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furikaeru2
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 旦那ではない人です
 結婚する前に、好きだった人のこと。

 彼は私より2つ年上で、とても頭の良い、ココロが優しいんだけど、どこか傾いでいて、でも誠実な人だった。私もココロが傾いでいて、そのことを自覚しているけれど、彼もそのことを知っていて認めてくれていた。

 私が彼と話しているときに、逃げ腰になって
「私、あほやからそんなん言われてもわからん」
と言うと、
「そっかー、うっどちゃんあほなんやー。そっかあほなんかぁ、じゃ、しゃーないなぁ」
と言う。
 私が不機嫌になって
「そんなあほあほ言わんでよ、暗くなるから」
と言うと、
「あのな、自分で自分のことを『あほや』って言ったのは、『島根出身や』とか『女や』って言うたのと同じことやねんで。それを繰り返されて、暗くなったり不快になったりするのは、本当は自分のことを『あほや』って思ってない証拠や。ほんまは『あほ』と思ってないのに、自分を貶めたらあかんで。」
と諭してくれた。
 彼はそういう人だった。

 彼と私は大学も違っていたし、学年も違っていたけど、演劇を通して知り合った。そして、大学を卒業した後に同じ劇団に所属して、一緒に芝居を作りはじめた。当然話す機会も増えたけど、いつも彼でも私でもない、もう一人の人のことばかりを話していた。

 仮にK君と呼ぼう。
 K君は、私の元カレだった。
 大学を卒業するときに、K君は私にプロポーズしてくれた。でも、私はこれまで大学4年間の間にK君との間で起こった出来事、

出会い・浮気・同棲・別れ・再会・浮気

そして別れに憔悴しきっていた。だから、プロポーズを受ける気持ちにはなれなかった。

 そして別れて別々の路を行くことを選んだ。
 彼は、K君と私が付き合っていたことも、同棲していたことも知っていた。

 K君も私たちとは別の劇団で、舞台に立っていた。
 彼は、K君のいる劇団から裏方の仕事を頼まれてK君と知り合った。

 彼はなにかと私にK君のことを聞いた。
「Kがさぁ、こんなん言うんだけど、どう言うことやろ?」
「なんであんなことするんかなぁ・・・」
などなど・・・

 元カレのことを、今好きな人に聞かれていい気がするはずはない。
 私は胸をかきむしる様な気持ちで、でも彼に対して誠実でありたい気持ちにすがりながら、彼に応えていった。

 彼にもその気持ちが伝わったのだろうか。
「ごめんな。昔の彼氏のことを聞かれて、いい気はせんわな。でも、K君のことを一番よく知ってるのは、付き合っていたうっどちゃんやろ?だから、K君のこといろいろ聞けるのはうっどちゃんだけやねん。ごめんな。」

 彼とK君とは、仲良くなった。
 でも、どこかなにかがすれ違っているような関係を作っていった。

 そして、半年ほどその状態が続いたときだった。
 私は、彼が自分自身でも気がついていない、一つの思いを持っていることに気づいてしまった。
 私は既に、彼のことが好きだった。
 だから、気づいたけれども口に出すことはできなかった。
 また、それが思い違いであって欲しいと願った。

 彼も自分の中の密かな思いに気づき始めていた。
 話の内容からも、それが伺えた。
「オレ、なんでこんなにK君のことばっかり気にしてんねやろ。」
「あいつは(K君)しょーもないヤツって思ってんのに、なんでヤツに振り回されてるんやろ?」
 そして、ついに、その日が訪れた。

 その日、彼は真夜中の1時に電話してきた。
 彼の声は、泣いていたような鼻声だった。
「うっどちゃん?ごめん、起きてた?」
「ああ、うん。どしたん?」
「あのなぁ・・・オレ、とうとう認めざるをえんようになったわ。」
「え?どういうこと?」
「・・・オレ、K君のことが好きなんやわ」
 そう言って、彼は受話器越しに鼻をすすった。

 どうして涙が出るんだろう。
 好きな人を「好きだ」と認める、ただそれだけのはずなのに、彼は何故こんなにも傷つかなくてはいけないんだろう。
 でもわかる。
 彼が何故泣かなくてはいられないのか、傷ついているのか。
 私も傷ついている。
 だけど、私の傷よりも、受話器越しに感じる彼のココロの方が痛かった。
 何も言えない。
 それでも何とか、大きなため息をついてから口を開いた。
「・・・そうかぁ」
「・・・うん。・・・なんか、そうみたいや・・・」
 あともう少しどちらかが力を入れたら、ぷつっと切れてしまうような、そんな張り詰めた空気の中で、彼が一つ震える呼吸で大きなため息をついた。

 そして、私はその時に自分のココロの中で一つの決心をした。
 彼のこの思いがどんな形であれ一段落できるまで、自分の気持ちは置いて、彼を支えていきたい。
 私は精神的に、きっとものすごくぼろぼろになるだろう。傷つくだろう。
 でも、こんなに大事で、こんなに相手を選ぶ話を彼は私にしてくれた。
 私を選んでくれたんだ。
 だから、そのことを大切に受けとめて、私はこの役割を全うしよう。
 ・・・そう思った。

 こうして、奇妙な三角関係は始まった。


(2) へつづく


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