よろず屋の猫

『麦の海に沈む果実』他 恩田陸



『図書室の海』は短編集、その中から『睡蓮』。
『青に捧げる悪夢』はアンソロジー、その中から『水晶の夜、翡翠の朝』

『麦の海に沈む果実』
シリーズ物でも、前の作品を読まなくても各作品単体で楽しめる小説が多い中、これは順番通りに読んだ方が良い典型的例。

と言うか、『黄昏の・・・』を先に読んでしまったら、『麦の海・・・』は面白さ半減かと、特にこの手の“謎”が重要な要素の小説では。
ちゃんとシリーズ名を表紙に書いておけば良いのに。
何せ校長先生の正体が分っちゃってるのでね、彼に対する主人公の恐怖心を、読者の私がちっとも味わえない。

陸の孤島のような寄宿生活を送る学校に転校した理瀬が逢う、数々の事件。
学校内の胡散臭い人たちは謎めいてて、また理瀬自身もトラブルを抱えているので、読むほうも心にもやもやした物を抱きつつ、話が進んでいきます。

この作者は、謎を全て解決させて話を終わらせないので、この小説でもまた、この登場人物はあぁだったのか、こうだったのかと、読者側の想像に任せられることになる。

この小説を楽しめるかどうかは、ひとえにこの物語の設定の学校を楽しめるかどうかにかかってると思う。
私は楽しめました、一昔前の少女マンガみたいだなぁ、って。

この作品に出てくる理瀬はラスト、自分がいるサイドの環境を楽しんでいる。
そこが『黄昏の・・・』の理瀬とは違うと思う。
なのでこの二人の理瀬をつなぐには、間にもう一つ、物語があってしかるべきだと思う。

『睡蓮』
うーん、私は『黄昏の・・・』では少女時代の亘との思い出を理瀬は、大切な愛おしいものとしているように感じたので、この『睡蓮』は二人の昔話としては、好きになれない。
この短編自体は悪いとは思わないので、別のキャラで書いて欲しかったかな。

『水晶の夜、翡翠の朝』
このシリーズ、と言うかヨハンファンの為の短編で、ご愛嬌って感じ。
これまた昔の少女マンガテイストで、かるーく読んで楽しめます。

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