WILDハンター(仮)

WILDハンター(仮)

六章



 雷が轟く黒雲の中にソレの姿はあった…どす黒い雲海の中にあってなお、その姿が分かる漆黒の甲殻を供えたモノ…何者にも束縛されない風と鋼の寵児は今日もきままに飛び回っている…

―ところ変わってジャンボ村―

サイツ達と共にようやく村に戻ったドブロク達は、久しぶりに開かれた定期市に顔を出していた。砂漠の商隊の他にも雪山地方やドンドルマからの商隊も訪れていたのである。そこかしこから威勢のいい掛け声が聞こえてくる。サイツ達はとりあえず村長のところへ挨拶にいき、パティの洗礼を無事済ませて宿で寝込んでいる。

「村長…彼女の料理はそのうち人を殺すんじゃないのかい?」

「はははは…どうだろうね…否定はできないなぁ」

 パティのことを苦笑いしながらドブロクと村長は呑んでいる。タカーシュ達は露店を見回って買い物を楽しんでいるようだ。

「師匠~♪見て見て~♪こんな珍しいタンポポ買っちゃいました♪」

「それは七色タンポポね、防具の強化材料にもなるわ」

「へ~そうなんですか、部屋に生けておき…」

「ちょうどいいからあなたの防具を強化しましょう」

「ぇ…ちょ…師匠~~ひきずらないで~~~」

 結局、サヒヲが部屋に飾りたかった七色タンポポは彼女のゲネポスシリーズ強化に使われたのであった。しばらくサヒヲは落ち込んでいたが、自分の命を預ける防具に妥協してはいけないとタカーシュに諭され、すぐに立ち直った。ドブロクもここでガウシカの毛皮を購入してハルばあさんにハンターシリーズの強化を頼み、また市を覗きにいった。賑やかな市はもうお祭りと言っていいほどの盛り上がりである。広場にところ狭しと開かれた露店を一瞥して酒場へ向かうと村長が見たことのない女性と話しをしていた

「やぁ村長~その人は誰だい?もしかして恋人?」

 と、おどけた調子で村長に声をかけた。

「そ…そんなんじゃないよ!?昔からの知り合いさ、今はドンドルマの古龍観測所に勤めているんだよ」

「古龍観測所?」

 聞きなれない言葉にドブロクが反射的に聞き返すと村長と話しをしていた女性が答えた。

「それは私が説明します。古龍観測所はこの世界に存在する古龍と呼ばれるモンスターの動向を監視している組織です。古龍は非常に強大なモンスターで彼らが通り過ぎた街や村は壊滅的な被害を受けます。なのでそうなる前に彼らの進路上にある街や村に事前に避難勧告を出しているのです」

 その説明を聞いてドブロクはあることに気づいた。

「ちょっと待て…事前に避難勧告を出すってことはひょっとして…」

「そうです…この村に古龍が来ます、恐らく一週間以内に」

 はるか彼方の暴風は確実に迫っている…今、ジャンボ村に嵐が来ようとしていた。

 一夜明けて…

「古龍か…どんなヤツなのかな」

 サウロが持ってきた朝食を食べながらポツリともらした。

「ニャ?だんにゃさんは古龍知らないのかニャ?」

「あぁ元々こっちの生まれじゃないし、あっちでも山のようにでかい龍とか世界を滅ぼす黒龍とかいうおとぎ話でしか古龍は知らないよ」

「そうにゃんですかにゃ~ドンドルマではけっこう頻繁に現れるニャ~天災とおんにゃじニャ~」

 朝食をちょうど食べ終えたドブロクはサウロの言葉が気にかかって聞き返した。

「天災と同じ?」

「そこは専門家に聞くといいニャ♪」

 サウロに言われ、ドブロクはその専門家に聞きに酒場へいくことにした。

「やぁ姐さん、昨日ぶり」

「あら…昨日のハンターさんね?今日は何の用かしら?」

「古龍について聞きたいんだ。今この村を通り過ぎる奴のことを」

「ん~どうしようかしら?まだ陽が高いけどこれで勝ったら教えて差し上げるわ」

 そう言い、竜人族のお姉さんはやたらでかい杯をカウンターの下から取り出した。

「…これは…飲み比べか?」

「えぇいっぱしの男ならお酒もいける口でしょう?先に杯を10重ねた方の勝ちってことでいかが?」

「いいだろうその勝負うけてたつ!」

「え~それでは第一回ジャンボ村酒豪コンテストの実況をお送りしたいと思います。」

 いつの間にか村人総出で村長が実況、パティが給仕役で飲み比べ大会が始まろうとしていた。何故か取り巻きの方がテンション高すぎで収集がつかなくなっている。

「あ実況は私ガトリングトークでおなじみの村長が勤めさせてもらいます。お~と高らかに両者杯をうちあわせ勝負に入りましたッ!速い速い彼女が相当のうわばみであることは知っていましたがドブさんもかなりいけますね~二人ともジャンボ特産麦酒(今年の初物)を水のように流し込んでおりますッ!」

 あまりの飲みっぷりにギャラリーはドン引きしているが二人はお構いなしに杯はあおっている。片手で素早く麦酒を注ぐパティの見事な手際もギャラリーを沸かす一因には違いない。

「おおっと速くも五杯目だ!急性アル中になってもしらねぇぞお二人さんッ!」

 空気で酔ったのか村長の実況もどこか酔っ払いのあおり文句のようになってきた。と、ここでパティが何やら酒場の奥から透明な液体の入ったビンを持ってきた。ラベルに描かれているレウスのブレスマークと彼女のいたずらっこのような笑顔で相当危険な代物と思われる。村長も気づいたようだ・

「おや!?二人につがれてるものが変わりましたね~…あれは…幻の「レウスの炎」(アルコール度数95%)!?あれは僕のコレクションにしかないh…ってパティ何勝手に出してるの!?それ今は製造中止になってる極レア品なのにぃぃぃッ」

 どうやら村長の私物だったようである。が強烈な酒の登場にギャラリーは一気にヒートアップッ!そこかしこで嬌声や指笛ではやしたてまくるッ!

「は!?取り乱してすいませんってそうこうしてる間に両者八杯目だッ!流石に二人ともペースが落ちているが必死に流し込んでいるッ!!強烈なアルコールでもはや意識ももうろうとしていr…ないッ!目の光が少しもぶれてないぞこいつら化け物かッ!?全くもって彼らのアルコール耐性は底がしれませんッ!!ぁあラスト一杯が両者つがれました!」

 お互いに見つめあいこれで最後だッ!と声に出さず、眼で会話し、最後の一杯を…

「同時にあおったああああああッ!!!二人とも一歩も引かず「「レウスの炎」(アルコール度数95%)を流し込んだああああああッ!!!ッ!?「レウスの炎」もちょうど無くなったッ!?あぁ…ビンだけでも飾っておこう…」

 村長ががっくり肩を落としているが誰も気にするはずもなく二人に視線が集中している。ほぼ同じペースでアルコールを飲み終えた二人は高らかに杯を掲げ…

「っと両者同時に杯をカウンターに叩きつけたッ!ん?ということは…この勝負引き分けかッ!?」

 失意の中にあっても実況を忘れないとは見上げたアナウンサー魂だ村長。

「ふふふやるわね。」

「はははそっちこそ誘うだけあるぜ。」

 とろんとした目つきで互いの健闘をたたえる二人…はたから見ると怖い絵です。

「なんか妙な友情まで芽生えてるぞ!?」

「引き分けだったけど、いい飲みっぷりだったからお姉さん古龍のこと教えてあ・げ・る」

「本当か?」

「えぇ、今この村に迫ってきている古龍の名前はクシャルダオラ。鋼のような鱗と頑強な漆黒の翼をもつ荒れ狂う疾風よ。風を自在に操ることから風翔龍とも呼ばれているわ」

 少し間を置いてドブロクはたずねた。

「…人が勝てる相手なのか?」

「さぁね?私が知ってる限り討伐の話を聞いたことはないわ。」

「そうか…じゃあ追い返すくらいはできるんだな?」

 じっと相手の眼をみつめる。根負けしたように姐さんは眼をそらすと答えた。

「たしかに撃退なら何回かしているわ。それでも優秀なハンター達とドンドルマみたいな自警団を総動員しての話だけどね。バカな真似すると寿命が縮むわよ?」

「ハンターってのはバカの集まりみたいなものさ、情報提供感謝する。」

 席を立ち、家に戻ろうとするドブロクに、

「待ちなさい、彼に挑みたいなら三日後の夜に東の密林にいくといいわ。恐らく彼はそこにいる」

 あきれた口調で姐さんは続けた。

「それから危ないと思ったら逃げた方がいいわよ?」

「ご忠告どうも、でもまぁバカは退かないものさ。」

 そう言って酒場をあとにしたドブロクは家に戻るとそのままぶっ倒れたそうな…

――三日後――
 ジャンボ村は嵐の直前のような空気に包まれていた。

「いくのかい?ドブさん。」

 心配なのだろう、珍しく村長がドブロクの家に来ている。

「あぁ、やっぱり見たことないやつってのは興味があるし、うまくすれば村の被害もないかもしれない。」

「だけど…」

 引きとめようとする村長に手を突き出して抑えさせる。そして静かに、

「一ハンターとして挑んでみたいだけなんだ。」

 そう言い、武具の準備を続けている。そばではサウロが必要なアイテムをポーチに詰めている。

「ならもう止めはしないよ、そうだ、念のためこれを」

 村長が差し出したのは緑色のけむり玉みたいなものだった。

「モドリ玉これを使うとネコタクを呼べるから一応持っていってくれ」

 村長から受け取ると、ドブロクはやれやれという風に苦笑しながら

「どうも、ありがたく使わせてもらうよ」

 と、サウロが準備を済ませてポーチを差し出してきた。それを受け取り、新調したハンターU装備のホルダーに入れた弾丸を確認する。

「うん、通常2、3貫通1、2それと散弾1をフルセットそれにとっておきが一発っと」

「じゃあ生きて帰ってくれよ」

「そのつもりさ」

 心配してる村長に笑みを浮かべてそう言うと、

「じゃあいってくる留守は任せた」

「任されたニャ♪」

 いつものサウロとの挨拶を済ませるとドブロクは家を出た。空はどんよりと曇り、風が湿っている。

「今夜は荒れそうだな」

 ドブロクは空を見つめながらそうつぶやくと、船着場へ向かった。

「やぁフェフじいさんちょっと頼みがあるんだが」

「なんじゃい?」

 渡し守の小屋にいたフェフ爺に舟を一艘貸してくれと頼むと

「あぁ、別に構いはせんぞ。しっかしこんな天気の日に狩りにいくとは最近のハンター共はがむしゃらじゃのう」

 と、にやつきながらほっほっほと笑っていたが、ドブロクはフェフの言ったことにひっかかることがあった。

「ハンター共ってどういうことだい?」

「いやぁおまいさんが来る前に最近来た三人組とちょっと前からおる二人組が来てのぅ『密林にいくから舟を貸してくれ』といってきたんじゃよ」

 それを聞いてドブロクは反射的に叫んだ。

「なんだって!?それはどれ位前だ!」

「ん~だいたい昼頃だったかのう」

 叫ばれたことには全く動じずフェフ爺は答えた。

「くっ、急がないとまずいかもな」

 急いで舟を出そうとするドブロクに

「焦ると実力を出し切れんぞ、しっかりやってこい」

「…どうも」

 フェフ爺はそう言い、ドブロクの言葉を聞かずに小屋に戻っていった。ドブロクは少しのあいだ閉まった戸を見ていたが、一礼するとおもむろに舟に乗り漕ぎ出した。

目指すは古龍クシャルダオラの待つ密林ッ!

――ドブロクが出発する数時間前――

 船着場へ向かう二人の人影があった。タカーシュとサヒヲである。

「師匠~ほんとにわたしたちだけでいくんですか?」

 前をいくタカーシュにサヒヲが不安そうに声をかける。それを聞いてタカーシュは足を止めて振り返らずに言った。

「怖いのなら待ってるといいわ、そこの3人と一緒にね」

 えっ?と驚いてサヒヲが後ろを振り向くと、物陰からサイツ達がバツが悪そうに出てきた。リータに、だから堂々と連れて行ってくれとたのんどきゃ良かったんだよ!とど突かれていたが…

「大体用件の見当はつきますが…」

(つきますもなにもリータさんが喋ったのに…いや喋るな私またザバーっとかけられる…)

 師匠にツッコミたかったが、あとが怖いのでじっと我慢するサヒヲなのであった。

「並の危険じゃないと分かっているんですね?」

「あ…」

「あったりまえだろ!ハンターなら古龍と一戦交えたいって一度は思うもんさッ!」

 リータが威勢よくタカーシュに啖呵をきったが、ほとんど言いたいことをとられてがっくりと肩を落とすサイツをカイヅが慰めている。振り返らずにタカーシュが続ける。

「なら別に止めはしません、私達の邪魔にならないようにお願いします」

 そう告げると、タカーシュはさっさと歩き出し、それを追ってサヒヲも船着場へいったが、その背中に…

「それはこっちの台詞だぜッ!あんたらがへましてもこっちはこっちでやらせてもらうかr…っておまえら何s…ん~ん~~~~ッ!!!!!」

「まぁまぁリータさん落ち着いて落ち着いて」

「頭に血を上らせるのは後方支援にとって致命的だぞ」

 タカーシュの言葉に一々けんか腰で返すリータをカイヅが押さえつけ、サイツが口を塞いでいる。リータ本人はジタバタ暴れているがいつもの事なのだろう、二人とも手馴れている。そのまま二人のあとを追いかけながらサイツがタカーシュに声をかけた。

「そちらの邪魔をする気はない。ところで一つ提案がある。狙う獲物が同じだから見つけたら合図を送るってのはどうだい?戦力も増えるし探す労力も多少減るはずだ」

 サイツの申し出は非常に理にかなっている。そもそも一つのターゲットを複数のパーティーが狙う状況が稀なのだ。

「わかったわ、でもそちらが到着する前に決着がついてたらごめんなさいね」

「ぷはッ!それはこっちの台詞だッ!!あんたらより先に絶対古龍にトドメを刺してやるぜッ!っつ!サイツてめぇッ」

 サイツの手を振り払って悪態をつくリータに、あきれたサイツのツッコミグーパンチ!

「もうお前は黙ってろ…話が進まん、カイヅそのままでいいから舟に乗るぞ~」

「はいはい、リータさんもすこし我慢してください」

「カイヅ離せッ!あの金髪一発ぶんなぐらせろぉぉぉおおおッ!!!」

 そんなこんなで5人で密林に向かったのだが、船の櫂はサイツが握っていた。それは何故かというと…

「わしは天気の悪い日は舟を出さん主義でな、まぁ勝手に乗っていく分には構わんぞい」

 と、フェフ爺に言われたからだったりする。

「あの爺さんいい性格してるぜ全く…」

「ほらサイツ!キリキリ漕げや!古龍が逃げちまうぞッ!」

「くっ…生き地獄だ…」

 うなだれて愚痴ってるサイツに、見下した笑みを浮かべながらリータが罵声を浴びせている。ちなみにサイツの顔には誰かの拳の形がくっきりついていたりする。

「いつもあんな調子なんですか?サイツさんとリータさん」

「そうですね~、僕は大抵静観するしかなくて」

「くだらないわ…」

 その様子を見ていた3人はドン引きしていたトカいなかったトカ…。

――ザァァァァァァ――

ドブロクが密林につく頃にはもう陽が落ち、どんよりした空が泣きだし始めた。

「暗い方が見つかりにくくていいんだが雨がやっかいだな……」

 彼の装備しているハンターUシリーズが全体的に黒い色合いになっていることがメリットになる状況だが、雨は体を冷やし容赦なくスタミナを奪い、また元々視界の良くない密林、更に薬莢の炸薬がしけったらガンナーにとって死活問題になりかねない。

「とりあえずエリア3の洞窟で待ち伏せするか」

 クシャルダオラは基本的に寝るとき以外は屋外を駆け回っているらしい。幸い密林はいくつかのエリアに洞窟の入り口がありそこで待ち伏せることにしたようだ。

(先に来ているはずの5人のことが気になるけれど、そこはそれ向こうもハンターなのだから自分のことは自分でなんとかするだろう。自分は自分のやるべきことをするだけだ)

 そんなことを考えながら湖沿いのエリア4を通りエリア3へ向かう途中、エリア3側の出入り口の脇に妙なものを見つけた。

「これは…ハンターボウ?あっちには…バスターブレイドの刃!?」

 見つけたものは無残にひしゃげたハンターボウと中ほどからまっぷたつに折れたバスターブレイドの先端部分の二つ。血の臭いを嗅ごうとしたが降り続ける雨のせいでよく分からない。

「あの3人組か…死体で転がってないってことはどこかにいるのか…この分じゃおタカさん達も無事って訳じゃないだろうな」

 やれやれという風に肩をすくめると、とにかく潜伏場所に陣取るべくエリア3へ入った。温暖期にはここに大抵ヤオザミがいるのだが、今日は何の気配も感じ取れなかった。それが逆に大物がこの地に来訪している証といってもいいだろう。ドブロクは辺りに気を配りながらエリア8に繋がる洞窟の入り口に登るとポーチから洞窟の岩肌と似た模様の布を取り出し身体にかぶせアルパ改を構えた。待ち伏せで使われる擬態という手法だ。

(さぁ…あとは俺の運次第だな……)

 全くといっていいほど相手の生態が分からないのだ。このエリアに来るかどうか、それすらも怪しい。しかし…彼はその賭けに勝った。その変化はすぐに分かった。

(雨がやんだか…ん!?)

 雨がやみ、密林が静寂に包まれたかと思われたが、遥か頭上から突風の吹きすさぶ音と共に今まで聞いたことのない咆哮が大地に突き刺さった。

(なんて声してるんだ!?まともに聞けば耳がいかれそうだ…)

 耳を抑えながら、ドブロクはゆっくりと天空から降ってくる漆黒の鋼から目を離さなかった。それはまるで鎧が自らの意思で動き出したような印象を与え、その往く道を阻むものは何者をも打ち砕いてゆく鋼の意思を感じさせる…

(これが古龍クシャルダオラ…)

 構えたアルパのスコープ越しに覗くと、その姿に畏敬の念を抱かざるを得ない。自然と呼吸が重くなり、喉がひどく渇き…世界がゆっくりと動く…初めて火竜リオレウスと対峙したときの感覚に近いものがドブロクにこみ上げてきた。そう…全身の血が沸騰したような感覚…自分よりもたしかに格上の存在との闘い…それでも…手が届かないわけではない…静かに悠然とたたずむクシャルダオラの瞳に照準を合わせ…

――今、生命(いのち)のトリガーが引かれる――

 引き金を引いた瞬間に世界は元の速さに戻った。放たれた弾丸はクシャルダオラの左目を貫き、彼は怒りの咆哮を轟かせると、自分を傷つけたモノに対し、感情の赴くままにブレスを直撃させた…かに見えたが着弾する直前にドブロクは飛び出していた。

「っと危ないねぇ直撃したら骨も残らんような威力だ」

 アルパを構え直しにやついたままクシャルダオラに話しかけるドブロク。そんな彼を怒りをあらわにし残った右目で睨みつけるクシャルダオラ。両者とも相手の出方を伺い隙を探しているようだったが、しびれを切らしたのかクシャルダオラが突如前足を振り上げ咆哮する。その衝撃のせいかクシャルダオラの周りに突風が吹き荒れた。

(チャンスッ!)

 そう判断したドブロクがアルパ改のトリガーを引き絞る。Lv2通常弾がクシャルダオラに残された右目を穿たんと疾駆するが、それは為されなかった。彼の巻き起こした暴風が弾丸をはじき返した。それもただはじき返したのではなくドブロクに向かってはね返したのだ。それを紙一重でかわしたドブロクの頬にうっすらと血が滲んでくる。

「やるじゃないか、しかしこっちもまだまだ手札はあるのさ」

 滲んだ血をぬぐうこともせずそう言うと、アルパ改に装填されていたマガジンを吐き出させ、貫通弾のマガジンを食わせようとしたが、クシャルダオラが暴風の鎧をまとったまま木々をなぎ倒し突っ込んできた。それを間一髪でかわし、左腕のホルダーのマガジンを掴み、アルパに食わせる。そしてろくに照準をつけず勘で合わせトリガーを引き絞る。しかし放たれた貫通弾は風の鎧を貫きクシャルダオラの翼を正確に捉えた。が、その表面を傷つけただけだった。

「見た目どおり硬い表皮だな…まともにやってると決定打を与えるのには苦労しそうだ」

 ドブロクの言葉を理解したのか、舐めるな!とでもいうようにクシャルダオラは三度目の咆哮を轟かせ、翼を羽ばたかせ宙を舞い、そしてそのままブレスを吐きながらドブロクに向かってきた。

「くっ…それは卑怯だろ!」

 貫通弾を撃ち応戦するものの鋼のような表皮に阻まれ、全く通用しない。右目を撃てれば状況は有利になるけれども絶えず首を振りながら追いかけてくるのでは当てられるものじゃない。そうこうしている内に貫通弾も撃ちきりスタミナも限界に達しようとしていた。動きの鈍ったところを見透かしたように、クシャルダオラのブレスが放たれた。

「くっそおおお」

 間一髪、跳んだおかげで直撃は免れたが、ブレスの着弾時の爆風に巻き込まれ派手に地面と激突してしまった。うつぶせの状態からすぐに身体を起こそうとしたが、全身に鈍痛が走り思うように動かせない。気配でクシャルダオラがすぐ後ろにいることがはっきりとわかる…握っていたアルパも手放していた。

(くぅ…ここまでか)

 そう思い、次にくるだろうとどめを覚悟したが、それはこなかった。不思議に思い、後ろを振り向いて見ると、クシャルダオラの視線が自分から外れていることがわかった。そしてそのままクシャルダオラの視線を追っていくと、フルフルシリーズを着込み巨大な蒼槍を携えた女性と無骨な鉄の塊を構えたゲネポスUシリーズの女性がいた。ボロボロのドブロクを見てフルフルシリーズの女性がにこやかに笑いながら、

「随分手酷くやられてますね。良ければお手伝いしましょうか?」

 それを聞いてドブロクは苦笑しながら、

「そいつはありがたい。でもおタカさん達今までどこに?」

 申し出を受け、質問にはゲネポスUの女性が多少おどけて答えた。

「サイツさんとリータさんをベースまで運んでたんです!おかげで出番が遅くなっちゃいましたよ♪」

「ははは、でもそのおかげで命拾いできそうだよ。サヒヲちゃん」

 まるで会話をじっと聞いているようなクシャルダオラに、タカーシュがナイトスクウィードの穂先を突きつけ、言い放った。

「今度はこっちが相手になります。怖くなければかかってらっしゃい!」

 アイアンインパクトを構え、サヒヲが真似して叫ぶ。

「かかってらっしゃいッ!」

 挑発と理解したのだろう。クシャルダオラは堂々とした咆哮をあげ、二人の方に向き直った。その隙にドブロクは相棒を探すべく、後ろに下がった。もうドブロクには興味がないのだろう、クシャルダオラは二人に向かって渾身のブレスを見舞った。すぐさまタカーシュが前に踏み出し、盾を構えブレスを散らす。その脇をサヒヲが駆け抜け、クシャルダオラに文字通り鉄槌を振り下ろさんと肉薄する。その小さな身体を引き裂かんと、クシャルダオラの右腕が振りぬかれたが、空を切るばかりだった。

「せぇぇぇぇいッ!!」

懐に潜りこんだサヒヲの怒号と共にアイアンインパクトが唸りをあげ、渾身の力でクシャルダオラの腹部をえぐる。流石のクシャルダオラも血へどを吐き動きが止まる。そこへ…

「やぁぁぁあああ!!!!」

 裂帛の気合を発しタカーシュがクシャルダオラの眉間を突進突きで貫いたかに見えたが、

――ガキンッ――

「ッ!?穂先が欠けた!?」

 鋼の甲殻に阻まれ、とどめを刺し損ねてしまった。その隙をついてクシャルダオラは後ろに飛びのき間合いをとると、再び風の鎧をまとい二人に突進してきた。二人ともなんとか避けているが風の鎧の風圧に邪魔されて近づけない。

「ッ…!近づけないと決め手がないわね」

「うわわわわ!?力を溜めていっても抜けれませんよ~あの風普通じゃありません!」

 縦横無尽に突進してくるクシャルダオラに二人とも翻弄されっぱなしである。このままではいずれ直撃を受けると考えたタカーシュはサヒヲにあるサインを送った。それを見てサヒヲは驚いた様子だったが、しっかりと頷きタカーシュの後ろに回った。二人がまた最初と同じ手を使うと思ったのだろう。クシャルダオラはタカーシュ目掛けて凄まじい勢いで突進を仕掛けた。だが、それこそがタカーシュの狙い目。盾を全身で支え、一瞬クシャルダオラの突進を受け止めるものの風圧でしりもちをついてしまったが…盾を弾き飛ばせず怯んだクシャルダオラの上にはタカーシュを踏み台にして飛んだサヒヲがアイアンインパクトを振りかぶる!

「これで終わりだぁぁぁぁああああ!!!!」

 落下の速度にアイアンインパクトそのものの重量が加速をかけ、更にサヒヲが満身の力で打ちおろす…その名も

「メテオストラァァァァイクッ!!!!」

――ドゴォォォォン――

 サヒヲの放った一撃は風の鎧をぶち破り正確にクシャルダオラの頭を打ち砕き、地面に埋め込んでしまった。ようやくアルパ改を見つけたドブロクも一部始終を見ていたが、今起こった出来事が信じられずに顔がひきつっている。

「あの子はほんとに人間なのかいおタカさん?」

「はい、間違いなく人間ですよ」

 あっさりタカーシュに流されたが、ドブロクは頭が地面にめりこんでいるクシャルダオラの脇でピースサインを送るサヒヲを見て、思わず深いためいきをついてしまった。それを見てタカーシュはクスクス笑っていたが、サヒヲが仕留めたクシャルダオラを指差し

「さぁ、さっさと剥ぎ取りして村に凱旋しましょう」

 と言い、腰の剥ぎ取りナイフを抜いた。サヒヲもそれにならい、剥ぎ取りナイフを抜くと一番乗りで剥ぎ取りにかかった。ドブロクもやれやれという感じで剥ぎ取ろうとしたが、最初に剥ぎ始めたサヒヲが突然叫んだ。

「ダメです!まだ仕留めきってません!」

 その言葉にタカーシュとドブロクは耳を疑ったが、クシャルダオラの胴を見て愕然とした。さっきまでたしかに力なく横たわっていただけのモノが静かに動いている。その時、ちょうど密林を覆っていた黒雲が晴れ、明るい満月が姿を現した…それを待っていたかのようにクシャルダオラの前足が地を掴み、地に伏せていた頭(こうべ)を力強く振り上げ、雄々しく吼えた。まるで新たな生を受けたかのような光景を目の当たりにして3人は愕然としていた。

「本当にこいつも生き物なのかよ…」

「さすが古龍ってわけね」

「あぅぅ渾身の一撃だったのにぃ」

 それぞれ武器を構え、クシャルダオラと対峙したがどうひいき目に見ても、ドブロク達の方が分が悪い。満月の湖面を背景にクシャルダオラは翼をはためかせ飛び上がるとドブロク達を見つめた。まるで決着をつけると言わんばかりの迫力である。その視線にタカーシュとサヒヲが身体をこわばらせる。それをドブロクが制し、こう続けた

「おタカさん、サヒヲちゃん悪いがここは任せてくれないか?」

「ッ!?」

「えぇ!?」

 突然の申し出に二人とも驚いたが更にドブロクは続けた。

「そっちはもうかなり身体に負担をかけたでしょ?だから休んでた俺ががんばるのさ」

「分かりました。あなたに任せます」

「あぅぅ…死んじゃダメですからね!」

「了解」

 ドブロクのいったことは事実だったので二人は仕方なく、この闘いを見守ることにした。しかしタカーシュは一つだけ気になることをドブロクに聞いた。それは…

「勝算はあるの?」

「五分五分」

 振り向かずにドブロクは答え、クシャルダオラに歩み寄っていった。視線はクシャルダオラの瞳から外さずに…、まずアルパに刺さっていたマガジンを抜き取ると胸のホルダーから一発だけ弾丸を取り出しそれを弾倉に装填する…と同時にクシャルダオラが吼えた。

――ガシャン――

――キシャァァァァァァ――

 咆哮の直後、クシャルダオラは鋭い爪で地面ごとドブロクを切り裂こうと襲い掛かったが、それを横っ飛びでドブロクは避け、一気にクシャルダオラとの間合いを詰める。向かってくるドブロクを見て絶好のカモだと思ったのだろう。クシャルダオラは彼目掛けてブレスを放った。しかし着弾の直前ドブロクは前に飛び込んでかわし、着弾の爆風にのってクシャルダオラへ飛び、ブレスを放った直後の無防備な口の中にアルパ改の銃身を突き刺し…そして、

「とっておきだ。存分に味わえ」

 トリガーを引いた……

――古龍騒動から一週間後――

――ジャンボ村の診療所の一室――

 ベッドには包帯でグルグル巻きのサイツと右腕と左足にギブスをはめたリータの姿が、

「なぁサイツ…あたしらまだこうしてなきゃいけないのか?」

「…俺がかばったからその程度の怪我で済んだってのは分かってるよな?」

 そんな会話をしていたが、果物籠を持ったカイヅがやってきた。

「まぁまぁお二人とも怪我人なんですから安静にしててください。ほら村長さんから差し入れを頂いたので食べましょう」

「おぉこっちの果物か~そういえばまだこっちの食い物は全然食べてなかったぜ」

「カイヅすまない首が動かせないから食わせてくれ」

「カイヅそんなヤツに食わせる必要ねぇよ、さっさと食っちまおう!」

 そう言いリータは籠からどんどん果物を食べていく。

「リータてめぇ命の恩人にその態度はなんだ!ッ、イテテテ骨に響くぅぅぅ」

「はいはい、ちゃんと食べさせてあげますから」

 いつもの調子でこの3人も大丈夫そうである。あの日クシャルダオラのブレスからリータをかばいサイツがかなりの重傷を負ったものの順調に回復しているようだ。

――酒場――

狩りの帰りだろうか、タカーシュとサヒヲが祝杯をあげようとしている。

「お疲れ様です!」

「お疲れ様」

 ジョッキを打ち鳴らし二人とも麦酒に口をつけた。

「いや~やっぱり仕事のあとの麦酒はおいしいですね~」

「あなた、たまにおっさんくさいこと言うわね」

「えぇぇええぇ!?!?」

 タカーシュの指摘にサヒヲが慌てふためいてるのを尻目に、カウンターでは村長、パティ、姐さんの3人が何やら話しこんでいる。

「なぁ、良ければもう少しこの村にいてくれないかい?色々頼みたいこともあるし」

「私も料理の手ほどきやらなにやらを頼みたいです~」

 どうやら姐さんをこの村に引き止めている様だ。

「ん~どうしようかしらねぇ?観測所の仕事もあるし…」

「そこをなんとか!」

 必死に拝みこむ村長、考え込む姐さん、見守るパティ…しばらく考えていたけれど根負けしたように姐さんが、

「わかったわ、もう少しこの村にいてあげる」

「本当かい!?ありがとう!」

 姐さんの手を握って村長が礼をいってるけど、当の姐さんの目的は別にあるようだ。

「いえいえ、気になる子もいるしね」

「ん?何か言ったかい?」

「別に何も、フフフ。これからもよろしくね」

――ドブロクの家――

 あいも変わらず、サウロが忙しそうに食事の下ごしらえや部屋の掃除に精をだしている。

「んにゃ~今日のおかずはニャににするかニャ~…ニ゛ャ゛!?倉庫の扉が半開きニャ~~~中の食材が全滅ニャ~~…おばちゃんとこに買い出しにいくかニャ…」

 頑張れサウロ!君がやらなきゃ誰がやる!でも落ち込んだ後ろ姿もけっこうかわいい!

――密林ベースキャンプ――

フェフ爺の舵取りでドブロクは狩りにきていた。

「ほっほっほ、今日がそいつの慣らしかの?」

「あぁ、アルパ改がおしゃかになっちまったから、この一週間は長かったよ」

 あの日、アルパ改でクシャルダオラに撃ちこんだ弾はドブロクのハンドメイド弾だった。名称は無いが、中身をいうとカクサンデメキンにLv2拡散弾の材料を混ぜ、爆発の破壊力を底上げしたものだ。当然、違法改造でついでに言うと、アルパ改のスペックで撃てる代物ではない。つまり、一発で銃そのものがぶっ壊れるという正真正銘、最後の手段。そして予想通り撃った反動でアルパ改は修復不能の状態に、しかし幸い新しいボウガンの素材が手に入ったので同じものではなく、思い切ってこのヘビィを作ったのだ。腰のフックにかけたそれに手をやり、銃身をなでながらドブロクは語りかける。

「それじゃあいくか。この狩りでお前をモノにしてやるからな」

 新たな相棒を手にドブロクは密林へと入っていった。そう、いつものように…

これからも彼らの前には様々な相手が姿を現すだろう…
雪山を根城にする白猿、火山に潜む大鎌、炎の妃と王…
狼のごとく獰猛な怪鳥、姿見せぬ隠者、老いし巨龍…
しかしそれらに挑むのはまたしばらく先の話…
彼らが得た束の間の平穏が少しでも永く続くことを願って
この物語の幕を一旦引こう

全ての『セカイ』に平穏があることを願って

~終~



           あとがき

まずは読んでくださった読者の方へありがとうございます。m( _ _ )m
一応最初の古龍討伐までの短編で書いてみた初小説だったんですが…文法がなってない、表現未熟、登場人物の説明不足…etc
まぁこれでもがんばって終わらせました。一応、始めたら責任を持って終わらせないといけません。この作品を書くときに極力気をつけたのはあんまり殺さないことです。それは何故かというと、ハンターもモンスターもMHの世界では同じ命として扱われてると思うので、どうしても安易に死の描写をかけませんでした。まぁ表現の技術不足という問題もあるのですがね…まぁこれからもひょっとしたら別な作品を書くことがあるかもしれません。その時はまた生温~い目で見守ってください。
7月某日    濁酒(ドブロク)・濁酒(ダクシュ)

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