲目「DANCING ON THE TABLE」。 テナー~ギターカルテットの編成は現代のブルックリン派によく見受けられる編成だが、彼らのように曲やリズム、ハーモニー面で変化球というか、屈折したというか、浮遊感覚溢れた雰囲気のものは、なくて剛直球ストレート一本やり。(ハードバップの時代や60年代に比べればもちろん、サウンド面で斬新さは感じます。) それが全員の熱気溢れたプレイでジャズを聴いたなぁという満足感とフレッシュな爽快感の両方を味わえるのだ。 デイブ・リーブマンもジョン・スコフィールドもこの頃は現在より悪く言えば、ひねくれてないというか、まだまだ素直さが残るプレイで逆に言えばまだまだ青さの残っている演奏といえばいいのだろうか?ジャズへのひたむきさが感じ取れるプレイ。 ペデルセンのベースは今と本質的に何も変わっていない。すでに完成形のベースプレイで ソリッドの一言。ミスが無いところがミスとしかケチのつけようがない全てのベーシストがお手本にする演奏といえるだろう。 ペデルセンのプレイや言動について、唯一欠点があるとすれば完璧主義者でやや柔軟性に欠けるところだろうか? 雑誌のインタビューで黒人ベーシスト全般の音程の悪さ(実名でロン・カーターやレイ・ブラウンまでも)を挙げていた。 本当のことだから、ありのままの発言しただけのことだろう。 音楽感の違いだけの話で、ジャズ音楽の場合、サウンド的にいけていたらその演奏は素晴らしい演奏だと私的には思うのですが・・・ 録音は1979年7月3,4日 8月30日