VISIT

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さくら  2




「よし。アッちゃん、今日は店の仕事手伝ってくれ」
「何したらいい?」
「商品整理・・・は俺がやるか。んじゃレジしてくれ。この前教えたからできるよな?」
「うん。」

同居生活4日目。麻腐カレーの作り方がやっと板についてきた。アッちゃんのしゃべり方はいまだ機械的だけど、さん付けなくなったし、笑ってるし、何より嬉しいのは、バイトが俺一人しかいない店の手伝いをしてくれるって事。

「あーっ。アッちゃんまだ居たの。元気?」
「元気です。十部衛さん。」
「竜ー、この子相変わらず無表情ねぇ。」
「いーんだって。やる事やってくれてんだから。」
十部衛は店の常連、ウザい子の代名詞。裏ではいろいろやってるらしい。・・・知らないけどな、俺はしがないフリーターだし。
「なぁ、竜。ちょっと、」
「何よ。」
十部衛はそういって俺を店の奥に連れてった。アッちゃんは丁度客に釣りを払っているところだった。
「なぁ、アッちゃんの苗字って何。」
「はぁ?そんなこと聞いてなんに」
「いいから!苗字、何だよ。」
「梅宮」
「あ゛ぁ~っ!馬鹿!何してんだお前っ。ぁ~っっもう!」
「何一人でテンパってんの?お前。」
十部衛は一回呼吸を落ち着かせてから、いきない俺の胸倉をつかんだ。コイツがこうするときは決まって真剣な話をするときに限る。
「あのなぁ、今夫婦っぽい二人が街中の野郎に聞きまわってんだ。俺らの子供知らないかって。そいつらの名前がなぁ、梅宮なんだよ!おいきいてるか!?梅宮レンカと梅宮トシヤっつーんだ!この馬鹿あのガキどっから拾ったんだよ。」
「何で親が捜してんだっ?アッちゃんはなぁ、その親にたっさん怪我負わされてきたんだよ!いまさら何だよマジ!しかも拾ったんじゃねぇ、ほっとけなかったから俺が連れ込んだんだっ」
「お前は何でそんなにお人よしなんだ・・・!馬鹿野郎!つーか俺に文句言ったってそこで何にも変わらねぇよ!どうすんだよこれから・・・」
「・・・る。」
「はぁ?」
「守る、俺が。」
ドンッ 
殴られた。さっきのもそうだけど、十部衛には決まった行動パターンがいくつかある。頭のてっぺんを思いっきり殴るのは奴が本気になってるってことだ。
「馬鹿かっ!お前、そんなブリキ製の腕があるだけだろうが!相手のは合金だぞ?腕も足もだ!」
「げっ・・・、まじで。」
「こんな嘘つくと思いますか?」
「っっ~・・・・。あっ、・・・逃げる・・・とか」
「それしかないだろう。俺も奴ら見たけど結構ヤバ目だったし。」
「しかし何で捜してるんだか・・・。」
「わかんねぇよ。とりあえずお前アッちゃんの事かくまっとけ。今日から店に出すな。」
「うん。他には?」
「十部衛の名を何だと思ってる?俺は天才だ。任せとけ。」
ニヤつきながら言い放った十部衛の眼は、ギラついた狼みたいなものだった。
心配すんなよ、アッちゃん。
俺たちが守ってやるからな。


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