こしゃくな読書

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天切り松闇がたり 第五巻 ライムライト


1,575円
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 「浅田次郎の小説に出てくる女性はみんな不幸だから、

あんまり好きじゃない」

と友人に言われたことがある。

その友人が読んだらこの天切り松の第5巻も、

不幸な女と不遇な子どもばかりと言われてしまいそうだ。



 敢えて反論はしないが、私は、この人たちが不幸ではなく、

不運であったのだと理解できるから、うれしい。

不運はときに、しあわせの何たるかを教えてくれる。


恵まれた境遇にあるものよりも、幸福の味わいに敏感になる。



そして、粋に生きたいと本気になれるのも、

不運を乗り越えたものの強さだ。




 長野の山で農家をやっている妹分から三日遅れの野菜が届いた。

今週は豪雪による運送会社のパンクで、配送が遅れたのだ。

「知人は(諏訪で)スーパーに食料品がなくなって困ったと言っていた。

我が家は一応農家なので、食料品は当面困らないし、

水も山水が引いてあるけれど」

という、野菜について来た「ゆき畑便り」を読んで、

相変わらずの、のんきな口調にクスクス笑ってしまった。



 首都圏では大騒ぎしていたあの大雪の中、長野の山で

築100年超えの古民家で自家製の玄米をたいて食べ、

「よく降るねえ、ね、歩夏ちゃん♪」

と7カ月の『よく食べる』一人娘に

野菜をすりつぶして与えている姿が目に浮かぶ。


 その『モリモリ食べている』一人娘ちゃんが、

正月に実家に帰った時(実家は埼玉県越谷市)

スーパーで買って来たじゃがいもを食べさせようとすると、

「おえ〜」となって食べなかったという。


そりゃそうだ、とここでは声を出して笑った。


固定種の無農薬野菜を普段食べ慣れている赤ちゃんが、

F1種の農薬漬けの野菜を食べるわけがないじゃないか。



 山の奥で野菜の箱に入れられ、野菜を出荷する母親を見守る赤ん坊。

浅田次郎の物語の女性を不幸だと言った友人からすれば、

この光景も『不幸』だということになってしまうのかもしれない。


敢えて反論するつもりはないが、私にとって天切り松の闇語りを

胸ときめかせて聞けないほどの、不幸など、ない。

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