「007 スペクター」21世紀のボンドにスペクター
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WILDハンター(仮)
四章
さて、ドブロクがジャンボ村に住み始めてしばらく経ち、彼もこの地方土着のモンスターに慣れてきた頃、ジャンボ村へ新たなハンターが向かっていた…
ジャンボ村近くの密林…そのうっそうとした木々の間を線のように流れる川沿いを、二人組みの女性ハンターが歩いている。先を歩く女性は身の丈より長い蒼い鉄槍を背負いとてつもなく巨大な盾を持ち、後ろについている女性は腰に柄のついた巨大な鉄塊をぶら下げている。かなりの距離を歩いてきたのか、後ろのハンターはうなだれながら歩いている。
「はぁ…ひぃ…タカーシュさん…ちょっと休憩しませんか?朝からずぅぅぅっと歩きっぱなしですよ…?」
後ろのハンターがタカーシュさんと呼んだ先導するハンターに、もう疲れて歩けないというような感じで言葉をかける。それを聞いて歩きながら後ろのハンターに言葉を返す。
「ここいらは何がいるか分からないからね、村に着くまでは我慢しろ…まぁモンスターの餌になりたいのなら別に止めはしないけど…サヒヲ?」
サヒヲと呼ばれたハンターは肩をがっくりと落とし、
「…がんばります……はぁ…」
と、落胆した様子で返す。それを聞いて、タカーシュは少し笑顔になって、
「まぁ、もう少しで着くでしょう…着いたらとりあえず村長に挨拶ってとこね」
「着いたら先に酒場でご飯…てのはないですよね?」
「無いわね」
またも希望を砕かれたサヒヲは再びがっくりと肩を落とす…が気合を入れなおそうと背伸びすると、ジャングルの崖の上に桃色の何かが見えた…それが何かはすぐにわかった。
「タカーシュさん…」
サヒヲが声を潜めてタカーシュに声をかけると…
「知っている…どうやらこっちを襲う気のようだな、さっきよりも増えている。」
と、静かな口調でタカーシュは返す…
「どうします?」
「かかる火の粉は振り払うだけよ…」
サヒヲの問いにタカーシュは即座に答える…
「けど気づくのが遅かったわね、もう少し経ったら教えてあげようとは思ってたけど」
「どうせまだ半人前ですよ!」
タカーシュがすこしからかい気味に言うと、サヒヲはやけ気味に答える。
「ははは、まぁそこは経験を積まないとね…っと来るよ!」
タカーシュが叫ぶと同時に、崖の上から桃色の毛を纏ったサルが進路と退路を塞ぐように8匹降ってきた。
─グォォォォォォ!!!
立ち上がり、両手を広げて雄たけびを上げる…主に密林に生息するコンガというモンスターである。前にいる4匹を見ながらタカーシュはサヒヲに声をかける
「後ろのやつらは任せる…前を片付けたら手伝ってあげるよ」
「その前に終わらせてみせます…」
サヒヲは不敵な笑みを浮かべながらそういい、二人とも各々の得物を構えてコンガの群れに飛び込んでいった。その様子を崖の上から戦局をみるかのように眺める巨大な影がいることには気づかずに…
~どこぞのハンター二人が猿の襲撃をうける6時間ほど前~
ドブロクが家で朝食をとっていると、村長が慌てて入ってきた。
「やぁ!ドブロクさん、今日はちょっと急ぎの依頼をもってきたんだが受けてもらえるかな?」
「いいですけど…どうい…」
「いや~助かるよ!」
そのまま村長が依頼の内容も速射のような勢いで話した。
「つまり…道具屋のおばちゃんが熱を出して倒れて薬が必要だけど、材料が足りない…と?」
あまりの早口についていけず要点だけ村長に確認をとる…
「そう!村の倉庫を探してもなかったし、調合屋のジイサンは材料を持ってないというしね~そういう訳で密林からハチミツと太陽草をとってきてくれ!」
「わかりました。そんなに時間はかからないと思うので昼ごろには戻ってきますよ」
最後の方しか聞き取れず苦笑しながら答えると、
「わかった!そうそう、今密林にババコンガがいるコンガの群れがいるらしいよ。万一の時のために準備はしっかりしていくようにね!」
そう言って村長はまた急いで家から出て行った。
「…いつきても台風みたいな人だなぁ…」
そんなことをぼやきながら、狩りの支度を始める。装備はハンターシリーズ一式にアルパレスト改、ファンゴやランポスのボス格を狩って新調したものである。
「弾のマガジンは…Lv2の通常弾、散弾が10、Lv2貫通弾も念のため5つっと」
弾の確認をしていくつかをすぐに使える位置のホルダーに差し込んでいく。残りはポーチに入れた。
「回復薬とペイントボール…閃光玉もいくつかもっていくか…」
最低限のアイテムをポーチに詰め、腰につける。準備を終えて家を出ようとすると、
「いってらっしゃいませにゃ~♪」
とサウロの軽やかな声が後ろから響いてきた。
「あぁ、行ってくる…留守は任せた」
「任されたニャ♪」
いつものやりとりを交わしてドブロクは密林へ向かった。途中、フェフ爺のイカダに乗っていると珍しくフェフ爺の方から話しかけてきた。
「今日はなにやらむこうから騒がしい気配がするなぁ」
「村長からコンガの群れがいると聞いたがそれじゃないのかい?」
「うんにゃ、多分違うと思うぞい…」
「ふむぅ…まぁ変なのがいたらすぐに逃げ出すから大丈夫だよ」
「はっはっはっ、そりゃ賢明じゃの」
「さてと、さっさと終わらせておばちゃんに薬を飲ませてやらんとな」
そんなことを話しながら進んでいたが、このときドブロクはまだ、今日がジャンボ村に来て最初のツイテない日になるとは夢にも思っていなかった…
密林の狩場エリア3を駆ける二人のハンターの姿があった。タカーシュとサヒヲである。
「はぁっ…はぁっ…あいつらしつこいっすね~もうまけましたか?」
「いや…まだだっ!」
叫ぶと同時にタカーシュは背負っていたランパートを構える、と目の前にコンガが3匹降ってきた。
「くっそ~しつこいぞおまえらぁあ!!!」
怒声を発し、サヒヲはアイアンインパクトを先頭のコンガに向かって振り下ろす。しかしコンガに見透かされたようにかわされる。さっきからこの調子で相手の数を減らせずに仕方なく逃げながら相手の出方をうかがっているのだが、コンガ達はずっとつかず離れずついてきてこちらが疲れるのを待っているようである。
「群れの長がいるな…そうじゃなきゃここまで統率された動きはできない」
二匹のコンガを牽制しながらタカーシュがそう言った。
「じゃあ、その長ってのを狩っちゃいましょうよ~」
「さっきから探している!だが上手く隠れていて居場所がつかめないんだ!」
「ん~打つ手無しとはこのことですね~」
ピリピリしながらランパートを振るうタカーシュに苦笑いで相槌を打つサヒヲ、そんな二人をあざ笑うように攻撃をかわすコンガ達…そうこうしているうちに残りの5匹も合流し、8匹に囲まれてしまった。背中合わせになってサヒヲがタカーシュに声をかける。
「あちゃ~どうします?」
「…強行突破しかないね」
落ち着いた、しかしどことなく楽しそうにそうタカーシュは言葉を返した。
「やっぱそうなりますか~」
それを聞いて楽しそうな笑顔を見せるサヒヲ。二人ともそれぞれの得物を構えなおしてコンガの包囲網へ突っ込もうとした正にその時、
「目をつぶれっ!!」
不意に男の声が響いた、その直後二人の視界は真っ白になりはじめ、二人はとっさに目をつぶった。
―ウゴォォォォ―
複数のコンガのうめき声が聞こえた。
(これは閃光玉!?)
タカーシュが目を開けると、周りのコンガ達はみんな目くらましをくらってもだえている。後ろにいるサヒヲを見ると彼女は状況が飲み込めずきょとんとしている。
「あの~なにがどうなったんでしょう?」
「誰かが閃光玉を投げてくれたようね…そんなことより今のうちにこいつらを!」
言うが早いかタカーシュは次々とコンガの眉間にランパートを突き立てていく。
「そ…そうですね」
目の前で繰り広げられる凄惨な光景にちょっとひきながら、サヒヲもコンガの頭にアイアンインパクトを振り下ろしていく。
数分後、8匹のコンガを全て仕留め一息ついている二人に歩み寄る一人のハンター、そして3人を怒りのまなざしで見つめる巨大な影があった。
近づいてきた男性ハンターは二人を見比べて、タカーシュに声をかけた。
「やぁ、危ないところだったな。あんたらもハンターみたいだけどなんでここの狩場に?モグリならこの場でひっ捕らえなきゃならんのだが…」
その言い方にむっとしたサヒヲを抑えながら、タカーシュは答えた。
「いいえ、正規のハンターです。ここの狩場に来てしまったのは先程のコンガ達から逃げてきたため…なんなら登録書見せましょうか?」
それを聞いて、うなづきながらそのハンターは答えた。
「ふむふむ、まぁ筋は通ってるね。それと登録書はいいさ。うちの村長にでも見せてくれ」
「ということは…あなたはジャンボ村の?」
「そういうことになるね。まぁさっさとこの場は引き上げよう、こいつらのボスが来な…」
――ゥガゴアァァアア――
言い終わらないうちに突如もの凄い雄たけびが響き渡った。
「あちゃ~どうやら遅かったようだ」
「な、何!?」
「長のおでましって訳ね…」
太陽が一瞬かげり次の瞬間それは現れた。コンガの数倍はあろうかという巨体、群れの統率者であることを示すまとめられた頭部の極彩色の毛…俗にババコンガと呼ばれる固体である。
「はぁ…今日はついてない、こいつ群れの仲間をやられて完全に怒ってるし」
やれやれ、という感じで男は腰の重弩を展開し、二人も武器を構える。
「…正当防衛よ…」
「やらなきゃこっちがやられてたんですよ!」
「ははは…そうですね」
女性二人の抗議に男がたじたじになっていると、ババコンガは無視されていると思ったのか、3人にものすごい勢いで突進してきた。
「散れ!」
男の掛け声で3人はバッと三方へ分かれた。ババコンガは動きの遅いタカーシュに狙いを定めて突進の勢いをつけて左爪を振り下ろす。
―ガキィっ―
タカーシュはそれを盾で難なく受け止めると、ランパートの穂先をババコンガの胸に突きたてようとした…が、ババコンガにつかまれてしまった、しかし…
「サヒヲっ!」
「はい~っ!」
既に力を十分溜めていたサヒヲが横から駆け寄り、ババコンガの腹を下から思いっきり打ち上げる。たまらずババコンガはランパートを離してその場に倒れこむ…そして、その無防備になった額へ無情の一撃が突き立てられた…その鮮やかな連携を見て、
「…俺の出る幕が全くなかったな…いやはや凄いコンビだ」
と、ただ感心するしかない男がいた。その後、ババコンガから剥ぎ取りを済ませると男の案内で無事、ジャンボ村へ着くことができた二人なのであった。
余談だが、村長と挨拶した後パティの料理を食べた二人はしばらく寝込んだそうである
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