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おもちゃの電子ピアノ


キーが足りないと騒げない年だから

僕は逃げてばかりいた
その中で逃げられないこともたくさんあった
それでも 僕は逃げ出した
いつの間にか逃げる立場から追う立場になった
僕はそれから追いかけたり逃げたりして
いろんな選択肢が見えるようになった


おもちゃの電子ピアノはもう捨てた
キーが足りないのにはもう慣れたから

私はいつも騒げなかった
そのうち私はあの子に憧れるようになった
あの子が話しかけてきて私は見る方から見られるほうになった
その日から見られて楽しいけど
どっちもどっちなのだといまさら気づいた


おもちゃの電子ピアノを拾った
キーを叩くとくぐもった半音外れた音が出る
彼はいつも逃げていた
それでも彼はその中で自分のすべきことを見つけられた
彼女はいつも美しい瞳で誰かを見ていた
その彼女は今では見られる立場になり
やる気がなくてもやらなきゃいけないことを見つけた

私はおもちゃの電子ピアノを拾った
黄ばんだ指紋の跡も
鍵盤一つ一つにかかれた「ドレミ」も
すべて私は覚えている すべて私の抜け殻となって
私の背中を押してくれた仲間だ
キーを一つ音を立てて取った
それをポケットに入れたら私はまた仲間を探しに行く
私を育ててくれたものをすべて迎えにいく

今まさにキーは右下のポケットに入っていく
今まさにキーはポケットに入る


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