華の世界

華の世界

第二章(2)

第二章(続)

__ 第二学期が始まった。
__ ここでの勉強する方法を身につけたから、この学期は気楽になった。
__ 紫華の返事は九月に着いた。
__ 香港にいる彼女は夏休みなのに、どうしてこんなに遅かったのか?
__ アルバイトが忙しかったか?
__ 僕は手紙を読んだ。やっぱり、彼女は今アルバイトをしている。
__ 手紙は普通の白紙に書いてある。でも、一枚どころか、半分しか書かれていなかった。彼女らしくない。
__ 最初はいつも花柄の紙で書いて、しかもとても長かった。
__ この数ヵ月、彼女もけっこう変わったな。
__ 僕は電話をかけることにした。
__ 電話ボックスに行って、国際電話をかけた。
__ 出たのは紫華のお母さんだった。声を覚えている。
__ しかし、紫華のお母さんは僕の声を覚えていないらしい、「紫華は今留守中ですが、どちら様でしょうか?」
__ 僕は腕時計をちらっと見た。午前一時半。香港時間は夜十一時半。
__ 「いや、別に大したことはありません。夜分、すみませんでした」
__ 僕は受話器をおろした。
__ 紫華はどこに行っちゃった?
__ もちろん、僕には彼女を干渉する権利はない。ただし、こんなに遅いのは珍しい。
__ 僕は複雑な気持ちをした。なかなか寝られなかった。
__ 次の日の朝、樹仁は僕の部屋に来た。「俺はこれからスーパーへ行くぞ。行かない?」
__ 僕はまだ眠かった。「いいえ。僕はいいんだ」
__ 「寝られなかった?」
__ 「え、ちょっと」
__ 「じゃ、俺一人で行く」
__ 「僕は午後行くかもしれない。歩いて行ってもいいから」
__ スーパーまでは、歩いて十五分かかる。車なら、三分もかからない。樹仁が車を買って以来、僕たちはいつも車で行く。
__ 速いだけじゃなくて、品物を持たなくてもいいから。
__ 樹仁が出かけた後、僕はまだ寝た。
__ 午後十二時頃、僕は起きた。樹仁はまだ戻ってこなかった。
__ 昼食はインスタントラーメンにした。午後には授業があるから、急がなくちゃ。
__ ラーメンを食べて、教科書を取って、すぐ出かけた。
__ 教室の中で、僕は少し後悔した。課題は退屈だったんだ。あくびをしたかった。
__ 放課後、僕は資料を探しに図書館へ行った。
__ 宿題の締め切りが迫って来たから、もっと頑張らなきゃ。
__ 僕は樹仁のような天才じゃないから、努力しか頼らない。
__ 参考書を全部揃えて、もう五時過ぎだった。太陽もそろそろ山の裏に帰る。
__ 図書館を出て、遠くの寮が見えた時、あれ?おかしいことが起こった。
__ 寮の前に、パトカーが何台止まっている。
__ 寮を捜査に来たのか?
__ 僕は躊躇った。今帰ろう?それとも、もう少し待とう?
__ この時、同じ寮に住んでいるポールが僕に近付いた「ワーレン、君はここにいるか」
__ 「何があった?」
__ ポールは首を振った。「大変だ。早く行け」
__ 「僕を逮捕する?」
__ 「いや、樹仁のことだ」
__ 驚いた。僕は急いで寮まで走っていった。
__ ポールは僕を追いかけて「なんで君はこんなに速いか?」
__ 僕は寮に着いて、ある警官が僕を止めた「止めろ!」
__ 僕は喘ぎながら、「僕はここに住んでいます」
__ 「あ、じゃ樹仁というシンガポールの学生を知っていますか」
__ 僕は頷いた。
__ 「彼は午後交通事故に遭った」
__ 「何?」僕は叫んだ。
__ 「車がハイウェイの傍の樹にぶつかって、フロントガラスは粉になっちゃいました。彼の頭はハンドルにぶつかって、意識不明の状態だった」
__ 「彼は今どこですか」
__ 警官は首を振った「病院に運ばれたが、もうダメだ」
__ 僕は全身の力を失った。立つこともできなくなった。頭の中にはメチャクチャになった。
__ これはどういうことだ?嘘だろう。冗談だろう。ほどほどにしろよ。
__ 朝、僕と話していた樹仁が、死んでいる?
__ 事実じゃないだろう。受け入れられない。もう正常な思考ができなくなった。
__ 警官は「あなたは彼と会いましたか」と言った。
__ 僕は頷いた「一緒にスーパーへ行こうと誘ってくれたが、僕は行きませんでした。でも、こんなことになっちゃって・・・」
__ 警官はまだほかの質問をした。僕はちゃんと答えた。
__ ポールは「事故だ」と言った。
__ 僕は部屋に戻った。
__ もし、僕は彼と一緒に行ったら、僕まで・・・
__ もし、紫華のことで僕は悩んでいなかったら、僕はきっと彼と一緒に行った。
__ 紫華は僕を救ったとも言えるか?
__ なにしろ、樹仁がこんな事故に遭ったとは思ってもいなかった。
__ ドアをノックする音が聞こえた。入ったのはポールだった。
__ 「どう?」
__ 「一番親しい友達が死んでいるって、悲しいに決まっているだろう」
__ 「しっかりしなきゃ」
__ 「分かっている」
__ 「何か食べようか」
__ 「いいえ、食欲がないんだ」
__ ポールはドアをしめた。
__ 僕はずっと座っていた。
__ 何時間が経った。僕はボールペンを握って、この不幸な出来事を手紙に書いた。
__ 宛先はもちろん紫華だ。
__ 彼女のほかに、手紙の相手がいないから。
__ 書きながら、樹仁と一緒の出来事を思い出した。
__ 彼と知り合って以来、七ヶ月しかなかったが、彼は僕の一番いい友達だった。
__ 書き終わって、出すかどうか迷っていた。
__ もう書いたから、やはり出そう。
__ 一週間後、寮のオーストラリア人が二人引っ越ししちゃった。
__ 僕は「なんで出ちゃった?」とポールに聞いた。
__ ポールはため息をついた。「人が死んだ。気持ちが悪いかもしれない」
__ 正直、僕は樹仁の部屋の前を通る時、なんか変な感じがした。
__ 樹仁の部屋はずっと空いている。住みたい人はいないだろう。
__ 六人の寮は、三人しか残っていなかった。
__ インドの女の子とはあまり親しくなかった。しかもいつも寮にいなかった。ポールの友達はほかの寮に住んでいるから、寮にいないほうが多かった。
__ 残っているのは、僕一人で、空っぽいの寮で、樹仁を偲んでいた。

__ 十月、僕はジュリーのオフィスへ行って、航空券の予約をした。
__ 僕は十一月末のチケットを買った。もちろん、すぐ手紙で紫華に教えた。
__ この前、樹仁のことに関する手紙、もう届いただろう。
__ 九月以来、紫華の返信はなかった。
__ 電話でもしようと思ったが、なんかする気が湧いていなかった。
__ これは僕の短所だ。
__ 時の流れが速い。十一月が来た。試験も始まった。
__ 紫華の返信はいぜんとしてなかった。
__ ま、いいや、二週間後、彼女に会えるから。
__ 樹仁のことは少し忘れたらしい。彼への思いも薄くなった。悲しいは悲しいが、人は前向きで生きて行かなきゃ。
__ 一人で広い寮の中で勉強するのは、図書館よりいい。とても静かだったから。
__ 試験が終わった後、僕は部屋の物を倉庫に運んだ。
__ 学校の規則で、夏休み(十一月から二月まで)に、学生は寮に泊まれない。部屋の中にも、物を残してはいけない。来年、寮の部屋をもう一度配置するから。
__ 学生のため、学校は倉庫を用意した。しばらく要らない物を倉庫に置いて、来年また取り出す。
__ 僕は香港へ持って帰る物は少なかった。どうせ来年二月またここに戻るから、ここに置いておいたほうがいい。

__ 実は、樹仁が事故に遭った時、僕はすぐ香港へ帰りたかった。どこでもいいから、とにかく、オーストラリアをあとにしたかった。
__ 長い旅をして、僕は香港に帰った。
__ 両親は迎えに来なかった。空港の中には知らない人ばかりだった。
__ タクシーに乗って、家に帰った。
__ 家に着いてから、紫華に電話をした。僕は香港に帰ることを教えなかったから。
__ 紫華は僕の声を聞いて、「あ、帰ったの?」
__ 「うん。着いたばかりだ」
__ 「よかったね」
__ おかしいことに、話題が終わっちゃった。
__ 僕は「明日、会える?」と尋ねた。
__ 「いいよ」
__ 「僕は学校へ迎えに行く」
__ 「明日の授業は午後からです。一緒に昼食でも食べましょう」
__ 待ち合わせの場所を決めて、僕は「手紙、届いた?」と聞いた。
__ しばらくの沈黙だった。「もらった」
__ 僕は彼女を待った。
__ 「ごめんね。あたし、怠けてたの。返信も書かなくて」
__ 「いいんだ」
__ 僕と彼女の間に、なんとなく壁ができたような気がする。
__ 幻覚だろう・・・

__ 待ち合わせの場所は僕たちの行き付けのレストランだった。
__ 紫華は僕より早かった。
__ 僕は椅子に座って、「早いね」
__ 紫華は微笑んだ。
__ 僕は彼女を見つめて「変わっていないな」
__ 「そう?」
__ 「いや、変わった。もっときれいになった」
__ 「うそつき」
__ 僕の目の前に座っているのは、ずっと会いたかった人なのに、なんか遠い感じがした。
__ 「何があった?」
__ 紫華は首を振った。
__ 「きっと何があったんだ。いつもの君らしくない」
__ 紫華は僕を見つめて、ため息をついた。
__ 「勉強は楽しくない?君なら、きっと大丈夫だけどな」
__ 紫華は何が言いたがっていた。
__ 「早く言えよ」僕は言った。
__ 「ごめんなさい」
__ 「何が?」
__ 紫華は「わたしたち、友達でしょう?」とゆっくり言った。
__ 「当り前だろう」
__ 「いいえ、あたしは、友達でしょうって聞いたよ」
__ 「何が言いたいか分からない。僕たちはずっと友達じゃない?」
__ 「まだ分からないの?」
__ 「君の意味は・・・」
__ 「わたしたちはまだ友達です」
__ 僕はついに分かった。「彼は誰?」
__ 紫華は首を振った「あなたの知らない人」
__ 「今日、僕と食事するのは、この事を教えてくれるため?」
__ 「ごめんなさい」紫華はもう一度言った。
__ 「どうりで手紙が少なかったんだ」
__ 「本当は待っていたよ、でも・・・」
__ 僕は遮った「もういい。いつのこと?」
__ 「あなたがここを出てから数ヵ月」
__ 僕はため息をついた「僕たち、もうダメか?」
__ 「ワーレン!」
__ 「もういい。無理は嫌いだ」
__ 「ごめんなさい」
__ 「もう三度目だ。ごめんなさいだけで、何も変わらないだろう」
__ 紫華は黙った。
__ 「もう行きなさい」
__ 紫華は立ち上がって、レストランの正門へ行った。
__ 僕はまたため息をついた。
__ 今の僕は、何も食べられなかった。
__ お金を払って、町を歩いていた。
__ 二月から十一月まで、たった十ヶ月だけだった。紫華は僕との絆を切った。僕との感情を捨てた。
__ 彼女のせいか、それとも、僕のせいか?もし僕は香港にいたら・・・
__ 僕たちの感情はこんなに脆いとは思わなかった。
__ たった一年間、僕は親友の樹仁を失って、愛情を失った。
__ オーストラリアへ行くことは間違ったかな・・・


(第二章・了) (第三章へ)


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