WILDハンター(仮)

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一章「できてたもんは仕方ない」


        「できてたもんは仕方ない」

 それから三日後、男は拠点にしているジャンボ村でのんびりと過ごしていた。今はかなりの発展をとげ、他の街や村との交易が盛んに行われているこの村も最初の頃は、試行錯誤の繰り返しであった。
ハンターの依頼受注のために建てた酒場もこんな辺鄙な土地柄のせいかハンターが居つかず開店休業状態が続き、急ごしらえの鍛冶場の炉も農具の焼き直しにしか使われず、現在交易に使われている大型船「グレート親方丸号」も最初は骨組みまでしか作れずにいた。困った前村長は様々ところへ移住者募集のビラを送り、そして各地から集まったハンター達の活躍によって、開店休業状態だった酒場は拡張・増設され、急ごしらえだった鍛冶場の炉も一級品に補修でき、「グレート親方丸号」はめでたく進水式を迎え、ジャンボ村はここまで発展したのだ。
そのハンターの一人が彼、ドブロク・ダクシュなのである。銀髪で髪型はオールバック、いかめしい面構えに黒く日焼けした肌で、かなり老けた印象を与える彼だが実際は33歳。へビィボウガンを使うガンナーだ。彼の愛用しているヘビィボウガンは古龍クシャルダオラの素材を使った「デルフ=ダオラ」というボウガンで、外観は最早ボウガンというより銃といった方が適切なものだ。
久しぶりの飛竜狩りを終え、そこそこの報酬を受け取った彼は家で給仕アイルーのサウロと「ショーギ」という東方から伝わった駒遊びをしていた。

「だんにゃさん、そこいただきニャ♪」

「うっ…ちょっとまっ…」

「待ったは無しニャ~♪」

 どうやらサウロが優勢のようだ。ドブロクは盤上を穴が開くほど睨んでいたが、やがて意を決して駒を動かした。

「くぅ…じゃあここでどうだ!」

「んにゃ?そこでいいのかニャ?」

「うむ!」

 サウロはその言葉を聞いてニヤリと笑い、いたずらを成功させたときのようにうれしそうにこう言った。

「これで積みニャ♪」

 パチンと駒を指す乾いた音が響いた。とその時、家の戸を開けて、現在村の代表を務めている竜人族の女性が入ってきた。

「はぁい♪ドブロクさんお邪魔するわね」

「おや珍しいね、姐さんがここに来るとは」

 村の人は彼女のことを親しみを込めて姐さんと呼んでいる。また彼女の酒豪っぷりがこのあだ名にしっくりくるのだ。彼女は入ってくるなりこう告げた。

「用件だけ言うわね、また密林にリオレウスが現れたって向こうの村から連絡があったのよ~このあいだドブロクさんに狩ってもらったばかりなんだけど、また行ってくれないかしら?今レウスを狩れるハンターはドブロクさんしかいないのよ」

(あいつが移動したあとにまた別なのがレイア探しに来たのか?にしては早すぎるし…)

 それを聞いてドブロクは怪訝そうな顔をして考えこんだが、今の時期のリオレウスは雌探しで気が立っているため、付近の村を襲う危険があるとりあえず行かなくてはいけない。

「分かった、これから行ってみるよ、サウロ適当になんかつまめる携帯食つくってくれ」

 そう言い、武具と持っていくアイテムの点検を始めた。

「了解ニャ♪だんにゃさん帰ったらマタタビよろしくニャ♪」

「あぁ分かってるよ…ちゃんと買ってくるって」

 台所にいくサウロはドブロクにそう念を押して、苦笑いしながらドブロクは返事をした。

「ふふふ…それじゃあ任せたわよ~♪報酬はあとで酒場に取りに来てね」

 その様子を楽しそうに見ていた姐さんはそういい残すとドブロクの家から出て行った。そして準備を整えるとハンターUを身につけ、腰にデルフ=ダオラを差し、弾を確認して、サウロの用意してくれたポーチを受け取り、サウロの頭に利き手を乗せて、

「じゃあいってくる、留守は任せた」

「任されたニャ♪」

 いつものやりとりを済ませ、ドブロクは狩場へ向かった。

――ザザァァァァ…――

密林につくとドブロクは真っ先にエリア8に向かった。大抵の飛竜はそこに巣を作るからである。周りに気を配りながら進んでいくと、エリア6に入ったときに奥のほうから二匹の飛竜の寝息が聞こえてきた。

(…もう嫁さんつくっちまったのか…こりゃ厄介だな)

 そう思いながら、8を覗くとそこには奥の段差の前で眠っている番のレウスとレイアがいた。

(はぁ…片方が起きて見回りなり餌を取りにいくまで待つか…ん?)

 持久戦を考え腰をすえてかかろうとしたのだが、ふと目に入ったレウスの腹に大きな傷があることに気づいた。よく見ると、顔も三日前にやりあったレウスに似ている。まさかと思いつつ、ドブロクはとりあえず身を潜めた。
 しばらくするとレイアが起きて飛び去っていった。レウスはまだ眠ったままだ。ドブロクはチャンスと思い、寝息をたてているレウスに近づいていった。すぐ脇まで近づいても起きないレウスに呆れつつ、頬の辺りをノックしてレウスを起こしてやった。レウスはハッとしたように目を覚ましてドブロクを睨みつけたが、彼を覚えていたのか襲いかかるそぶりは見せなかった。その様子を見てドブロクは三日前のレウスだと確信して話しかけた。

「よう、傷はもうだいぶいいはずだろ?なんでここから動かないんだ?」

 その問いにレウスは段差の方に首を振って見るように促した。ドブロクが見るとそこには生まれて間もないリオ種の雛が3匹すやすやと寝息をたてていた。

「なるほど…もう卵を産ませてたってことか」

「グゥゥ…」

 そうドブロクがつぶやくとレウスは申し訳なさそうに唸った。まるで父親に呆れられてしょげている子供のようだ。そんなレウスを見てドブロクはため息を一つついて、レウスに話しかけた。

「まぁ仕方ないさ、ところでお前…」

「?」

 レウスが首をかしげてドブロクの言葉を聞いている。

「人のいる村を襲わないって約束できるか?」

 ドブロクの問いにレウスは静かにうなずくしぐさをした。

「嫁さんにもそれを約束させられるか?」

 ちょっとためらいながらもレウスはうなずいた。それを見てドブロクは苦笑いしてこう洩らした。

「どこの世界でも嫁さんが強いってのは変わらんか…」

「グォォ…ン」

 妙なところで意気投合する一人と一匹なのであった。と、そこへ…

――ヒュォォォォ…――

 独特の風切り音、ドブロクとレウスが上を見上げると洞窟の天井に開いた穴からレイアが仕留めたアプケロスを持って帰ってきた。

「まずいな…」

「グルゥゥ…」

 こういうときのオチが読めてくるのも修羅場をくぐった男ならではの察知能力である。

「ピギィ…ピギィ…」

 羽音で目を覚ました雛たちが腹を空かせているのだろう盛んに鳴き始めた。レイアは降りてくる途中で見慣れぬ不審者を見つけ、威嚇の咆哮をあげた。

「ギャオオオオオオ!!!!」

ついでにいうとドブロクにはそれがレウスに対する叱責のようにも聞こえた。要するにこんな感じ、

「あんた見張りさぼって何してんのっ!!!!」

 咆哮を聞いたときのレウスの怯えようから、まんざらハズレでもないなと思いながらドブロクはエリア6の方へ駆け出した。駆けながらレウスに向かって大声で叫んだ。

「子供が飛べるようになったらここからでていくんだぞおおお!!」

「グォォォオオオオオン!!」

それを聞いてレウスも吼えて力強く答えた…が、降りてきたレイアから尻尾ビンタをもらい気絶してしまった。あちゃーと思いながら、ドブロクはレイアの矛先が自分に向く前にエリア6にたどりつこうとしたが無駄だった。後ろで息を吸い込む音が聞こえ、振り返るとレイアがブレスの体勢をとっていた。

「ちょっ…!?まっ…」

――ズドォォオオオオオオオン――

この三週間後、無事に雛たちは成長し巣立ちの日を迎えた。身体も両親の半分ほどになった若い飛竜たちはそれぞれの空へと羽ばたいていくのをレウスとレイアが見送り、さらにもう一人、まだ包帯がとれていないドブロクがエリア3側の入り口でその様子をそっと見守っていた。最後の雛が飛び去り、残った二匹はお互いをみつめあい、別れの挨拶を交わしているのか喉を震わせて唸り声をあげている。挨拶が済んだのかレイアも飛び去っていった。あとに残ったのは一人の男と一匹の雄…上からドブロクがレウスに声をかけた。

「なぁ、行くあてはどうせないんだろ?」

「グルゥ…?」

 ドブロクの方を見上げてレウスは何を言いたいんだ?という風に首をかしげている。

「よかったら組まないか?相棒として」

 レウスはじっとドブロクをみつめている。

「まぁなんとなくだけど色々とあってうまくやれたと思ってな」

「グゥゥ…」

「もうちょっと一緒にいたいって思ったわけだ」

 喉を鳴らしているレウスをみつめながら、すっくと立ち上がりドブロクはさらに言葉を続けた。

「…世界を見にいかないか?」

「グォォオオオオ!!!!」

 この誘いをレウスは待っていたのだろうか。彼はドブロクが今まで聞いたことの無い咆哮をあげた。そう歓喜の雄叫びを…

「いつもはこの声が怖いのにな、今のはすごく心地良かったぜ!」

 そう叫ぶとドブロクはレウスへ向かって高台から跳び、レウスも落ちてくるドブロクをめがけて飛び上がった。彼が背中にしがみつく感触を確かめると、レウスは一気に天井の穴を抜けて大空へと舞い上がっていった。

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