偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

2020.02.18
XML
カテゴリ: 万葉
​​
 当地は雪は降らなかったのであるが、因みにと、雪を詠んでいる歌、雪という詞が含まれる歌は万葉に何首あるのだろうと、手許の万葉集をパラパラとめくって調べてみると111首ありました。
 見落としている歌がもしあるなら、その分これよりも多くなる。
 長歌で雪が登場する歌は、知っているだけでも5首あり、これら長歌も含めると雪の歌は百十数首あるということになる。
 今後の参考にと、これを記事に書きとめて置くことにします。
第1巻には雪の歌が見当たらず、第2巻の天武天皇と五百重娘
(藤原鎌足の娘にして、天武天皇の夫人、新田部皇子の母でもある。) ​との軽妙なやり取りの、あの有名な歌が万葉集最初の雪の歌のようです。そして、最後の雪の歌は大伴家持の万葉集掉尾の歌、新しき年の始めの初春の・・の歌である。
(注)上記は、長歌を度外視してのことです。長歌では第1巻25番の天武天皇御製の吉野での歌に雪が詠われている。また、霰も雪の内と考えれば、同じく第1巻65番の長皇子の歌に「霰」が登場している。
第1巻​
(なし)
第2巻
わが里に 大雪降れり 大原の

( ) りにし里に 降らまくはのち (天武天皇 巻 2-103

わが岡の おかみに言ひて 降らしめし
        雪の
( くだ ) けし そこに散りけむ (藤原夫人 巻 2-104

降る雪は あはにな降りそ  吉隠 ( よなばり )
猪養 ( ゐかひ ) の岡の 寒からなくに (穂積皇子 巻 2-203

第3巻

田子の浦ゆ うち出でて見れば ま白にそ
         富士の高嶺に 雪は降りける (山部赤人 巻 3-318

富士の ( ) に 降り置く雪は  六月 ( みなづき )
十五日 ( もち ) ( ) ぬれば その夜降りけり (高橋虫麻呂 巻 3-320

第4巻

道に逢ひて  ( ) まししからに 降る雪の
( ) なば ( ) ぬがに 恋ふといふ 我妹 ( わぎも )  (聖武天皇 巻 4-624

第5巻

わが園に 梅の花散る ひさかたの
( あめ ) より雪の 流れ来るかも (大伴旅人 巻 5-822

梅の花 散らくはいづく しかすがに
      この ( ) の山に 雪は降りつつ (大伴百代 巻 5-823

妹が ( ) に 雪かも降ると 見るまでに
        ここだも ( まが ) ふ 梅の花かも (小野国堅 巻 5-844

第6巻

奥山の 真木の葉しのぎ 降る雪の
     降りは増すとも 地に落ちめやも (橘奈良麻呂 巻 6-1010

第7巻 (なし)
第8巻​

沫雪 ( あわゆき ) か はだれに降ると 見るまでに
( なが ) らへ散るは 何の花そも (駿河采女 巻 8-1420

我が背子に 見せむと思ひし 梅の花
      それとも見えず 雪の降れれば (山部赤人 巻 8 1426

明日よりは 春菜摘まむと  ( ) めし野に
昨日 ( きのふ ) 今日 ( けふ ) も 雪は降りつつ (山部赤人 巻 8-1427

沫雪の ほどろほどろに 降りしけば
        奈良の都し 思ほゆるかも (大伴旅人 巻 8-1639

我が岡に 盛りに咲ける 梅の花
       残れる雪を まがへつるかな (大伴旅人 巻 8-1640

沫雪に 降らえて咲ける 梅の花
      君がり遣らば  ( ) そへてむかも (角広弁 巻 8-1641

たな ( ) らひ 雪も降らぬか 梅の花
     咲かぬが ( しろ ) に そへてだに見む (安倍奥道 巻 8-1642

天霧 ( あまぎ ) らし 雪も降らぬか いちしろく
      このいつ ( しば ) に 降らまくを見む (若桜部君足 巻 8-1643

我がやどの  冬木 ( ふゆき ) ( うへ ) に 降る雪を
       梅の花かと うち見つるかも (巨勢宿奈麻呂 巻 8-1645

ぬばたまの  今夜 ( こよひ ) の雪に いざ濡れな
      明けむ ( あした ) に  ( ) なば惜しけむ (小治田東麻呂 巻 8-1646

梅の花 枝にか散ると 見るまでに
       風に乱れて 雪そ降り来る (忌部黒麻呂 巻 8-1647

十二月 ( しはす ) には 沫雪降ると 知らねかも
         梅の花咲く  ( ふふ ) めらずして (紀女郎 巻 8-1648

今日降りし 雪に ( きほ ) ひて 我がやどの
        冬木の梅は 花咲きにけり (大伴家持 巻 8 1649

池の ( ) の 松の 末葉 ( うらば ) に 降る雪は
五百重 ( いほへ ) 降り ( ) け 明日さへも見む (巻 8-1650

沫雪 ( あわゆき ) の このころ継ぎて かく降らば
        梅の 初花 ( はつはな )  散りか過ぎなむ (坂上郎女 巻 8-1651

松陰 ( まつかげ ) の  浅茅 ( あさぢ ) が上の  白雪 ( しらゆき )
( ) たずて置かむ ことはかもなき (坂上郎女 巻 8-1654

高山の  ( すが ) の葉しのぎ 降る雪の
( ) ぬとか言はも 恋の繁けく (三国人足 巻 8-1655

我が背子と 二人見ませば いくばくか
        この降る雪の 嬉しからまし (光明皇后 巻 8-1658

真木 ( まき ) ( うへ ) に 降り置ける雪の しくしくも
       思ほゆるかも さ ( ) 問へ我が背 (他田広津娘子 巻 8-1659

沫雪の 消ぬべきものを 今までに
      ながらへぬるは 妹に逢はむとそ (大伴田村大嬢 巻 8-1662

沫雪の 庭に降り敷き 寒き夜を
手枕 ( たまくら ) まかず ひとりかも寝む (大伴家持 巻 8-1663

第9巻

御食 ( みけ ) 向かふ  南淵山 ( みなぶちやま ) の  ( いはほ ) には
     降りしはだれか 消え残りたる (柿本人麻呂歌集 巻 9-1709

越路 ( こしぢ ) の 雪降る山を 越えむ日は
( ) まれる我を かけて ( しの ) はせ (笠金村 巻 9-1786

第10巻

うちなびく 春さり来れば しかすがに
天雲 ( あまくも ) ( ) らひ 雪は降りつつ (巻 10-1832

梅の花 降り ( おほ ) ふ雪を 包み持ち
       君に見せむと 取れば ( ) につつ (巻 10-1833

梅の花 咲き散り過ぎぬ しかすがに
         白雪庭に 降りしきりつつ (巻 10-1834

今さらに 雪降らめやも かぎろひの
         燃ゆる春へと なりにしものを (巻 10-1835

風交じり 雪は降りつつ しかすがに
         霞たなびき 春さりにけり (巻 10-1836

山のまに うぐひす鳴きて うちなびく
         春と思へど 雪降りしきぬ (巻 10-1837

( ) ( うへ ) に 降り置ける雪し 風のむた
        ここに散るらし 春にはあれども (巻 10-1838

君がため 山田の沢に ゑぐ摘むと 
雪消 ( ゆきげ ) の水に 裳の裾濡れぬ (巻 10-1839

梅が枝に 鳴きて移ろふ うぐひすの
           羽白たへに 沫雪そ降る (巻 10-1840

山高み 降り来る雪を 梅の花
        散りかも来ると 思ひつるかも (巻 10-1841

雪をおきて 梅をな恋ひそ あしひきの
          山 片付 ( かたづ ) きて  家居 ( いへゐ ) せる君 (巻 10-1842

山のまに 雪は降りつつ しかすがに
          この川楊は 萌えにけるかも (巻 10-1848

山のまの 雪は消ざるを みなぎらふ
         川の沿ひには 萌えにけるかも (巻 10-1849

雪見れば いまだ冬なり しかすがに
          春霞立ち 梅は散りつつ (巻 10-1862

あしひきの 山かも高き  巻向 ( まきむく )
( きし ) の小松に み雪降り来る (巻 10-2313

巻向の  檜原 ( ひばら ) もいまだ  ( くも ) ( ) ねば
         小松が ( うれ ) ゆ 沫雪流る (巻 10-2314

あしひきの 山路も知らず  白橿 ( しらかし )
         枝もとををに 雪の降れれば (巻 10-2315

奈良山の 峰なほ ( ) らふ うべしこそ
( まがき ) のもとの 雪は ( ) ずけれ (巻 10-2316

こと降らば 袖さへ濡れて 通るべく
          降りなむ雪の 空に ( ) につつ (巻 10-2317

夜を寒み 朝戸を開き 出で見れば
         庭もはだらに み雪降りたり (巻 10-2318

夕されば 衣手寒し 高松の 山の木ごとに 雪そ降りたる (巻 10-2319

我が袖に 降りつる雪も 流れ行きて
         妹が 手本 ( たもと ) に い行き触れぬか (巻 10-2320

沫雪は 今日はな降りそ 白たへの
         袖まき ( ) さむ 人もあらなくに (巻 10-2321

はなはだも 降らぬ雪ゆゑ ここだくも
           天つみ空は 曇らひにつつ (巻 10-2322

わが背子を 今か今かと  ( ) で見れば
            沫雪降れり 庭もほどろに (巻 10-2323

あしひきの 山に白きは 我がやどに
昨日 ( きのふ ) ( ゆふへ )  降りし雪かも (巻 10-2324

雪寒み 咲きには咲かず 梅の花

       よしこのころは かくてもあるがね (巻 10-2329

八田 ( やた ) の野の 浅茅色づく  愛発山 ( あらちやま )  峰の沫雪 寒く降るらし (巻 10-2331

降る雪の 空に ( ) ぬべく 恋ふれども
   逢ふよしなしに 月そ経にける (柿本人麻呂歌集巻 10-2333

沫雪は 千重に降りしけ 恋ひしくの
( ) 長き ( あれ ) は 見つつ偲はむ (柿本人麻呂歌集 巻 10-2334

吉隠 ( よなばり ) の  野木 ( のぎ ) に降り覆ふ 白雪の
        いちしろくしも 恋ひむ ( あれ ) かも (巻 10-2339

一目 ( ひとめ ) 見し 人に恋ふらく  天霧 ( あまぎ ) らし
        降り来る雪の  ( ) ぬべく思ほゆ (巻 10-2340

思ひ出づる 時はすべなみ  豊国 ( とよくに )
木綿山 ( ゆふやま ) 雪の  ( ) ぬべく思ほゆ (巻 10-2341

( いめ ) のごと 君を相見て  天霧 ( あまぎ ) らし
        降り来る雪の  ( ) ぬべく思ほゆ (巻 10-2342

我が背子が  ( こと ) うるはしみ 出でて行かば
裳引 ( もび ) ( しる ) けむ 雪な降りそね (巻 10-2343

梅の花 それとも見えず 降る雪の
        いちしろけむな  ( ) 使 ( つか ) ひ遣らば (巻 10-2344

天霧らひ 降り来る雪の  ( ) なめども
        君に逢はむと ながらへわたる (巻 10-2345

うかねらふ  跡見山 ( とみやま ) 雪の いちしろく
         恋ひば妹が名 人知らむかも (巻 10-2346

海人小舟 ( あまをぶね ) 泊瀬 ( はつせ ) の山に 降る雪の
( ) 長く恋ひし 君が ( おと ) そする (巻 10-2347

和射美 ( わざみ ) の 峰行き過ぎて 降る雪の
          厭ひもなしと 申せその兒に (巻 10-2348

 以上73首(第10巻まで)
 第11巻~20巻は、ページを改め「 雪の万葉歌(下巻) 」として記事アップすることとします。

(雪の浅間山)





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2020.02.19 09:50:16
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

プロフィール

けん家持

けん家持

キーワードサーチ

▼キーワード検索

カレンダー

コメント新着

岬麻呂@ Re:岬麻呂旅便り334・南東北の紅葉(11/20) 家持様 ビックジョンさんへ お返事遅くな…
けん家持 @ ビッグジョンさんへ  ご覧いただき感謝です。   >いつもの…
ビッグジョン@ Re:岬麻呂旅便り334・南東北の紅葉(11/20) タイミングの難しい自然の変化の一瞬を目…
岬麻呂@ Re:柳沼2の写真について(11/20) けん家持さんへ フォト蔵で取り上げていた…
けん家持 @ 柳沼2の写真について 岬麻呂氏からの2024年11月22日付メールの…
岬麻呂@ Re[1]:岬麻呂旅便り334・南東北の紅葉(11/20) MoMo太郎009さんへ 何時もコメント有…
岬麻呂@ Re[1]:岬麻呂旅便り334・南東北の紅葉(11/20) ひろみちゃん8021さんへ 今年の紅葉巡りは…
MoMo太郎009 @ Re:岬麻呂旅便り334・南東北の紅葉(11/20) 日本の秋、きれいですね。 インバウンドの…
ひろみちゃん8021 @ Re:岬麻呂旅便り334・南東北の紅葉(11/20) こんばんは(^^) 宮城県、福島県、山形県…
岬麻呂@ Re:岬麻呂さんへ(11/20) けん家持さんへ 掲載して下さるのに大変な…

お気に入りブログ

ベニバナボロギク(… New! ビッグジョン7777さん

Northern Limit Line… New! lavien10さん

久々に自称 道場に自… New! 龍の森さん

北関東の旅 東海村(… New! MoMo太郎009さん

東大阪市展望台から… New! ひろみちゃん8021さん

紅葉の名所・毘沙門… New! ふろう閑人さん

べっこう飴のカメち… New! ☆もも☆どんぶらこ☆さん

中島美嘉  桜色舞う… New! くまんパパさん

東京の地形と高級住… 七詩さん

作楽神社 龍水(TATSUMI)さん


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: