「大丈夫!!大丈夫!!」と皆は私を毎日励ましてくれた。
でも私の中での不安はとてつもなく大きなものになっていた。
毎日片時も今回の弟の事件が頭から離れる事は無かった。
ストレス続きと、紛らわす為のお酒で、元々弱い私のお腹の調子はずっと最悪だった。
早く松山に帰りたい、でも父の事も心配だ・・・というどうしようもない心境だった。
逮捕状が出てるのに、逃げたって無駄なのに。。。
考えると腹が立って仕方がなかった。
数日後の夕方、「ダイ(弟)が今日の夜家に線香をあげに来る。」と父から連絡があった。
“仏壇のお母さんに何て報告するつもりよ。これ以上お母さん悲しませんといて”
という気持ちになった私は「来んといてほしいわ。」と大人げない返事をした。
「出頭する言うてるから、その前に線香あげさせてくれって言うてる。」と言われ、しぶしぶ了解した。
私は弟に会いたくなかった。
大阪に帰省するまで落ち着いていた私の心が今はもうめちゃくちゃになっている。
絶対会ったら落ち着いて話なんてもう出来ない。
弟を責め立てる事しか出来ない。
会いたいけど会えない。会いたくない。
そんな矛盾した思いが頭の中でグルグル回った。
そんな私の性格を知っている父は「ダイが来る時はサナちゃんの家に行っときな。」と言った。
弟が家の下に着いたと連絡がきて直ぐ、私はサナ家に行った。
変に落ち着かない私をサナ両親は諭すようになだめてくれた。
しばらくして父から連絡がきた。
弟が帰ったんだろうと思っていた私は父の話に固まった。
父はサナ両親に電話を代わるように言った。
弟が週明けの4日後に出頭すると言っている。
それまで実家に帰ってくるという。
「線香あげに来るだけって言うたやん!そんなん出頭するかも分からんやん!
し~ちゃん☆また家に帰れへん!!」とまたもや大人げない発言をした。
父もこうなるだろうと予想はしていたようで、私をサナ家に預けた。
我慢していたのに泣いてしまった私にサナ父は
「今から帰ってし~☆の荷物全部ここに持ってこい!オマエはここの三女やねんからここに来い!!
お父さんも辛いんや、可哀想や。オマエはここにずっとおったらええ!!」と言った。
父と弟は弟の住んでいた所から弟の荷物を取って来るため出て行った後だった。
私はその間に実家に帰り荷物をまとめた。
洗濯物をたたんで洗い物をして片付けもした。
気が動転しながら友達に電話していると父達が帰ってきた。
私は自分の部屋に閉じこもり、残った荷物をカバンに詰めていた。
父が私にとても気遣っているのが分かる。
弟が部屋の外から私に話しかけてくる。
「姉ちゃんごめん。俺ちゃんと出頭するから、聞いてる?」って。。
しばらくして誰かが家に来たのが分かった。
「入って入って。こっちにいてるから。」と言う父の声が聞こえた。
サナ母かなと思っているとマサ姉だった。
私はマサ姉の顔を見るなり安心したのか号泣してしまった。
「もう泣かんでいい、荷物はこれだけか? おっちゃん、ほんならし~☆預かるから心配せんでいいで!」
とマサ姉は言いながら泣いている私をサナ家に連れて行った。
私が荷物を取りに実家へ行っている間にサナ両親がマサ姉に電話したんだろう。
近所に住んでいるマサ姉は直ぐに自転車で駆けつけてくれたのだ。
心配して待っていたサナ両親に「もう何も考えんとここにおったらいい。」と言われた。
私は家を出てきてこれで良かったのかとまた悩んでいた。
また向き合わずに逃げているのだろうかと悩んだ。
私がサナ家に来て少ししてから父が来た。
弟は昨日の夜も家の前まで来ていたらしい。
でもどうやって私に顔を合わせていいか分からず帰った。
鍵を持ってはいるけれど、家に入る事が出来なかった。
出頭しようと思って警察に電話をかけたら「月曜日に来い」と言われた。
家に帰って父とも話し、それから出頭して来いと。。
月曜日には必ず出頭する。
それが今回の弟の口から父に渡った話。
私はこの話を信じるとか信じないとかそういう心境ではなかった。
松山へ帰る当日のお昼前、弟から電話が入った。
「姉ちゃん、切らんといてな・・・」って。
「今回は俺もこんなつもりじゃなかったのにほんまごめん。 俺明日絶対出頭するから、もう家に帰ってきてくれ。」って。
「もうすぐしたら松山帰るから。」って言う返事に驚いていた。
帰る直前にサナ母と実家に線香をあげに行った。
弟と後輩3人がいた。
仏壇に手を合わせながら母に謝った。
そしてこれからの事をお願いした。
“どうか皆を見守って下さい。幸せになりたいです。”
挨拶をしてくる後輩に向かって「片付けときや!!!」と昔のように怒鳴ってしまった。
いわゆるこれが八つ当たりってやつなのか・・・
帰る私に何回か謝ってきた弟。
「出頭しぃや・・・」としか返事をしなかった、してやらなかった。