よろず屋の猫

Blue


絵師さんです。
彼女の絵は版権物も良いのですが、オリジナルがすばらしいと思います。

まずポップでキュートなイラスト。
思わず「カワイイ。」と言ってしまうデザインで、良いセンスをしてるなぁと脱帽ものです。

そして色合い。
微妙な色を使い分けて、何層にも描かれた色たちが幻想的なイラストです。
どこか懐かしさを感じるのは私だけでしょうか。

彼女は現在、企画物に取り組んでいて、ネッ友達に好きな色を選んでもらい、その色をテーマにイラストを仕上げています。
私が選んだのは“青”。
しかも他の色が混ざっていてもかまわないが、あくまで青の範疇である色、例えば赤を混ぜた場合、紫と呼ばれてしまう色になってしまったら、それはもう違うなどと言う小難しいリクエストをつけてしまいました。

それに応えて描いて下さったのが下の絵です。
本当にありがとう、ごまさん!!。

コピー ~ ブルー.png


で、絵の描けない私は感謝の気持ちを絵でお返しすることが出来ないので、ショートストーリーをつけて、表したいと思います。

僕は溺れたことがある。
まだ小学生の時、父と僕と妹の三人でゴムボートで沖まで繰り出した。
肌を焼きたくない母は、砂浜のビーチパラソルの下で本を読むことを選んだ。
空気は熱く、空は澄んで高く、水平線の向こうに純白の雲が浮かぶ。
波打ち際で遊ぶ人たちの声はやがて景色の一部として遠くなる。
波は静かで、ただ僕達のボートの進む音だけがピチピチと水を打つ。

小さな魚が跳ねた。
水を覗き込めば、小さな魚の群れがボートのそばで遊んでいる。
僕と妹はそれを捕まえてみたくて、ボートのへりから大きく体を乗り出した。。
「気をつけなさい。」と言う父の言葉が耳に入ったときには、ボートは既にひっくり返っていた。
父はまず妹を助けた。

パパ。
僕も助けてよ。
沈んじゃうよ。
息が出来ないよ。
苦しいよ。

自分の口から空気の泡がブクブクと音を立てて出て行くのが見える。
体の中の空気、全部、こんな風に出て行ってしまうに違いないんだ。

その時、僕は見た。
あの青い世界を。

気が付くと、僕は病院のベッドの中。
母はワーワーと声を立てて泣いた。
僕は僕の見た世界を話してみたけれど、それはかえって母の涙を誘うだけだっだ。


人生は騒がしさの連続だ。
イラついた車のクラクション、TVからはうんざりする程の惨劇、子猫も逃げ出す女の子達のおしゃべり。
そんな時、僕は目を閉じる。
すると音たちはただ静かなる背景となって僕の邪魔しない。
陽の光を帯びて段々と明るくなっていく水。
ゆっくりと立ち上る気泡。
止まっているようでいて、じっと見つめると生命の確かさを見せてゆっくりと動きを見せるクラゲ達。

目を閉じればいつでも行ける。
どこまでも静謐なあのブルー。





完成度の高い絵と比べると本当に僭越ながら、このお話をふっくらあざらしさんに捧げます。



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