☆★pental式★☆

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P・P(2)



 恋愛なんかするもんじゃない。

 そう思っても、やはり孝介を想っている。そんな自分が、また不思議だった。一体人間とはどういう心情を持っているのだろうか。そんな謎ばかりが深まっていき、直子はもう考えるのはあきらめることにした。好きなものは好きでいいと、このごろ割り切っている。

 「野津さんってさぁ、痩せたよなぁ。」
裕のセリフに、孝介は何が言いたいんだ、とかえした。確かに孝介が見ていても、直子は以前よりも少し痩せた。頬のあたりの肉が少し落ちて、足も細くなった気がする。
「お前のせいじゃん?」
冗談交じりに言う裕の顔は笑っていた。が、孝介は笑わなかった。眉間によったしわは、裕が隣に座ってからずっと伸びることはなかった。
「かもしれない。」
それだけ言って、眉の上を少しだけかいた。
孝介の肌も、裕に負けないくらい白い。焼けると赤くなり、風呂に入るとひりひりして手におえない。母親譲りのこの白い肌を、孝介は少し恨んでいた。

「この前5組とやったバスケの試合のとき、野津さん泣いてたってお前知ってるか?」
今度は冗談などひとつも混ざっていない、ハッキリした口調で裕が言った。
裕の目は、相変らず直子たちの集団を見つめている。太陽がまぶしいらしく、綺麗な二重の目を細めていた。
 あぁ、と言って孝介は黙った。全部見ていたと言う同じクラスの瀬戸優香にきいた。瀬戸優香はよく男子と話をする方の女子だった。明るい性格で、友達も多く、かわいいと人気もある。
「瀬戸さんに聞いたんだろ?最近お前ら仲いいよなぁ。俺いろいろ噂聞いてんだぜ?」
嫌な笑みを浮かべる裕に、「噂ってなんだよ」と孝介は訊いた。
「いろいろあんだぜ。お前らが実は付き合ってますとか、もう行くとこまで行っちゃってますとか、野津さんと別れた理由も瀬戸さんを好きになったせいですとか。まぁいろいろ。もっとあるけど聞きたい?」
 足元をカニがチョコチョコと歩いていた。巣穴にたどり着くと、そこにもぐりこんでいく。孝介はその巣穴をつぶしてやりたい気分に襲われた。
 孝介はめったに感情を表に出さない。裕はそれを知っていながらも、孝介の心の中を読めていなかった。
「水臭いじゃないかよ。俺に言わないなんて。まさかお前と瀬戸さんがそういう関係だったなんて・・・」
ニヤニヤしながら喋っていた裕が止まった。鋭い矢のような視線が、裕を突き刺していた。裕にとって1番怖いものは、孝介のこの視線だった。まるで氷のナイフで胸を一突きにされたような気分になる。
「悪かったよ。」
まじめな表情に戻って言った。裕のその言葉を聞いて、孝介はそれならいい、と言った。
「瀬戸さんには、ちゃんと男がいんだよ。やたらと変な噂たてるんじゃねぇ。」
孝介は元の静かな表情に戻っていた。
 孝介は顔をあげてまた波打ち際に目をやった。が、もうそこに直子たちの姿はなかった。

 直子たちは海岸の傍の店先で、足を洗っていた。ホースから出てくる水は、さっきの海水と変わらないくらいに冷たかった。
「これ使っていいよ。」
優しげな顔つきの店のおばさんは、直子たちのために椅子を何脚か出してくれた。それに座って、直子たちは洗い終わった足を拭いていた。
「おなか減ったよねー。」
「減った減った。」
「てか暑い」
「カキ氷とかアイスとか食べたい!」
 みんな口々に騒ぎ出し、店先はすぐににぎやかになった。直子たちが靴をはき終える頃には、他の生徒たちも近くに集まりつつあった。
「ねぇ、あっちの店にアイス売ってるんだって」
一足先に、周りを偵察に行っていたクラスの女子が戻ってきて言った。
「え!?行く行く!」
ほとんどのクラスメイトはそれに同調して椅子をたった。
「光となおは行かないの?」
直子と光は座ったままだった。うん、といって、2人とも立つ気配はなく、他の者はその2人を置いてアイスを買いに行った。
 直子も光も、何を喋るでもなくそこに座っていた。何も言わなくても、互いに思っていることはよくわかった。特に直子の心の中は、光にはすぐに見て取ることができた。

 風から、海の匂いがした。

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