The delusion world

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第0話「プロローグ」


ようやく日が昇り始めた頃、森と森の間にある道。

「今日は晴れか。暑くなりそうだな」

荒々しく駆ける馬車の上で御者は呟いた。
雲一つない空はきっとどこまでも青く広がっているのだろう。

「いいかげん、この揺れにもなれた、かな…?」

整っているようで、まるで整っていないリズムのまま馬車は駆けていく。
今ではそんな事はないだろうが、最初の頃は酔って吐いたりもした。
それはそれでいい思い出なのかもしれない。

「あ、そういえば目的地確認してなかった」

慌てて馬車を止める。
場所は分岐路。
ここで道を間違えば目的地には着かないのである。

「目的地は……なんだ、ジーア村か。なら曲がらないと」

御者は服のポケットから紙を取り出し、それをしばらく眺めてから言った。
少し間を置いて再び馬車は動き出す。

「しかし、ジーア村に行くのも久しぶりな気が」

するようなしないような。
思えば半年以上行ってないのではなかろうか。
今回の依頼はハンターの送迎らしいから、時間が余った時にでもやることをやっておくとしよう。
さて、後はまっすぐ行けば村に到着、なんだけど。

「さすがに早すぎたか…」

ほぼ正面にある太陽は――つまり今は東に向かっている――まだ地平線から少ししか顔を出していない。
このまま行くと太陽が昇りきる頃には村に着くだろう。

「…………眩しい」

朝日が綺麗だ。
思わず文句を言いたくなるくらい綺麗に輝いている。
それでも馬車は進むしかなく、結果的に御者は村に着くまで朝日に苦しめられたのだった。



結局、御者は予想通りに村に着いていた。

「あの~すみません。ハンターの送迎で来たんですけど、起きてます?」
「えっ、と……ハンターって言われてもどなたかわからないんですけど」

それもそうだった。
村の酒場で聞いてみたものの、名前を出さなければわかる訳がない。
御者はポケットから先ほどの紙を取り出すと、そこに書いてある名前を読み上げた。

「ハンターの名前は……あった。カズって言うらしいです」
「ああ、カズですか。それなら寝てるんじゃないでしょうか?まだ早いですし」
「…そうですか。ありがとうございます」

親切な給仕係の人に礼を言って酒場を出る。
一応村長に挨拶でも、と思ったけどここの村長は話が通じにくいのでパスしよう。

「くそ、待たされそうだな」

そう言って馬車の中に寝転ぶ。
早く来すぎた自分が悪いのだが、この調子でいくと結構待たされそうなので文句の一つでも言わないとやってられない。



ああ、どうか早めに来てくれますように。

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