去年の夏、我慢出来なくなった私は弟と大喧嘩をした。
そして実家へ帰らなかった。帰れなかった。
サナの家・マサ姉の家・友達の家・親戚の家で約3週間過ごした。
父にはとても辛い思いをさせてしまったと申し訳なく思う。
でも、いつまでもこんなことをしている弟に腹が立って仕方無かった。
夏が終わり、弟は家を出た。
私は少し安心した。
それは弟が自立したっていうちっちゃな喜びもあったけれど
父が一人で落ち着けるかなって・・・
父としては複雑な心境だったようで、ちょこちょこ弟には会いに行ってたようだ。
私には最近まで内緒にしてたけど。。
私は心の中ではいつも弟の事が気になっていたけれど、
父に弟の現状を聞くことは一切しなかった。
聞くのが怖くて逃げていたんだと思う。
父に聞かずとも情報源は色んな方面からあった。
聞けば弟の情報は私の耳に入ってきたのだろうけれど
弟の存在・職を一番気にしていた私に誰も何も言わなかった。
ずっとずっと何よりも弟の存在を気にしてきた事を周りはよく知っていたから・・・
一人の男友達に「何いうてもオマエが一番可哀想や。オマエの気持ちはよ~分かってる。
でも弟の気持ちも分かる」って言われて激怒した事が何度もある。
私がどれだけ悩んでるんか知ってるんか~~!!
パパがどれだけ悩んでるんか知ってるんか~~!!
約一年、私は弟と話する事が無ければ会う事も無かった。
そして今年の夏、私は弟に連絡してみようと思った。
言いたい事、話したい事、伝えたい事が出来たから。
私自身も落ち着いて弟と向き合えるだろう。
そんな精神状態・気持ちになっていたから。。。
7月、大阪に帰省した私は父に弟の事を尋ねた。
父が涙ぐんだ。
私はとても驚いた。
声を詰まらせながら「・・・逮捕状が出てる・・・」って。。
私は目の前が真っ白になった。
もう終わりだ・・・と思った。
車の運転中、一時停止で捕まった弟から尿検査で薬物反応が出たって・・・
“薬物???”
弟は昔からシンナーとかそういう事は一切しなかった。
周りの友達がしていても、そんな関係だけは本当にしなかった。
たったそれだけでも私達は救われていた。
なのに薬物って何????
弟に今すぐ電話しようと思った。
携帯番号が変わっていて知らなかった私は父の携帯からかける事にした。
父の携帯を開けて私は一瞬にして泣いてしまった。
父の携帯の待ち受け画面が亡き母になっていた。
携帯の操作もままならない父がしたと思えず、思わず私は
「ダイ(弟)がしたん?」って聞いた。
「お父さんが自分でやったよ。」と言われ余計にたまらなくなった。
母の写真を手に持ちながら撮ったんだろう。
写真を持つ父の指が少し写り、ブレていた。
ハートのフレームまで付けて・・・・
きっと悪戦苦闘しながら待ち受け画面に設定したんだろう。
どんな思いで母を待ち受け画面にしたんだろう。
弟がこんなになった今、一人悩み亡き母にすがったのだろう。
母が生きていたなら・・・ それを考えただけで私は本当に悲しくなった。
せめて私にでも相談出来ていたら・・・
松山にいる私にそんな相談は出来なかったんだろう。
心配させたくない、腹を立たせてやりたくないという父の思いだろう。
そんな風にさせたのは私かもしれない。
泣かず、腹を立てず弟の話を聞いてやれる私だったら、父も少しは気がラクだったかもしれない・・・
弟に何かを思うより、一人抱えてきた父に心底申し訳ないと思った。
弟に電話をした。
父からの電話だと思った弟は私だと分かりビックリしていた。
「久しぶり・・・・元気にしてんの?・・・・」
兄弟なのに変な挨拶・・・
泣き声の私に弟は「姉ちゃん、何かあったんか?」と言った。
何かあったんかって・・・・
まず、サナが亡くなった事を伝えた。
サナの事は弟もよく知っていただけに、ただただ驚いていた。
そして父の携帯の待ち受け画面の話もした。
そして今回の事件の話・・・・
「姉ちゃんはずっと薬だけはせぇーへん、する子じゃないって信じてた。」って。
私が恐れていた、注射では無いと言った。
軽い錠剤を2回ほど飲んでしまった、その時以外は一切していないと・・・
でももう遅いやん。。。
電話をしている間、情けないのと悔しいのと悲しいのとでずっと泣いていた。
そして私が今回の事件を知る前に一番弟に言いたかった事を全て伝えた。
私が話しをしている間「うん、うん。」と静かに返事だけしていた。
全て話終わったあと弟は「ごめん・・・俺の籍抜いてくれ。」と言った。
高ぶる感情を抑えて電話をしていた私は
「そんなん言うて、また姉ちゃんに全部押し付けるん??」って叫んでしまった。
「松山行った事だって看病や介護の事だってパパの事だってばあちゃんの事だって!!!」って号泣してしまった。
「違うやん、姉ちゃんにはほんまに感謝してるし悪いと思ってる。
やけど今俺こんな状態なってもうたし、迷惑かかるからもう俺の籍抜いてくれたらいい。
だからって俺は姉ちゃんや親父の事家族やって思っとくし、親父の面倒だってみるから。抜いてくれ!!」と弟は言った。
もう私の頭の中はパニックになっていた。
電話では・・・と思った私は弟に会う時間を作れと言った。
けれどその時点で弟は逮捕状が回り逃走中。
弟と会っていたならば私まで犯人隠匿でお縄かも・・・
でもそんな事よりまずは弟と会って話がしたかった。
姉ちゃんが車で迎えに行くから電話してきてと言って携帯番号を教えた。
私は父の携帯の待ち受け画面を綺麗に撮り直してあげる事にした。
「このお母さんの写真は?」
「財布の中に入れてる。」
母の写真を財布に入れて肌身離さず持つ父。
写真をカメラに撮らなければいけないので苦労した。
光ったりブレたり・・・
あれこれしている私に「し~ちゃん☆でもいいよ。」と言う父。
私が待ち受け画面???いやいや、やっぱりお母さんでしょう。。
何とか父が撮ったものよりはマシな仕上がりに出来た。
その夜、私はサナ家へ行かなければならなかった。
マサ姉と子供2人とマッピーが来るから。。
泣き腫らした目をしながら私はサナ家に行った。
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