The delusion world

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行間



「ウオオオオオオォォォ―――ォゥ」

化け物が、天に向かって咆哮を上げる。

やはり、あの程度の罠じゃ一時の足止めにしかならないか。

横目で少年が走っていった方を見る。

さっきの少年は、もういない。

よかった。

これで、惨たらしく殺されるところを見られなくてすむ。

「さて、どうしたらいいのかな……」

ため息を吐いて、目の前の化け物と対峙する。

正直、あの子にはどうにかするなんて言ったけど何にも考えてない。

というか、どうにかする気なんて起きない。

怖い。

それもそのはずだ。

何せ自分より1m以上でかいんだから。

「グウウウゥゥ…………」

化け物は目を光らせて私を見る。

どうやら獲物としてではなく敵としてみているらしい。

相手になんて、なるはずもないのにな。

不思議と笑みがこぼれてくる。

死を覚悟したからだろうか。

怖さも、ほとんどなくなった。

「こうなったら、とことん逃げてみようかしら」

覚悟を決める。

どうせなら、とことんあがいてみよう。

ここから真っ直ぐ反対に逃げれば、キルクがいるはず。

だから、全速力で逃げよう―――!

「がふっ……」

なんて、考えていた自分が馬鹿みたい。

逃げようと身を翻した瞬間、化け物の右手が脇腹に直撃していた。

あ、痛い。

そんな、間の抜けた感想を抱いてしまった。

そのまま私は木に叩きつけられた。

肋骨が、背骨が、砕けた。

もう立てない。

「ウオオオオォォ!!」

化け物が勝利の雄叫びを上げている。

その化け物を力無く見上げると、ふいに視線が合った。

「悲しい眼を、してる、ね」

そういえば、あの化け物も被害者なんだっけ。

かわいそうに。

望んでもいないのに、殺戮をさせられて。

ああ、この世界は、いつ救われるんだろう。

あの子に賭けてみよう。

救世主ともいえるあの子に。

「ごめんね、キルク。ずっと……ずっと、愛してるからね」

頬を滴が伝う。

化け物は獲物を殺そうと、私めがけて足を上げて、叩きつける。

その瞬間。

私の世界は、終わった。

-End-

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