WILDハンター(仮)

WILDハンター(仮)

十章「炎と焔」


「……ッ!?…生きてる?」
 彼が山鳴りで目を覚ますと周囲には焼け焦げた臭いが漂い熱気も残っているが、とりあえず蒸し焼きにされるのは免れたようだ。体を動かして異常がないか確認してみる。節々が若干痛む程度で特に問題はなさそうだ。
「そういえば、グラビモスのやつはどこへ…?」
 そう呟き隠れていた岩の端からそっと顔を覗かせて渓谷の出口を見た。するとそこには、
「…なッ」
 無残にちぎれているグラビモスの片翼があった。グラビモスそのものの姿はどこにも見当たらない。急いで渓谷から出ると地面にただおびただしい血痕が東の荒野へ続いている。彼は渓谷の出口に呆然と立ち尽くすしかなかった。
「何が起こったんだ…」
 ソレは彼が気を失った直後のことだった。
――ヒュウゥゥゥゥ…――
 独特の風切り音。空を翔る王者が弾く狂想曲。そしてその咆哮は雷鳴のごとく響き渡る。
「グォォォオオオオ!!!!」
 その声を聞いたグラビモスがブレスをとめ振り返ったときにはすでにその片翼は急降下で勢いをつけたリオレウスの全体重によりちぎれてしまっていた。
「ゴアアアアア」
 悲鳴とも怒号ともいえない咆哮をあげグラビモスはちぎれた翼の上にいるリオレウスへ岩塊のような尻尾を叩きつけたかに見えたが、
「おっとそいつをもらうわけにはいかないな」
――ドンッ、…バァァン――
 リオレウスの首元についている外套のようなものから弾丸のようなものが飛び出して炸裂しグラビモスの尻尾を弾き返した。その隙にリオレウスは再び空へ飛び上がると東の方へ飛び去り、グラビモスはその後を追っていった。そして舞台はそのまま東の荒野へ移る。
「あいつは来そうか?」
「あの傷だとここまでもつかわからにゃいですにゃ~」
 荒野の火山側に近い高台でそう言葉を交わしているのは旅装姿のドブロクとサウロだ。傍らには遠くを見つめるソラスの姿もある。彼らが待っているもの。それは、
「どうやら…もったようだな」
 遠くからグラビモスのあえぎ声が近づいてくる。ドブロクのその言葉を聞くとサウロは急いでそばに開いている穴の中へ駆け込んでいった。それを確認したドブロクはソラスにめくばせをして遠くにかすんで見えるグラビモスのもとへむかった。高台から降りて歩くこと数十分。荒野に対峙するドブロクとグラビモスの姿があった。ただグラビモスの翼をひきちぎられた傷からはいまだにおびただしい鮮血があふれ出している。
「よくここまでもったもんだな」
 傷を見たドブロクは素直に驚いた。飛竜種とはいえ生物に変わりないのだから血液が体重の三分の一無くなれば動くことはもちろん意識すらあるか危ないはずである。それでもこのグラビモスはなお人間に対して敵意をもってむかっているのだ。その執念は並大抵ではない。なぜここまで執着するのかドブロクには分からないが、
「とりあえずお前さんをあの村へ行かせるわけにはいかなかったんでね」
 そう言い放ち身にまとっていた外套を左手で払いのける。その手には鈍色に輝くヘビィボウガンが握られている。グラビモスはそのヘビィを見てなぜか怯えるようにあとずさりした。
「大丈夫だ。殺しはしない。ただ」
 そこまで言ってドブロクは右手を高々と振り上げた。その瞬間、
――グォォオオ…ズザザザザァァァァ…ゴァァァ――
 グラビモスの真後ろからソラスが急降下して荒地へ組み伏せた。なんとか抜け出そうともがくグラビモスにドブロクは近づきながら、
「おいおい、そんなに暴れると出血がひどくなる一方だぞ」
 そう軽口を叩くと、ドブロクはグラビモスの傷口へ銃口を向け引鉄を引いた。
――ドンッドンッ――
 傷口に弾丸を撃ち込まれるとグラビモスはすぐに大地へ伏したが死んだわけではない。撃ち込んだ弾丸は『捕獲用麻酔弾』その名の通り狩猟で標的を捕獲するときに使う麻酔弾だ。これの弾頭に入れられている捕獲用麻酔薬はマヒダケとネムリ草を調合して作られる強力な催眠薬だ。標的が弱らないと十分な効果を発揮できないが、ここまで深手を負わされたグラビモスにはちゃんと効く。しっかり寝ていることを確認したドブロクはソラスに降りるよう指示してグラビモスの傷口に秘薬と呼ばれる傷薬を塗り始めた。その作業が半分ほど終わったところに、
「だんにゃさ~んおまたせしたにゃ~!」
 サウロの声がした方を見ると、先ほどいた高台からサウロが三十匹ほどのアイルーを連れて戻ってきた。アイルーたちはクエストで重傷を負ったハンターをベースキャンプへ運ぶ荷車のとてつもなく大きいものを押している。
「よ~し!こっからが本番だ!」
 そうドブロクが叫ぶとサウロとソラスはもちろんだがアイルー達も一斉に声をあげた。そうこれからグラビモスをこの荷車に乗せて運ぶのだ。言うのは簡単だが作業はまずもってきた荷車をバラし、眠っているグラビモスの下へ枠組みをこしらえて荷車を組み立て、そこから目的地まで引っ張っていくのだ。並大抵のことではない。それでもドブロク達は荷車を組み立て牽引用のロープをソラスに引っ張ってもらい、彼らは荷車の横と後ろを押しながら進み始めた。そして彼らが目指す場所。それは、
「いざ!隠れ里へ!」
「がんばるにゃ~!」
「グォォォオオ」
「ニャーニャー」

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: