Washiroh その日その日

2013.01.16
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カテゴリ: 映画逍遥
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 6時半に出かけるかみさんを見送ったあと再び横になり、タブレットでバス路線を調べた。
 バス路線の案内があるとかみさんが教えてくれたのだ。

 きょうは中野の中山歯科クリニックへ行かなければならない。
 この間ガキっとやってしまった歯の治療のため予約をとってあるからだが、それよりなにより触れると痛くてしょうがない。
 せっかく届いたうまい煎餅が食えないし、炊きたてごはんをばくばく喰うというたのしみを味わえない。

 歯医者さんにかかるとあれもこれも要治療と叱られると分かっているのでじつは我慢してしまいたいけれど、その限界を超えたので、こうなりゃしょうがない、断固行く。
 これまでは地下鉄で行っていたのだが、いまは駅からの坂がきついと思えるのでバスを利用しようと決めたのだった。

 しかし、クリニック近くに停留所があることは知っていても肝心の停留所名が分からない。
 困ったなと思っていたところへ、かみさんがタブレットにあるよといってくれたのだ。
東京バス案内 というそのサイトを、ぼくは初めて見る。

 初めてだから当初は戸惑い、探りたいことを知るまでに小1時間もかかってしまったが、これ、じつに親切な案内サイトなのだ。
 停留所名がわからないから目的地名を入力するわけにもいかず、まず地図から見ていった。

 すると中山歯科クリニックの近くにバス停表示が2か所あるではないか。
 「お!」と思った。
 以前から知っていたのは中野駅~永福町駅を結ぶ路線で、ここの停留所名は知らないにしても路線自体はむかしからよく知っているものだ。
 だから八王子から中野か永福町に出てバスに乗るかと考えていた。

 いま見つけたもうひとつの停留所は新宿駅西口~佼成会聖堂普門館前という路線。
 新宿西口からなら乗り換えにも便利、これで行こうと決めた。
 初めに地図上で停留所表示を見てから乗り換え場所を決めるまで、じつはあれこれと試行錯誤を重ねたものだった。
 予約時刻に間に合わせるための情報も探らねばならず、結論までの道のりは決して簡単ではなかった。


 なんとなくうれしくなって支度を始めたよ。

 9時半ごろのバスに乗るつもりでいたのだが、動きが続いたせいで出がけに靴を履いた直後に息が乱れ、休み休み歩いたせいで10時12分発となってしまった。
 それでも10時32分発準特急に乗れた。
 これが効果的で、新宿で目的のバス停に向かってエレベーターを降りると車体が見える。
 降車する停留所をたしかめて座席につくとちょうど発車時刻となり、ゆるりと動き始めた。


 3年ぶりでしたかと答えながらご無沙汰してしまい、とご挨拶。
 どうしましたかと問われたので「いやぁ、まいった」というと、まいったって何だろう怖いなぁとおっしゃる。
 中山医師はぼくの歯のめちゃめちゃ状態をよくご存知で、だから手がかかるにちがいないと読んだのだ。

 口の中を見るなり「あああああ」とアタマを抱え、素早く麻酔を射つなり傷んだ歯を抜いてくれた。
 それはきょう歯医者に行くと決めさせた下の歯。
 問題は、予想した通りなのだが、以前からここで診てもらってきた上の歯なのだった。
 八王子住まいと知っているからだろうが、時間的には1週間に何回ぐらい通院できるかを訊ねられる。
 内心、こりゃけっこうたいへんなんだなと思いながら、どうにでもなりますと回答。
 来週始めから1回2時間ほどの治療を始めることとなった。

 同じ路線のバスに乗って新宿へ戻る。
 昼めしを食べたいなと、ゆるゆる歩き出した。
 いい機会だからそのあとで映画を見よう。
 小田急百貨店を抜けて南口へ出、映画館 シネマカリテ を探してみる。

 キャメラマンの大洞さんが教えてくれた新しい映画館で 『サイド・バイ・サイド』 を上映中。
 ぼくがいま、いちばん見たい映画だ。
 ところが何と、上映は夕方5時10分の回だけだという。

 これだからイヤだなぁ、シネコンは。
 経済情勢ゆえの変化で文句をいってもしかたがないのだが、映画を観る行為というのは映画館に近づくにつれて胸の中でワクワクが生じるところから始まっているのだ。
 チケットを買い、少し暗いエントランス・ホールに入ると扉の向こうで上映されている映画の、そろそろエンディングにかかろうとする「たたみこみシーン」の音が聞こえてくる。

 やがてその回の上映が終わり、観客がぞろぞろと出てくるのだが、ぼくはこのときの観客の表情を見るのが好きだった。
 胸の中で起きていたワクワク感は破裂しそうなときめきに転じており、早くスクリーンに向かい合いたくてたまらないのだがホールに入る扉は出てくる客に占有され、なかなかなかには入れない。
 映画を観るというのはそういうことだ。

 シネコンではこういったすべてが追い払われ、ホール内には上映開始10分前までは入れないと事務的に告げられる。
 それから、きわめて無機的に、黙然と、白々しく上映を待つわけだが、その状況はあたかも虐げられた羊が与えられる餌を待つかのよう。
 きらいだなぁ、日本のシネコン。

 でもまぁ、思わぬことから3時間ほど時間ができたと捉えることもできる。
 少しゆっくりと街を見てみようと思い、いったんカリタを出て昼めしの店を探すことにした。

 ステッキをつきながらシネマカリテのある通りを少し歩く。
 いろいろと店があるのだが、どれも足を向ける気になれないのはどうしてだろう。
 ぼくは完全に薄味好みになっているからなぁと、こういうときいつも感じる「濃い味を避ける感覚」をあらためてたしかめた。
 知らない店に入るとしばしば「濃い味」に悩まされることになるので、つい腰が引けてしまうのだ。

 結局、シネマカリテのあるビルの何階かにあった美々卯に入ることにする。
 美々卯は薄い味だから大丈夫なのだ。
 にしんうどんでも食べようかと思いながらテーブルにつくと、ランチメニューを示された。
 うどんとかやくご飯を軸に天ぷらなど3品、デザートまでついているではないか。
 これに決めた。

 きのうまでは傷めた歯が気になって満足に食事をたのしめなかったが、抜いちゃったのでむしゃむしゃ食べられ、海老の揚げかたを気に入ったりしながらゆっくり食べる。
 かやくご飯がうまい、おかわりした。

 映画 『サイド・バイ・サイド』(Side by Side 2012) は、いま映画がフィルムからデジタルへと映画表現の進展途上にあることをあらためて示す目下大評判のドキュメンタリーである。

 映画がフィルムによる芸術表現であるというジョーシキがどのようにもたらされ、そのジョーシキはいま崩されてしまい、つぎの媒体であるデジタル表現に取って代わられようとしているかを、ものの見事に映像化した作品だ。
 デジタル技術の実相を見せてくれるところがじつに興味深い。

 製作、キアヌ・リーヴス。
 監督、クリス・ケニーリー。
 出演は「マーティン・スコセッシ、ジェームズ・キャメロン、デビッド・フィンチャーら大物監督や撮影監督、編集技師、特殊効果技師など映画制作者たち」(映画.com)。

キアヌ・リーヴス(Keanu Reeves) 自身がインタヴューアーとなっている。

 そうして上記のひとたちに加え、ジョージ・ルーカス、デビッド・リンチ、クリストファー・ノーラン、スティーブン・ソダーバーグ。

 ラナ・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー、ラース・フォン・トリアー。

 ダニー・ボイル、ロバート・ロドリゲス、リチャード・リンクレイター、ジョエル・シュマッカー、レナ・ダナム。

 バリー・レビンソン、ビットリオ・ストラーロ、アンソニー・ドッド・マントル、ウォーリー・フィスター、リード・モラノ、ミヒャエル・バルハウス。

 ヨスト・バカーノ、ビルモス・ジグモンド、ウォルター・マーチといったハリウッドのヴェテラン映画人たちへのインタヴューを重ねる。

 撮影監督や編集スタッフ、カラリスト(色彩を調節する技術者)、さらには現像担当者にまでも映画作りの話を聞いていくところがすばらしい。

 注目すべきはキアヌ・リーヴスのインタヴューアーぶりで、じつにいい。
 見ているうちに身を乗り出し、いやぁこのひとはインタヴューがうまいなぁと感服させられた。

 この作品がなかったら聞けない話がどんどん出てきて、映画好きにはたまらない魅力を湛える映画となっている。





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最終更新日  2013.01.19 23:50:07
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