よろず屋の猫

『天使と悪魔』 ダン・ブラウン


これから読む方はご注意を。

『ダ・ヴィンチ・コード』の前作です。

1/4グラムの反物質が科学研究所から盗まれ、新法王選出・コンクラーベが行われるヴァチカンに仕掛けられた。
威力はヴァチカンが消滅するほど。
犯人は“イルミナティ”と名乗るグループ。
過去にヴァチカンに迫害された科学者達が、地下にもぐって作り上げた組織で、ただ復讐のためだと言う。
イルミナティはまた、新法王の候補たりえる4人の枢機卿を誘拐、順次殺害すると予告する。
場所はイルミナティーに関係する施設。
図像学者のラングドンはこの謎を解こうと挑む。


もう何と言いましょうか・・・。[emoji:e-351]
小説の感想に絵文字を使ったのは初めてかもしれない・・・。
あれですね、所謂 “ファンタジー” ってやつですね。
この場合のファンタジーは『指輪物語』等の小説のジャンルを指すそれではなくて、ありえない妄想を揶揄して使うときの“ファンタジー”ですが。

もう若くない、水球で多少鍛えてるかも知れないけど基本は頭脳労働者の主人公が、朝の5時過ぎにたたき起こされて、科学研究所が作ったというマッハ15の飛行機で米・マサチューセッツからスイスへ。
更にヴァチカンへ。
低酸素もしくは無酸素状態で作業したり閉じ込められたり、暗殺者・ハサシンと戦って怪我したり。
この間、休憩も取ってなきゃ、ろくに食事もしてません。
で、夜の夜中の12時過ぎにヘリコプターから布一枚持って飛び降りて、下は陸地だというので布使って方向を変えて、海に落ちる。
病院に担ぎ込まれるも、次の朝には謎解きをしなきゃいけないと言うので退院しますよ。
ありえませんって。

そもそも反物質をヴァチカンに仕掛けると言うのが突拍子もない設定なのですよ。
だからこれに現実感を持たせるには、周りのことをきっちりと固めないとダメだと思う。
ヴァチカン等の描写はさすがに良いのですが、何と言っても主人公の行動が超のつく現実離れしているので、どうしょうもない。

4人の枢機卿を誘拐できたのは誰?、と考えれば真犯人は最初からあたりがついちゃうし、亡くなった前法王が実は毒殺だったとなった時点で、 バレバレ です。
これで違うなら、あとはもう今まで登場してなかったけど、突然ラストに出てくるってパターンしかないってくらいに。
謎解きの方に興味を持たせて、そちらの疑問は持たないようにはしてあるんでしょうけど。
次から次へと真犯人はこの人かとミスリードする様にはなってますけど、引っかからないでしょう、この内容では。
なので後半は、何で“その人”についてっちゃうかなー、と思いながら読んでるので、主人公自ら危機に入り込んでるとしか思えなくて。

ハサシンのキャラ設定もサイコが入ってて、典型的。

かつてのメチャクチャアクション全盛の頃のハリウッド映画には良いかもね。

『ダ・ヴィンチ・コード』同様、うんちくについてはとっても楽しめました。
謎解きも面白いので一気に読めます。
でもだからといって良い小説とは限りません、と言う典型的な例だと思います。


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