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ふるっぴ@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) もうすぐ2016年の夏です。みんな元気…
ヤンスカ @ Re[1]:時は流れても、私は流れず(08/26) furuさん ふるっぴ、お久しぶりです! よ…
ヤンスカ @ Re[1]:時は流れても、私は流れず(08/26) gate*M handmadeさん うお~!お久しぶり…
furu@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) 勝手に匿名コメントを残し、怪訝にさせて…
furu@ Re:時は流れても、私は流れず(08/26) やっぱり元気やったな!? 良かった。
2012.11.28
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カテゴリ: カテゴリ未分類
ああ、しまったなあと、良彦は最終バスの車内に乗り込むなり後悔した。
右肩には、自分のショルダーバッグと息子のリュックサック。
左手には、バスに乗り込む前にコンビニで買った牛乳と食パン、ヨーグルトの入った袋。
で、さらに左腕で、ぐずる良樹を抱いている。

「おとうさん、すわりたい」
「よしき、もう、おきゃくさんがいっぱいだから、お父さんのだっこでガマンしなさい」
「いや~、すわるう!」

疲れ切った大人だらけのバスの中に、甲高い良樹の声が響き、
一斉に、咎めるような目線が良彦に向かってくる。

すっかり癖になってしまった、すみませんを連発する。
どうせ、うわべだけの謝罪だって、みんな判ってるはずだ。
右手で、なんとかつり革をつかみながらバランスをとり、
小さな息子におどけた顔をして見せる。

同世代の、身軽なサラリーマンの姿をみて、良彦は考える。
ああ、自分も単身で動けたら、どんなにか楽だろうな。

今日も、朝、保育園に良樹を預けてから出勤し、夕方からは研修が入ったので、いったん良樹を迎えに行って、街中の深夜までやっている託児所に連れて行った。
研修後、参加者たちは楽しそうに飲みに出かけて行ったが、自分にはできない。
今の生活を恨む気は、もちろん、ない。
ひとりで良樹を育てていくと決めてから、自分のことより息子の事を何よりも優先してきた。
良樹だって、よく頑張っている。母親のことを話題にもしない。





気が付くと、おかっぱ頭の若い女が自分を見上げている。
「お父さん、私の席を使ってください、あそこに取ってあります」
小柄な女は、背の高いボクに言いたいことが届いてるのか心配だとばかりに、
必死に話しかけてきた。

娘は、全身ピンク色で、靴までピンク色だ。


「カバン、持ちます」といって、バスの後部にある椅子へと向かう。
人をかきわけて。

そして、椅子の上の彼女の荷物を除けて、
「はい、ぼく、すわって」と子ども向けの甘ったるい声で良樹に言う。
「良樹、ありがとうは?」
「よしきくんっていうの?夜遅くまでエライねえ~」と言ってから、
ハッとした顔でボクを見て、すみませんと謝る。
「ごめんなさい、ご用があったんですよね、あたしったら変なこと言って、
 嫌な気持ちにさせてしまいましたよね?ほんとにすみません」

「いえいえ、いいんですよ。お席をどうもありがとうございます。
 正直、助かりました」

おかっぱ娘は顔を真っ赤にして、手を横に振りながら
「困っている時はお互い様ですから~、あ、じゃあ、あたし次のバス停なんで失礼しまあす」
と、出口に向かって人をかきわけていった。




なんか、いい娘だな。全身ピンクってのは、いただけないけど。
良彦は一日の終わりに、人の優しさにふれて、しんみりとした気分になった。

彼女を降ろしたバスが、バス停を去る時に、
一瞬こちらを見上げて、小さく手を振ってくれていた。
久しぶりに、人恋しく感じる良彦であった。


次の日。
良彦は、勤務先である星山女学院高校の職員室で掲示板を見ていた。

【3年B組 大西教諭がご出産のため、産休の間、幸多教諭が担任を代行。
 なお、本校に新任の夢野教諭を副担任として配置する。】

「幸多先生、そんなに驚かれましたか?」
良彦は、とりあえず笑顔を同僚に見せて、動揺なんかしていないと平静なふりをする。
「夢野先生って、うちの理事長の孫娘らしいですよ~」
なんで、そんなのと、自分が組まされなきゃならんのだと、良彦の顔がひきつる。
「ていうか、ボクは、全く聞いてなかったから、ちょっと、ね」

いや、担任を代行することは聞いていた。
離婚して、生活のリズムが激変して、担任を持つことが難しいであろうと
3年前から良彦はフリーの立場であった。部活動の顧問も外してもらった。
なんとなく、自分が戦力外の人間になった気がして、
いつも満たされない思いを抱えていた良彦にとって、たとえ産休の代理担任でも、
心から嬉しいと感じる辞令だったのだ。


しかし、新人の指導役も兼ねてとなると、素直には喜べない。
ただ、私立ゆえ、理事長の采配ひとつで良彦の立場など簡単に取り上げられてしまう。

「まあ、やるしかないですから」
そうつぶやいて、自分の席に戻りかけた時、
「おっはよ~ございます!今日からお世話になります、夢野乙女と申します」
若い女の声が背後から響き渡った。

もしかして、この声は?
振り返った、その時
「ああっ!バスのおとうさん!」
ピンクのスーツに、ピンクの上靴、ピンクのカバンを提げたおかっぱ頭の娘は絶叫した。

良彦も、頭の中が真っ白になったが、
「幸多 良彦と申します。専門は現国。あ、これから一緒に3年B組を受け持つことになっていますので、よろしくね」と、挨拶をした。

「ああ、ええ~、どうしよう!」
夢野乙女は、顔を真っ赤にして良彦を見つめている。
そして、なんということか、いきなりこんな発言をするのであった。

「幸多先生、とおっしゃるのですね、ああ、再会できてよかった!
 あたし、あたし、昨日の夜、運命の恋人を見つけたってわかったの。
 なんだか、夢みたい。御仏に感謝せねばなりませんね。
 法然上人さま、ありがとうございます。あたしたちは深い縁で結ばれているんですわ」

宗門系学校であるため、教室と職員室には、法然上人像と、御仏の祈りと言う額がかけられている。夢野乙女は、うっとりと上人像を見つめて手を合わせる。

おいおい。わけがわからないぞと、良彦は相手を凝視する。

「いけません、幸多先生。そんなにあたしを見つめないでください」
そういって、夢野乙女は気絶してしまったのである。

そして、仕方なく良彦は、崩れ落ちる彼女を受け止め
この困ったピンク色の小娘を抱きかかえて保健室へと向かうのであった。

その場にいた同僚たちの好奇心には気づかないふりをして。



☆つづく☆





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Last updated  2012.11.28 22:43:19
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