WILDハンター(仮)

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二章「初めては慎重に」


   「初めては慎重に」

 それから、しばらくの間は周囲への説明でてんやわんやだった。ドンドルマの街では飛竜を専用のケージに入れてペットにしているそうだが、それでも狩りの相棒として扱い、“空の王者”リオレウスを村の近くに住まわせるなんていうのは前代未聞だ。ドブロクもそのことは重々承知していたが、なんとか姐さん含む、村の顔役達の了承を得ることができた。親方や鍛冶場のおハルさん達が帰ってから、ドブロクは姐さんからこんなことを聞かれた。

「ところでドブさぁん♪そのレウスに名前とかってあるのかしら?」

「そういえば、名前は決めてなかったなぁ」

 椅子の背にもたれかかって、ドブロクは思い出したように答えた。

「だったら彼のところへいって聞いてくるといいわよん♪多分教えてくれるはずだから」

 姐さんの言葉を聞いてドブロクは驚いて聞き返した。

「レウスに名前ってあるのか!?」

 それに涼しい顔して姐さんは答えた。

「えぇ、もちろん全てのリオレウスに名前があるわけじゃないけど、言葉が分かるなら彼は多分隠れ里で生まれたはず…だったら名前をもってるはずよん♪」

「隠れ里?」

「ふふふ♪そ・れ・は…竜人族の秘密ってことにしておいてね♪」

 聞きなれない言葉にドブロクは反射的に聞き返したが、姐さんにさらっとかわされてしまった。とりあえずドブロクはその日の夜レウスがねぐらにしている村近くの洞窟へと向かい、姐さんが言ったことをたしかめることにした。それほど離れてない湖沿いの洞窟の中を進んでいくとレウスの寝息が聞こえてきた。

(やれやれ、夜ならいると思ったのは間違いじゃなかったけど…)

 柔らかな砂の上で気持ち良さそうに眠っているレウスに歩み寄っていく。と、砂を踏みしめる音で目を覚ましたレウスは眠たそうに頭を起こしてドブロクを見つけると、間の抜けた声をあげてきょとんとしている。そんなレウスを見てやれやれとドブロクは呆れたが、

「よぅ、こんばんは」

「グルゥ…?」

 夜の挨拶をして歩いてくるドブロクをレウスはいぶかしむように見つめている。

「いやまぁお互いちゃんとした自己紹介をしてなかったと思ってさ」

 そういいながらドブロクは手ごろな岩に腰掛けて話を続けた。

「俺の名前はドブロクっていうんだ、お前の名前は?」

「グゥ…」

 レウスはおもむろにあごの棘を使って砂地に文字を書き始めた。

「へぇ…お前そんなこともできるのか、え~と…ソ…ラ…?ソラス・エムス?」

「グォォ…」

 肯定の意なのだろう。ソラス・エムスはのどを鳴らしてうなずく仕草をした。

「なんか御伽噺にでも出てきそうな名前だなぁ…」

「グルァ!?」

 ドブロクの反応にソラスは驚きの声をあげた。それを見てドブロクは鼻で笑ってしまったが、

「まぁまぁ、別に変って言ってるわけじゃないさ、これからよろしくなソラス」

「グオォォ…」

「さて…と…」

 お互いの名前も分かったところで、ドブロクは持ってきたポーチの中から何かを取り出した。それは…

「男二人で夜を語り明かすにはこれが必需品だろう!」

「?」

 ドブロクが取り出したものをソラスは初めて見た。透明なものの中に水のようなものが入っていて何やら嗅いだことのない匂いがするのである。ドブロクは取り出したものをしげしげと見つめるソラスに説明してやった。

「そうか飛竜はこれ飲まないよな、まぁいい機会だから覚えておけよ~これは酒といって人が気分を良くしたくなったり、他人と楽しくおしゃべりしたり、つらいことから逃げたくなったりしたときに飲むものなんだ」

「?」

 その説明を聞いてもまだソラスは分かっていないようなので、ドブロクは瓶を持ってソラスのそばまで歩いていくと…

「まぁ飲めば分かる」

 そういい、半開きになっていたソラスの口の中へおもむろに瓶をつっこんで中身を半分ほど流し込むと下あごを持ち上げて飲み込ませた。

――ゴクン…――

「ど~だ?美味いか?俺はけっこう好きなんだがなっと…」

 下あごを支えたままそう言うと、ドブロクも瓶から直接酒を煽った。

「プハァ~うまいッ!ん?そうかあご抑えたままだからしゃべれねぇのか」

 ようやく気づいたドブロクが手を離すと、ソラスは苦しそうに酒臭い息を吐き出した。

「どうだ?酒の味は?」

 ドブロクがソラスの目を覗き込むと、ソラスはとろんとした目でドブロクを見つめ返した…と思ったら、胃の中のものを吐き出して倒れこんでしまった。

「あちゃぁ…やっぱりこいつは強すぎたかな」

 倒れたソラスを尻目にドブロクは手にしている酒瓶のラベルを見ながら、ばつが悪そうに頭をかいている。そのラベルには酒の銘柄が記されていた「レウスの炎」と…

「とりあえずおもてに運んで水ぶっかけてやるか」

 そういうとドブロクは丸太のように太い尻尾をかついで洞窟の外へ引きずっていった。こうして男同士の親睦会は意外な収穫を得て終わったのであった。

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